美術展命の男のブログ

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2015年 美術館の収蔵品放出とオークションいろいろ

1月に東京、町田市にある西山美術館に久々に行きました。

西山美術館は高台の上にある施設です。心臓破りの急坂を上がると美術館があるのですが、美術館の目の前に前回来たときにはなかった巨大な水晶を祀る開運神社ができていました。美術館の設立者である館長は、株式会社ナックの創業者で名誉会長の西山由之氏。館長は現在、銘石に嵌っているようです。

初めて訪れた時は、館内にはロダンとユトリロしか展示していなかったと記憶しているのですが、2度目に行ったときは受付のある1階の空間に巨大な銘石が並んでいました。2階と3階はロダン館としてロダンの彫刻だけが並んでいたのですが、現在はロダン・銘石館と名称が変わり、銘石だらけの空間になっていました(汗)。銘石だらけの空間にロダンの彫刻がぽつぽつある感じです。銘石が主役なのでこぶりな彫刻は棚の上の方に追いやられるような感じで、解説文も3mとはいかないものの物凄く高い位置にあり読めませんでした...。4階、5階はユトリロ館としてユトリロの作品だけが開館以来変わらず展示されていましたが、この部屋にもいずれ銘石が展示されたりして...。

こちらの美術館は、ロダンの《考える人》を所蔵していて2階のガラスケースにいつも展示されていたのですが、この時はありませんでした。

後日、オークションに出ているのを知りました。

Nishiyama Museum LE PENSEUR, TAILLE DE LA PORTE DIT MOYEN MODÈLE
オーギュスト・ロダン 《考える人》 1880年 1919年~1925年鋳造 ブロンズ 高さ 71.5cm 個人蔵

サザビーズオークション、ロンドン  2015年2月3日
印象派&モダンアート イブニングセール

予想落札価格 £3,000,000 — 4,000,000 (5億3400万~7億1200万円)
落札価格 £6,309,000 (11億2300万円) £1=178円換算

この作品は、かつてTBSテレビで放送されていた「世界バリバリ★バリュー」という番組に西山氏のご息女が出演されていて、父が購入したロダンの《考える人》の明細を見てびっくりしたという話を紹介していたのですが、その金額は12億円でした。そんなにしないでしょうと思っていたのですが、十分にその価値があるものでした。そして来歴が興味深いです。

Musée Rodin, Paris

Herman d'Oelsnitz (Galerie Nichifutsu Geijijutsu-sha), Tokyo (acquired from the above by 1925)

(possibly) The Prince Takamatsu, Japan (brother of Emperor Shōwa)

Private Collection, Japan (a gift from the above after 1945; thence by descent)

Galerie Tamenaga, Tokyo (acquired from the above in 2003)

Private Collection, Japan (acquired from the above in January 2005)

Acquired from the above by the present owner

エルマン・デルスニス(1882-1941)が1925年にロダン美術館から入手、昭和天皇の弟である高松宮宣仁親王の所蔵を経て(possiblyと付いていますが)、ギャルリーためなが、個人蔵とずっと日本にあった作品です。最後の所有者西山氏は2005年に入手で10年間所有されたということですね。

エルマン・デルスニスを知らなかったのですが、調べてみると国立国会図書館の近代日本とフランス―憧れ、出会い、交流というホームページの中で発見しました。画商・コレクターの活躍という章に出てきます。

エルマン・デルスニスは、1922年にフランスから多数の美術作品を携えて来日した画商。駐仏大使から連絡を受けた黒田清輝の依頼により、当時三越に勤務していた美術評論家・黒田鵬心(1885-1967)が日本側実務担当者となり、第1回仏蘭西現代美術展覧会が実現した。一般の日本人がフランスの同時代美術を鑑賞する貴重な機会を提供した。デルスニスと鵬心は、共同経営による日仏芸術社を設立し、展覧会事業のほか機関誌『日仏芸術』を発行を通じてフランス美術界の動向をリアルタイムで日本へ伝えた。とあります。

そんな人物が日本へもたらし、90年間日本に所蔵されていた貴重な作品だったのですね。国立西洋美術館や東京国立博物館に入っても何らおかしくない作品ですね。日本におけるフランス美術の普及をうつむきつつも見ていたであろう《考える人》ということで日本にとっては資料的価値もあると思います。来歴から見ると初めてオークションに登場したことになります。海外へ行ってしまったかな?少し残念です。

今年は、鹿児島県にある長島美術館の収蔵品の放出が続きました。

nagashima degas
エドガー・ドガ 《水浴》 1894年 パステル・カルトン 49 x 72 cm

サザビーズオークション、ニューヨーク  2015年5月5日
印象派&モダンアート イブニングセール

予想落札価格 $2,500,000 - $3,500,000 (3億~4億2000万円)  $1=120円換算
不落札 

こちらは1987年に購入した作品です。

Paul Klee Zerstörtes Dorf (recto) Ohne Titel (verso)
パウル・クレー 《破壊の町》 1920年 油彩・ボード紙 30.4 x 25.3 cm

クリスティーズオークション、ニューヨーク  2015年5月14日
印象派&モダン イブニングセール

予想落札価格 $700,000 - $1,000,000  (8330万~1億1900万円)
落札価格 $1,505,000 (1億7909万円) $1=119円換算

1988年にスイスのバイエラー画廊から購入。

この作品は、2011年に東京国立近代美術館で開催された「パウル・クレー おわらないアトリエ」展に出品されていて、初めて見ることができました。1度見ただけでもう日本にないのかとちょっと悲しくなりましたが、福岡の画廊が入手したようでどうやら日本に戻ってきているようです。

衝撃だったのが11月のクリスティーズオークションにピカソコレクション3点が出たこと。

nagashima picasso Tête de femme 1900
パブロ・ピカソ 《女の顔》 1900年 油彩・カンヴァス 35.6 x 33 cm

クリスティーズオークション、ニューヨーク  2015年11月12日
印象派&モダン イブニングセール

予想落札価格 $1,500,000 - $2,000,000  (1億8450万~2億4600万円)
落札価格 $3,077,000 (3億7847万円) $1=123円換算

1901年から始まる青の時代を予告するかのような青い色が印象的な作品です。日本にある貴重な初期作品でしたのでとても残念です。1986年に日動画廊から購入した作品でした。

nagashima picasso Tête de femme
パブロ・ピカソ 《女の顔》 1940年 油彩・紙(カンヴァスで裏打ち) 64.5 x 45.7 cm

クリスティーズオークション、ニューヨーク  2015年11月12日
印象派&モダン イブニングセール

予想落札価格 $3,000,000 - $4,000,000  (3億6900万~4億9200万円)
落札価格 $3,749,000 (4億6112万円) $1=123円換算

こちらは1988年にスイスのバイエラー画廊から購入。

nagashima picasso Le hibou sur la chaise
パブロ・ピカソ 《椅子の上の梟》 1947年 油彩・カンヴァス 72.7 x 60 cm

クリスティーズオークション、ニューヨーク  2015年11月12日
印象派&モダン イブニングセール

予想落札価格 $3,000,000 - $4,000,000  (3億6900万~4億9200万円)
落札価格 $5,317,000 (6億5399万円) $1=123円換算

1986年に日動画廊から購入。

長島美術館は、《アンジェル・フェルナンデス・デ・ソートの肖像》1899~99年、《女の顔》1900年、《肘をつく裸婦》1929年、《顔》1940年、《椅子の上の梟》1947年、《アトリエ(カンヌ)》1955年と、初期の具象の人物画から晩年までを追うことができる6点ものコレクションを持っていました。

このピカソ3点だけでもうっとりするような質の高いコレクションです。いずれも未見で散逸してしまったのが悲しい。

翌日のデイセールにはルノワールが登場。

nagashima renoir La Coiffure
ピエール=オーギュスト・ルノワール 《白いブラウスの少女》 1896年 油彩・カンヴァス 27.6 x 22 cm

2014年のオークションでは予想落札価格が高すぎたためか落札されませんでしたが、今回は落札されました。

クリスティーズオークション、ニューヨーク 2014年11月6日
印象派&近代美術 デイセール

予想落札価格 $500,000 - 700,000 (5700万~7980万円) $1=114円換算
不落札

クリスティーズオークション、ニューヨーク  2015年11月13日
印象派&モダン デイセール

予想落札価格 $250,000 - $350,000 (3050万~4270万円)
落札価格 $389,000 (4745万円) $1=122円換算

1989年購入。

長島美術館は、1989年(平成元年10月)に鹿児島市制施行100周年に合わせて開館しました。コレクションは長島企業グループ創立者、長島公佑氏が蒐集したものです。

いずれもバブル期の購入なんですね。これまで日本にあったけど色々厳しいということでしょうか。シャガールの《緑のバイオリン弾き》は、オークションに出たら作家の落札記録を作るであろう名品です。どうか美術館にとどまってほしいです。

昨年のクリスティーズオークション、ニューヨーク 2014年11月6日 印象派&近代美術 デイセールにニューオータニ美術館所蔵の西洋絵画がまとまってオークションに出ましたが、(2014年 美術館の放出)売れなかったものが、今回は評価額を下げたところ落札されました。

suzanne valadon
シュザンヌ・ヴァラドン 《座る裸婦》 1921年 油彩・カンヴァス 92.0 × 73.0cm

クリスティーズオークション、ニューヨーク 2014年11月6日
印象派&近代美術 デイセール

予想落札価格 $50,000 - $70,000 (570万~798万円) $1=114円換算 
不落札

クリスティーズオークション、ニューヨーク 2015年11月13日
印象派&近代美術 デイセール

予想落札価格 $35,000 - $45,000 (427万~549万円)  
落札価格 $68,750 (838万円) $1=122円換算

Andre derain La Jeune Anglaise
アンドレ・ドラン 《座る少女》 1937-38年 油彩・カンヴァス 84.4 × 73.3cm 

クリスティーズオークション、ニューヨーク 2014年11月6日
印象派&近代美術 デイセール

予想落札価格 $40,000 - $60,000 (456万~684万円) $1=114円換算
不落札

クリスティーズオークション、ニューヨーク 2015年11月13日
印象派&近代美術 デイセール

予想落札価格 $25,000 - $35,000 (305万~427万円)  
落札価格 $25,000 (305万円) $1=122円換算

newotani kees van dongen
キース・ヴァン・ドンゲン 《花》 1940年頃 油彩、カンヴァス 115.0 × 146.5cm

クリスティーズオークション、ニューヨーク 2014年11月6日
印象派&近代美術 デイセール

予想落札価格 $300,000 - 400,000 (3420万~4560万円) $1=114円換算
不落札

クリスティーズオークション、ニューヨーク 2015年11月13日
印象派&近代美術 デイセール

予想落札価格 $120,000 - $180,000 (1464万~2196万円)  
落札価格 $209,000 (2549万円) $1=122円換算

ここからは気になったオークションの作品たちについて書きたいと思います。

6月のクリスティーズオークションにモネの《青いアイリス》が出品されました。

monet Iris
左: クロード・モネ 《黄色いアイリス》 1914-1917年 油彩・カンヴァス  200. x 101.0 cm
国立西洋美術館蔵
右: クロード・モネ 《青いアイリス》 1914-1917年 油彩・カンヴァス  200.5 x 100.5 cm
個人蔵

クリスティーズオークション、ロンドン 2015年6月23日
印象派&モダンアート イブニングセール

予想落札価格 £6,000,000 - £9,000,000 ($9,534,000 - $14,301,000)
11億7600万~17億6400万円

落札価格 £10,834,500 ($17,118,510) 21億2356万円 £1=196円換算

一目で国立西洋美術館の《黄色いアイリス》の関連作だとわかる縦長の画面です。驚いたのは評価額。上限が17億円って。《黄色いアイリス》は、1986年度にモーリス・ドニの《雌鶏と少女》と一緒に国立西洋美術館に収蔵されました。2点で1億6000万円でどちらかが少なくとも8000万円はしたということになるという記事を何かで読んだ記憶があったのでなおさらシリーズ作品の評価額に驚きました。《黄色いアイリス》も似た評価額になるのでしょうか。

アイリスの正方形の作品が11月にオークション出ましたが、約7億円で落札。

monet Iris jaunes au nuage rose
クロード・モネ 《黄色いアイリス ピンクの雲》 1924-1925年 油彩・カンヴァス 100.4 x 100.4 cm 個人蔵

クリスティーズオークション、ニューヨーク  2015年11月12日
印象派&モダン イブニングセール

予想落札価格 $6,000,000 - $8,000,000  (7億3800万~9億8400万円)
落札価格 $5,765,000 (7億909万円) $1=123円換算

《青いアイリス》と比べて大きな金額の違いがあるのが謎です。花がもっと描いてあったら高くなったのでしょうか(笑)

5月のオークションにモネの興味深い作品が出品されました。

monet Les meules à Giverny
クロード・モネ 《ジヴェルニーの積みわら》 1885年 油彩・カンヴァス 64.9 x 81.1 cm 個人蔵

クリスティーズオークション、ニューヨーク 2015年5月14日
印象派&近代 イブニングセール

予想落札価格 $12,000,000 - $18,000,000 (14億2800万~21億4200万円)  
落札価格 $16,405,000 (19億5219万円) $1=119円換算

ohara monet haystacks
クロード・モネ 《積みわら》 1885年 油彩・カンヴァス 65 x 81 cm 大原美術館蔵

オークションに出た《ジヴェルニーの積みわら》の画像を見た瞬間に大原美術館の《積みわら》がまず頭に浮かびました。初めて知る作品でした。何かで目にしていたのかもしれませんが、大原美術館の作品に似ているので頭では認識していなかったのかもしれません。積み藁シリーズも他のシリーズ同様沢山ありますが、ここまで似た雰囲気の作品があったとは。

太陽に照らされて明るくなっている所や日陰になっている部分の表現の違いで全く違う絵になっています。オークションに出た作品も素晴らしい作品ですが、日向と日陰の表現でのバランス、筆触の美しさは大原美術館に軍配が上がりそうです。大原美術館の作品は、積み藁が登場する作品中でもトップ級なのではないでしょうか。

大原美術館のホームページを見ると大きな積み藁の手前にいるのは、モネの後妻であるアリス・オシュデとモネの息子ミシェル・モネと推定されていますとあります。オークションに出た作品に描かれた人物も彼らとアリスの子供たちでしょうか。

大原美術館の《積み藁》は、旧松方コレクションだったとのことでもしかしたら国立西洋美術館の常設展に並んでいた作品だったかもしれません。大原美術館に入ったのは、1978年とのことで戦前じゃなかったことに意外だなと驚きました。

毎年、オークションのレコードが更新され驚かされますが、今年も凄かったぁ~。

gogh lallée des alyscamps
フィンセント・ファン・ゴッホ 《アリスカンの並木道》 1888年 油彩・カンヴァス 91.7 x 73.5 cm 個人蔵

79億円 結果を知った時、嘘でしょう!といった感じでした。

2003年、クリスティーズオークションに日本の個人蔵から出品された過去があります。

その時のオークションの結果は

クリスティーズオークション、ニューヨーク 2003年11月4日
印象派&モダンアート イブニングセール

予想落札価格 $12,000,000 - $18,000,000 (13億2000万~19億8000万円)  
落札価格 $11,767,500 (12億9442万円) $1=110円換算

ゴッホのうねるようなあの画面ではありませんが、十分素晴らしい作品だったので随分とお買い得だなとずっと思っていました。

そして2015年のオークションの結果は

サザビーズオークション、ニューヨーク 2015年5月5日
印象派&モダンアート イブニングセール

予想落札価格 要問い合わせ  
落札価格 $66,330,000 (79億5960万円!!) $1=120円換算

チーン。2003年に手放した日本人は暴れたのではないでしょうか。私も悔しいです(笑) 予想落札価格は約48億円といわれていたようですが、この時点でも2003年の価格は何だったのだろうかと思います。アジアのコレクターが落札したそうですが、日本人なわけないですよね。国立美術館に10億越えの作品も収蔵されていますから時期が変わっていたらこのゴッホが国立西洋美術館に入っていたかもなんて思うと...。2003年の日本人コレクターから15億くらいで買えていたらなんて妄想してしまいます。東京国立近代美術館に入ったセザンヌが約18億円ですからね。欲しい人がいたらいくらでも吊り上るのがオークションですが、ちょっとこの作品はいきすぎだと思いました。

picasso Les femmes dAlger (Version O)
パブロ・ピカソ 《アルジェの女たち(バージョン"O")》 1955年2月14日 油彩・カンヴァス
114 x 146.4 cm 個人蔵

クリスティーズオークション、ニューヨーク 2015年5月11日
Looking Forward to the Past イブニングセール

予想落札価格 要問い合わせ  
落札価格 $179,365,000 (215億2380万円!!) $1=120円換算

作家のオークションレコードを更新し、オークション市場における最高落札絵画となりました。

1997年11月、この作品は、20世紀美術を集めた個人コレクションとして質、量ともに20世紀最高、最大とも言われたアメリカの「ヴィクター・ガンツ&サリー・ガンツ夫妻コレクション」からクリスティーズオークションに登場しました。ガンツ夫妻はピカソの情熱的なコレクターであり、傑作が揃っていてこのオークションにはピカソの代表作《夢》なども出品されていました。

ganz.jpg
オークションの開催を知らせるパンフレット (保存状態の良さに笑う)

ganzb.jpg
このオークションの目玉は、やはりピカソの《夢》でした。

クリスティーズオークション、ニューヨーク 1997年11月10日
ガンツ・コレクション イブニングセール

予想落札価格 要問い合わせ  
落札価格 $48,402,500 (61億4710万円) $1=127円換算

61億円ということで当時大いに騒がれました。その後、所有者が誤って肘をついて穴が開くという不幸に見舞われました(笑)
2013年に1億5500万ドル(145億円) $1=94円換算で売却されています。

ganzc.jpg
ガンツ夫妻の質の高いピカソコレクションたち

ganzd.jpg
《アルジェの女たち(バージョン"O")》 は裏表紙に。

1997年の時のオークションの結果は

クリスティーズオークション、ニューヨーク 1997年11月10日
ガンツ・コレクション イブニングセール

予想落札価格 $10,000,000 - $12,000,000 (12億7000万~15億2400万円)  
落札価格 $31,902,500 (40億2500万円) $1=127円換算

18年間で、$31,902,500 (40億2500万円) → $179,365,000 (215億2380万円) 

当時この作品が40億円で、《夢》が60億円 恐ろしく高いと思っていましたが、ここまでになるとは夢にも思いませんでしたわ。今、《夢》がオークションに出たらどうなるのでしょうか(笑)

modigliani Nu couché $170,405,000
アメデオ・モディリアーニ 《横たわる裸婦》 1917-1918年 油彩・カンヴァス 59.9 x 92cm 個人蔵

クリスティーズオークション、ニューヨーク 2015年11月9日
The Artist's Muse: A Curated イブニングセール

予想落札価格 要問い合わせ  
落札価格 $170,405,000 (209億5981万円!!) $1=123円換算

モディリアーニの裸婦の中でも1、2の出来の傑作と言える作品なのではないでしょうか。来歴を見ると今までにオークションで取引がされたことがない作品で、よくこれほどのものが出て来たなと驚きました。

上のピカソ《アルジェの女たち(バージョン"O")》 に次ぐ、オークション市場における落札価格第2位の記録を作りました。落札したのは中国人収集家。日本人も頑張れ~。

大阪新美術館の《髪をほどいた横たわる裸婦》などと並べて見てみたい。

上には上があるもので、絵画取引として史上最高額となったポール・ゴーギャン 《ナフェア・ファア・イポイポ(いつ結婚するの)》 が、カタール王室に約3億ドル(約355億円)で入ったと言われています。そのうち500億円、1000億円も出てくるのでしょうか(笑)

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さようなら クールベ《フラジェの樫の木》 村内美術館

murauchi co
ギュスターヴ・クールベ 《フラジェの樫の木》1864年 油彩、カンヴァス 88.9×111.1cm
クールベ美術館蔵 

2月、村内美術館のホームページに目を疑うニュースがアップされました。

クールベ「フラジェの樫の木」に関しまして

-作品の展示変更のお知らせ-
ギュスターヴ・クールベ 「フラジェの樫の木」
上記の作品は、フランス政府の強い希望により、フランスの国宝と認定され、故郷オルナンに戻ることが決定いたしました。現在当館では展示しておりません。今後はフランス、オルナンのクールベ美術館の所蔵となり、展示される予定です。何卒ご了承下さいますよう、お願い申し上げます。

え?え?どういうこと?つまりもう日本にはないということです...。信じられない!

クールベの有名な《波》が動なら《フラジェの樫の木》は静の傑作です。フラジェはクールベの生地オルナン近郊にあり、クールベ家の所有地でもありました。1本の巨木を画面にどかんと描いた作例は他になく早くから傑作と言われてきた作品です。

アメリカの銀行家、慈善家ヘンリーC.ギブソンが、1896年に画家の妹ジュリエット·クールベから購入し、ペンシルバニア美術アカデミーに遺贈。1987年10月、株の大暴落が起こりフィラデルフィア機関はこの作品を手放します。ブラック・マンデーと言われた翌日のオークションで落札、村内美術館に収蔵されます。

1994年から95年にかけてパリのグラン・パレ、ニューヨークのメトロポリタン美術館で開催された「印象派の起源展」に日本から唯一出品された作品でもありました。

昨年の9月に村内美術館へ行った時は既に展示はされていませんでした。当然気になるから聞きますよね。貸出中なのかなと。答えはいいえ。じゃあ修復中?いいえ。答えを濁すばかり。う~ん。まあピンと来ました。もう戻ってこないなと。でもいざそれが現実のことになるとやはり驚きました。世界的に有名な代表作ですからね。日本に残す努力はしなかったのかな。唯一の救いは個人ではなく美術館へ収蔵されたこと。ただそれだけです。

さもフランスへ返してあげたというような書き方ですけど購入していただいたというのが正しいんです。約4億5千万円で売りに出されたとのことでフランスのクールベ美術館は是非オルナンへこの作品を戻そうと個人に50ユーロでこの作品のオーナーになりませんかと呼びかけます。7月の終わりには半分が集まりその後、見事資金が募ったようで売買が成立したようです。500万ドルで購入されました。ルーヴル美術館なんかでもクラーナハの作品を購入すべく個人へ呼びかけこういったことが行われているようです。日本では聞きませんね。

500万ドル(約4億5千万円)というのはクールベの最高取引額ではないでしょうか。1998年のサザビーズオークションでクールベの名品《ジョーの肖像:美しいアイルランドの女性》が3億9830万円(297万2500ドル/1$=134円)(予想落札価格200万~300万ドル)で落札され作家の競売記録を更新したことがありましたが、それを遙かに上回る金額です。

yoshino courbet
ギュスターヴ・クールベ 《ジョーの肖像:美しいアイルランドの女性》 1872年頃
油彩、カンヴァス 54×64cm 吉野石膏コレクション 山形美術館寄託

2001年に再びサザビーズオークションに登場し、予想落札価格100万~150万ドルと低めに設定され187万5750ドルで落札されています。2億2884万円(1$=122円)。現在、吉野石膏コレクションに入っています。

後から知ったのですが、7月に書かれたこの資金調達を呼びかける記事を見つけました。つまり村内美術館側は黙っていたということです。ひどいなあ。そもそもさよなら展示くらいしてくれたっていいのに。オルナンのクールベ美術館に所蔵されるなんて名誉なことじゃないですか。後ろめたさ全開で黙ってたということですよね。ひどすぎる。何も告知せずにフランスへ行ってしまうなんて。知ってたらさよなら鑑賞に行っていましたよ。

愛知県のマスプロ美術館はセザンヌ、ゴッホ、ルノワール、シスレー、ピカソなどの西洋絵画コレクションを売却する時、わざわざ売りますよー(笑)て告知してくれましたよ。そのおかげで散逸する前に無事見に行くことができました。MASPRO COLLECTIONとしっかり名前を出してオークションで売却していました。会社の宣伝にもなったでしょうね。(笑)陶磁器室と浮世絵室コレクションだけが残り現在も運営されています。日本の企業名をここまで出しての売却はとても珍しい例だと思いました。バブル期に日本に入ってきた作品などはオークションに出る時に日本にあった来歴を消していたりするものも多く、本当の来歴を隠してしまっているのでよくないことなんだそうです。個人蔵でも国名は記載されますが、一時期は日本にあったはずなのに来歴から抜け落ちてる作品をいくつも見たことがあります。たかが来歴ですけど著名人に所蔵されたり華やかな来歴は作品の価値をよりあげることになりさらにきちんとした来歴は真贋問題などにも強いわけです。まあ今回はオークションの取引ではないので関係ありませんが。

murauchi reco
売却されたコレクションたち
1段目:モネ《エトルタ、浜辺とアヴァルの断崖》、《ロンドン、テームズ河、チャリングクロス橋》
2段目:ドガ《浴後の朝食》、ピカソ《卓上の静物》、マネ《芍薬の花束》
3段目:ピサロ《座る農婦とひざまづく農婦》、カサット《赤い帽子の少女》、シャガール《二頭の緑のロバ》
4段目:ボナール《朝食》、ワイエス《ビューティーレスト》

村内美術館は近年、コレクションの放出が激しいのが気になります。この質、この量の西洋絵画が手放されても活動している美術館を他に知りません。

バルビゾン派の村内美術館に1988年モネ、ドガ、ヴュイヤール、カサットなど印象派とその周辺の12点がコレクションに加わりました。フロリダのヘラー夫妻が、美術館に購入されることを希望して売りに出されたコレクションでした。バブルがはじけた以降もマネ《芍薬の花束》、ルノワール《ジャン・ルノワールと一緒のガブリエルと少女》、キスリングの大作《ブイヤベース》など素晴らしい名画がコレクションに加えられバルビゾン派だけでなく印象派、エコール・ド・パリも大変素晴らしいコレクションになっていきました。

ところが悲劇的なことに2000年前後から放出が相次ぎ旧ヘラー夫妻コレクションのモネ《ロンドン、テームズ河、チャリング・クロス橋》、ドガ《浴後の朝食》、ボナール《朝食》などを手放しほぼ残っていません。マネ《芍薬の花束》も2010年に売却されました。他にもクールベ《雪のなかの傷を負った鹿》、ピサロ《座る農婦とひざまづく農婦》、シスレー《ヴヌー・ナドンの冬》、ピカソ《卓上の静物》、シャガール《二頭の緑のロバ》、ワイエス《ビューティーレスト》なども売却されもうありません。一時期は10点と日本一のクールベコレクションを誇っていましたが今は8点となり、9点を所蔵する国立西洋美術館にその座を譲ることになりました。

ルノワール《ジャン・ルノワールと一緒のガブリエルと少女》もオークションに出されますが、不落札に終わり今日も美術館で見ることができます。キスリングの大作は変わりなく展示されています。

しかしこれらの作品が無くなってもまだまだ豊富なコレクションなので展示室は豊かでちっとも寂しくないのが凄すぎる!モネは2点手放したので収蔵がなくなりましたがマネ、ドガ、ピサロ、ルノワール、ボナールなどは2点ずつ所有していたので1点ずつ手放しても作家のラインアップは変わらずにいます。いろんな作家を複数点ずつ持っていた時が凄すぎる上の凄かったんだなと思います。

いつもは作品を売却しても何もお知らせがないのでいまだに上記の画像の作品を所蔵していると思われてる方もいるかもしれません。実際、2002年に埼玉県立近代美術館で開催された「モネからセザンヌへ-印象派とその時代」のカタログの別冊付録に国内にある主要な印象派作品のリストが作られたのですが、コレクションから外れ数年が経っているのに担当者が知らなかったため収録されてしまうことがありました。

もともとバルビゾン派の美術館だしと楽観的に考えていたら遂にクールベも手放してしまったのでただ驚くばかりです。ミレー、コローはどうかそのままで。開館30周年の2012年は大きなイベントもなく2012年度は友の会の新規受付も停止しています。嫌な予感が当たらなければいいのですが。末永く続いてほしい美術館です。

前の記事で2014年に高知県立美術館でミレー展が開催すると書きましたが、巡回先が分かりました。

生誕200年記念 ボストン美術館所蔵 ミレー展

高知県立美術館 2014年2月2日(日)~4月6日(日)

名古屋ボストン美術館 2014年4月19日(日)~8月31日(日)

三菱一号館美術館 2014年10月17日(金)~2015年1月12日(月・祝)

ボストン美術館は「ミレーの世界」というタイトルで会期を以上のように公表してますが、高知県立美術館に問い合わせると名古屋会場は9月中旬まで、三菱一号館美術館は1月15日までとおっしゃっていました。まだ先のことなので会期は変更されることがあります。

ボストン美術館から《種をまく人》が日本へやってきます。名古屋ボストン美術館でのミレー展は2002年以来2度目ですね。今回はミレーだけの作品ではなくバルビゾン派の他作家も並ぶとのこと。ゴッホの出品は無くなりました(泣)ボストン美術館の《種をまく人》が東京で展示されるのは1984年に日本橋高島屋で開催された「田園の抒情と祈り『ミレー展』 ボストン美術館蔵」以来30年ぶり!

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