美術展命の男のブログ

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2015年 美術館の新収蔵 フェルメール、ルノワール、ルソー

タイトルに2015年とありますが、今年にこだわらず近年の収蔵で気になった美術品について書きたいと思います。

平成26年度に国立西洋美術館に収蔵された作品が、3月17日より常設展で展示されました。

今年、一番驚いた新収蔵作品は、国立西洋美術館に寄託されたフェルメールに帰属《聖プラクセディス》でしょう。

ネットでまず知ったのですが、できたら常設展へ行って初めて知りたかった(笑)。ネットで知って鳥肌が立つくらい驚いたので美術館へ行って初めて知ったら倒れるくらい驚いたでしょうね。

Vermeer Saint Praxedis
ヨハネス・フェルメールに帰属 《聖プラクセディス》 1655年 油彩・カンヴァス 101.6 x 82cm 個人蔵、国立西洋美術館寄託

2014年のオークションで日本人が落札し、同年秋に国立西洋美術館に寄託の申し出があったとのこと。感謝感謝です。

クリスティーズオークション、ロンドン  2014年7月8日 オールドマスター&イギリス絵画 イブニングセール

予想落札価格
£6,000,000 - £8,000,000 ($10,284,000 - $13,712,000) 10億4400万~13億9200万円
落札価格
£6,242,500 ($10,687,160) 10億8600万円 £1=174円換算

この作品は、2000年に大阪市立美術館で開催された「フェルメールとその時代」展に出品されていました。残念ながらこの展覧会を見に行くことができませんでしたが、松永 真による美しいデザインのチラシは大事に取ってあります。

「フェルメールとその時代」展には、フェルメール作品は、《青いターバンの少女(真珠の耳飾りの少女)》、《地理学者》、《聖プラクセディス》、《リュ-トを調弦する女》、《天秤を持つ女》の5点が出品されました。

私が初めて見たフェルメール作品は、1999年のワシントン・ナショナル・ギャラリー展に出品された《手紙を書く女》。2000年の展覧会を機に国内のフェルメール人気は大爆発して、それ以降凄いペースで様々な作品が初来日を果たしています。日本にいながらフェルメール全作品を見るのが私の夢ですが(貸出不可、門外不出作品もありますが希望は捨てない)、2000年の好機を逃したために、スタートでこけた感じで後悔していました。

幸いなことに、2000年の時の5点のうち《真珠の耳飾りの少女》、《地理学者》、《リュ-トを調弦する女》は、それ以降の様々な展覧会で再来日してくれて見ることができました。あとは《聖プラクセディス》、《天秤を持つ女》で巻き返せる!と思っていたら、国立西洋美術館の常設展で《聖プラクセディス》を見られる日が来るなんて!

《聖プラクセディス》で19点目のフェルメール鑑賞となりました。実物は想像以上に素晴らしい作品でした。まずサイズがでかい!凄い迫力。そして衣装の赤というかピンクというか鮮やかな色彩がとても美しいです。そして穏やかな表情の顔もいい。

解説がとても興味深いものでした。

この作品が、真作か他の作家のものかという議論がとても面白い。初期作品で、イタリア人画家、フェリーチェ・フィケレッリの作品をフェルメールが模写したという考えがある一方で、この作品こそがフェリーチェ・フィケレッリのオリジナルであるという考えもあったり、左下の署名と年紀「Meer 1655」は、フェルメールが作品にしばしばMeerの語を伴う署名を記していたから彼のものだという考えもあれば、筆跡が異なるという意見やヨハネス(ヤン)・フェルメール、またはファン・デル・メールという名の画家は17世紀のオランダに複数存在が確認できるなど真相が掴めないのがもどかしいけども面白い。

オークションに際し行われた顔料の科学調査では、鉛白の成分が、フェルメールの初期作品《ディアナとニンフたち》に使われている鉛白の成分と極めて類似していると結果が出たものの真作の証拠にはならないとのこと。あと何をすれば証明されるのでしょうか。真実が知りたい。ような怖いような。

真作かどうかをめぐる議論や日本人が落札し、国立西洋美術館の常設展に展示されるといったことすべてがなんだかドラマチックな展開で凄く有り難いものを見せていただいてる感じです。

nmwa Andrea del Sarto The Madonna and Child
アンドレア・デル・サルト 《聖母子》 1516年頃 油彩・板(ポプラ) 89 x 66.6cm 国立西洋美術館蔵 2014年度購入

2014年に東京都美術館で開催された「ウフィツィ美術館展」や三菱一号館美術館で開催中の「プラド美術館展」に作品が展示されている画家ですが、国立西洋美術館にもこの画家の作品が所蔵されることになるとはすごいですね。拍手。

額の修復中で4月27日(火)より展示されました。

購入額が7億1025万5000円という点に驚きです。そんなにするんですね。2012年に購入したセザンヌの約8億円に迫る勢いです。
図柄が同じ作品がカナダ国立美術館に収蔵されているとのことでいつか並べて見られたら嬉しいです。

nmwa Domenico Puligo
ドメニコ・プリーゴ 《アレクサンドリアの聖カタリナを装う婦人の肖像》 1520年代 油彩・板 国立西洋美術館蔵

こちらは2014年度、寄贈作品になります。この画家もウフィツィ美術館展に出品されていました。国立西洋美術館すごいなあ。画家名は覚えていなかったのですが、ウフィツィ美術館に出品されていた人物の顔が印象に残っていたのでこの作品を見た時にあっと思ったら同じ画家でした。アンドレア・デル・サルトの工房において活躍したと伝えられる画家とのこと。

Juan van der Hamen y León, Still Life with a Basket of Fruit and Game Fowl c. 1621
フアン・バン・デル・アメン 《果物籠と猟鳥のある静物》 1621年頃 75.4 x 144.5cm 油彩・カンヴァス

17世紀初頭のマドリードで活躍し、ボデゴンと呼ばれるスペインの静物画を代表する画家による最も大きな静物画の1つ。美術館ニュースによりますとスペインの古典絵画として25年ぶりの4作目の収蔵だそうです。初期の野心作と位置づけられるとのことでプラド美術館じゃなくて日本に収蔵されるなんてすごい!プラド美術館展にもこの画家の《スモモとサワーチェリーの載った皿》が来ています。本当、国立西洋美術館どうしちゃったの!?(笑)  

こちらの購入額は3億4099万2000円。いいお値段ですね。

この画家の最大のパトロンは、スペイン国王フェリペ4世の重臣で美術コレクターとして知られた初代レガネース侯爵で、ヴァン・ダイクによる肖像画が隣に展示されていますと解説を見た時、ただ凄いと感動しました。購入のアンドレア・デル・サルトと寄贈のドメニコ・プリーゴ、それからフアン・バン・デル・アメンと既に収蔵されていたこの画家のパトロンの肖像の出合い。大変興味深い収蔵の組み合わせを見られた年だったと思います。今後もこんな感じでコレクションが広がっていくとに期待したいです。

momak yasui sotarou
安井曽太郎 《孔雀と女》 1914年 油彩・カンヴァス 88.5×116.0cm 京都国立近代美術館蔵

こちらも平成26年度の収蔵品ですが、ご紹介。購入額は1億4040万円。

8年にわたるパリ留学中に制作された作品で初期の代表作になる大作です。こんな作品が昨年まで個人蔵だったんだぁと変なところに驚きました。

京都国立近代美術館、平成27年度第1回コレクション展(2015年3月27日~5月31日)にて展示されました。

現在、ドイツのボンにある、ドイツ連邦美術館で開催中の「印象派への日本の愛―モネからルノワールまで」展(2015年10月8日~2016年2月21日)に貸出されています。

uehara rousseau les parants c1909
アンリ・ルソー 《両親》 1909年頃 油彩・板 17.0 x 20.5cm 上原近代美術館蔵

2015年3月に開館15周年を迎えた上原近代美術館で、素敵な新コレクションが2点公開されました。まずは、アンリ・ルソーの《両親》。今回の収蔵で初めて存在を知った作品で、画集でもネットでも見かけたことがなかったので私にとっては新発見!といった感じでした。とても小さくて可愛らしい作品です。ルソーは1910年に66歳で亡くなるので最晩年に描かれた物ですが、描かれた両親は若々しく見えるので写真を見て描いたのでしょうか。

この作品はかつて藤田嗣治が所蔵していました。藤田の死後も遺族が所蔵していましたが、大正製薬株式会社の会長・上原昭二氏のコレクションになり昨年12月、上原氏の米寿記念として上原近代美術館に寄贈されたとのことです。

uehara Albert Marquet Neige et ciel vert, Paris (Le Pont Neuf)
アルベール・マルケ 《冬のパリ(ポン・ヌフ)》 1947年頃 油彩 61.5 x 50.0cm
上原近代美術館蔵

もう1点は、マルケ 《冬のパリ(ポン・ヌフ)》 。同じ視点で横長のキャンヴァスに描いた作品が、ひろしま美術館やサントリーコレクション、日本テレビ放送網株式会社にも収蔵されています。サントリーは昼の眺めと夜の眺めの両方を所蔵していています。

henri rousseau Les promeneurs
アンリ・ルソー 《散策者たち》 1891年頃 油彩・カンヴァス 50.2 x 60.8cm ハーモ美術館蔵

ボナムスオークション、ロンドン  2015年2月3日 印象派&モダンアート

予想落札価格 £180,000 – 280,000 (3204万~4984万円)
落札価格 £362,500 (6688万円 手数料込) £1=178円換算

ハーモ美術館もアンリ・ルソーを新収蔵。2014年 新収蔵 ハーモ美術館/メナード美術館/諸橋近代美術館...の記事で7点のアンリ・ルソーを収蔵と紹介しましたが、今春、新たに《散策者たち》を入手しました。8点目のルソーです。ポーラ美術館の8点と肩を並べることになりました。代理人を通して約8000万円で落札したとネットニュースで紹介されていたので間に人を挟むと色々となって高くなっていくのでしょうか。

また何ともかわいくておかしな絵です。散策者たちの足が描かれていませんが、草の向こう側にいるのでしょうか。でも一番右の人は明らかに草に突っ込んでますよね(笑)。犬?もかわいいです。表面の汚れを落とし、焼けたニスを塗り直し修復、額も補修を受け、7月17日から一般公開が始まりました。

renoir Jeune fille dans les fleurs or Femme au chapeau blanc
ピエール=オーギュスト・ルノワール 《白い帽子の女》 1895年頃
油彩・カンヴァス 65.1 x 54.2 cm 三甲美術館蔵

岐阜県の三甲美術館にルノワールの女性像が新収蔵されました。ルノワール作品の収蔵は、1910~11年《裸婦》、1916~17年の《坐せる浴女》に続く3点目となります。真珠色の時代といわれる時期の素晴らしい作品です。個人蔵の作品を美術商を通じて購入し、購入額は非公開ですが、2年前にクリスティーズオークションに登場しています。

クリスティーズオークション、ニューヨーク  2013年5月8日 印象派&モダンアート イブニングセール

予想落札価格 $2,000,000 - $3,000,000 (1億9800万~2億9700万円)
落札価格 $2,139,750 (2億1183万円) $1=99円換算

この作品はバブル期、ピカソの青の時代の《ピエレットの婚礼》を約73億円で落札したことで有名な株式会社日本オートポリスのコレクションにありました。バブル崩壊とともに多くの作品は担保として差し押さえられてしまいましたが、この作品もそういった道を歩んだのでしょうか。2013年のオークションの際に公表された来歴は1990年で止まっており、それ以降記述がありませんでした。実際は何人かの手に渡っていたかもしれません。巡り巡ってかどうかわかりませんが、日本の美術館の収蔵となり一般公開がされたのは大変嬉しいことです。

hikari museum renoir Banks of the River
ピエール=オーギュスト・ルノワール 《柳のある川の風景》 1874年 光記念館蔵

岐阜県にある光記念館では、ルノワールの《柳のある川の風景》が、2月27日に初公開されました。1874年といえば第1回印象派展が開かれた記念すべき年です。国内にある1874年に描かれた作品は、吉野石膏株式会社より山形美術館に寄託されている《犬を膝に抱いて読書する少女》くらいなので非常に貴重です。素早いタッチ、描きかけのような画面と印象派の典型的な画面でありながら、この先のルノワールの画風とはまた違ったものでこの時期特有のルノワールの作品になっています。

東京、八王子にある村内美術館のホームページに8月29日、驚くべきニュースがアップされました。ルノワールとシスレーの作品を収蔵したというのです。2013年にバルビゾン派や印象派、エコール・ド・パリをはじめほとんど全部といっていいほどの西洋絵画コレクションを手放されたので新たな印象派絵画の新収蔵は何とも不可解なニュースでありました。館長による新たな購入?寄託作品?

murauchi renoir gabrielle and jean
ピエール=オーギュスト・ルノワール 《ジャン・ルノワールとガブリエル》 1896年
油彩・カンヴァス 村内美術館蔵

happy_01jan murauchi
ルノワール 《ジャン・ルノワールと一緒のガブリエルと少女》 1895-96年 油彩・カンヴァス
旧村内美術館蔵

ルノワールの《ジャン・ルノワールとガブリエル》は、かつて収蔵していた《ジャン・ルノワールと一緒のガブリエルと少女》の関連作というのがなんとも面白いです。

renoir gabrielle and jean orangerie washington
左:《ガブリエルとジャン》 1895-96年 オランジュリー美術館
右:《子どもとおもちゃ-ガブリエルと画家の息子、ジャン》 1895-96年 ワシントン・ナショナル・ギャラリー

renoir gabrielle and jean pastel
パステルによる作品

sisley Le chemin de Butte, Retour en forêt
アルフレッド・シスレー 《森へ続く道》 1889年 油彩・カンヴァス 38.3 x 55.8 cm
村内美術館蔵

シスレーもかつて村内美術館に収蔵されていましたが、2000年前後にはコレクションから放出されていたので久々に村内美術館にシスレーが帰ってきたといったところでしょうか。とても明るく軽やかな作品です。もう少し早い時期に収蔵されていたら練馬区立美術館のシスレー展から貸出依頼があったかもしれませんね。

このシスレーは最近、立て続けにニューヨークと日本のオークションに出品されています。

クリスティーズオークション、ニューヨーク  2013年11月6日 印象派&モダン デイセール
予想落札価格 $400,000 - $600,000 (3920万~5880万円)
落札価格 $605,000 (5929万円) $1=98円換算

シンワアートオークション 2015年3月28日
予想落札価格 ¥50,000,000 - ¥70,000,000 
落札価格 ¥80,000,000 

kumamoto kisling
モイーズ・キスリング 《ル・ベック少年の肖像》 1926年 熊本県立美術館蔵

熊本県立美術館は、平成26年にモイーズ・キスリング 《ル・ベック少年の肖像》を収蔵しました。美術館コレクション 第Ⅰ期〈特集〉藤田嗣治とフランスの画家たち で公開されました。

キスリングの作品は、女性像が圧倒的に多いと思うので貴重な少年像です。キスリングの描く人物は、どれも無表情でうつろな目をしてどこか寂しげでありますが、この少年もそんな感じです。ソファに座っているようですが、ソファの緑が木々のようにも見えて不思議な背景になっています。

展示が終わってから開催を知ったのですが、見たかったぁ。展示されたリストを見て藤田嗣治のコレクションを少なくとも11点は所蔵していることを今回初めて知りました。藤田嗣治は、幼少期の10年を熊本で過したとのことで積極的に蒐集しているのですね。リストには1923年から1966年までと幅広い年代をコレクションしていることがわかります。

2013~2014年に国内を巡回した「レオナール・フジタとパリ 1913-1931」に個人蔵から出品されていました。この展覧会も見たかった...。熊本県立美術館は会場の1つでした。開催中か終了後に所蔵家から購入したのでしょうか?

熊本県立美術館は、藤田嗣治の1923年の《ヴァイオリンを持つこども》という、こどもの全身像の作品を所蔵しています。今回のエコール・ド・パリの画家の「こどもの肖像画」の収蔵は、非常に有意義な新収蔵であったと思います。

キスリングは既に《座る若い裸婦》 1932年と《褐色の髪の女》 1948年(寄託)があるので3点目の収蔵になります。

そろそろキスリング展が見たくなってきた。キスリング展はなぜか海外から借用してくるものを中心に構成されることが多いのですが、国内にもかなりの数が所蔵されていると思うのでぜひまとめて見てみたいものです。

メナード美術館は、今年も新たに加わったコレクションを様々な展覧会で公開しました。5月より開催された「みどり図鑑」ではエミール・ノルデ《森の小道》が初公開され、10月より開催された「メナード美術館コレクション展2015 美しいとき 美しいひと」では、3作品目の収蔵作品になるマグリットと藤田嗣治の1927年の乳白色の肌の《横たわる裸婦》が初公開されました。

menard magritte Le banquet
ルネ・マグリット 《宴》 1957年 グアッシュ・紙 17.7 × 23.5 cm メナード美術館蔵

ise magritte 1951
ルネ・マグリット 《宴》 1951年 グアッシュ・紙 26.5 ×35.0 cm イセ文化基金コレクション

《宴》は、似たようなシチュエーションで柵や壁が微妙に違う作品がいくつもあります。イセ文化基金が似た作品を所蔵しています。

来年の展覧会スケジュールが発表されました。2016年に開催する展覧会でヘンリー・ムーア《母と子(直立)》、モーリス・ユトリロ《教会》が初公開されるそうです。

パナソニック 汐留ミュージアムは

《アクロバット(軽業師 Ⅶ)》 1913年頃 油彩、水彩・紙(麻布で裏打ち)
《秋の夜景》 1952年 油彩・紙(麻布で裏打ち)

ルオーの油彩2点を新収蔵しました。大きめな作品になります。出光美術館、清春白樺美術館のルオーコレクションで構成されたルオー展が見てみたい。

Tokyo Metropolitan Teien Art Museum laurencin

変わった新収蔵品では、東京都庭園美術館にマリー・ローランサン、アンドレ・グルー制作の椅子が収蔵されました。

背もたれの部分をローランサンが描いたとのこと。1925年にパリで開かれた現代産業装飾芸術国際博覧会、通称アール・デコ博の「フランス大使館」というパヴィリオンを飾っていた家具です。アール・デコの精華、東京都庭園美術館に収蔵されるとは素晴らしい! 

9月に国立西洋美術館の常設展へ行くと2階にセザンヌの油彩が2点並んで展示されていました。

nmwa 2cezanne

《ポントワーズの橋と堰》が2012年度に収蔵され、2013年に初展示されてから展示替えされる度に常設展に足を運んでいましたが、隣り合って展示されるのを見ることができずにいました。遂に隣り同士で展示されたのですね。やっとこの光景を見ることができた。感動。どちらも素晴らしい。

2016年はどんな新たな作品たちが美術館に現れるのでしょうか。楽しみ!

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2014年 新収蔵 ハーモ美術館/メナード美術館/諸橋近代美術館...

前回の国立美術館の新収蔵作品に続きまして、今回は私立美術館に新収蔵された西洋美術作品について書きます。日本全国の美術館で新収蔵作品があったと思いますが、気になった美術館や作品たちを紹介します。

harmo Banlieue
新収蔵
アンリ・ルソー 《郊外》 1896年頃 油彩・カンヴァス 49.1 x 65 cm ハーモ美術館蔵

クリスティーズオークション、ニューヨーク 2013年11月3日
予想落札価格 $700,000 - 1,000,000 ($1=98円 6860万~9800万円)
落札価格 $1,085,000 (1億633万円) 

こちらは2013年の11月のオークションで入手した物です。木の葉が全てないので冬の景色でしょうか。枝の描写が何だかおどろおどろしい感じですが、釣りをしたり散歩する小さな人物たちの描写が可愛らしい作品です。

harmo BORDS DE LA MARNE (LAUTOMNE, VUE DE DAMERY-BOURSAULT)
アンリ・ルソー 《マルヌ河畔(秋、ダムリー・ブールソールの眺め)》 1906年
油彩・カンヴァス 40.0 × 52.1 cm ハーモ美術館蔵

こちらの作品は、2011年にコレクションに加わりました。この作品の新収蔵を知った時、とても美しいルソーだと興奮しました。大きな空と風景に極端に小さな人物を配した作品はどこか憂愁が漂っていることが多々あるのですが、この作品は空がぐっと上に追いやられ秋の色鮮やかな木々が、画面の中心を支配していてとても明るく穏やかな作品で小さな人物たちも寂しい感じがしません。左から船、右から汽車が来る動きのある構図も面白く、汽車の煙が一続きなのがかわいくて面白いです。

harmo landscape with a fisherman
アンリ・ルソー 《釣り人のいる風景》 1886年頃 油彩・カンヴァス 23.5 × 37.0 cm
ハーモ美術館蔵

以前、青山ユニマット美術館に収蔵されていた《釣り人のいる風景》は、2010年にハーモ美術館に収蔵され2011年に初披露されました。この時、同じく新収蔵のグランマ・モーゼス3点、アンドレ・ ボーシャン1点、アンリ・オトラン6点も一緒に公開されました。

ハーモ美術館は1990年の開館以来長いこと4点のアンリ・ルソーを所蔵していましたが、ここ数年一気に収集が進み現在7点のルソーを所蔵しています。以下4点は、諏訪湖畔の美術館に20数年住み続けている作品たちです。

harmo Bouquet de Fleurs 1910
アンリ・ルソー 《花》 1910年 油彩・カンヴァス 46.0 x 35.0 cm ハーモ美術館蔵

このような花瓶に入った花を描いた作品は24点確認されているようで、日本では唯一の所蔵です。日本にあるのが奇跡といえるルソーだと思います。

harmo Le Verger 1886
アンリ・ルソー 《果樹園》 1886年 油彩・カンヴァス 38.0 x 56.0 cm ハーモ美術館蔵

画家の生前、ルソーの理解者は少数でした。その中の1人であるピカソは彼を賞賛しています。この作品にはピカソの裏書があるとのことです。

harmo La Carmagnole 1893
アンリ・ルソー 《ラ・カルマニョール》 1893年 油彩・カンヴァス 20.5 × 75.0 cm
ハーモ美術館蔵

1893年に行われたバニョレ市役所の装飾壁画コンクールに応募するために描かれた作品です。作品の性質上からか国内では他に見ないタイプの珍しい作品です。落選しましたが、ルソーの色彩感覚や画面の構成力の素晴らしさが分かります。

henri rousseau View Of Parc De Montsouris
左:アンリ・ルソー 《モン・スーリ公園の眺め》のための下絵 1910年 油彩・厚紙
21.5 × 16.0 cm ハーモ美術館蔵

右:参考画像 アンリ・ルソー 《モン・スーリ公園の眺め》 個人蔵

ルソー以外の素朴派の画家たちのコレクションも凄いんです。カミーユ・ボンボワ油彩20点、アンドレ・ボーシャン油彩20点、ルイ・ヴィヴァン油彩5点、グランマ・モーゼス油彩6点、刺繍1点、リトグラフ1点と驚異的な数です。日本一の素朴派コレクションはハーモ美術館で間違いないでしょう。

ちなみに日本最大のアンリ・ルソーコレクションを持つのは以下8点を所蔵するポーラ美術館です。

pola rousseau1
左:《ムーラン・ダルフォール》 1895年頃 油彩・カンヴァス 37.8 x 45.5 cm
右:《エッフェル塔とトロカデロ宮殿の眺望》 1896-1898年 油彩・カンヴァス 49.7 x 65.5 cm

pola rousseau2
左:《ライオンのいるジャングル》 1904年 油彩・カンヴァス 37.7 x 45.9 cm
右:《エデンの園のエヴァ》 1906-1910年頃 油彩・カンヴァス 46.5 x 61.4 cm

pola rousseau3
左:《シャラントン=ル=ポン》 1905-1910年頃 油彩・カンヴァス 32.5 x 40.8 cm
右:《廃墟のある風景》 1906年頃 油彩・カンヴァス 33.4 x 41.2 cm

pola rousseau4
左:《モンスーリ公園》のための習作(あずまや) 1908-1910年 油彩・紙 19.2 x 25.7 cm
右:《飛行船「レピュブリック号」とライト飛行機のある風景》 1909年 油彩・カンヴァス 59.8 x 73.1 cm

どちらのコレクションも甲乙つけがたい素晴らしいコレクションです。いつか両館のコレクションを同時に展示するコラボを見て見たいです。

続いてメナード美術館。2012年12月に書いた メナード美術館 ゴッホ《石膏トルソ(女)》 を新収蔵! この記事以降も素晴らしいコレクションが加わり、今年の各展覧会でお披露目されました。

menard renoirb
新収蔵
ピエール=オーギュスト・ルノワール 《読書する女》 1895年 油彩・カンヴァス
55.0 × 45.8cm メナード美術館蔵

2014年の第一弾の展覧会 「所蔵企画展 春に恋して」1月2日~2月23日で初公開されました。印象派の筆触分割やアングル風の表現を超え、最晩年の赤やオレンジの鮮やかなルノワールになる前の柔らかな色彩が美しい円熟期の作品です。

アレクサンダー・カルダー 《青と赤の上に黒い円盤と黄と渦巻き》 も初公開されました。

menard degas Danseuses
新収蔵
エドガー・ドガ 《二人の踊り子》 1893-98年頃 パステル・紙 65.4 × 54.0 cm
メナード美術館蔵

こちらのドガは、「身近な小宇宙(コスモス)-室内を描く」3月8日~5月11日で初公開されました。ドガの作品が国内の美術館のコレクションに加わるのは非常に珍しいのでとても嬉しいことです。こちらの作品は2012年にオークションに登場しています。

クリスティーズオークション、ニューヨーク 2012年5月1日
予想落札価格 $1,500,000 - 2,500,000 ($1=79円 1億1850万~1億9750万円)
落札価格 $2,546,500 (2億117万円) 

degas Danseuses pola chicago
左:エドガー・ドガ 《二人の踊り子》 1900年頃 パステル・紙(厚紙に貼付) 70.3 x 55.5 cm ポーラ美術館蔵
右:エドガー・ドガ 《二人の踊り子》 1883-1898年 パステル・紙 70 x 53 cm シカゴ美術館蔵

同構図の作品が何点かあり、そのうちの1点が日本ではポーラ美術館に所蔵されています。

「所蔵企画 シャガール版画展」5月17日~7月13日では、102.5×66.4cmと大きなサイズのリトグラフ《カルメン》が初公開されました。

menard miro Le chat et la ficelle
新収蔵
ジョアン・ミロ 《猫と紐》 1925年 油彩・カンヴァス 65.0 × 50.0 ㎝ メナード美術館蔵

サザビーズオークション、ロンドン 2012年6月20日
予想落札価格 £800,000 — 1,200,000 (£1=125円 1億~1億5000万円)
落札価格 £1,600,000 (2億円) 

こちらのミロは、「なつやすみ所蔵企画展 きて・みて・はっけん-絵画の楽しみ 素材と技法-」7月19~9月23日で初公開されました。

国内では晩年のミロの方が一般的かと思います。1924年にシュルレアリスム宣言がされているのでまさにその時期の大変貴重なシュルレアリスムのミロです。どれが猫なんですかね(笑)。

menard miro
左:ジョアン・ミロ 《女、星》 1942年 グワッシュ、コンテ、パステル・紙 メナード美術館蔵
右:ジョアン・ミロ 《女と鳥》 1972年 油彩・カンヴァス 72.3 × 42.2 cm メナード美術館蔵

既に収蔵している2作品と合わせてミロの画業の変遷を辿ることができます。幅広い年代の絵画をカバーしているコレクションは国内では他に富山県立近代美術館くらいです。

そしてメナード美術館の今年最後の展覧会「メナード美術館コレクション名作展2014 語り継ぐ美」10月4日~12月23日では、ルネ・マグリットとキース・ヴァン・ドンゲンの作品が初公開されました。

menard Magritte LHorizon
新収蔵
ルネ・マグリット 《地平線》 1938年 グワッシュ・紙 48.9 × 36.7 ㎝ メナード美術館蔵

サザビーズオークション、ロンドン 2014年2月5日
予想落札価格 £350,000 — 450,000 (£1=165円 5775万~7425万円)
落札価格 £986,500 (1億6277万円)

2010年に初公開された油彩の《星座》以来、2点目のマグリットの収蔵です。 フロックコートと山高帽の2人の男が板の前?中?にいます。木目がブラックホールが渦を巻いているようでもあり、彼らに向って電磁波を発しているようでもあり謎謎謎です。

menard VAN DONGEN Kees DEUX NUS AUX BALLONS
新収蔵
キース・ヴァン・ドンゲン 《二人の裸婦と風船》 1905年頃 油彩・カンヴァス
212.6 × 100.8 ㎝ メナード美術館蔵

サザビーズオークション、ロンドン 2012年2月8日
予想落札価格 £2,500,000 — 3,500,000 (£1=122円 3億500万~4億2700万円)
不落札

sothebys 20120208
オークション下見会映像より

この作品は2012年のサザビーズオークションに登場しましたが、不落札になったようです。不落札の作品を売買交渉するアフターセールや非公開で個別に取引するプライベートセールで入手したのかもしれません。サイズと予想落札価格の高さに驚かされます。この作品は下見会場で壁面のオークションタイトルの文字の下に華々しく飾られた名品です。このオークションに目玉作品はいくつもありましたが、装飾的で美しい作品だからこそ象徴的に飾られたのでしょう。

2012年に開催された「なつやすみ所蔵企画展 サーカス・サーカス-ようこそ!夢物語の世界へ-」で初公開された《道化師》以来、2点目のキース・ヴァン・ドンゲンの収蔵です。

menard VAN DONGEN Kees The Clown
キース・ヴァン・ドンゲン 《道化師》 1905-06年頃 油彩・厚紙 72.5 × 60.0 cm メナード美術館蔵

《道化師》は、フォーヴィスムの説明に使われる’’原色を多用した強烈な色彩と激しいタッチ’’そのものの作品です。《二人の裸婦と風船》は色彩こそ穏やかなもののドンゲンのフォーヴ期の筆致の特徴をもつ名品です。

日本の美術館には様々なドンゲンの作品が収蔵されていますが、多くがフォーヴ期を超えたあとの作例なのでとても貴重な収蔵です。

《二人の裸婦と風船》の画像を初めて見た時、ルノワールのカリアティードを思い出しました。裸婦が頭上に腕を伸ばし物を掲げるポーズがそっくりです。ポーラ美術館で開催された「ルノワール礼讃」展でエコール・ド・パリの画家と共にヴァン・ドンゲンも展示されていました。ルノワールを直接訪ねたことはなかったもののサロン・ドートンヌでの展示やパリの画廊で開かれる個展などで、ルノワールの作品を目にしていたはずと紹介されていたので何か影響を受けているのでしょうか。

barnes renoir Caryatids
左:ルノワール 《カリアティード》 1910年頃 油彩・カンヴァス 130.5 × 45.4 cm
バーンズ財団美術館蔵

右:ルノワール 《カリアティード》 1910年頃 油彩・カンヴァス 130.5 × 45.1 cm
バーンズ財団美術館蔵

1994年に国立西洋美術館で開催された「バーンズ・コレクション展」で来日した作品です。カリアティードとは古代ギリシャの神殿建築で、円柱部分を女性立像にしたものです。ルノワールはこれを生身の裸婦で表現しています。壁龕の中にドンゲンの作品と似たようなポーズの裸婦が描かれています。

Caryatids Musée Renoir Asahi Breweries2
左:ルノワール 《カリアティード》 1909年頃 油彩・カンヴァス
130 × 41 cm ルノワール美術館蔵、 カーニュ=シュル=メール

右:ルノワール 《葉と果実の飾りのある若い裸婦》 1905年頃 油彩・カンヴァス
131 × 41.3 cm アサヒビール大山崎山荘美術館蔵

2010年、国立新美術館で開催された「ルノワール展」にアサヒビール大山崎山荘美術館蔵の作品が出品されました。カタログではこの2点は対作品と考えられていると紹介されていましたが、構図から見て疑いようがないのですが、他にも作品が存在するのでしょうか??制作年の表記も所蔵館によって違います。制作年についてはベルト・モリゾの娘、ジュリー・マネの1897年の日記に「ルノワールが果物の飾りを支える裸婦の装飾パネルを完成させた」との記述があり、1897年頃とする説やバーンズ財団の1910年頃とする説もあるとのこと。制作時期によってはドンゲンが先に描いたことになります。ルノワールが真似したのでしょうか?それはなさそう?ジュリー・マネの日記に書かれた作品がこの作品と断定できればいいのですが。ドンゲンがルノワールの作品を見てなんらかのインスピレーションを受けていたとしたら面白い話です。

2015年のメナード美術館はエミール・ノルデ 《森の小道》や3点目の収蔵になるルネ・マグリットのグアッシュ作品 《宴》、藤田嗣治などの作品の初公開が控えています。

続きまして福島県にあるダリの美術館として有名な諸橋近代美術館です。

morohashi Portrait de Gala au Homerd
新収蔵
サルバドール・ダリ 《ガラとロブスターの肖像》 1934年頃 油彩・板 20.0 × 22.4 cm
諸橋近代美術館蔵

諸橋近代美術館は《ガラとロブスターの肖像》を新収蔵しました。例に漏れず奇抜な作品です(笑)。ダリの妻、ガラの鼻先に飛行機、頭にロブスターが乗っています。この作品を贈られたのは、ガラとその前夫、詩人ポール・エリュアールとの娘セシルでした。

ガラの顔だと分かる人物が描かれている作品が既にいくつか収蔵されていますが、ガラの肖像と付く作品の収蔵は初なので大変意義のある作品です。毎年のようにコレクションが増え、2010年には16歳の時に描いた《画家の母の肖像》 1920年 を収蔵したりと1999年の開館以来、ダリの美術館として相応しい成長を続けています。ゴッホやシスレー、ピサロ、シャガールなども近年購入し、開館時からあるセザンヌやルノワール、マティス、ピカソなどの近代西洋美術コレクションの幅も広がっています。

《ガラとロブスターの肖像》は、「アメリカが愛したダリ」 2015年4月20日(月)~6月28日(日) で初公開されます。またサルバドール・ダリ、ヴァレンティーヌ・ユゴー、ガラ・エリュアール、アンドレ・ブルトンの4人による共同作品 《甘美な死骸》 1934年 鉛筆、ペン、インク・紙  26.7 × 19.5 ㎝ も本年、収蔵されました。こちらは「ダリの遊び~新収蔵作品《甘美な死骸》初公開~」 2015年7月5日(日)~11月30日(月)にて公開されます。

tokyo fuji art museum gauguin Willow by the Aven
新収蔵
ポール・ゴーギャン 《水辺の柳、ポン=タヴェン》 1888年 油彩・カンヴァス 76.2 × 62.5 cm 東京富士美術館蔵

東京富士美術館はゴーギャンの油彩を新収蔵しました。タヒチの作品ではなく印象派の技法の作品になります。でもゴーギャンの毛並になっています。ゴーギャンの印象派技法の作品も好きなので嬉しい収蔵でした。タヒチの作品はあまり市場に出てきませんし、評価額も半端なく高額なのでなかなか日本の美術館に納入されるのは難しいですね。タヒチの作品を購入なんてニュースをいつか聞ける日は来るのでしょうか。画面右側のまっすぐな木はジャポニスムの影響があるのでしょうか。美術館のホームページの解説によると1938年以降の所有者によって塗りつぶされていたものが修復で戻され、本来の姿で展示されたのは1934年以来、約80年ぶりとのことでした。展示室ではとくにパネルはなくあっさり展示されていました。

最後に新収蔵作品ではないのですが...。東京富士美術館へ出掛けた帰りに久々に村内家具に寄りました。村内美術館はもう閉館している時間で家具を見つつ店内を歩いていると村内美術館の宣伝ポップが天井から下がっているのが目に入りました。ポップには、コローの《ヴィル・ダヴレーのカバスュ邸》の絵が使われていました。この絵はもう村内美術館にないのでは?と思いつつ問い合わせてみると何と美術館で展示されているとのこと!まだ村内美術館所蔵だったのですね。

murauchi corot
カミーユ・コロー 《ヴィル・ダヴレーのカバスュ邸》 1835-1840年 油彩・カンヴァス
35 × 26.5 cm 村内美術館蔵

corot Harvester with Sickle 1850-55
カミーユ・コロー 《刈り入れ時》 1850-1855年 油彩・カンヴァス 村内美術館蔵

2013年7月にリニューアル、少ししてから訪ねた時は、コローはこの《刈り入れ時》の1点しか展示されていませんでした。美術館のホームページのニュースを見ると今年の9月26日に《ヴィル・ダヴレーのカバスュ邸》の展示を始めたと書かれていました。

この作品を見るとボストン美術館蔵のコローの《草刈り》を思い出します。共通点は鎌を持っているだけなのですが。《草刈り》は1838年と早い時期の作品でまだ銀灰色の霞むコローではなく乾いた色が特徴の頃の作品です。《刈り入れ時》は、画風がガラッと変わり、背景にコローっぽさが垣間見られる人物画です。この作品も素晴らしい。《草刈り》は、三菱一号館美術館で開催中の「ボストン美術館 ミレー展」に出品されています。並べて見てみたいです。

murauchi The Eldest Daughter of M. Edouard Delalain 1845-1850
カミーユ・コロー 《ドゥララン嬢》 1845-1850年 油彩・カンヴァス 29.5 × 25.4 cm
村内美術館蔵

こちらの作品も展示中とのこと。この作品もどうして日本にあるのかなと不思議に思える作品です。上記の作品たちも素晴らしいのですが、この子どもの肖像画はルーヴル美術館に展示してあってもおかしくない名品であると思います。1996年頃に展示に加わったのを覚えています。村内美術館はミレー 《鏡の前のアントワネット・エベール》を所蔵していましたが、ミレーが描く子どもの肖像の傑作だけでなく、コローが描く子どもの肖像も集めていたことに改めて凄いコレクションだったのだなと思わされました。

早くこの作品たちに再開したい!

2015年はどんな作品たちが日本の美術館のコレクションに加わるのでしょうか。楽しみです。

2014年 美術館の放出 & 東京国立近代美術館 セザンヌ 新収蔵

2014年に国内の美術館から放出された作品、昨年から今年にかけて収蔵された西洋絵画を中心に書きたいと思います。

まずは放出された作品から。2014年3月23日をもって休館したニューオータニ美術館のミレーのパステルがオークションに出るとミレー展の記事に書きましたが、予想を遙かに上回る結果となりました。

クリスティーズオークション、ニューヨーク  2014年10月27日 19世紀ヨーロッパ美術

newotani millet
ジャン=フランソワ・ミレー 《田園に沈む夕陽》 1868年頃 パステル・紙 50.1 x 62.2cm

1981年、ギャルリーためながより購入

予想落札価格 $400,000 - $600,000 ($1=112円換算 4480万~6720万円)
落札価格 $1,985,000 (2億2223万円) 

予想落札価格の下限から5倍近い金額で落札。パステル画にこのような金額がつくのは凄いことです。高度経済成長を経て豊かになっていった日本で、懐かしさを感じる田園風景や農民の姿を描いたミレーを愛し収集した方が沢山いたことでしょう。近年では発展著しい中国でもミレーが人気だとか。日本のミレーコレクションが市場に出てくるのをいくつか見てきましたが、それらの一部は中国に渡ったのでしょうか?フランスよりアメリカや日本の方が圧倒的に評価が高いミレーですが、最近はフランスでもミレーの評価が以前より高くなっているといいます。益々高騰してしまうかも。

ミレーだけかと思ったらニューオータニ美術館のエコール・ド・パリ コレクションも放出されていました。地味にショック。

クリスティーズオークション、ニューヨーク 2014年11月6日 印象派&近代美術 デイセール

Maurice de Vlaminck Bouquet de fleurs
モーリス・ド・ヴラマンク 《花束》 1905-06年頃 油彩、厚紙 54.2 x 44.4 cm

1991年、ギャルリーためながより購入

予想落札価格 $700,000 - $1,000,000 ($1=114円 7980万~1億1400万円)
落札価格 $725,000 (8265万円)

1905年にフォーヴィスムが誕生しているのでまさしくその時代の貴重なヴラマンク作品です。ニューオータニ美術館の所蔵品の中で一番好きな作品でした。吉野石膏コレクションにも似た時期の花の名品があります。国内にあるヴラマンクの作品の多くはこのあとの曇天のような激しく大胆なタッチの物が多いのでとても貴重な作品でした。

Kees van Dongen Femme à la blouse blanche
キース・ヴァン・ドンゲン 《白い服の婦人》 1930年 油彩、カンヴァス 65.8 x 50.3 cm

1982年、ギャルリーためながより購入

予想落札価格 $350,000 - $450,000 ($1=114円 3990万~5130万円)
落札価格 $605,000 (6897万円)

newotani laurencin
マリー・ローランサン 《遊ぶ子供たち》 1939年 油彩、カンヴァス 80.2 x 125.4cm

1982年、ギャルリーためながより購入

予想落札価格 $180,000 - $250,000 ($1=114円 1345万~2850万円)
落札価格 $197,000 (2245万円)

Kees van Dongen Portrait de Mademoiselle Erna Carise
キース・ヴァン・ドンゲン 《腰かける婦人》 1925-30年 油彩、カンヴァス 146.2 x 97.4cm

1984年、ギャルリーためながより購入

《腰かける婦人》として長らく親しまれてきましたが、《エルナ・カリーズ嬢の肖像》が正式なタイトルのようです。

予想落札価格 $600,000 - $800,000 ($1=114円 6840万~9120万円)
落札価格 $749,000 (8538万円) 

foujita Nu allongé au bras levé
藤田嗣治 《仰臥裸婦》 1924年 油彩、カンヴァス 89.2 x 146.7cm

1979年、日動画廊より購入

予想落札価格 $200,000 - $300,000 ($1=114円 2280万~3420万円)
落札価格 $245,000 (2793万円) 

suzanne valadon
シュザンヌ・ヴァラドン 《座る裸婦》 1921年 油彩・カンヴァス 92.0 × 73.0cm 

1990年、ギャルリーためながより購入

予想落札価格 $50,000 - $70,000 ($1=114円 570万~798万円)
不落札

モーリス・ユトリロの母、シュザンヌ・ヴァラドンの力強い大作の名品です。国内でヴァラドンの作品はほとんどお目にかかれません。大阪新美術館建設準備室がヴァラトンの《自画像》を所蔵しているので是非そちらに行ってほしい...。

Andre derain La Jeune Anglaise
アンドレ・ドラン 《座る少女》 1937-38年 油彩・カンヴァス 84.4 × 73.3cm 

1984年、ギャルリーためながより購入

予想落札価格 $40,000 - $60,000 ($1=114円 456万~684万円)
不落札

newotani kees van dongen
キース・ヴァン・ドンゲン 《花》 1940年頃 油彩、カンヴァス 115.0 × 146.5cm

1981年、ギャルリーためながより購入

予想落札価格 $300,000 - 400,000 ($1=114円 3420万~4560万円)
不落札 

こちらは《花》として親しまれてきましたが、《あじさいの花束》が正式なタイトルのようです。

kisling Jeune Femme Au Hamac
モイーズ・キスリング 《ハンモックの婦人》 1918年頃 油彩、カンヴァス 73.5 × 92.1cm

1983年、ギャルリーためながより購入

予想落札価格 $60,000 - $80,000 ($1=114円 684万~912万円)
不落札

多くの作品がギャルリーためながより購入されたことが分かります。1991年の開館以来、20数年国内で親しまれていた作品たちが散逸ということで寂しいですね。

Impressionist & Modern Works on Paper Sale

同じ日に行われた 印象派&近代美術 紙作品をメインにしたセールに見覚えのある作品が登場していました。

renoir Vénus Victrix
ピエール=オーギュスト・ルノワール 《勝利のヴィーナス》 1913-15年
サンギーヌ・白チョーク、パネルに貼った紙 162.5 X 104.5cm

予想落札価格 $400,000 - 600,000 ($1=114円 4560万~6840万円)
落札価格 $533,000 (6076万円) 

「ルノワール展」(1993年 東武美術館)、「印象派からエコール・ド・パリ」(2001年、静岡アートギャラリー)、「ルノワール 伝統と革新」(2010年 国立新美術館)などに出品された作品で笠間日動美術館に常設されていた作品です。笠間日動美術館はこの作品から抜けて出てきたかのような彫刻作品も所蔵しているので合わせて見ることはもうできないのですね...。

この彫刻作品に関して調べてみると面白い記事を見つけました。JR静岡駅南口駅前広場にルノワール《勝利のヴィーナス》、《洗濯する女》の彫刻が置かれているそうで認知不足が指摘されている像のPRも兼ねて、今年6月のサッカーのワールドカップに合わせて必勝祈願の看板を台座部分に設置というニュースでした。

1994円に2体は整備された同広場のシンボルとして1億2900万円で購入されたといいます。記事にはそれぞれ世界に14体しかないと書かれています。

190cm近い大きな《勝利のヴィーナス》は私が知っているだけでも国内に6体あります。

北海道立函館美術館、笠間日動美術館、そごう美術館、JR静岡駅南口駅前広場、岐阜県美術館、BBプラザ美術館

そごう美術館は以前エントランスに飾ってあったと思いますが、今はもうないかな?半数近くが日本にあるということなのでしょうか(笑)

ちなみに国立西洋美術館には梅原龍三郎が寄贈した高さ84cmの《勝利のヴィーナス》があります。

nagashima La Coiffure
ピエール=オーギュスト・ルノワール 《白いブラウスの少女》 1896年 油彩、カンヴァス 27.6 X 21.9cm
予想落札価格 $500,000 - 700,000 ($1=114円 5700万~7980万円)
不落札

こちらは鹿児島県の長島美術館にあったと思われる作品です。長島美術館には、黒田清輝、藤島武二、和田英作、東郷青児など鹿児島にゆかりのある日本人作家、新大陸先史美術品、薩摩焼など、そして印象派からエコール・ド・パリ周辺の西洋絵画など約1000点を収蔵しています。

西洋絵画はミレー、ドガ、ルノワール、セザンヌ、マルケ、ヴラマンク、クレー、ピカソ、ブラック、ユトリロ、ローランサン、モディリアーニ、藤田嗣治、シャガール、キスリング、ミロ、ジャコメッティなどと錚々たる顔ぶれです。

nagashima picasso Tête de femme2
パブロ・ピカソ 《女の顔》 1900-1901年 油彩・カンヴァス 35.5×35.0cm 長島美術館蔵

山梨県立美術館蔵のミレーの油彩 《冬(凍えたキューピット》をパステル、黒チョークで描いた習作や、ドガのパステルによる《水浴》、クリーブランド美術館やバーンズ財団蔵のルノワール 《林檎売り》のヴァリアント作品、パブロ・ピカソ 《アンジェル・フェルナンデス・デ・ソートの肖像》 1899-1900年、《女の顔》 1900-1901年と初期の名品から晩年までの画風の変遷を辿ることができる6点、マルク・シャガールの《緑のバイオリン弾き》などととても興味深いコレクションを有しています。いつか訪ねてみたい美術館です。

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続いて国内の美術館に新たに加わったコレクションです。

国立の美術館に加わった作品たち。平成25年度の物ですが、今年に入ってから公開の物も多かったと思うので書きます。

平成25年度の購入より

国立国際美術館にアルベルト・ジャコメッティの彫刻作品、ではなく絵画作品 《男》 1956年が特別予算で10億5619万5000円で購入されたのが衝撃でした。2012年に約8億円で購入され国立西洋美術館に収蔵されたセザンヌの《ポントワーズの橋と堰》を上回る金額です。10億を超える物も買うようになったのですね。かなり衝撃でした。
国立国際美術館の新収蔵作品数は69点、購入総額は12億1797万49円。

京都国立近代美術館は、竹内栖鳳 《おぼろ月》を4000万円、浅井忠、吉川麗華などの日本画、加守田章二の陶芸などを購入しています。特別予算では3点、マックス・エルンスト 《人間の形をしたフィギュア(像)》 1931年 油彩・カンヴァス 65.0×53.0cm 2億6565万円/フランシス・ピカビア 《アストロラーブ》 1922年頃 水彩・インク・厚紙 73.0 × 55.0 cm 《アストロラーブ》 1億8018万円/フランシス・ピカビア 《機械的構図》 6点組 1919年 インク、鉛筆、紙にマウントされたトレーシングペーパー 各26.6 × 21.0 cm を2億2680万円で購入しています。 ピカビアのダダ時代のドローイングは現存数が少なく、《機械的構図》は貴重な作例とのこと。素描でも凄い金額。
京都国立近代美術館の新収蔵作品数は23点、購入総額は8億161万4000円。

国立西洋美術館がウジェーヌ・ドラクロワの青年期の作品、《馬を連れたシリアのアラブ人》 1829年頃 油彩・カンヴァス 31.5 × 40cm を9099万3000円で購入したのも喜ばしいことです。今夏、常設展の壁に掛けてあるのを見てこんな作品所蔵してあったかな、寄託?と思ったら購入でした。新収蔵のパネルが横に付いていなかったのですがなぜ?

この作品は1922年に松方コレクションに入ったようですが1927年、川崎造船所のメインバンクだった十五銀行が金融恐慌により破産、川崎造船所の資金繰りが行き詰まり、松方は約1000点の作品を融資の担保として提供し、翌年から7回余りにわたってこれらの作品の売りたての展覧会が行われました。この作品は1930年に売却され、大阪屈指の資産家、和田久左衛門コレクションに入っています。現在、国立西洋美術館に収蔵されているジョン・エヴァレット・ミレイ 《あひるの子》、ダンテ・ガブリエル・ロセッティ 《愛の杯》も松方コレクションの売り立てから和田久左衛門コレクションなどを経て国立西洋美術館に収蔵されています。

松方コレクションのルノワールの初期の代表作 《アルジェリア風のパリの女たち(ハーレム)》は、ルーヴル美術館所蔵のドラクロワ 《アルジェの女たち》 1834年 に影響を受けて描いているのは有名です。国立西洋美術館の常設展によく出ている《聖母の教育》、《墓に運ばれるキリスト》 はオリエンタリズム(東方趣味)の作品ではありませんが、《馬を連れたシリアのアラブ人》はまさに東方趣味の作品であり、常設展でドラクロワとルノワールがより強く繋がったなと思いました。しかしもっとオリエンタリズムでドラクロワとルノワールを繋ぐ作品が既に収蔵されています。

nmwa Study for “The Death on Sardanapalus”
ウジェーヌ・ドラクロワ 《「サルダナパールの死」のための習作》  油彩、カンヴァス
81.2 x 65.2cm 国立西洋美術館蔵、松方コレクション

国立西洋美術館に通って20年経ちますが、常設展で一度も見たことがない作品です(笑)。状態が悪いのでしょうか。

国立西洋美術館は平成25年度、その他にレンブラントやピサロ、ロートレックなどの版画を購入しています。新収蔵作品数は8点、購入総額は1億1482万5276円。

最後に東京国立近代美術館は、特別予算で4点、速水御舟 《京の家・奈良の家》 3億1500万円/山下菊二 《あけぼの村物語》 1953年 1億円/アレクサンダー・カルダー 《モンスター》 1948年頃 3億1000万円/岡部嶺男の陶磁 《青織部縄文鼎》 1955年 2625万円で購入。他に奈良美智、吉川麗華など新収蔵作品数は107点、購入総額は9億581万8625円。

yamashita kikuji
山下菊二 《あけぼの村物語》 1953年 油彩・ドンゴロス 137.0×214.0cm
東京国立近代美術館蔵

アレクサンダー・カルダーのスタンディング・タイプの彫刻は、近年収蔵したジョルジュ・ブラック、ジョアン・ミロ、パウル・クレー、ニコラ・ド・スタール、ジャン・デュビュッフェなどを所蔵していた盛田良子コレクションから。

平成25年度、国立美術館4館の新収蔵作品数は207点、購入総額は30億4022万7950円!!!(笑)

平成26年度の現在も様々な作品がコレクションに加わっていると思うのですが、そんな中で鼻血が出る勢いの作品が!!

momat A Large Bouquet of Flowers
ポール・セザンヌ 《大きな花束》 1892-95年頃 油彩・カンヴァス 81 × 100cm
東京国立近代美術館蔵

うわー素敵。ニューヨーク近代美術館に収蔵されていそうな感じの名品です。今年度購入し、11月11日よりMOMATコレクションで披露されています。かなり大きないい作品です。このような作品が日本の美術館に所蔵されて驚きますが、最も驚く点は購入額ではないでしょうか。その額$17,800,000。8月に購入されたようで、($1=103円)で計算すると18億3340万円。国立西洋美術館のセザンヌ8億、国立国際美術館のジャコメッティ10億を軽く超えています!

この作品は10年前の2004年のクリスティーズオークションに日本の個人蔵から出品されました。あ~こんないい作品が日本にあったのか。残念だなとしみじみ思っていたので東京国立近代美術館に収蔵されたと知った時はひっくり返る勢いでした。

クリスティーズオークション、ロンドン 2004年2月2日のオークションでは、予想落札価格は問い合わせで公表されず落札額は、£4,485,250 (£1=191円)/$8,172,126 ($1=105円) 約8億6000万円ほど。作家の評価が急激に上がったわけではありませんから不自然な値上がりです。2004年の時点で購入できていたら...なんて思います。しかし18億って凄い額ですね(笑)。ミュージアムピースと呼べる物、印象派でも20世紀美術でも結構何でも買えますよ。

ちょっと高いかなという印象もあったので近年オークションに出た他の静物画と比べて見ました。

cezanne Pommes et gateaux
ポール・セザンヌ 《リンゴとガトー》 1873年 油彩・カンヴァス 45.7 × 55.8 cm 個人蔵

クリスティーズオークション、ニューヨーク 2005年11月1日
予想落札価格 $3,500,000 - 4,500,000 ($1=116円 4億600万~5億2200万円)
落札価格 $9,200,000 (10億6720万円) 

この作品は1873年と早い時期の作品で後の静物画と異なる印象を受けますが、堅固な構図やりんごなどの力強い描写は既に完成しているようでとっても素晴らしい作品です。予想落札価格がかなり低く設定されていましたが、予想の倍を超える金額で落札されました。初見は後の静物画と異なった印象を受けたものの見れば見るほどいい作品だなと思うようになりました。しっかり描かれた作品でこれで10億なら買いだと思います。

cezanne PICHET ET FRUITS SUR UNE TABLE
ポール・セザンヌ 《テーブルの水差しと果物》 1893-1894年 油彩・板に貼った紙
41.5 × 72.3 cm 個人蔵

サザビーズオークション、ロンドン 2010年2月3日
予想落札価格 £10,000,000 — 15,000,000 (£1=145円 14億5000万~21億7500万円)
落札価格 £11,801,250 (17億1118万1250円) 

こちらの作品の方が東京国立近代美術館の作品より安いとは...。値段の理由はこの作品が紙に描かれているということで間違いないと思います。カンヴァスに描かれていたら2倍どころかもっとするはずです。《大きな花束》も魅力的ですが、そちらより安かったらこの作品も十分に購入に値しますよね。

この作品はバブル期、サザビーズオークション、ニューヨーク 1989年5月9日のセールに出品されました。その時の予想落札価格は$8,000,000 - 10,000,000 ($1=135円 10億8000万~13億5000万円)/落札価格 $11,550,000 (15億5925円)で落札されました。バブル期なのに今とあまり価格が変わらないのが興味深いですね。紙に描かれたというのがネックになっているのでしょうか。バブル期は大阪の高橋ビルディング株式会社が所有していました。バブル崩壊後も日本にあったようですが、2010年遂に世界のどこかへ...。ちなみにこの時のオークションに同じコレクターからルノワール《読書するふたり》も出品されていました。この小さな名品は幸運なことに後に群馬県立近代美術館に収蔵されます。

renoir couple lisant
ピエール=オーギュスト・ルノワール 《読書するふたり》 1877年 油彩・カンヴァス
32.4 × 24.8 cm 群馬県立近代美術館蔵 

クリスティーズオークション、ニューヨーク 1989年5月9日
予想落札価格 $2,000,000 - 3,000,000 ($1=135円 2億7000万~4億500万円)
落札価格 $3,080,000 (4億1580万円) 

バブル期はなんでもかんでも異常な金額がついたと思っていたのですが、この辺りは正常なお買物ですね。セザンヌは紙、ルノワールは小品だから投資家から敬遠されたのでしょうか。今考えるととてもよい買い物に見えます。このルノワールは現在ならもっと高額に取引されるのではないでしょうか。

cezannne Rideau, Cruchon et Compotier
ポール・セザンヌ 《カーテン、水差し、果物鉢》 1893-1894年 油彩・カンヴァス
60 × 73.0 cm  個人蔵

この作品はサザビーズオークション、ニューヨーク 1999年5月10日のセールにホイットニー夫妻コレクションより出品されました。$60,502,500 ($1=121円) 73億2080万円!!で落札されました。その当時からオークションレコードのトップ10に入っていてこの静物画の価格を超えるセザンヌの静物画はいまだに出てきていません。最近はオークションレコードが更新されてトップ20に入るかどうかあたりにいます。今この作品がオークションに出てきたら軽く100億円を超えてしまうのではないでしょうか。

cezanne Nature morte aux fruits et pot de gingembre
ポール・セザンヌ 《果物と生姜壷のある》 1895年頃 油彩・カンヴァス
46.4 × 61.4 cm 個人蔵

上記の1999年の静物画のオークションレコードが記憶に新しかった頃の2000年、また静物画の名品が市場に出てきました。

クリスティーズオークション、ロンドン 2000年6月28日
予想落札価格 £9,000,000 - £12,000,000 ($13,527,000 - $18,036,000) (£1=159円 14億3100万~19億800万円)
落札価格 £12,103,750 ($18,191,936) (19億2449万円) 

サザビーズオークション、ニューヨーク 2006年11月7日
予想落札価格 $28,000,000 — 35,000,000 ($1=118円 33億400万~41億3000万円)
落札価格 $36,976,000 (43億6316万円) 

2000年と2006年にオークションに登場しましたが、東京国立近代美術館が収蔵した作品の価格のようなケースになっています(汗)。6年で2倍になってしまうなんて!!この作品も素晴らしいですね。2000年の時がお得すぎたのでしょうか。

cezanne PICHET ET ASSIETTE DE POIRES
ポール・セザンヌ 《水差しと洋梨のある静物》 1885-1890年 油彩・カンヴァス
38.5 × 46 cm 個人蔵

サザビーズオークション、ニューヨーク 2002年5月8日
予想落札価格 $14,000,000 — 18,000,000 ($1=128円 17億9200万~23億400万円)
落札価格 $16,784,500 (21億4841万6000円) 

こちらは1995-96年にセゾン美術館で開催された「印象派・後期印象派展」に出品された物でそれ以来私を魅了し続けている作品です。セザンヌは背景やテーブルも含め全体を描くイメージがありますが、こちらの作品は対象にぐっと迫って比較的小品ながらも迫力のあるセザンヌの魅力がこれでもかと詰まった名品になっています。73億円の作品と比較しても何の遜色もありません。今回の新収蔵品より高いですが、できることならこれも欲しい。

cezanne Compotier and Plate of Biscuits
ポール・セザンヌ 《果物入れとビスケットの皿》 1877年頃 油彩・カンヴァス 54.3 × 64 cm 個人蔵

クリスティーズオークション、ニューヨーク 2007年11月6日
予想落札価格 $10,000,000 — 15,000,000 ($1=114円 11億4000万~17億1000万円)
落札価格 $12,641,000 (14億4107万4000円)

18億円の《大きな花束》ももちろん素敵なのですが、 こ、これは。こっちの方が安いし..やらかした?
この作品は2007年のオークションまで日本の個人蔵にあった物です。この作品もいいなぁ。よく描きこまれた作品なのにもっと高額な作品との違いは何なのでしょうか。早い時期の静物画はまだ正面性が保たれています。後に描かれるいろいろな角度からの視点で見たかのような静物画はキュビスムなど20世紀美術に道を広げる点からより評価が高いのでしょうか。今回、東京国立近代美術館に収蔵された作品は花瓶と花は正面から、テーブルは斜め上から見たかのような視点です。絵の具の置き方、塗り残しの絶妙な加減が具象でもあり抽象でもあるようで様々な点でこの作品が必要に値すると判断して購入したのでしょう。高めの買い物でしたが、セザンヌの影響を受ける西洋画家、日本画家のコレクションを有している東京国立近代美術館に相応しい新コレクションなのではないでしょうか。

cezanne LES POMMES
ポール・セザンヌ 《りんご》 1889-90年 油彩・カンヴァス 38.5 × 46 cm 個人蔵

サザビーズオークション、ニューヨーク 2013年5月7日
予想落札価格 $25,000,000 — 35,000,000 ($1=99円 24億7500万~34億6500万円)
落札価格 $41,605,000 (41億1889万円) 

下の 《静物、りんごと洋梨》と一見似たような絵なのに価格が4倍も違うなんて!《りんご》の方が厚塗りで構図の面白さもありますがこうも価格が変わるのですね。

cezanne NATURE MORTE POMMES ET POIRES
ポール・セザンヌ 《静物、りんごと洋梨》 1888-90年 油彩・カンヴァス 38.2 × 46.4 cm
個人蔵

サザビーズオークション、ニューヨーク 2003年11月5日
予想落札価格 $8,000,000 — 12,000,000 ($1=109円 8億7200万~13億800万円)
落札価格 $8,744,000 (9億5309万円) 

こちらも十分素敵ですよ。

cezanne VERRE ET POIRES
ポール・セザンヌ 《グラスと洋梨》 1879-80年 油彩・カンヴァス 19 × 38.7 cm 個人蔵

サザビーズオークション、ロンドン 2008年6月25日
予想落札価格 £2,500,000 — 3,500,000 (£1=212円 5億3000万~7億4200万円)
落札価格 £4,073,250 (8億6352万円) 

画面中央、りんごのヘタかおしりが真正面を向いているのにグラスは上から覗き込むようなアングルでセザンヌらしいです。こちらは国立美術館が買うにはちょっとパンチが足りないかな。

cezanne FLEURS DANS UN VASE ROUGE
ポール・セザンヌ 《赤い花瓶の花》 1888-90年 油彩・カンヴァス 38.2 × 46.4 cm 個人蔵

サザビーズオークション、ニューヨーク 2012年11月8日
予想落札価格 $3,500,000 — 5,500,000 ($1=79円 2億7650万~4億3450万円)
落札価格 $3,218,500 (2億5426万円) 

最後に今回の新収蔵作品と同じ題材である花を描いた静物画2点。花を単体で描いたものはあまりオークションで見かけません。それだけ珍しい部類に入るのではないでしょうか。

cezanne Les deux vases de fleurs
ポール・セザンヌ 《2つの花瓶の花》 1877年頃 油彩・カンヴァス 56 x 46.3 cm 個人蔵

クリスティーズオークション、ニューヨーク 2000年11月8日
予想落札価格 $2,500,000 - $3,500,000  ($1=107円 2億6750万~3億7450万円)
落札価格 $3,086,000 (3億3020万円)

こちらの花2点はセザンヌの絵とすぐわかりますが、正面性を保っており、《大きな花束》のような革新性はないのでセザンヌにしてはお手頃な価格帯なのでしょうか。

あなたはどのセザンヌが欲しかったですか?

《大きな花束》の実物を見ての感想。画像もいいですが、実物もとても素晴らしかったです。花瓶から四方に茎を伸ばす花が九頭竜のようにグオ~とうごめいているようで画面の中心から渦を巻いているかのような迫力のある画面でした。81 × 100cmというサイズは、Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の「夢見るフランス絵画」に出品されている白眉、セザンヌ《大きな松と赤い大地(ベルビュ)》 80 × 100cmとほぼ同じです。この作品を見たことがある方なら大画面であることがわかると思います。

画面の隅が塗り残されていることから実物を見る前は全体的に薄塗りなのかと思っていました。確かにテーブルクロスや画面の外に行くほど薄塗りではありますが、画面中心部、花の描写は何度も筆を置き、細かく丁寧に描かれていてささっと描いた物ではないことが分かりました。執念すら感じる描写でした。

確かに高いが、とてもよいコレクションを迎えることができたと思います。最近まではとても手が出せなかった範囲の作品の取得は今後もあるのでしょうか。特別予算に期待です。2020年の東京オリンピックに世界中の人が日本に来るので美術館にも足を運ぶのではないでしょうか。こんな名品が日本にあるのかと驚かせてみたいものです。どんどん買って(笑)

国立西洋美術館 セザンヌ《ポントワーズの橋と堰》を新収蔵!

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ポール・セザンヌ《ポントワーズの橋と堰》1881年 油彩、カンヴァス 59.1x72.1cm
国立西洋美術館蔵

国立西洋美術館のホームページを見に行ってびっくり。いやー本当に驚いた。昨年、ポール・セザンヌの名品《ポントワーズの橋と堰》を購入したと紹介されていました。

左斜め下に向かう規則正しい筆跡のリズムが心地よい絵です。塗り残し部分もセザンヌの絵って感じでいいです。
厚塗りのセザンヌも晩年のステンドグラスのようなジェマイユのようなセザンヌも好きですが、このセザンヌの毛並がとても好きなので取得してくれて凄く嬉しいです。

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ポール・セザンヌ《エクスの北、ヴェルドン運河の水道橋》1882-83年 油彩、カンヴァス 57×72cm 個人蔵、スイス

こちらも一定方向の規則正しい筆致を持つ名品。この作品も今回取得した作品と同じくらい好きです。

名品ということだけがびっくりの理由ではなく好きなこの絵を新収蔵を知る前日、ネットで画像を見ていたのです。まさか日本の美術館に収蔵されるなんて夢にも思っていなかったので本当に驚いた。

cezanne pob

1998年サザビーズオークションのカタログの表紙に使われています。このトリミングがGOOD。次に発行する国立西洋美術館名作選の表紙はこれでお願い(笑)

カミーユ・ピサロがほぼ同じ景色を先に描いています。セザンヌとピサロはオワーズ川に沿って上流を見て、町の南のスポットからポントワーズの橋を描いています。

Pissaro po
カミーユ・ピサロ《ポントワーズの鉄橋》1873年 油彩、カンヴァス 50x65cm 個人蔵

ポントワーズへの道がそれぞれの画面の左側に見えます。セザンヌの作品では同化しているように見えますが、画面の中心手前には、サン=トゥアン=ロモヌとポントワーズを接続するために1862-1863年に建設された鉄道橋、奥には歩行者や馬車が通る古い道路橋が架けられています。第二次世界大戦中に破壊されてしまったそうです。

ピサロは1866年にパリの北西20kmほどに位置するポントワーズに移住し1884年までこの地に住み続けました。セザンヌはオワーズの谷に1872年から1874年まで住んでいます。 ピサロとセザンヌは1872年にはポントワーズで、1873年にはオーヴェル=シュル=オワーズでカンヴァスを並べて共に制作しています。セザンヌの暗かった画面はピサロの影響で明るくなります。1881年にセザンヌはピサロの近所に引っ越してきます。セザンヌはピサロの作品とほぼ同じ位置から描いてるわけですからピサロの作品を実見したか、見ていないとしてもこの場所で描くことに関して何らかの会話はしているはずですよね。セザンヌが「この構図いいね。同じところで描いてみよう」とかピサロが「ここの眺めはいいぞ」と教えたりみたいな。

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カミーユ・ピサロ《ポントワーズの川岸》1872年 油彩、カンヴァス 46×77cm 個人蔵

《ポントワーズの鉄橋》の位置より下流で描いた絵です。セザンヌの絵にある堰も確認できます。左岸に人々が歩いていますが、このもう少し奥へ行った辺りからの眺めをセザンヌは描いたようですね。

Pissaro pob
カミーユ・ピサロ《ポントワーズの橋》1878年 油彩、カンヴァス 60.5x73.0cm 吉野石膏コレクション(山形美術館寄託)

《ポントワーズの鉄橋》の奥にアーチ型を描く橋が少し見えますが、こちらはその橋を描いた作品です。橋に人や荷馬車らしきものが行き来しているのが見えます。ピサロはオワーズ川沿いで何点も描いており、この橋や鉄道橋が他作品にも登場します。この画面の右側手前に鉄道橋があることになります。

cezanne pod
GOOGLE MAPより

現在の鉄道橋です。

cezanne pode
GOOGLE MAPより

下流の方に行くとセザンヌが描いたと思われる眺めがあります。(GOOGLE MAPは橋の上からの眺め)下部の地図で赤い矢印の方向を見た物が上部の画像です。川の水面に白いラインが見えると思います。上の鉄骨は堰の構造物かと。絵のタイトルにもある「堰」から水が落ちている様子です。セザンヌの絵にも鉄道橋と並行して手前に川の落差の表現がされているのがわかります。

セザンヌの絵は左岸から見た角度なので鉄道橋はここからは見えませんね。水色のラインが堰、青い丸が鉄道橋で緑の丸がオワーズ橋です。人間マークがいる所から右斜め下に20kmほど行くとパリです。

2005年から2006年にかけてニューヨーク近代美術館、ロサンゼルス・カウンティ美術館、オルセー美術館を巡回した「近代絵画の開拓 セザンヌとピサロ 1865-1885」展にセザンヌ《ポントワーズの橋と堰》とピサロ《ポントワーズの鉄橋》は一緒に出品されました。

2人が同時に制作した作品ではありませんが、同じ眺めということで興味深く貴重な作品だということは確かです。

このセザンヌ作品は何人かの個人蔵を経て、2008年にクリスティーズのオークションに登場します。予想落札価格$7,000,000 - $10,000,000のところ$7,922,500(約7億6500万円)で落札されました。(2008年11月平均レート96.67円)

この時は、ロンドンの個人蔵に入ったようでその後、国立西洋美術館が購入したようです。$10,290,000(約8億円)で購入とのこと。円高万歳!国立西洋美術館の購入額としては過去最高額とのことです。とてもいい買い物しましたね。偉い!

1998年のサザビーズのオークションには予想落札価格は$8,000,000 - $10,000,000で出品されていましたが、現在、来歴に記載がされていないのでこの時は不落札に終わったようですね。このオークションがあった11月は1$=122円前後だったり、6月頃は146円だったりしたようで差が凄いですね。もしこの時落札されていたら国立西洋美術館には来なかったことでしょう。美術品の流転は面白い!

ちなみにピサロ《ポントワーズの鉄橋》は、1997年にクリスティーズオークションに出品され、予想落札価格$1,500,000 - $2,000,000のところ$2,587,500(約3億800万円)で落札されています。(1997年5月平均レート119.24円)

2009年にもクリスティーズオークションに登場し、予想落札価格$3,500,000 - 4,500,000(2009年11月レート90.98円)、約3億1000万円から4億900万円)ほどで設定されていましたが、不落札に終わっています。

この作品はまだ個人蔵にあるようですね。ピサロの初期の傑作の1点だと思います。この作品も入手できたらいいなあ。

1959年に開館した国立西洋美術館にはセザンヌの油彩画は無く松方コレクションの水彩画4点だけでした。

元々、松方コレクションには『松方コレクション西洋美術総目録』によると油彩画は《ひび割れた家(別称:廃屋)》メトロポリタン美術館蔵、《風景 オベール、アルメの谷側より》、《リンネルの上の果物》、《レスタックの岩》サンパウロ美術館蔵、《読書する青年》の5点あり、水彩画は《水差しとスープ容れ》、《船にて》、《横たわる裸婦(風景のなかの裸婦)》、《永遠の女性》、《ジョルジョーネの『田園の奏楽』より》、《サント・ヴィクトワール山》、《調理台の上の壜とポット》、《モンテニ・シュル・ロワンの教会》の8点(前半4点は国立西洋美術館蔵)、さらにカラーリトグラフ《水浴の男たち(小)》横浜美術館蔵、《水浴の男たち(大)》横浜美術館蔵の2点と総点数は15点にのぼりました。*1999年 セザンヌ展 横浜美術館 カタログより

油彩画だけでも風景画、静物画、人物画とバランスよく揃って水彩画も豊富。散逸が惜しまれます。

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ポール・セザンヌ《レスタックの岩》1882-85年 油彩、カンヴァス 73×91cm サンパウロ美術館蔵

松方幸次郎は《レスタックの岩》を1923-27年に入手しますが、その後大阪の岸本兼太郎の手に渡り、最終的に国外に流出してしまいます。現在は日本の裏側ブラジルにおります。

国立西洋美術館が、セザンヌの油彩を取得するには1978年度収蔵の《葉を落としたジャ・ド・ブッファンの木々》まで待たなければなりません。今回はそれから34年ぶりの取得です。

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ポール・セザンヌ《葉を落としたジャ・ド・ブッファンの木々》1885-86年 油彩、カンヴァス 60.3×73cm 国立西洋美術館蔵

国立西洋美術館が、印象派の巨匠の油彩を最後に購入したのは1986年度のクロード・モネ《黄色いアイリス》、新印象派では1987年度のポール・シニャック《サン=トロぺの港》くらいです。西洋美術史の巨匠たちの作品を地道に収蔵していて、近年だけでもラトゥール、ブリューゲル、ティツィアーノなどのオールドマスターからドーミエ、ドレ、ハンマースホイ、ブラックなど驚かせてくれる名品の収蔵がいくつもありました。ただ失礼ながら印象派、ポスト印象派の購入は絶望視していて考えてもいませんでした。(笑)だから今回の購入は事件です!

いやー感無量。油彩2点、水彩画4点全点一挙に並べてみてほしい物です。(風景画1点が寄託されていましたが、久しく見ないので所有者に返却されたのでしょうか?)

《ポントワーズの橋と堰》は、常設展で近々お披露目されるとのことです。早く見たい!

メナード美術館 ゴッホ《石膏トルソ(女)》 を新収蔵!

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フィンセント・ファン・ゴッホ《石膏トルソ(女)》 1887年 油彩、カンヴァス 73.3×54.4cm
メナード美術館蔵 新収蔵!

メナード美術館の年間スケジュールのリーフレットを見てびっくり!ゴッホの油彩画をゲットしたとのことです。
既に《一日の終り(ミレーによる)》1889~90年を所蔵しているので2点目のゴッホ収蔵となります。

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フィンセント・ファン・ゴッホ《一日の終り(ミレーによる)》1889~90年 油彩、カンヴァス 72.0×94.0cm メナード美術館蔵

今年、愛知県美術館がゴーギャン《海岸の岩/木靴職人》(表裏2点の作品)を2億9,800万円で購入し話題となりました。ポスト印象派の巨匠の新収蔵が愛知県で続くとはめでたいですね。

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ポール・ゴーギャン《木靴職人》1888年 油彩、カンヴァス 58.0×49.0cm 愛知県美術館蔵

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ポール・ゴーギャン《海岸の岩》1888年 油彩、カンヴァス 49.0×58.0cm 愛知県美術館蔵

2003年に一度だけメナード美術館の所蔵作品展を見に行ったことがあります。西洋絵画コレクションを沢山展示している時でそれはそれは見事なコレクションでした。本でしか見たことのなかった名画たちに初めて対面しとても感動しました。大きな美術館ではありませんが、落ち着いた空間で上質な一時を過ごせました。この当時は美術収集は一段落していた感じでした。日本美術や現代美術は収集があったと思いますが、億単位の高額な西洋近代絵画に限っては古い所蔵品カタログを見ても開館当初から大きくは変わっていない印象でした。

ところがどっこい、この10年ほどに何があったのかと思うほど西洋近代絵画の蒐集、初公開作品が連発します。

2005年 モネ《チャリング・クロス橋》、ドニ《ダンス》、クノップフ《婦人像》
2007年 セザンヌ《麦藁帽子をかぶった子供》、マティス《ジャズ》 (版画集 全20点)
2010年 マグリット《星座》、シーレ《緑の袖の子ども》
2011年 ファイニンガー《プロポーズ》
2012年 ボナール《青いジレを着たブロンドの女》、キース・ヴァン・ドンゲン《道化師》
2013年 ゴッホ《石膏トルソ(女)》

公開年は忘れてしまいましたが、アンリ・ルソー、ルノワール、デルヴォーなどもここ10年ほどに加わったコレクションです。完成したのかと思っていた西洋絵画コレクションでしたがこんなに幅が広がったことに本当驚きです。

日本の美術では2006年には岸田劉生《笑ふ麗子》、2008年には速水御舟《黍ノ図》や現代画家や工芸品なども毎年のようにコレクションに加わっています。現在開催中のコレクション名作展Ⅰでも島田章三や舟越桂の作品を新収蔵、公開しています。成長し続けてるのですね。

多目的ホール、アネックスを2009年に増設したり中庭の一部を展示室に造り替えたり凄いなあメナード美術館。

話をゴッホに戻します。国内にゴッホを複数所蔵する美術館は他にもあります。山形美術館の吉野石膏コレクションの《雪中で薪を集める人々》1884年、《白い花瓶のバラ》1886年が寄託されています。

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フィンセント・ファン・ゴッホ《雪中で薪を集める人々》1884年 油彩、カンヴァス 67.0×126.0cm 吉野石膏コレクション 山形美術館寄託

gogh white vase
フィンセント・ファン・ゴッホ《白い花瓶のバラ》1886年 油彩、カンヴァス 37×25.5cm 吉野石膏コレクション 山形美術館寄託

《白い花瓶のバラ》はパリで花の連作に集中して取り組んだ中の一作です。画風が少し明るくなってきています。ゴッホと言われても?となってしまいそうな花の絵です。

大阪府の和泉市久保惣美術館に《耕す人》、《機を織る人とベビチェアの子供》、《紡ぎ車をくる女》とこちらは3点も所蔵しています。いずれも初期の農民を描いた絵です。

パリ時代以降の明るい画風のゴッホを複数所蔵する美術館は今まではポーラ美術館だけでした。3点のゴッホの油彩を所蔵しています。いい勝負です。メナード化粧品vsポーラ化粧品 バチバチ

《石膏トルソ(女)》は、1886年3月から1888年2月まで、パリで過ごした時の作品です。ゴッホはパリで古代およびルネサンス彫刻の石膏模型から11点の絵画、30以上のデッサンを描いています。その中で最も大きく一番最後の作品でそして最も精巧に描かれています。石膏像の多くはまだ暗さ、重さがありますが、この作品は格段に明るくなっています。光に溢れた最新のフランスの美術に触れ、暗かった画面から明るい画面へ脱皮したその瞬間の時期の作品の1つではないでしょうか。石膏像を単体で描いた作品の中では最もゴッホに近いゴッホでしょう。

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全て1866年の作 アムステルダム ゴッホ美術館蔵

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フィンセント・ファン・ゴッホ《石膏像のある静物》1887年 クレラー=ミュラー美術館蔵

《石膏トルソ(女)》を描いた1887年には、こんな素敵な作品も生まれます。

今回、メナード美術館に収蔵された《石膏トルソ(女)》、見たことがあるという方多いかもしれません。それもそのはず結構長いこと日本にもともとあった作品です。アムステルダム、ベルリン、パリ、チューリヒ、ニューヨーク、ニューオリンズなどと10回以上所蔵者が入れ替わり、1973年には日動サロンで開かれた「描かれた女展」で公開されています。

その後、栃木県黒磯市にあった竹井美術館に所蔵され公開されます。郷土出身の実業家竹井博友氏によって1989年に開設された美術館です。JR東北本線黒磯駅から徒歩20分のところにありました。

個人コレクターの美術館ですが、所蔵品が結構凄い美術館でした。ディアズ、エンネル、ルノワール《婦人像》、ドガ《洗濯女たち》1884年頃、ファンタン=ラトゥール《オンディーヌ》、セザンヌ《ヴィーナスと愛》、ロートレック《ダンス》1888年、ボナール《湯上りの女》1925年、モディリアーニ《婦人の肖像》1916年頃、シャガール《赤い裸婦》1954年、ユトリロ《モンマルトルの通り》1911~12年頃、ピカソ《男の時代》、ルオー《田舎の法廷》1938年、ルオー《聖書の風景》1952年頃、6点のヴラマンクなど19世紀から20世紀のフランス絵画が中心に集められ、また当時活躍していた日本の洋画家の裸婦とフランス、ベルギー、イタリアなどの画家たちによる裸婦像が展示されたユニークなコレクションでもありました。

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エドガー・ドガ《洗濯女》1884年頃 木炭、パステル、カルトン 60.0×75.8cm

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左:アメデオ・モディリアーニ《婦人像(C.D.夫人)》1916年頃 油彩、板 79.5×48.5cm
現ポーラ美術館蔵
右:ポール・セザンヌ《ヴィーナスと愛》制作年? 油彩、カンヴァス 20.0×20.0cm

が、バブル崩壊後もしばらく続いていたようですけど1998年6月に閉館したようです。訪ねてみようと思い、アクセス方法の問い合わせの電話をしてみたら違うところに電話番号が使われていてその時閉館を知りました。(笑)閉館から1、2年経っていたでしょうか。

1998年にはゴッホは、ユニマットグループ代表の高橋洋二コレクションに入りました。セザンヌ、ピカソも高橋洋二コレクションに。モディリアーニはポーラコレクションとなり、2002年に開館したポーラ美術館のコレクションとして公開されます。

最近、思わぬところで竹井美術館が出てくる記事を目にしました。JA那須野の旧本店が東日本大震災で被災。改修には多額の費用がかかるため、かつての「竹井美術館」で、美術館閉鎖後は葬祭場としても使われていた土地と建物を同年6月に取得。延べ床面積約3千平方メートル。土地建物の取得費は約1億3千万円、改修工事に約1億円をかけた。元美術館の建物らしく、豪華でゆったりとした造りになっている。 とありました。建物はまだあるのですね。ちょっと見てみたい気が...。

2001年にユニマットが箱根芦ノ湖美術館を開館します。バルビゾン派、印象派、エコール・ド・パリの作品たちと共にゴッホは再び一般公開されます。芦ノ湖畔にある素晴らしいロケーションの美術館でしたが、2006年5月に突然閉館してしまいます。ショック!と思ったのですが、7月には東京・南青山に青山ユニマット美術館として再オープンしました。箱根にはしょっちゅう行けないので東京にできてとてもとても嬉しかったですね。箱根時代はバルビゾン派、印象派、エコール・ド・パリ作品を常設していましたが、南青山ではシャガールとエコール・ド・パリコレクションを常設し、バルビゾン派や印象派作品は時々開かれる展覧会で公開していました。

unimat.jpg

ゴッホが模写したミレー《一日の終り》、ルノワール《授乳する母親》(この作品の素描が姫路市立美術館、ブロンズ彫刻が京都国立近代美術館、テラコッタがヤマザキマザック美術館に所蔵)、コートールド・コレクションのルノワール初期の代表作《桟敷席》のモデルをつとめたニニ・ロペスを描いた《ニニの肖像》、日本ではこことポーラ美術館だけが所有するモネ《霧のルーアン大聖堂》、何点もあるシリーズ中でも素晴らしい出来の傑作であるクールベ《シヨン城》、ムンクにクリムト、シャガールコレクションにエコール・ド・パリの画家たち、さらにワイエスコレクションも。とにかく凄いコレクション!クリムトとムンクの油彩を持ってるのは驚異。

だったのですが、2009年3月末で閉館。ミレーとバルビゾン派の画家たち展を開催中で4月14日までの会期だったのに急遽3月末までとなり南青山に移転して3年もしないで閉館となってしまいました。

西洋絵画コレクションは280点あったと言われています。ポーラ美術館も400点西洋絵画を所蔵していますが、近代西洋絵画の名品をこれほどの規模で持つ美術館は他にないですね。

一度しか見る機会がありませんでしたが、コロー、クールベを10点近くずつ持っていたり、印象派絵画もルノワールも多数あり、画集でも見たことのなかった知られざる名画をいくつも所蔵していました。バルビゾン派、印象派、エコール・ド・パリとどのジャンルも水準が高く質、量兼ね備えたコレクションだったと思います。2つの分野を網羅するコレクションはあってもこの3つの分野すべての質、量揃った美術館は日本にありませんでしたので非常に残念です。

このユニマット近代絵画コレクションはバブル以降に作られたコレクションでは日本最大だったのではないでしょうか。美術館の入口のプレートにもバブル崩壊で海外流出の憂き目にあっている美術品を救いたいとの思いで収集していると書かれていました。確かにそういった経緯で集まった作品が多くありました。正しくゴッホもそうでしょう。

しかし、このユニマット近代絵画コレクションも海外オークションに次々登場し、散逸してしまいました。マグリット《黒魔術》も所蔵していましたが、一般公開されることなくオークションへ。今年、驚いたのが国立新美術館で開催されたセザンヌ展に《オワーズ川岸の風景》が、モナコ大公宮殿所蔵で出ていたこと。オークションで落札されたのは知っていましたが、まさかモナコに。青山ユニマット美術館は国立新美術館から1kmほどの距離にあったので近くまで帰って来たのですね...。

ゴッホ《石膏トルソ(女)》 もバブル以降も日本に留まりましたが、2008年サザビーズオークションで競売にかけられます。予想落札価格を$7,000,000から$10,000,000(約7億~10億円)と強気に設定したことにより$5,300,000(5億3000万円)までしか競り上がらず不落札に終わります。

2010年にはクリスティーズオークションに登場します。$3,500,000~$5,500,000(約2億9000万~4億5000万円)と今度は控えめに設定され$3,666,500(約3億円)で落札されます。

メナードが直接落札したのか画廊を通じて購入したのかはわかりませんが、ゴッホにしては非常にお買い得ですね。円高万々歳です。

海外オークションに掛けられたゴッホでしたが、日本に戻ってきたわけです。恐らく安住の地に着いたと言っていいでしょう。よかったよかった。ちなみにセザンヌ《麦藁帽子をかぶった子供》も元々、清春白樺美術館蔵で日本に長らくあった作品でしたが、こちらも近年オークションに掛けられて海外流出するところをメナード美術館が救いました。凄いですね。ミレー《一日の終り》もゲットして欲しかったなあ(笑)

さらにジャコメッティの彫刻も新収蔵されたとのことです。メナード美術館 開館25周年記念 コレクション名作展 2013年7月11日(木) ~ 10月6日(日)で合わせて初公開されます。

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