美術展命の男のブログ

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さようなら 村内美術館

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ギュスターヴ・クールベ 《ボート遊び》(ポドスカーフに乗る女) 1865年
油彩、カンヴァス 173.5×210.0cm 村内美術館蔵

フランスで海水浴が庶民の間で広まるのは19世紀半ばのこと。ノルマンディ海岸、ドーヴィルやトゥルーヴィルはパリジャンの夏の高級リゾートとして19世紀前半から賑わっていました。このモデルはトゥルーヴィルの話題をさらった女性サーファーとのこと。こんな巨大なクールベ作品は日本に他になく描かれた対象も他に見ない大変珍しい時代を写した風俗画の作品です。このトゥルーヴィルの浜辺で日光浴をする人々を描いたウジェーヌ・ブーダンの評価の高い主題の作品も所蔵しています。(国立西洋美術館やブリヂストン美術館にも同主題の作品があります。)オルセー美術館やメトロポリタン美術館など大美術館が欲しがるであろうミュージアムピースです。

村内美術館のホームページに信じたくないニュースがアップされました。

休館、展示リニューアルのお知らせ

1982年の開館より常設展示してまいりました「ミレー、コロー、クールベとバルビゾン派」展は、2013年6月25日(火)をもちまして、展示を終了させていただくこととなりました。
長い間ご愛顧賜り、誠にありがとうございました。


えぇぇぇー!!!!!本当にびっくり&悲しいです。

東京富士美術館と村内美術館 八王子 後編

さようなら クールベ《フラジェの樫の木》 村内美術館

村内美術館の記事は昨年の9月と今年の3月に書きましたが、こんなことになろうとは...作品の売却やいろんな人が出入りしてるという情報を聞いてまさかと思っていたのですがこんなに早くその時が来るとは...

日本で見られる西洋絵画とか東京の美術館などの本が刊行されると必ずミレーやコローが掲載される美術館であり、様々な展覧会に貸し出される重要作を所蔵しているわけでバルビゾン派絵画の常設が終了ということはとっても大きな痛手です。

私が村内美術館を初めて訪ねたのは1994年のことです。東京富士美術館で開催されていた「大ナポレオン展 戴冠式190年記念—英雄の生涯と軌跡」とセットで見に行きました。

今でこそ行き慣れていますが、始めて降りたJR八王子駅からバスに揺られるというのは当時の私にとって秘境の地に行くようなものでした(爆)。東京富士美術館行きのバスと間違えて東京富士美術館前にある大学の卒業式出席者用のバスに乗ってしまい美術館を通り越して大学構内まで乗って行ってしまいました(笑)。東京富士美術館のナポレオン展も圧倒されましたが、村内美術館のバルビゾン派、印象派作品の質の高さにもただただ感動でした。美術館巡りをして日も浅く、デパート美術館と国立西洋美術館やブリヂストン美術館など都心の美術館に通うことが多かったので郊外にこんなレベルの高い美術館があるとは本当に驚きでした。ミュージアムショップで1800円ほどのドガ《入浴後の朝食》の複製画を買って帰りました。非常に素晴らしい作品でしたが、2000年前後にはコレクションから離れ、現在はオランダのトリトン財団蔵となっています。

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エドガー・ドガ 《入浴後の朝食》 1894年頃 パステル・紙 トリトン財団・オランダ

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エドガー・ドガ 《入浴後の朝食》 1894年頃 パステル・紙 テルアビブ美術館・イスラエル

2009年から2010年かけてBunkamuraザ・ミュージアム、北九州市立美術館 分館、ひろしま美術館で開催された「ロートレック・コネクション展」で久々に来日を果たしました。似た構図の作品がテルアビブ美術館に収蔵されています。

まだ寒い時期だったので村内家具から外へ出ると真っ暗でバス停もよくわからず不安な帰路でした。後に無料送迎バスがあるのを知ってずっこけました。

当時、美術館は村内家具の本館4階にありましたが現在そこはイベントホールになり、1995年に本館北2階の上階に独立した空間として開館しました。広く洗練された展示室になり、テーブルや椅子などの家具も配置されこれぞ家具屋の美術館といった感じに生まれ変わりました。夕方に行くとほぼ毎回貸切状態で見られ、クラシックが微かに聞こえる絵画に埋め尽くされた邸宅の中を歩くような空間は贅沢の極みでした。

気になるのは作品の行方。ミレー《鏡の前のアントワネット・エーベル》やコロー《ヴィル・ダヴレーのカバスユ邸》などは一体どこへ行ってしまうのでしょうか。常設はやめるものの最後の最後まで残しておくのでしょうか。やはり散逸?日本のどこかの美術館に入ってくれることを祈るばかりです。収集対象が全て同じというわけではありませんが、ブリヂストン美術館、ひろしま美術館、大原美術館、吉野石膏コレクションが消滅するような勢いのニュースです。

31年間お疲れ様でした。

ニュースには続きがありまして

村内美術館は展示を一新し、7月11日(木)にリニューアルオープンいたします。家具屋ならではの美術館として世界の家具を展示、また日本や海外の新進気鋭作家の作品を展示する予定です。日本の現代画家とヨーロッパの近現代画家の共演をお楽しみいただけます。

7月11日(木):リニューアルオープン
           「世界の名作家具 デザイン展」「東西名画展」


とあります。閉館ではありません。ショッキングなタイトルを書いてすみません。なんだ無くなるんじゃないんだぁと安心しましたが、現代作家がメインになるみたいなので今までの村内美術館ではなくなるのは間違いないようです...。やっぱりさようならか。リニューアルというか全く違う物に生まれ変わる予感が。ヨーロッパの近現代画家とあるので近代西洋絵画も残る?東西名画展とあるのでいったいどの作品が残るのかリニューアルオープンしてみないと分かりません。楽しみのような怖いような。行ってみてミレーもコローもクールベもルノワールもあるじゃん。あははははとなることに是非期待したいです。

コロー、クールベ、ロダンの作品が※登録美術品制度に登録されていたのでどうなったのかと思ったのですが、登録終了となっていました。

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ギュスターヴ・クールベ 《静物》 1871-72年 油彩、カンヴァス 38.5×56.0cm 村内美術館蔵

こちらは、登録美術品制度に登録されていたクールベの《静物》。
クールベは1871年のパリ・コミューンでヴァンドーム広場のナポレオン記念柱引き倒しを指揮したとして逮捕、サント・ペラジー刑務所へ送られます。刑務所に差し入れられた画材で花やりんごやなし、ざくろなどの果実の絵を30点ほどが描きました。国立西洋美術館にも1871年頃作の4つのりんごを描いた松方コレクションの作品があります。この作品は刑務所内での制作ではなく病院に移されてからの1872年春頃の制作である可能性が強いとのこと。クールベの静物画を日本で見られる機会は非常に少なくこのような名品は他にないですね。画像はかなり明るく修正されていますが、実物の背景はとても暗く、りんごやざくろの赤と白い布と明暗がくっきりしています。

※登録美術品制度とは、重要文化財や国宝、その他、世界的に優れた美術品を国が登録し、登録した美術品を美術館において公開するものです。また、登録美術品は相続が発生した場合、他の美術品とは異なり、国債や不動産などと同じ順位で物納することが可能となります。有名な所では埼玉県立近代美術館に寄託されている丸沼芸術の森蔵のクロード・モネ《ルエルの眺め》などが登録されています。

美術館で適切な管理の下、展示公開されるので一般の所有者も安心して預けられるし税制上でもメリットがありますが、村内美術館の場合は登録して自館で展示していましたのでよくメリットがわかりませんでした。全作品登録というわけでもないですし。この制度を盛り上げようと参加していたのかもしれませんね。この制度が始まって15年経つのに残念ながら登録数は現在41件のようで既に半数が登録を終了しています。もっと登録数が増えれば美術館で個人蔵の作品が展示されますし、物納されれば国立の美術館に出現するかもしれません。でも大抵の人は作品を好んで手元に置いておくわけでちょっとよくわからない制度ですね。管理も大変だし展示スペースもないから預かっておいてとかいう人には好都合かと思いますけど。

バルビゾン派、印象派、エコール・ド・パリ、フランス現代絵画がずらりと並ぶ現在の村内美術館が見られるのはあと一か月です!まだ行かれたことのない方は是非足を運んでみてください。私ももう一度見に行きたいと思います。7月11日のリニューアルオープンにも期待したいです。

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東京富士美術館と村内美術館 八王子 後編

続きまして、村内美術館の紹介です。村内美術館は、(株)村内ファニチャーアクセス会長、村内道昌氏の蒐集してきた西洋絵画を展示、公開するために、1982年11月に開館しました。なので今年は30周年なんですね。花の82年組です。 中森明菜、早見優、堀ちえみ、石川秀美、小泉今日子と同期です。

「家具は村内 八王子」というキャッチフレーズが有名な家具屋さんの中に美術館があります。1995年3月に新館がオープンし現在に至ります。以前の美術館の時代にも行ったことがあります。こじんまりとしていて独特な雰囲気のある展示室だった気がします。売り場へ通じる階段へ向かう通路の電気が一切付いておらず真っ暗で怖かった思い出があります(笑)

村内美術館といえば、バルビゾン派コレクションで有名な美術館です。日本の三大バルビゾン派コレクションといえば、山梨県立美術館と姫路の中村コレクション(非公開)、そして今回紹介します村内美術館です。バルビゾン派の作品を所有する美術館はいくつもありますが、質、量でこの3コレクションに迫るものはありません。

村内美術館はバルビゾン派だけではなくアカデミスム、印象派、エコール・ド・パリ、現代フランス絵画さらにロダン、ブールデル、マイヨールなどの彫刻と19世紀から20世紀にかけてのフランス美術を楽しめる美術館でもあるのです。7部屋に分かれて展示されています。

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※館内の画像は、美術館の許可を得て撮影、掲載しております。

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ホールには彫刻が点在しています。

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早速、展示室へ。館内はクラシック音楽が流れています。落ち着いた空間で上質な一時を過ごせること間違いありません。最初の部屋は、シャルル・フランソワ・ドービニーやテオドール・ルソーが迎えてくれます。ドービニーが1855年にパリ万博に出品した《オプトゥヴォスの水門》のヴァリアント作品や1867年のパリ万博の美術展に出品して一等賞を得た8点中の1点である代表作《ボニエール近郊の村》やルソーの傑作も展示されています。ルソーの作品でいつも魅入ってしまう作品があります。広い大地に民家と夕暮れを描いた作品なのですが、雲から漏れる夕暮れのオレンジが何とも美しく一日の終わりをしみじみと味わうような絵です。

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次の部屋にはナルシス・ヴィルジル・ディアズ・ド・ラ・ペニャ、コンスタン・トロワイヨン、ジュル・デュプレ、シャルル・エミール・ジャックなどが並びます。トロワイヨンやジャックの絵から羊が飛び出してきています。(ロビーや階段にもいたな)彼らに名前が付いてるので会場で探してみてください。またこの部屋に美術館の収蔵品第一号の作品があります。これも探してみてください。

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次の部屋は、いよいよこの美術館の目玉であるミレー、コロー、クールベの部屋です。エコール・ド・パリの作品が展示されている部屋まで3部屋がまっすぐ続く空間です。広いしわくわくします。(笑)

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山梨県立美術館のミレーコレクションは農民画をメインにしたコレクションと言えますが、村内美術館は初期の肖像画がメインになっているコレクションです。山梨県立美術館の《種をまく人》1850年が、日本の美術館にあるミレーの農民画の代表だとしたら肖像画の代表は間違いなく《鏡の前のアントワネット・エベール》1844-45年でしょう。
日本の美術館でというよりミレーの画業でも重要な肖像画の傑作として知られています。

この作品は、1986年、海外のオークションでヒューストン美術館と最後まで競い合って手に入れた作品です。本作を中心にした特別展を計画中であったヒューストン美術館から早速貸出依頼があり、ゆっくり堪能する間もなく1年近く手放すことになったのだとか。よくぞ落札してくださいました!ちなみに東京富士美術館所蔵のシャルダン《デッサンの勉強》とヒューストン美術館所蔵の《良き教育》は対作品で、三菱一号館美術館のシャルダン展で一緒に展示されています。お隣りの美術館のことですけど何だか面白い縁ですね。

ミレーは1845年頃までは、故郷シェルブールを中心に活躍した若手随一の肖像画家でした。総数約500点と推定されているミレーの油絵のなかで、1971年刊行のミレーの肖像画カタログには127点が登録されています。その後かなりの数が発見されたそうで肖像画が大きく比率を占めていることが分かります。
肖像画カタログには子どもを描いた作品は10点ほどしか登録されていないのでその少なさに驚きです。
この作品は、ルーヴル美術館に所蔵されているベラスケスの《マルガリータ王女》を参照した跡が色彩やタッチの工夫に表れていることを度々指摘されています。鏡の額縁の金色の表現の見事さ、鏡を覗き込む少女の顔、汚れた足の裏、鏡に浮いて見えるF.Milletのサインなど微笑ましくとても興味深い作品です。

モデルになった当時6歳の少女は、ミレーのシェルブールの親友フェリックス・フーアルダンの妻の連れ子でした。彼の肖像画は青山ユニマット美術館に所蔵されていましたが、閉館してしまったので現在行方不明です。

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※参考図版 村内美術館の所蔵品ではありません
左:《フェリクス・フーアルダンの肖像》
右:《犬を抱いた少女》1844-45年 油彩・カンヴァス 65.5×54.5cm
共に青山ユニマット美術館旧蔵

青山ユニマット美術館はもう一点肖像画を所蔵していました。《犬を抱いた少女》という作品です。このモデルについての記録は伝わっていませんが、《鏡の前のアントワネット・エベール》のモデルと特徴のある輪郭がそっくりなのです。フーアルダン家に嫁いだ夫人のもう一人の連れ子の可能性もあるそうです。この夫人には2人の子どもがいたとのこと。アントワネットが姉で、《犬を抱いた少女》のモデルは妹である可能性もあるそうですが、肖像画の様式、寸法が全く違うので対作品である可能性は低いものの意識的にそう描いたかもしれないとのこと。真相は藪の中。この少女2人が姉妹だったとしたら2年ちょっとですが、義父と妹は青山ユニマット美術館があった港区に、アントワネットは八王子市に住んでたことになりますね。妹?の資料が見つかるといいですね。

ミレーの2人目の妻カトリーヌ・ルメールを描いた唯一の油彩が村内美術館にあります。死別した最初の妻、ポーリーヌ・ヴィルジニ・オノの肖像は油彩だけでも4点あるので対照的です。そのうちの1点は山梨県立美術館にあります。

肖像画だけではなく油彩《羊飼い》やパステル《羊毛を紡ぐ少女》も所蔵しています。油彩7点、パステル1点、チョーク、鉛筆画、デッサンなど6点、版画9点が展示されています。

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コローは油彩の風景画6点と人物画3点の計9点も所蔵しています。画業の最初の方から晩年までを網羅しており、作風の違いも楽しむことができます。コローといえば抒情性のある銀灰色の画面が有名ですが、村内美術館はそれだけじゃないんです。

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コロー《ヴィル=ダヴレーのカバスュ邸》1835-40年 油彩・カンヴァス 35.0×26.5cm

コローコレクションの白眉はやはり《ヴィル・ダヴレーのカバスュ邸》です。ヴィル・ダヴレーは、パリの中心から西に12km、車で20分足らずのところにある小さな町です。大小二つの池の周りを森となだらかな丘が囲む風光明美な地です。1817年、コローの父が池のほとりに家を購入しました。屋敷まで続く一本の道を中央に、両端に木々を描いた作品です。夏の強い日差しを浴びて木漏れ日もくっきりと出ています。道は光が反射して眩しそうなくらいです。小品ですが、コローの前半生の傑作です。ルーヴル美術館も喉から手が出るほど欲しい作品だと思います。コローはヴィル・ダブレーで160点もの作品を描きました。ヴィル・ダウレーの景色に焦点を当てた展覧会を是非見てみたいものです。
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※参考図版 ヴィル・ダヴレーいろいろ 村内美術館の所蔵品ではありません

風景画だけでなく人物画3点も画業の前半の方の作品、晩年の作品とあり見所になってます。

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そしてクールベコレクションも凄いんです。風景、人物、静物と9点が揃ってます。鹿、波、シヨン城とクールベの代表的なモティーフも描かれています。国立西洋美術館もクールベコレクションは負けていません。風景、波、動物、女性、裸婦など9点所蔵しています。日本のクールベコレクションの双璧です。どちらも素晴らしくて甲乙つけられません!

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クールベ《シヨン城》1874年頃

亡命したスイスでレマン湖畔に建つシヨン城をクールベは何度も描いています。カタログ・レゾネには21点が掲載されており、遠景から捉えた作品がA群4点、中景から捉えた作品がB群14点と分類されています。あとの3点は??

遠景から捉えた作品は湖面が穏やかでシーンとした雰囲気があるのですが、こちらの作品は湖面が激しくざわついています。重々しいです。ここは政治犯が収監されていた歴史があり、パリ・コミューンに参加し、投獄されたこと、亡命してきた自分と重ねて見ていたのでしょう。

遠景から捉えた作品はりんどう湖ファミリー牧場内にあるりんどう湖ギャラリーで見ることができます。閉館した青山ユニマット美術館にも所蔵されていました。

世界的に有名な《フラジェの樫の木》や非常に珍しい大作《ボート遊び(ボドスカーフに乗る女)》、さらに国内ではほとんど見られない静物画のしかも名品など大変素晴らしいコレクションになっています。

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次の部屋に行くと家具が置いてあります!さすが家具屋さんですね。もちろん座ってゆったりと鑑賞できます。お金持ちの家に来たみたいでわくわくしますね。この部屋はアカデミスムの巨匠ウィリアム・アドルフ・ブーグローやジャン=ジャック・エンネル、ファンタン・ラトゥール、ゴッホが影響を受けたモンティセリなどの作品が掛かっています。バルビゾン派でもない印象派でもない同時期に活躍した画家たちです。彼らの作品は日本の美術館で見る機会が本当少ないので残念ですが、ここではたっぷり堪能することができます。

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次の部屋は印象派からエコール・ド・パリまでの作品がずらりと並んでいます。マネ、ブーダン、ルノワール、ピサロ、ドガ、ルノワール、ボナール、ヴラマンク、ルオー、ローランサン、ユトリロ、キスリング、マルケなどなど
こちらの部屋も家具が配置されていて本当に素敵な空間です。

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ルノワール《ジャン・ルノワールと一緒のガブリエルと少女》1895-96年

円熟期の傑作《ジャン・ルノワールと一緒のガブリエルと少女》も所蔵しています。ルノワールの次男ジャンと妻アリーヌの従姉妹ガブリエルと近所?の少女が描かれています。ガブリエルは次男のジャンや三男クロードの乳母、家政婦として1894年から20年間ルノワール家に住みリューマチで不自由な体のルノワールの世話もしました。これは母と子の絵ではありませんが、多くの人が母と子、もしくは家族の微笑ましいひとときを描いたものと思うことでしょう。一緒に暮らして1年以上経った頃でガブリエルはこの時、既に立派な家族ですね。100年以上経った今も変わらず家族愛の素晴らしさを讃えている傑作です。

1997年か98年の秋頃だったでしょうか。収蔵されたのを知って大変驚いたのを覚えています。新聞にも掲載されました。この作品が日本にあるのは本当誇らしいです。驚いた理由に永谷園のお茶漬けの袋のバーコードかマークかを集めて送るとトランプサイズのカード型の複製画が沢山入ったものを貰える謎のプレゼントがあったんですね。わかる人だけ付いてきてください。(笑)その中にこの絵も含まれていました。村内美術館に収蔵される何円も前の話です。いい絵だなと思っていたのですが、個人蔵ですから見ることもないだろうと思っていたら村内美術館に収蔵されたので感激しました。バブル期に日本に入ってきていたようですが、その後村内美術館の所蔵品になりました。

この作品には関連するパステル作品もあります。左の少女の部分だけ切り落としてオレンジがおもちゃに変わった油彩も何点かあります。オランジュリー美術館やワシントンナショナルギャラリーなどに所蔵されています。登場人物や色彩も全く違うものの3人が寄り添う似た構図の油彩もあります。この題材を気に入って描いていたというのがよくわかります。様々な似た作品中でもやはりこの作品は最も素晴らしいものでしょう。

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※参考図版 村内美術館の所蔵品ではありません

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左:《ガブリエルとジャン》 1895-96年 オランジュリー美術館
右:《子どもとおもちゃ-ガブリエルと画家の息子、ジャン》 1895-96年 ワシントン・ナショナル・ギャラリー

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ブーダン、ルノワール、ファンタン・ラトゥール、ピサロ、ヴラマンク、マルケ、ユトリロ

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ローランサン、パスキン、ヴラマンク、キスリング、ブールデル

村内美術館のキスリングは国内でも5本の指に入る傑作ではないでしょうか。大阪市立美術館準備室所蔵の《オランダ娘》も傑作だなぁと思いますが、モンパルナスのキキの裸体画と魚介を画面いっぱいに描いた《ブイヤベース》も傑作です。特に《ブイヤベース》はキスリングファンでなくてもその迫力に思わず立ち止まらせてしまうような迫力のある絵です。

次の部屋は紙作品の部屋です。ミレーの素描やパステル、版画などが纏めて展示されています。アレクサンドル・ガブリエル・ドゥカンのかわいい《猿の理髪師》も必見です。ミレーの素晴らしいパステル画など紙作品でも常設されていていつでも見られるのがとても嬉しいです。

最後の部屋はフランス現代美術の部屋。

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パッと明るく解放的な空間です。ビュフェ、ブラジリエ、カシニョール、カトランなどの大作がずらりです。中央のテーブルにカタログが置いてあります。ここでカタログを見ながら休憩してもう一周というのがいつものパターンです。

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美術館のもう一つの楽しみ、ミュージアムショップもあります!ポストカードやクリアファイルはもちろん傘やアクセサリーなど品揃え豊富です。書籍も色々置いてあります。 鑑賞の後の思い出に是非どうぞ。

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ホールの横に緑が望める休憩室もあります。こちらも素敵です。鑑賞の余韻に浸れます。

村内美術館は水曜日が休館日なので行かれる方は気をつけてください。東京富士美術館は月曜日です。両方見たいという方は要注意です。昔、村内家具店の臨時休業の日に行ってしまい店の前で茫然と立ち尽くしとんぼ返りしてきたことがありました...。東京富士美術館は展示替え中でそちらも見られず...とにかくお気を付け下さい。

JR八王子駅北口から村内家具店までの無料シャトルバスも出ています。ちょっと遠いかなと思われがちな八王子の2館の美術館ですが、来てよかったと必ず思わせてくれる美術館です。お近くの方も遠いという方も是非訪ねてみてください。

東京富士美術館と村内美術館 八王子 前編

東京・八王子にあります、東京富士美術館と村内美術館に行ってきました。東京でのみ開催という大型の展覧会もよくありますから東京へは全国から多くの人がそれを見に来ると思います。こういった展示は、上野の東京都美術館や東京国立博物館、国立西洋美術館とか六本木の国立新美術館など東京23区でも東京駅から見て本当に近い施設ばかりです。ブリヂストン美術館、三菱一号館美術館などは東京駅から徒歩すぐです。特別展ではなくて常設展が凄い美術館を紹介したいと思います。

今回、紹介する2館は東京駅から遠いです...が、どちらも日本一と言っていい分野を持つ本当におすすめの美術館です。ちなみにどれくらい遠いのかと言いますと、滋賀県のMIHO MUSEUMは電車で京都駅から石山駅まで15分、そこからバスで50分。愛知県の豊田市美術館は電車で名古屋駅から豊田市駅まで50分ちょっと、そこから徒歩15分ほど。八王子の東京富士美術館と村内美術館は電車で東京駅から八王子駅まで50分、そこからバスに乗り20分ほど。こんな感じです。駅から見て村内美術館の方が少しだけ近いです。両館は1kmちょっとの距離なので徒歩15分もあれば移動できます。

まず、東京富士美術館から。東京富士美術館は1983年に開館した美術館です。日本・東洋・西洋の各国、各時代の絵画・版画・写真・彫刻・陶磁・漆工・武具・刀剣・メダルなど様々なジャンルの作品約30、000点を収蔵しています。コレクションの幅の広さから日本のメトロポリタン美術館みたいな感じです。2008年に西洋絵画を常設する新館ができ、特別展の時は見られなかった西洋絵画コレクションがいつでも鑑賞できるようになりました。ただ全ジャンルがいつも展示されているわけではありません。西洋絵画以外は、本館で開催する所蔵品による展覧会という形で紹介されることが多いです。

西洋絵画コレクションは、15世紀のイタリア・ルネサンス絵画から20世紀美術まで5世紀にわたる西洋絵画史を、ほぼ一望できる内容となっています。特にルネサンスから18世紀のオールド・マスターの絵画【ドメニコ・ギルランダイオ、ルーカス・クラーナハ(父)、アルブレヒト・アルトドルファー、ジョルジュ・ド・ラトゥール、ピーテル・ブリューゲル(子)、ペーテル・パウル・ルーベンス、アンソニー・ヴァン・ダイク、フランス・ハルス、カナレット、ジャン=オノレ・フラゴナール、フランソワ・ブーシェ...】は日本の美術館ではほとんど所蔵されていない作家ばかりか名品が揃っており、国立西洋美術館のオールド・マスターコレクションを凌駕すると言ってもいいくらいの質です。現在、本館は改修工事の為、2013年3月末まで閉鎖していて新館のみの展示となっています。

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※会場内の画像は、美術館の許可を得て撮影、掲載しております。

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ジョルジュ・ド・ラトゥール《煙草を吸う男》1646年 油彩・カンヴァス 70.8×61.5cm

2003年度、国立西洋美術館に《聖トマス》が収蔵されるまで日本に唯一所蔵されていたラトゥールの名品です。息子の手が入っているとも言われていますが、個人蔵にある模作と比べると出来に雲泥の差があり、巨匠にしか描けない仕事だなと思わせる逸品です。

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ピーテル・ブリューゲル(子)《農民の結婚式》1630年 油彩・板 73.0×104.0cm

ピーテル・ブリューゲル(父)による《農民の結婚式》(1658年頃、ウィーン美術史美術館蔵)のコピー作品の1つです。(父)の絵は屋内での結婚式になっていますが、(子)の本作は戸外になっています。間違い探しみたいですね。ブリューゲル(子)の絵は単なる模作の範囲を超え、西洋美術史にしっかりいるのが面白いですね。(父)以上に作品が存在していて世界中の人が(父)の作品より(子)の作品の方を多く見ていると思います。オリジナルを超えたオリジナル?というのでしょうか。片栗粉(笑)みたいな。不思議な感じです。(父)の作品の希少性、オリジナリティには敵いませんが、 近年は、(子)の作品も億を超えて取引されていて凄いなあと思います。
ピーテル・ブリューゲル(子)の弟、ヤン・ブリューゲル(父)の作品も展示されています。何で親と子、同じ名前をつける習慣があるのでしょうね。ややこしいわ!

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東京富士美術館は、ロココのコレクションも凄いんです。シャルダン、ヴァトー、パテル、ナティエ、ブーシェ
、フラゴナール、ヴィジェ・ルブランなどなど国立西洋美術館は太刀打ちできません。名古屋のヤマザキマザック美術館が開館するまでは、日本で唯一の纏まって見られるロコココレクションでした。日本でロココといえばこの2館が双璧でしょう。ライバルです。バチバチ。画面左のブーシェの大きな作品は約2m四方もあります。近くで見るととても大胆な筆さばきなのがわかるのですが、離れて見ると上手く溶け込んで素晴らしい調和を見せています、元々離れて見るような位置に掛けられていたのでしょうか。

シャルダンは三菱一号館美術館で開催中の「シャルダン展」に貸出中です。

次の部屋にはドラクロワが3点、ターナー2点をはじめ(この時点で凄い)クールベやコロー、ミレーなどの作品が掛けられています。

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そして自慢の印象派の部屋です。今回、モネ1点、ルノワール1点、ピサロ3点、ゴッホ1点などが貸出の為下げられていましたが、マネの傑作《散歩》を中心にブーダン、モネ、ルノワール、セザンヌ、シスレーなどの名品がずらりと並んでいます。現在展示してありませんが、カサットやモリゾなど女性印象派画家を所蔵しているのもこの美術館の凄い所。カイユボットもブリヂストン美術館が今年取得するまでは日本で唯一の所蔵館でした。

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東京富士美術館のシンボル的存在のマネ《散歩》です。黒を嫌った印象派の画家たちとは対照的に黒を上手く操る画家の腕が光る晩年の傑作です。黒と鮮やかな緑、素早い筆さばきが見事です。

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モネ《睡蓮》は朝靄がかかったように白く霞んでいます。印刷物にするのが凄く難しい作品とのことです。
その隣にあるシスレー《牧場の牛、ルーヴシエンヌ》は1874年の第一回印象派展に出品された5点の風景画のうちの1点です。構図、描き方、色彩とどれをとっても素晴らしく後年の荒いタッチの作品とは印象がかなり違います。素晴らしい名品です。

次の部屋は普段、エコール・ド・パリや20世紀の巨匠たちの作品が展示されているのですが、9月23日(日)までウフィツィ美術館 ヴァーチャル・ミュージアムが開催されています。ウフィツィ美術館所蔵のルネサンス時代の名画を実物大でデジタル技術により鑑賞することができる展覧会です。日立のDigital Imaging Systems(DIS)技術だそうです。

複製画の展覧会かよ!と胡散臭いわぁと入場しました。複製画は好きなのですが、銀座で開催されていた「フェルメール 光の王国」の小さいネガから拡大したのか画素数は粗いのはあるし、額の再現が適当であまりにひどくお金を取って公開するものでは決してなかったので憤慨しておりました。

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複製画へ近寄ってみるとまず色彩が超超超綺麗です。印刷のドットが見えない!何これと動揺してしまいました。ただの写真ではなくどの部分を見てもピントがあっていて画面の細かい部分まではっきり写っています。10点あったうちの3点がもはや印刷物に見えない領域に入っていました。

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ボッティチェリ《ヴィーナスの誕生》の中央のヴィーナスの部分も綺麗なのですが、右側にいるホーラの描かれたあたりが印刷物を前にしてるとはとても思えず、驚愕でした。

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2008年に国立西洋美術館に来たティツィアーノ《ウルビーノのヴィーナス》です。国立西洋美術館ではガラス越しでしたが、こちらはガラスなしで(笑)絵の具の凹凸がないので実物と違うのは当たり前ですが、女中が描かれた辺りを凝視していても複製画の感覚が全くなく本物を目の前にしてると思ってしまう出来です。


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一番驚いたのは、ラファエロ「ヒワの聖母」でしょうか。複製画に見えない(泣)衣装の青い布が画面から発光するかのごとく美しく鮮やかな青色をしていて呆然と立ち尽くしてしまいました。どうなってるの?って感じです。逆に怖いわ!!という感じです。作品の横にモニターが設置されていて見所を紹介してくれています。

複製画でこんなに驚いたのは初めてでした。元々描かれた作品の画面との相性があるのか色彩は美しくても複製画とすぐわかるものもありましたが、複製画に見えないのもありましたから本当にこれは面白いです。国立新美術館にフェルメール《牛乳を注ぐ女》が来た時は、小さな画面にも関わらず理解できないほど遠くから見るという悲惨な展覧会でした。この複製画を飾ってもわからないと思います。レオナルド・ダ・ヴィンチ《受胎告知》も美しい色彩でしたが、複製画とわかる画面でした(それを当てる展示ではありません)

ほとんど実物を見たことのない古い時代の作品でしたが、近代の作品でも再現してみてほしいですね。印象派辺りになると筆致が大きく絵の具の凹凸がネックですかね。変にのっぺりしちゃったりして。こんな素晴らしい複製画の展覧会ならもっと見てみたいと思いました。

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感動的再現であります!


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東京富士美術館はナポレオンコレクションも凄いんです。

特集展示 ナポレオンの美術 9月28日(金)~12月24日(日)が間もなく始まります。
ナポレオンの肖像画や皇后ジョゼフィーヌの宝冠などが展示されます。
東京富士美術館では久々の纏まった展示です。お見逃しなく。

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国内で東京富士美術館の所蔵作品による展覧会が2つ開催されます。

兵庫陶芸美術館では9月8日(土)~11月25日(日)まで『日中国交正常化40周年記念 東京富士美術館所蔵 中国陶磁名品展』

福島県文化センターでは9月29日(土)~11月4日(日)まで『愛、命、絆...洋画の巨匠たち~東京富士美術館名作100選』

お近くの方は是非見に行ってみてください。

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