美術展命の男のブログ

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さらば! AIGコレクション

AIGコレクションをご存知でしょうか。AIGスター生命保険株式会社が所蔵していた西洋絵画コレクションのことです。

2006年に長崎県美術館で開催された「フランス印象派からエコール・ド・パリへ」で50点、2008年に富山県立近代美術館で開催された「AIGコレクション―印象派の光、エコール・ド・パリの夢」で56点が公開されました。長崎県と富山県の美術ファンの方には馴染みのあるコレクションなのではないでしょうか。

私は2006年に初めてAIGコレクションの存在を知りました。

クロワゾニスムの手法で描かれたゴーギャン《ブルターニュの少年と鵞鳥》が、2009年夏に東京国立近代美術館「ゴーギャン展」、秋にはBunkamuraザ・ミュージアム「ロートレック・コネクション」、2010年には国立新美術館「没後120年 ゴッホ展 こうして私はゴッホになった」に出品されていたのでご覧になられた方も多いと思います。

そんな名品が2013年11月6日 サザビーズオークション、ニューヨークの印象派&近代美術 イブニングセールに登場しました。

印象派&近代美術 イブニングセール 2013年11月6日 サザビーズ、ニューヨーク

gauguin PETIT BRETON À LOIE
1.ポール・ゴーギャン 《ブルターニュの少年と鵞鳥》 1889年 油彩、カンヴァス 92×73cm
予想落札価格 $6,000,000 — 8,000,000(5億9400万~7億9200万円)
落札価格 $9,685,000(9億5881万円) ※1$=99円換算

monet CHEVAUX À LA POINTE DE LA HÈVE
2.クロード・モネ 《ラ・エーヴ岬の馬》 1864年 油彩、カンヴァス 54×73.5cm
予想落札価格 $1,500,000 — 2,000,000 (1億4850万~1億9800万円)
落札価格 $2,741,000(2億7135万円) ※1$=99円換算

印象派以前に描いた写実的で固有色に忠実な初期作品です。師ブーダンを思わせる海景画です。しっかり描かれた名品だと思うのですが、初期の暗めの画面の為か控えめの価格。国立西洋美術館に欲しい。

monet COUCHER DE SOLEIL À POURVILLE, PLEINE MER
3.クロード・モネ 《満潮のプルヴィルの日没》 1882年 油彩、カンヴァス 54×73.5cm
予想落札価格 $1,500,000 — 2,500,000(1億4850万~2億4750万円)
落札価格 $4,645,000(4億5985万円) ※1$=99円換算

renoi LE REPOS
4.ピエール=オーギュスト・ルノワール 《帽子の傍らで横たわる裸婦、休息》 1895年頃 パステル、アーティストボードに貼った紙 44×55.8cm 
予想落札価格 $800,000 — 1,200,000(7920万~1億1880万円)
落札価格 $1,565,000(1億5493万円) ※1$=99円換算

pissarro CRUE DE LA SEINE, PONT BOIELDIEU, ROUEN
5.カミーユ・ピサロ 《ルーアンの増水したセーヌ川》 1896年 油彩、カンヴァス 54.5×66cm
予想落札価格 $1,500,000 — 2,000,000(1億4850万~1億9800万円)
落札価格 $2,405,000(2億3800万円) ※1$=99円換算

delaunay NATURE MORTE AUX GANTS
6.ロベール・ドローネー 《手袋のある静物》 1906-07年 油彩、カンヴァス 100×81.5cm
予想落札価格 $1,200,000 — 1,800,000(1億1188万~1億7820万円)
不落札

chagall LARBRE ROUGE
7.マルク・シャガール 《赤い樹》 1966年 油彩、カンヴァス 130.2×95.8cm
予想落札価格 $2,500,000 — 3,500,000(1億1188万~1億7820万円)
落札価格 $3,525,000(3億4897万円) ※1$=99円換算

chagall LE VIOLONISTE SOUS LA LUNE
8.マルク・シャガール 《月下のヴァイオリニスト》 1975年 油彩、カンヴァス 135×114cm
予想落札価格 $2,000,000 — 3,000,000(1億9800万~2億9700万円)
落札価格 $2,225,000(2億2027万円) ※1$=99円換算

picasso FEMME ATTABLÉE
9.パブロ・ピカソ 《食卓につく女》 1959年4月10日 油彩、カンヴァス 81×100cm
予想落札価格 $1,500,000 — 2,000,000(1億4850万~1億9800万円)
不落札

ゴーギャンはかなりの高額で落札されました。このイブニングセールではAIGコレクションからモネ、ピサロ、ルノワール、ピカソ、ロベール・ドローネー、シャガールなど9点が登場しAIGコレクションだけで計26億5000万円を超えました。

このイブニングセールの翌日7日には、より安価な作品が揃う印象派&近代美術 デイセールが開催されそちらにもAIGコレクションより出品されました。↓

印象派&近代美術 デイセール 2013年11月7日 サザビーズ、ニューヨーク

renoir JEUNE FEMME TENANT UNE FLEUR (PORTRAIT DE JEANNE SAMARY)
10.ピエール=オーギュスト・ルノワール  《ジャンヌ・サマリーの肖像》 1879-80年頃 パステル、紙 61.6×46.3cm
予想落札価格 $250,000 — 350,000(2475万~3465万円)
落札価格 $425,000(4207万円) ※1$=99円換算

renoir DEUX FILLES DANS UN PRÉ (DEUX FEMMES DANS LHERBE)
11.ピエール=オーギュスト・ルノワール  《草上の二人の女性》 1910年頃 油彩、カンヴァス 47.3×56.8cm
予想落札価格 $700,000 — 1,000,000(6930万~9900万円)
落札価格 $917,000(9078万円) ※1$=99円換算

loiseau LE PONT SUSPENDU À TRIEL
12.ギュスターヴ・ロワゾー 《トリエルのつり橋》 1917年 油彩、カンヴァス 59.3×86 cm
予想落札価格 $100,000 — 150,000(990万~1485万円)
落札価格 $87,500(866万円) ※1$=99円換算

pascin LA PETITE ACTRICE
13.ジュール・パスキン 《小さな女優》 1927年 油彩・木炭、カンヴァス 73×91.7cm
予想落札価格 $60,000 — 80,000(594万~792万円)
不落札

foujita FLEURS
14.藤田嗣治 《トリエルのつり橋》 1940年 油彩、カンヴァス 左右各55.7×38.4cm
予想落札価格 $60,000 — 80,000(594万~792万円)
落札価格 $118,750(1175万円) ※1$=99円換算

デイセールにはさらにルノワール、シャガール、アンリ・アイデン、アルベール・マルケ、アンリ・モレ、アンリ・ルバスク(不落札)、荻須高徳など合わせて15点ほどが出品され3億6000万円超えになりました。この2日間でコレクションのほぼ半分が放出されました。この時、ゴーギャンとモネの作品に目を奪われこんなに沢山の作品が放出されていることに気がつきませんでした。


そして2014年。2月5日のサザビーズ・ロンドンの印象派、近代&シュルレアリスムのイブニングセールにAIGコレクション9点を含む89ロットが競売にかけられました。

翌日のデイセールも合せた2日間のオークションの結果は£215.800.000(360億円!!)※1£=167円換算

印象派、近代&シュルレアリスム イブニングセール 2014年2月5日 サザビーズ、ロンドン

イブニングセールの最大のニュースは、ピサロがとんでもない価格で落札されたことです。

pissarro LE BOULEVARD MONTMARTRE, MATINÉE DE PRINTEMPS
カミーユ・ピサロ 《モンマルトル大通り、春》 1897年 油彩、カンヴァス 65×81cm
予想落札価格 £7,000,000 — 10,000,000(11億6900万~16億7000万円)
落札価格 £19,682,500(32億8697万円!!) ※1£=167円換算

こちらのピサロはAIGコレクションではありません。長らくイスラエル美術館に展示されていた作品です。ピサロの名品がなんと33億円近くで落札されました。恐らく今までのピサロの最高額は春夏秋冬を4枚の横長のカンヴァスに描いた物で2007年のクリスティーズオークションで$14,601,000(16億円)※1$=111円換算 で落札された物だったと思います。30億円を超えるピサロなんて史上初!!今までは16億円の作品は例外中の例外で、名品でも3~5億円のイメージがあったのでびっくりです。この記録を破るピサロ作品は今後出るのでしょうか。

caillebotte LE PETIT BRAS DE LA SEINE, ARGENTEUIL
15.ギュスターヴ・カイユボット 《セーヌ河》 1897年 油彩、カンヴァス 65×81cm
予想落札価格 £400,000 — 600,000(6680万~1億200万円)
落札価格 £1,082,500 (1億8077万円) ※1£=167円換算

gogh LHOMME EST EN MER
16.フィンセント・ファン・ゴッホ 《夫は漁に出ている》 1889年 油彩、カンヴァス 66×51cm
予想落札価格 £6,000,000 — 8,000,000(10億~13億3600万円)
落札価格 £16,882,500(28億1937万円!!) ※1£=167円換算

※参考画像 右:ヴィルジニ・ドゥモン=ブルトン 《夫は漁に出ている》 1889年 油彩、カンヴァス 161×135cm 個人蔵

この25年にオークションに出たゴッホ作品中、第6位の記録だそうです。
ゴッホは、1889年の後半にかけてミレーやドラクロワ作品の模写を積極的に描いていますが、こちらは同年のサロンに出品されたヴィルジニ・ドゥモン=ブルトンの作品を模写した作品。ヴィルジニ・ドゥモン=ブルトン(1859~1935)は女性画家で、父親は農民画の傑作を残したジュール・ブルトンです。

monet AU BORD DU FJORD, PRÈS CHRISTIANIA
17.クロード・モネ 《クリスティアニア近くのフィヨルドの岸辺》 1895年 油彩、カンヴァス 65×100.5cm
予想落札価格 £1,200,000 — 1,800,000(2億400万~3億600万円)
落札価格 £2,154,500(3億5980万円) ※1£=167円換算

monet PAVOTS ROUGE ET ROSE
18.クロード・モネ 《赤とピンクの芥子》 1883年 油彩、カンヴァス 119.5×37cm
予想落札価格 £900,000 — 1,200,000(1億5000万~2億400万円)
落札価格 £986,500(1億6474万円) ※1£=167円換算

※参考画像 右:クロード・モネ 《白い芥子》 1883年 油彩、カンヴァス 128x37cm 日本、個人蔵

モネは1882年から85年に画商ポール・デュラン=リュエル邸のサロンの扉装飾36枚を描きました。1つの扉に大中小の6つが配置され6枚のドアを飾りました。白黒写真を見るとAIGコレクションの《赤とピンクの芥子》は、《白い芥子》と対になっていたのがわかります。他の作品の多くは沢山の花が生けられた花瓶が画面からはみ出し切り落とされた構図となっており単体で見ると不自然な絵に写るのですが、こちらは対象が画面に収まっており、単体で見た時にも非常に美しい効果を生んでいます。扉の写真をよく見ると作品のサイン部分より上が切り取られているのがわかります。実際はもっと長かったのですね。ジャポニスムを感じずにはいられない作品です。共に日本にありましたが、並べて見ることは叶いませんでした。

monet LE FORT DANTIBES
19.クロード・モネ 《アンティーブの城砦》 1888年 油彩、カンヴァス 59.5×80cm
予想落札価格 £450,000 — 650,000(7515万~1億855万円)
落札価格 £1,118,500(1億8678万円) ※1£=167円換算

degas DEUX DANSEUSES AU FOYER
20.エドガー・ドガ 《楽屋の二人の踊り子》 1895年 パステル、板に貼った賽の目紙 52×44.5cm
予想落札価格 £500,000 — 700,000(8350万~1億1690万円)
落札価格 £506,500(8458万円) ※1£=167円換算

renoir JEUNE FEMME AU CHAPEAU DE PAILLE
21.ピエール=オーギュスト・ルノワール 《麦藁帽子の娘》 1890年頃 油彩、カンヴァス 56×46cm
予想落札価格 £1,200,000 — 1,800,000(2億400万~3億600万円)
落札価格 £1,706,500(2億8498万円) ※1£=167円換算

この作品は1990年5月のサザビーズ、ニューヨークでは$5,550,000(8億5470万円!!) ※1$=154円換算
で落札されています。これがバブル価格という物ですね。今回の落札額は3分の1になっています。ルノワールの名前だけで高値になってしまった例です。

cross MÉDITERRANÉE PAR VENT DEST
22.アンリ・エドモン・クロス 《東風の拭く地中海》 1902年 油彩、カンヴァス 60×81.5cm
予想落札価格 £450,000 — 650,000(7515万~1億855万円)
落札価格 £434,500(7256万円) ※1£=167円換算

chagall LE MYTHE DORPHÉE
23.マルク・シャガール 《オルフェウスの神話》 1977年 油彩、テンペラ・カンヴァス 97×145cm
予想落札価格 £1,200,000 — 1,800,000(2億400万~3億600万円)
落札価格 £998,500(1億6674万円) ※1£=167円換算

AIGコレクション9点の結果は43億2000万円超え!

続いて翌2月6日の印象派&近代美術 デイセール

印象派&近代美術 デイセール 2014年2月6日 サザビーズ、ロンドン

monet HIVER À GIVERNY
24.クロード・モネ 《ジヴェルニーの冬》 1886年 油彩、カンヴァス 60×81.5cm
予想落札価格 £350,000 — 500,000(5845万~8350万円)
落札価格 £386,500(6504万円) ※1£=167円換算

monet COUR DE FERME
25.クロード・モネ 《農家の中庭》 1878年 油彩、カンヴァス 61.2×50cm
予想落札価格 £300,000 — 400,000(5010万~6680万円)
落札価格 £866,500(1億4470万円) ※1£=167円換算

renoir LENFANT À LA POMME (MELLE DE LA POMMERAY)
26.ピエール=オーギュスト・ルノワール 《子どもとりんご》 1876年頃 油彩、カンヴァス 32.8×41.3cm
予想落札価格 £250,000 — 350,000(4175万~5845万円)
落札価格 £410,500(6855万円) ※1£=167円換算

renoir GEORGETTE CHARPENTIER DEBOUT
27.ピエール=オーギュスト・ルノワール 《立ち姿のジョルジェット・シャルパンティエ》 1880年 油彩、カンヴァス 35.5×27.1cm
予想落札価格 £120,000 — 180,000(2004万~3006万円)
落札価格 £104,500(1745万円) ※1£=167円換算

ブリヂストン美術館所蔵の《すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢》は、1876年当時4歳の時の肖像画で、こちらは1880年当時7歳に成長したジョルジェットの姿です。メトロポリタン美術館所蔵の《シャルパンティエ夫人と子どもたち》1878年には女の子の恰好をした弟ポールも一緒に描かれていますが、サントリーコレクションにポールの胸像をパステルで描いた愛らしい《ポール・シャルパンティエの像》1878年が所蔵されています。関連作品を並べた展示が見てみたい!

renoir PAYSAGE À CAGNES
28.ピエール=オーギュスト・ルノワール 《カーニュの風景》 油彩、カンヴァス 32.8×41.3cm
予想落札価格 £180,000 — 250,000(3006万~4175万円)
落札価格 £410,500(6855万円) ※1£=167円換算

pissarro COIN DU JARDIN À ERAGNY
29.カミーユ・ピサロ 《果樹園の収穫、エラニー》 1899年頃 油彩、カンヴァス 38.5×46.5cm
予想落札価格 £120,000 — 180,000(2004万~3006万円)
落札価格 £182,500(3047万円) ※1£=167円換算

redon PENSÉES DANS UN VASE
30.オディロン・ルドン 《花瓶のパンジー》 パステル、紙 62×48.2cm
予想落札価格 £90,000 — 120,000(1503万~2004万円)
不落札

mondrian FARM BUILDING AND WELL
31.ピエト・モンドリアン 《農家と井戸》 1906-07年頃 油彩、厚紙 77.9×65.3cm
予想落札価格 £60,000 — 80,000(1002万~1336万円)
不落札

laurencin LA LOGE
32.マリー・ローランサン 《桟敷席》 油彩、カンヴァス 33×41cm
予想落札価格 £12,000 — 18,000(200万~300万円)
落札価格 £16,250(271万円) ※1£=167円換算

bonnard CUEILLETTE DES CERISES
33.ピエール・ボナール 《果実摘み》 1899年頃 油彩、カンヴァス 128×152.3cm
予想落札価格 £250,000 — 350,000(4175万~5845万円)
不落札

6枚組の室内装飾画の1点

lebasque LESCARPOLETTE
34.アンリ・ルバスク 《ブランコ》 1906年 油彩、カンヴァス 90×117cm
予想落札価格 £120,000 — 180,000(2004万~3006万円)
落札価格 £290,500(4851万円) ※1£=167円換算

kisling PAVOTS
35.モイズ・キスリング 《芥子》 1931年 油彩、カンヴァス 92×65cm
予想落札価格 £50,000 — 70,000(835万~1169万円)
落札価格 £116,500(1945万円) ※1£=167円換算

foujita LES DAHLIAS
36.藤田嗣治 《ダリア》 1921年 油彩、カンヴァス 46×38cm
予想落札価格 £40,000 — 60,000(668万~1002万円)
落札価格 £158,500(2646万円) ※1£=167円換算

foujita JEUNE FEMME JAPONAISE EN KIMONO
37.藤田嗣治 《着物姿の日本娘》 1934年 ペン、墨、水彩・和紙 92.4×64.6cm
予想落札価格 £18,000 — 25,000(300万~417万円)
落札価格 £37,500(626万円) ※1£=167円換算

このセールには他にもマクシミアン・リュース、ギュスターヴ・ロワゾー、藤田嗣治、荻須高徳などが出品され計20点ほどが5億円超えで落札されました。

4回のセールで50数点のコレクションは不落札もありましたが、約78億円!!で売却されました。

2008年に富山県立近代美術館で展示された際、見に行こうと思ったのですが、国内コレクションだからいずれ東京でも見られるだろうと行かなかったのは間違いでした...。

画像で紹介した全てのAIGコレクションは、1993年に取得されたというのを今回知りました。1993年以外に取得しているのは画像では紹介していないギュスターヴ・ロワゾー、ラウル・デュフィ、荻須高徳などほんの数点だけのようです。てっきり長い年月をかけて蒐集したのかと思っていたのですがそうではないよう。これほどのコレクションをなぜ同じ年に取得しているのだろうと思ったのですがどうやらバブルのニオイが。

16.フィンセント・ファン・ゴッホ 《夫は漁に出ている》とヴィルジニ・ドゥモン=ブルトン 《夫は漁に出ている》の2点の作品は、株式会社日本オートポリス蔵でした。1989年、パリのオークション・ハウスと衛星中継で結ばれた東京会場でピカソの青の時代の名品《ピエレットの婚礼》を約73億円で落札したことで有名な不動産開発業者の鶴巻智徳氏のコレクションです。モネ、ルノワール、ドガらの印象派からエコール・ド・パリ、マグリット、デルヴォーなどシュルレアリスムのコレクションがありました。1991年大分県にサーキット場をはじめとする複合レジャー施設「オートポリス」をオープンさせ、オートポリスミュージアムも開館しますが、バブル崩壊で事業資金の借り入れ先へ返済不能となり、《ピエレットの婚礼》は、消費者金融レイクに絵画担保融資の担保として差し押さえられてしまいました。オートポリスは複数の機関から借り入れしておりフィンセント・ファン・ゴッホ 《夫は漁に出ている》は、千代田生命保険に担保として取られています。それが1993年です。

picasso pierrette
※参考画像 パブロ・ピカソ 《ピエレットの婚礼》 1905年 油彩、カンヴァス 114×194.6cm 個人蔵

鶴巻智徳氏は《ピエレットの婚礼》の入手時、支払いの金策に苦労し、大手ノンバンクのアイチの社長、森下安道氏に融通してもらいオークション会社に支払いを終えています。

森下安道氏はアスカ・インターナショナルという美術事業も展開しており、青山画廊を東京の南青山に構えていました。アスカ・インターナショナルが発行した取扱い作品のカタログに以下の6点が収録されていました。
3.クロード・モネ 《満潮のプルヴィルの日没》、4.ピエール=オーギュスト・ルノワール 《帽子の傍らで横たわる裸婦、休息》 、7.マルク・シャガール 《赤い樹》、26.ピエール=オーギュスト・ルノワール 《子どもとりんご》、34.アンリ・ルバスク 《ブランコ》、35.モイズ・キスリング 《芥子》

この6点はオートポリスコレクションに入ったかはわかりません。鶴巻智徳氏が森下安道氏から購入したかもしれませんし、アスカ・インターナショナルも同じ運命を辿り、千代田生命保険が取得したとも考えられます。

AIGスター生命保険の前身は千代田生命保険です。現在、愛媛県美術館に収蔵されているピエール・ボナール《アンドレ・ボナール嬢の肖像》もかつてオートポリスコレクションにあり、千代田生命保険が担保に取り、後に愛媛県に売却されています。

2000年に千代田生命は破綻し、その後2001年にAIGスター生命保険株式会社へ包括移転となったわけですが、多くの高額作品は2000年以前に売却されたようです。1993年に取得したこれらの作品が持ち続けられ2006年の長崎県美術館の公開まで秘蔵され続けてきたのは謎です。そして冒頭のゴーギャン《ブルターニュの少年と鵞鳥》が頻繁に人目に出るようになったのも謎です。今まで売却しなかったのは21.ピエール=オーギュスト・ルノワール 《麦藁帽子の娘》の作品のように当時の評価額が高すぎて今手放せば大損になるので手放すに手放せなかったということだったのでしょうか。

今回の思い切った売却はプルデンシャル・ファイナンシャルが買収し、2012年1月にジブラルタ生命保険へ吸収合併されたことが大きく関わっていると思います。いつまで持ってるんだ早く売りなさいってことだったのでしょうか。

2006年、突如出現したと思っていたAIGコレクションは、実は不良債権だったことを知り大変驚いた一件でした。バブルが崩壊して20年以上経つのにこのような形でバブルの遺産を目にするとは。日本にはまだまだ知られざる西洋名画が隠れているのでしょうか。

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