美術展命の男のブログ

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郡山市立美術館 初の全館コレクション展 前編

郡山市立美術館で開催中の『開館20周年 ベスト・セレクション 所蔵作品日英近代美術名品選』を見てきました。おすすめの展示なので是非皆さんに見ていただきたく紹介させていただきます。

この美術館、17年前からずーと行きたかった美術館なのです。1995年に刊行された「ぴあ 日本の美術館 建物の魅力で訪ねる全国110館」で初めて知り、わずか4ページの掲載でしたが、外観とか石の前庭、館内の様子、イギリス近代絵画のコレクションと魅力的でとても気になっていました。後に他の本やホームページなどでもイギリス近代美術のコレクションの豊富さを知り、さらに魅かれていました。

ではなぜ今まで行かなかったと言いますと、一言で言うとコレクションを一挙に展示した展覧会が見たかったからです。特にイギリス近代美術を。また巡回展の場合、関東で見られることが多く、常設展では毎回テーマごとに内容が変わり、あの作品がある時はこの作品がないといった感じに一部しか見られないのでそれじゃ嫌だと中々足を運ばずにいました。何度も通えよと言われたらそれまでですが、ずらーと並ぶ様子が見たかったのです。なので全館コレクション展示をずーーーと待っていました。そしてついにこの時が来たのです。

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今回の展覧会のポスターとても美しいです。美術館の顔の1つであるサー・ジョシュア・レイノルズの《エグリントン伯爵夫人、ジェーンの肖像》1777年 が使われています。20thの文字には前庭に展示されているバリー・フラナガンの《野兎と鐘》のウサギが。世界につながる名画がある。というキャッチコピーも添えてあります。文字全部が作品の邪魔をしていませんしむしろ引き立てていて、絶妙なトリミングで切り出された絵も作品の魅力をさらに引き出してると思います。上品で美しいです。ホームページにアップされたこの画像を見てますます見に行きたくなりました。しかし会期が9月22日(土)~10月14日(日)と約3週間、実質20日しか開催日がありません。なので早速行ってきました。

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この展覧会だけの為の日帰りの旅。JRバスあぶくま号で新宿駅新南口(代々木駅前)から出発です。東日本はどんよりした天気で代々木駅前に着いたら小雨が...。8:00出発で12:07に郡山駅着ですが、予定より15分ほど早く到着しました。高速で雨もありましたが、郡山は降っていなくて曇りといったところ。郡山駅から美術館のバスの時刻まで時間があったので駅の中のフードコートで喜多方ラーメンを食べて腹ごしらえ。

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郡山駅はJRの乗り換えで改札内で利用したことはあるのですが、外から見るのは初めてです。

いよいよ美術館へ。郡山駅からバスで4kmほど走ります。片道260円。阿武隈川の橋を越えると一気に緑が広がります。市街地とは対照的です。上り坂をしばらく進んで行くと美術館の一部と思しき建物が少し見えました。

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美術館を少し通り越したバス停に到着。かなり高い所まで来ました。画面の奥からやってきました。市街地が遠くに見えます。ずーと坂ですから丸い物を転がしたら果てしなく行ってしまうのでご注意。

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美しい大看板がお出迎えです。この位置からは木が生い茂っていて建物は全く見えません。早く見たい。
敷地内へ入り、石の階段を降りていくと現れました。

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素晴らしい眺めです。本で見たままだ!と感激してしまいました。ずーとこの景色を本の写真だけで見て来たのですから。

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バリー・フラナガンの《野兎と鐘》も本のまま居ます(笑)美術館の周りは森で市街地の喧騒と切り離されていてロケーションもばっちりです。このごつごつした石の前庭を歩きたかったのです。

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美術館はL字型をしていて、この画面の右手にはカフェがあり、展示室のある奥の棟と廊下で繋がっています。画面奥にメイン・エントランス、左奥にサブ・エントランス、カフェの前の廊下に入れるドアと3か所から入館できます。

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メイン・エントランスから館内へ。ひろーい。突き当りが見えないくらい長い廊下が続いています。ピカピカに綺麗な空間です。

館内の廊下では20年間に開催した本展以前の136の展覧会のうち主なポスターが20点ほど掲示されていました。是非全部見たかったですね。

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受付の奥には図書室があります。全国の展覧会のチラシも置いてあります。図書室と同じ空間に棚だけが設置されていて何もないスペースがありました。受付の前にポストカードやカタログなどを販売しているスペースがあるのですが、ミュージアムショップは土日しかオープンしないとのこと。平日でしたのでちょっと残念。

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前庭や館内探検をしていたらあっという間に1時間経ってしまいました。早速展示室へ。

全館コレクション展ですが、2Fの常設展示室は普段通りに、1Fの企画展示室ではコレクションで構成された展覧会になっています。常設展料金、一般料金200円で見られます。常設展のチケットではなく本展用にきちんとチケットが作られています。絵は使われていなく文字だけのデザインですが、こういうところ嬉しいです。この展覧会を見たという記念になりますからね。

展示空間に入った瞬間、息を呑みました。18世紀、19世紀のイギリス絵画がずらーと一気に並んでいます。あ~これを見に来たんだぁとしみじみ。トマス・ゲインズボロ、ジョン・コンスタブル、ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー、ウィリアム・ホガース、サー・ジョシュア・レイノルズ、ジョセフ・アルバート・ムーアなどの名品がずらりと...。こんな並びで見られる美術館日本で他にありません。国立西洋美術館も真っ青です。しかも全ての油彩の額にガラスが嵌め込まれておらず、柵の設置もありません。間近でディティールを直に楽しむことができます。本当に贅沢です。10数点の最初の空間だけで40分いました(笑)

普段の常設展では、油彩、水彩、版画どれかに比重が大きく傾くことが多いようですが、今回は、版画は2階の常設展で、油彩と水彩を企画展示室でどーんと展示しているのでどのジャンルも大満足のボリュームです。

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左:ジョン・コンスタブル《デダムの谷》1802年 油彩・紙、キャンバス 51.5×61.0cm
右:参考図版 ジョン・コンスタブル《デダムの谷》1805-17年頃
油彩、キャンバス 52.8×44.8cm 栃木県立美術館

空気まで伝わってくるようような画面に思わず足を止めます。
描かれているのはイギリス東部、サフォークとエセックスの州境付近、コンスタブルの故郷です。彼の通った小学校はデダムの村、画面中央の塔の見える教会の隣りにありました。通学路だった高台からの眺めとのことですが、めちゃくちゃ遠いですよね...。数十分、1時間以上歩いて登校していたのでしょうか。橋の袂の家は、現在レストランになっています。彼はこの眺めからの作品を何点も残しており近くでは、栃木県立美術館が所蔵しています。栃木県立美術館の作品と比べると郡山市立美術館の作品はラフに描かれています。手前の木々や崖などは印象で描いたような大胆さがあります。崖の表現がクールベのようでもありました。雲や空の表現もお見事です。ミレーをはじめとするバルビゾン派、印象派にも影響を与えることになります。

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参考図版 ジョン・コンスタブル《デダムの谷》1802年 ヴィクトリア&アルバート美術館

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ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー《カンバーランド州のコールダー・ブリッジ》1810年
油彩、キャンバス 91.9×122.9cm

ずっと実物を見たかった作品です。想像以上に大画面で驚きました。ターナーの画業の始めの方の作品であり、晩年の霧がかった作品ではありません。のちのターナーの絵でよく見る細く長く伸びる木に目が留まります。奥に見える森の霞み具合が絶妙で中景の木々と奥の森の間に光と空気が流れているように見える作品でした。この辺りを見るとのちのターナーを既に予告しているかのようです。実物は光が溢れていて本当に綺麗な絵でした。画像とは印象が全く違いました。是非実物を見ていただきたい作品です。画面右下には鴨?が遊んでいます。

ターナー20代前半の本当の最初期の水彩画と晩年のこれぞターナーという水彩画も合わせて見ることができます。

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サー・ジョシュア・レイノルズ《エグリントン伯爵夫人、ジェーンの肖像》1777年 
油彩・キャンバス  238.9×146.8cm

この作品も本当実物が見たかった絵です。ついに会えた。20歳の伯爵夫人の肖像画です。音楽の守護聖人セシリアとして描かれています。展示されていた中で最も大きな作品で、神々しくオーラを放っていました。バーン=ジョーンズ《フローラ》と並ぶ日本にあるのが奇跡とも言える郡山市立美術館の二大看板娘です。

衣装の光沢なんかも見事としか言いようがありません。近くで見ると大胆な筆さばきですが、離れてみると光り輝くドレスがそこにあるのです。サイズ、構図、モデルなど何をとっても素晴らしくレイノルズの肖像画の醍醐味を十二分に味わえる名品です。レイノルズによって描かれた女性像の多くは豪華な衣装に白髪のかつら?、そして真っ白な肌のイメージがあり、何だかいかにも遠い過去の人もしくは亡霊を見ている感じもするのですが、この作品は血色がよく温かみが感じられ、顔の造りも日本人に受けそうな感じで設定はもちろん古いのですが、不思議と現代的でもあります。人気の秘訣はここかな?なんて思いました。テート・ギャラリーが頂戴と言ってきそうな名品だと思います。

その横にレイノルズの肖像画にも通じるような作品がありました。サー・トマス・ローレンス《ラビー・ウィリアムズ牧師》1790年代。ぷるぷるしてそうな唇とか生き生きとした大きな目、肌も瑞々しく生きてる人が額の中にいるかのような描写にびっくりな絵で、多くの人が足を止めてじっくり見入っていました。群を抜く技巧で若い頃より注目され人気を得て、レイノルズにアトリエでの研究を許されたとのことでなるほどと思わせる絵でした。

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左:アルバート・ジョセフ・ムーア《黄色いマーガレット》 1881年 油彩・キャンバス 65.6×50.2cm
右:参考図版 アルバート・ジョセフ・ムーア《ジャスミン》 油彩・キャンバス 66×50cm 個人蔵

日本にある唯一のムーアではないでしょうか。この作品もよくぞ入手してくれたという名品です。2011年、目黒区美術館で開催された「ラファエル前派からウィリアム・モリスへ展」以来の再会です。

彼の得意とする古典的主題の絵です。気だるい雰囲気が甘美なる世界へと誘ってくれます。顔は丁寧に描かれていますが、衣装の描き方がとてもラフで下の地が見えそうで未完?とも思えますが、似た同様の作品も衣装はこのように描かれているのでこういうスタイルなのでしょう。この衣も少し離れてみると画面にうまく溶け込みます。ホイッスラーから受けたジャポニスムの影響は扇子にも見られます。扇子は平安時代の日本発祥と言われてますからこの衣装のような古代の雰囲気の絵にあったら本当はおかしいんですよね。(笑)でもそんなことはどうでもよくなる美しい作品です。

非常に非常に残念なのが、ここに必ず並んでいたであろう作品のいくつかが貸出中なのです。美術館の至宝、サー・エドワード・コーリー・バーン=ジョーンズ《フローラ》と《アヴァロンにおけるアーサー王の眠り》は三菱一号館美術館、兵庫県立美術館、郡山市立美術館を巡回する「バーン=ジョーンズ展」に出品されており現在、兵庫県立美術館へ。さらにダンテ・ガブリエル・ロセッティ《マドンナ・ピエトラ》、ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス《フローラ》は、先日ブログで紹介した岐阜県美術館、新潟県立近代美術館、姫路市立美術館を巡回する「象徴派展」に出品されていて現在、新潟県立近代美術館に行っています。これは本当にガーンです。知ってて来ましたがガーンです。幸いいずれも最近目にすることができましたが、やはりこの展示空間で一緒に見たかったです。

1作家1点ではなく複数所有しているのもとても凄いことです。例えばゲインズボロは、油彩の風景画と肖像画、さらに丹念に描かれた鉛筆による風景画、ターナーは油彩の風景画と水彩の風景画2点、レイノルズは油彩の肖像画2点、バーン=ジョーンズは油彩、グワッシュ、チョークなど。そして彼らの多くの版画作品も所蔵しています。今回これら全てが展示されていたわけではありませんが、様々な画材による技法、違う時代の作品でその作家の作品を鑑賞できる素晴らしいコレクションです。

後編へ続く

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東京富士美術館と村内美術館 八王子 後編

続きまして、村内美術館の紹介です。村内美術館は、(株)村内ファニチャーアクセス会長、村内道昌氏の蒐集してきた西洋絵画を展示、公開するために、1982年11月に開館しました。なので今年は30周年なんですね。花の82年組です。 中森明菜、早見優、堀ちえみ、石川秀美、小泉今日子と同期です。

「家具は村内 八王子」というキャッチフレーズが有名な家具屋さんの中に美術館があります。1995年3月に新館がオープンし現在に至ります。以前の美術館の時代にも行ったことがあります。こじんまりとしていて独特な雰囲気のある展示室だった気がします。売り場へ通じる階段へ向かう通路の電気が一切付いておらず真っ暗で怖かった思い出があります(笑)

村内美術館といえば、バルビゾン派コレクションで有名な美術館です。日本の三大バルビゾン派コレクションといえば、山梨県立美術館と姫路の中村コレクション(非公開)、そして今回紹介します村内美術館です。バルビゾン派の作品を所有する美術館はいくつもありますが、質、量でこの3コレクションに迫るものはありません。

村内美術館はバルビゾン派だけではなくアカデミスム、印象派、エコール・ド・パリ、現代フランス絵画さらにロダン、ブールデル、マイヨールなどの彫刻と19世紀から20世紀にかけてのフランス美術を楽しめる美術館でもあるのです。7部屋に分かれて展示されています。

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※館内の画像は、美術館の許可を得て撮影、掲載しております。

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ホールには彫刻が点在しています。

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早速、展示室へ。館内はクラシック音楽が流れています。落ち着いた空間で上質な一時を過ごせること間違いありません。最初の部屋は、シャルル・フランソワ・ドービニーやテオドール・ルソーが迎えてくれます。ドービニーが1855年にパリ万博に出品した《オプトゥヴォスの水門》のヴァリアント作品や1867年のパリ万博の美術展に出品して一等賞を得た8点中の1点である代表作《ボニエール近郊の村》やルソーの傑作も展示されています。ルソーの作品でいつも魅入ってしまう作品があります。広い大地に民家と夕暮れを描いた作品なのですが、雲から漏れる夕暮れのオレンジが何とも美しく一日の終わりをしみじみと味わうような絵です。

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次の部屋にはナルシス・ヴィルジル・ディアズ・ド・ラ・ペニャ、コンスタン・トロワイヨン、ジュル・デュプレ、シャルル・エミール・ジャックなどが並びます。トロワイヨンやジャックの絵から羊が飛び出してきています。(ロビーや階段にもいたな)彼らに名前が付いてるので会場で探してみてください。またこの部屋に美術館の収蔵品第一号の作品があります。これも探してみてください。

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次の部屋は、いよいよこの美術館の目玉であるミレー、コロー、クールベの部屋です。エコール・ド・パリの作品が展示されている部屋まで3部屋がまっすぐ続く空間です。広いしわくわくします。(笑)

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山梨県立美術館のミレーコレクションは農民画をメインにしたコレクションと言えますが、村内美術館は初期の肖像画がメインになっているコレクションです。山梨県立美術館の《種をまく人》1850年が、日本の美術館にあるミレーの農民画の代表だとしたら肖像画の代表は間違いなく《鏡の前のアントワネット・エベール》1844-45年でしょう。
日本の美術館でというよりミレーの画業でも重要な肖像画の傑作として知られています。

この作品は、1986年、海外のオークションでヒューストン美術館と最後まで競い合って手に入れた作品です。本作を中心にした特別展を計画中であったヒューストン美術館から早速貸出依頼があり、ゆっくり堪能する間もなく1年近く手放すことになったのだとか。よくぞ落札してくださいました!ちなみに東京富士美術館所蔵のシャルダン《デッサンの勉強》とヒューストン美術館所蔵の《良き教育》は対作品で、三菱一号館美術館のシャルダン展で一緒に展示されています。お隣りの美術館のことですけど何だか面白い縁ですね。

ミレーは1845年頃までは、故郷シェルブールを中心に活躍した若手随一の肖像画家でした。総数約500点と推定されているミレーの油絵のなかで、1971年刊行のミレーの肖像画カタログには127点が登録されています。その後かなりの数が発見されたそうで肖像画が大きく比率を占めていることが分かります。
肖像画カタログには子どもを描いた作品は10点ほどしか登録されていないのでその少なさに驚きです。
この作品は、ルーヴル美術館に所蔵されているベラスケスの《マルガリータ王女》を参照した跡が色彩やタッチの工夫に表れていることを度々指摘されています。鏡の額縁の金色の表現の見事さ、鏡を覗き込む少女の顔、汚れた足の裏、鏡に浮いて見えるF.Milletのサインなど微笑ましくとても興味深い作品です。

モデルになった当時6歳の少女は、ミレーのシェルブールの親友フェリックス・フーアルダンの妻の連れ子でした。彼の肖像画は青山ユニマット美術館に所蔵されていましたが、閉館してしまったので現在行方不明です。

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※参考図版 村内美術館の所蔵品ではありません
左:《フェリクス・フーアルダンの肖像》
右:《犬を抱いた少女》1844-45年 油彩・カンヴァス 65.5×54.5cm
共に青山ユニマット美術館旧蔵

青山ユニマット美術館はもう一点肖像画を所蔵していました。《犬を抱いた少女》という作品です。このモデルについての記録は伝わっていませんが、《鏡の前のアントワネット・エベール》のモデルと特徴のある輪郭がそっくりなのです。フーアルダン家に嫁いだ夫人のもう一人の連れ子の可能性もあるそうです。この夫人には2人の子どもがいたとのこと。アントワネットが姉で、《犬を抱いた少女》のモデルは妹である可能性もあるそうですが、肖像画の様式、寸法が全く違うので対作品である可能性は低いものの意識的にそう描いたかもしれないとのこと。真相は藪の中。この少女2人が姉妹だったとしたら2年ちょっとですが、義父と妹は青山ユニマット美術館があった港区に、アントワネットは八王子市に住んでたことになりますね。妹?の資料が見つかるといいですね。

ミレーの2人目の妻カトリーヌ・ルメールを描いた唯一の油彩が村内美術館にあります。死別した最初の妻、ポーリーヌ・ヴィルジニ・オノの肖像は油彩だけでも4点あるので対照的です。そのうちの1点は山梨県立美術館にあります。

肖像画だけではなく油彩《羊飼い》やパステル《羊毛を紡ぐ少女》も所蔵しています。油彩7点、パステル1点、チョーク、鉛筆画、デッサンなど6点、版画9点が展示されています。

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コローは油彩の風景画6点と人物画3点の計9点も所蔵しています。画業の最初の方から晩年までを網羅しており、作風の違いも楽しむことができます。コローといえば抒情性のある銀灰色の画面が有名ですが、村内美術館はそれだけじゃないんです。

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コロー《ヴィル=ダヴレーのカバスュ邸》1835-40年 油彩・カンヴァス 35.0×26.5cm

コローコレクションの白眉はやはり《ヴィル・ダヴレーのカバスュ邸》です。ヴィル・ダヴレーは、パリの中心から西に12km、車で20分足らずのところにある小さな町です。大小二つの池の周りを森となだらかな丘が囲む風光明美な地です。1817年、コローの父が池のほとりに家を購入しました。屋敷まで続く一本の道を中央に、両端に木々を描いた作品です。夏の強い日差しを浴びて木漏れ日もくっきりと出ています。道は光が反射して眩しそうなくらいです。小品ですが、コローの前半生の傑作です。ルーヴル美術館も喉から手が出るほど欲しい作品だと思います。コローはヴィル・ダブレーで160点もの作品を描きました。ヴィル・ダウレーの景色に焦点を当てた展覧会を是非見てみたいものです。
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※参考図版 ヴィル・ダヴレーいろいろ 村内美術館の所蔵品ではありません

風景画だけでなく人物画3点も画業の前半の方の作品、晩年の作品とあり見所になってます。

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そしてクールベコレクションも凄いんです。風景、人物、静物と9点が揃ってます。鹿、波、シヨン城とクールベの代表的なモティーフも描かれています。国立西洋美術館もクールベコレクションは負けていません。風景、波、動物、女性、裸婦など9点所蔵しています。日本のクールベコレクションの双璧です。どちらも素晴らしくて甲乙つけられません!

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クールベ《シヨン城》1874年頃

亡命したスイスでレマン湖畔に建つシヨン城をクールベは何度も描いています。カタログ・レゾネには21点が掲載されており、遠景から捉えた作品がA群4点、中景から捉えた作品がB群14点と分類されています。あとの3点は??

遠景から捉えた作品は湖面が穏やかでシーンとした雰囲気があるのですが、こちらの作品は湖面が激しくざわついています。重々しいです。ここは政治犯が収監されていた歴史があり、パリ・コミューンに参加し、投獄されたこと、亡命してきた自分と重ねて見ていたのでしょう。

遠景から捉えた作品はりんどう湖ファミリー牧場内にあるりんどう湖ギャラリーで見ることができます。閉館した青山ユニマット美術館にも所蔵されていました。

世界的に有名な《フラジェの樫の木》や非常に珍しい大作《ボート遊び(ボドスカーフに乗る女)》、さらに国内ではほとんど見られない静物画のしかも名品など大変素晴らしいコレクションになっています。

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次の部屋に行くと家具が置いてあります!さすが家具屋さんですね。もちろん座ってゆったりと鑑賞できます。お金持ちの家に来たみたいでわくわくしますね。この部屋はアカデミスムの巨匠ウィリアム・アドルフ・ブーグローやジャン=ジャック・エンネル、ファンタン・ラトゥール、ゴッホが影響を受けたモンティセリなどの作品が掛かっています。バルビゾン派でもない印象派でもない同時期に活躍した画家たちです。彼らの作品は日本の美術館で見る機会が本当少ないので残念ですが、ここではたっぷり堪能することができます。

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次の部屋は印象派からエコール・ド・パリまでの作品がずらりと並んでいます。マネ、ブーダン、ルノワール、ピサロ、ドガ、ルノワール、ボナール、ヴラマンク、ルオー、ローランサン、ユトリロ、キスリング、マルケなどなど
こちらの部屋も家具が配置されていて本当に素敵な空間です。

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ルノワール《ジャン・ルノワールと一緒のガブリエルと少女》1895-96年

円熟期の傑作《ジャン・ルノワールと一緒のガブリエルと少女》も所蔵しています。ルノワールの次男ジャンと妻アリーヌの従姉妹ガブリエルと近所?の少女が描かれています。ガブリエルは次男のジャンや三男クロードの乳母、家政婦として1894年から20年間ルノワール家に住みリューマチで不自由な体のルノワールの世話もしました。これは母と子の絵ではありませんが、多くの人が母と子、もしくは家族の微笑ましいひとときを描いたものと思うことでしょう。一緒に暮らして1年以上経った頃でガブリエルはこの時、既に立派な家族ですね。100年以上経った今も変わらず家族愛の素晴らしさを讃えている傑作です。

1997年か98年の秋頃だったでしょうか。収蔵されたのを知って大変驚いたのを覚えています。新聞にも掲載されました。この作品が日本にあるのは本当誇らしいです。驚いた理由に永谷園のお茶漬けの袋のバーコードかマークかを集めて送るとトランプサイズのカード型の複製画が沢山入ったものを貰える謎のプレゼントがあったんですね。わかる人だけ付いてきてください。(笑)その中にこの絵も含まれていました。村内美術館に収蔵される何円も前の話です。いい絵だなと思っていたのですが、個人蔵ですから見ることもないだろうと思っていたら村内美術館に収蔵されたので感激しました。バブル期に日本に入ってきていたようですが、その後村内美術館の所蔵品になりました。

この作品には関連するパステル作品もあります。左の少女の部分だけ切り落としてオレンジがおもちゃに変わった油彩も何点かあります。オランジュリー美術館やワシントンナショナルギャラリーなどに所蔵されています。登場人物や色彩も全く違うものの3人が寄り添う似た構図の油彩もあります。この題材を気に入って描いていたというのがよくわかります。様々な似た作品中でもやはりこの作品は最も素晴らしいものでしょう。

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※参考図版 村内美術館の所蔵品ではありません

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左:《ガブリエルとジャン》 1895-96年 オランジュリー美術館
右:《子どもとおもちゃ-ガブリエルと画家の息子、ジャン》 1895-96年 ワシントン・ナショナル・ギャラリー

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ブーダン、ルノワール、ファンタン・ラトゥール、ピサロ、ヴラマンク、マルケ、ユトリロ

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ローランサン、パスキン、ヴラマンク、キスリング、ブールデル

村内美術館のキスリングは国内でも5本の指に入る傑作ではないでしょうか。大阪市立美術館準備室所蔵の《オランダ娘》も傑作だなぁと思いますが、モンパルナスのキキの裸体画と魚介を画面いっぱいに描いた《ブイヤベース》も傑作です。特に《ブイヤベース》はキスリングファンでなくてもその迫力に思わず立ち止まらせてしまうような迫力のある絵です。

次の部屋は紙作品の部屋です。ミレーの素描やパステル、版画などが纏めて展示されています。アレクサンドル・ガブリエル・ドゥカンのかわいい《猿の理髪師》も必見です。ミレーの素晴らしいパステル画など紙作品でも常設されていていつでも見られるのがとても嬉しいです。

最後の部屋はフランス現代美術の部屋。

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パッと明るく解放的な空間です。ビュフェ、ブラジリエ、カシニョール、カトランなどの大作がずらりです。中央のテーブルにカタログが置いてあります。ここでカタログを見ながら休憩してもう一周というのがいつものパターンです。

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美術館のもう一つの楽しみ、ミュージアムショップもあります!ポストカードやクリアファイルはもちろん傘やアクセサリーなど品揃え豊富です。書籍も色々置いてあります。 鑑賞の後の思い出に是非どうぞ。

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ホールの横に緑が望める休憩室もあります。こちらも素敵です。鑑賞の余韻に浸れます。

村内美術館は水曜日が休館日なので行かれる方は気をつけてください。東京富士美術館は月曜日です。両方見たいという方は要注意です。昔、村内家具店の臨時休業の日に行ってしまい店の前で茫然と立ち尽くしとんぼ返りしてきたことがありました...。東京富士美術館は展示替え中でそちらも見られず...とにかくお気を付け下さい。

JR八王子駅北口から村内家具店までの無料シャトルバスも出ています。ちょっと遠いかなと思われがちな八王子の2館の美術館ですが、来てよかったと必ず思わせてくれる美術館です。お近くの方も遠いという方も是非訪ねてみてください。

東京富士美術館と村内美術館 八王子 前編

東京・八王子にあります、東京富士美術館と村内美術館に行ってきました。東京でのみ開催という大型の展覧会もよくありますから東京へは全国から多くの人がそれを見に来ると思います。こういった展示は、上野の東京都美術館や東京国立博物館、国立西洋美術館とか六本木の国立新美術館など東京23区でも東京駅から見て本当に近い施設ばかりです。ブリヂストン美術館、三菱一号館美術館などは東京駅から徒歩すぐです。特別展ではなくて常設展が凄い美術館を紹介したいと思います。

今回、紹介する2館は東京駅から遠いです...が、どちらも日本一と言っていい分野を持つ本当におすすめの美術館です。ちなみにどれくらい遠いのかと言いますと、滋賀県のMIHO MUSEUMは電車で京都駅から石山駅まで15分、そこからバスで50分。愛知県の豊田市美術館は電車で名古屋駅から豊田市駅まで50分ちょっと、そこから徒歩15分ほど。八王子の東京富士美術館と村内美術館は電車で東京駅から八王子駅まで50分、そこからバスに乗り20分ほど。こんな感じです。駅から見て村内美術館の方が少しだけ近いです。両館は1kmちょっとの距離なので徒歩15分もあれば移動できます。

まず、東京富士美術館から。東京富士美術館は1983年に開館した美術館です。日本・東洋・西洋の各国、各時代の絵画・版画・写真・彫刻・陶磁・漆工・武具・刀剣・メダルなど様々なジャンルの作品約30、000点を収蔵しています。コレクションの幅の広さから日本のメトロポリタン美術館みたいな感じです。2008年に西洋絵画を常設する新館ができ、特別展の時は見られなかった西洋絵画コレクションがいつでも鑑賞できるようになりました。ただ全ジャンルがいつも展示されているわけではありません。西洋絵画以外は、本館で開催する所蔵品による展覧会という形で紹介されることが多いです。

西洋絵画コレクションは、15世紀のイタリア・ルネサンス絵画から20世紀美術まで5世紀にわたる西洋絵画史を、ほぼ一望できる内容となっています。特にルネサンスから18世紀のオールド・マスターの絵画【ドメニコ・ギルランダイオ、ルーカス・クラーナハ(父)、アルブレヒト・アルトドルファー、ジョルジュ・ド・ラトゥール、ピーテル・ブリューゲル(子)、ペーテル・パウル・ルーベンス、アンソニー・ヴァン・ダイク、フランス・ハルス、カナレット、ジャン=オノレ・フラゴナール、フランソワ・ブーシェ...】は日本の美術館ではほとんど所蔵されていない作家ばかりか名品が揃っており、国立西洋美術館のオールド・マスターコレクションを凌駕すると言ってもいいくらいの質です。現在、本館は改修工事の為、2013年3月末まで閉鎖していて新館のみの展示となっています。

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※会場内の画像は、美術館の許可を得て撮影、掲載しております。

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ジョルジュ・ド・ラトゥール《煙草を吸う男》1646年 油彩・カンヴァス 70.8×61.5cm

2003年度、国立西洋美術館に《聖トマス》が収蔵されるまで日本に唯一所蔵されていたラトゥールの名品です。息子の手が入っているとも言われていますが、個人蔵にある模作と比べると出来に雲泥の差があり、巨匠にしか描けない仕事だなと思わせる逸品です。

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ピーテル・ブリューゲル(子)《農民の結婚式》1630年 油彩・板 73.0×104.0cm

ピーテル・ブリューゲル(父)による《農民の結婚式》(1658年頃、ウィーン美術史美術館蔵)のコピー作品の1つです。(父)の絵は屋内での結婚式になっていますが、(子)の本作は戸外になっています。間違い探しみたいですね。ブリューゲル(子)の絵は単なる模作の範囲を超え、西洋美術史にしっかりいるのが面白いですね。(父)以上に作品が存在していて世界中の人が(父)の作品より(子)の作品の方を多く見ていると思います。オリジナルを超えたオリジナル?というのでしょうか。片栗粉(笑)みたいな。不思議な感じです。(父)の作品の希少性、オリジナリティには敵いませんが、 近年は、(子)の作品も億を超えて取引されていて凄いなあと思います。
ピーテル・ブリューゲル(子)の弟、ヤン・ブリューゲル(父)の作品も展示されています。何で親と子、同じ名前をつける習慣があるのでしょうね。ややこしいわ!

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東京富士美術館は、ロココのコレクションも凄いんです。シャルダン、ヴァトー、パテル、ナティエ、ブーシェ
、フラゴナール、ヴィジェ・ルブランなどなど国立西洋美術館は太刀打ちできません。名古屋のヤマザキマザック美術館が開館するまでは、日本で唯一の纏まって見られるロコココレクションでした。日本でロココといえばこの2館が双璧でしょう。ライバルです。バチバチ。画面左のブーシェの大きな作品は約2m四方もあります。近くで見るととても大胆な筆さばきなのがわかるのですが、離れて見ると上手く溶け込んで素晴らしい調和を見せています、元々離れて見るような位置に掛けられていたのでしょうか。

シャルダンは三菱一号館美術館で開催中の「シャルダン展」に貸出中です。

次の部屋にはドラクロワが3点、ターナー2点をはじめ(この時点で凄い)クールベやコロー、ミレーなどの作品が掛けられています。

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そして自慢の印象派の部屋です。今回、モネ1点、ルノワール1点、ピサロ3点、ゴッホ1点などが貸出の為下げられていましたが、マネの傑作《散歩》を中心にブーダン、モネ、ルノワール、セザンヌ、シスレーなどの名品がずらりと並んでいます。現在展示してありませんが、カサットやモリゾなど女性印象派画家を所蔵しているのもこの美術館の凄い所。カイユボットもブリヂストン美術館が今年取得するまでは日本で唯一の所蔵館でした。

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東京富士美術館のシンボル的存在のマネ《散歩》です。黒を嫌った印象派の画家たちとは対照的に黒を上手く操る画家の腕が光る晩年の傑作です。黒と鮮やかな緑、素早い筆さばきが見事です。

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モネ《睡蓮》は朝靄がかかったように白く霞んでいます。印刷物にするのが凄く難しい作品とのことです。
その隣にあるシスレー《牧場の牛、ルーヴシエンヌ》は1874年の第一回印象派展に出品された5点の風景画のうちの1点です。構図、描き方、色彩とどれをとっても素晴らしく後年の荒いタッチの作品とは印象がかなり違います。素晴らしい名品です。

次の部屋は普段、エコール・ド・パリや20世紀の巨匠たちの作品が展示されているのですが、9月23日(日)までウフィツィ美術館 ヴァーチャル・ミュージアムが開催されています。ウフィツィ美術館所蔵のルネサンス時代の名画を実物大でデジタル技術により鑑賞することができる展覧会です。日立のDigital Imaging Systems(DIS)技術だそうです。

複製画の展覧会かよ!と胡散臭いわぁと入場しました。複製画は好きなのですが、銀座で開催されていた「フェルメール 光の王国」の小さいネガから拡大したのか画素数は粗いのはあるし、額の再現が適当であまりにひどくお金を取って公開するものでは決してなかったので憤慨しておりました。

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複製画へ近寄ってみるとまず色彩が超超超綺麗です。印刷のドットが見えない!何これと動揺してしまいました。ただの写真ではなくどの部分を見てもピントがあっていて画面の細かい部分まではっきり写っています。10点あったうちの3点がもはや印刷物に見えない領域に入っていました。

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ボッティチェリ《ヴィーナスの誕生》の中央のヴィーナスの部分も綺麗なのですが、右側にいるホーラの描かれたあたりが印刷物を前にしてるとはとても思えず、驚愕でした。

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2008年に国立西洋美術館に来たティツィアーノ《ウルビーノのヴィーナス》です。国立西洋美術館ではガラス越しでしたが、こちらはガラスなしで(笑)絵の具の凹凸がないので実物と違うのは当たり前ですが、女中が描かれた辺りを凝視していても複製画の感覚が全くなく本物を目の前にしてると思ってしまう出来です。


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一番驚いたのは、ラファエロ「ヒワの聖母」でしょうか。複製画に見えない(泣)衣装の青い布が画面から発光するかのごとく美しく鮮やかな青色をしていて呆然と立ち尽くしてしまいました。どうなってるの?って感じです。逆に怖いわ!!という感じです。作品の横にモニターが設置されていて見所を紹介してくれています。

複製画でこんなに驚いたのは初めてでした。元々描かれた作品の画面との相性があるのか色彩は美しくても複製画とすぐわかるものもありましたが、複製画に見えないのもありましたから本当にこれは面白いです。国立新美術館にフェルメール《牛乳を注ぐ女》が来た時は、小さな画面にも関わらず理解できないほど遠くから見るという悲惨な展覧会でした。この複製画を飾ってもわからないと思います。レオナルド・ダ・ヴィンチ《受胎告知》も美しい色彩でしたが、複製画とわかる画面でした(それを当てる展示ではありません)

ほとんど実物を見たことのない古い時代の作品でしたが、近代の作品でも再現してみてほしいですね。印象派辺りになると筆致が大きく絵の具の凹凸がネックですかね。変にのっぺりしちゃったりして。こんな素晴らしい複製画の展覧会ならもっと見てみたいと思いました。

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感動的再現であります!


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東京富士美術館はナポレオンコレクションも凄いんです。

特集展示 ナポレオンの美術 9月28日(金)~12月24日(日)が間もなく始まります。
ナポレオンの肖像画や皇后ジョゼフィーヌの宝冠などが展示されます。
東京富士美術館では久々の纏まった展示です。お見逃しなく。

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国内で東京富士美術館の所蔵作品による展覧会が2つ開催されます。

兵庫陶芸美術館では9月8日(土)~11月25日(日)まで『日中国交正常化40周年記念 東京富士美術館所蔵 中国陶磁名品展』

福島県文化センターでは9月29日(土)~11月4日(日)まで『愛、命、絆...洋画の巨匠たち~東京富士美術館名作100選』

お近くの方は是非見に行ってみてください。

岐阜県美術館 『象徴派展』を見に行く その6

第4章 装飾芸術

次の部屋へ入ると少し暗めで雰囲気ががらりと変わります。ガラスケースが美しく並ぶ空間が現れました。印刷芸術や彫刻、工芸作品などアール・ヌーヴォーメインの部屋です。ガレのガラス作品と家具、ドームのガラス作品、ミュシャやロートレック、ボナールらのポスター、ロダンの彫刻などが並びます。

アール・ヌーヴォーの主要なモティーフになったのは自然です。自然は、機械がもたらす合理的で幾何学的な形態と相対するものである一方、ガレの作品に見られるように、19世紀の植物学や海洋学など最新の科学を反映したものでもありました。

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※展覧会場内の画像は、主催者の許可を得て撮影、掲載しております。

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エミール・ガレ《アルプスのアザミ》1900年頃 ガラス 個人蔵(黒壁美術館寄託)

この作品は、1900年のパリ万博に《アルプスのアザミ》で出品された作品のヴァリアントで、2010年に日本で公開されるまで幻の名品と称せられてきました。

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オーギュスト・ロダン《疲れ》1887年頃

大理石 高さ24.8×幅52.0×奥行18.5cm 新潟県立近代美術館・万代島美術館

1880年ロダンは政府からパリに新しく建設される装飾美術館の門扉の制作を委嘱されます。のちに《地獄の門》と名付けられるこの作品は完成にいたらず、88年政府は契約を破棄します。門を埋め尽くす200点に迫る群像のために作られた無数の作品は、《考える人》をはじめとして数々の独立した傑作を生みます。この作品もこれに派生した作品です。日本の美術館ではあまり目にすることがない貴重なロダンの大理石彫刻です。

1887年、スコットランド初の万国博覧会の委員会が、当地に建設予定の新美術館のためにこの作品の購入を決定したという情報があったらしいのですが、実際にはグラスゴーが購入するところとなりませんでした。よかった。でなければ新潟県立近代美術館に所蔵されてませんからね。

ちなみにこの作品は1992年度に3500万円で購入されています。今なら3倍はすると思います。お買い得?同じ年にモネ《コロンブの平原・霜》1873年 4億9246.8万円、ジョン・エヴァレット・ミレイ《アリス・グレイの肖像》1859年は3708万円で購入されています。モネは高いですね。

国立西洋美術館の《地獄の門》の左に《アダム》、右に《エヴァ》のブロンズ像が立っています。
岐阜県美術館には、大理石の《エヴァ》が収蔵されていますが、本展には出品されていません。理由は全体の作品数が多いのであれもこれもとはいかず割愛したとのことです。ガーン。もったいない。もったいない?

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本展の巡回2番目となる新潟県立近代美術館のエントランスホールには《カリアティードとアトラント》が展示されています。実際に建物の装飾に使われていた物です。傑作《青銅時代》1876年と同じ時期に制作されたものと考えられ、ロダンの研究の上でたいへん貴重なものだそうです。年代が早すぎるので象徴派展の枠からは飛び出してしまいますが、装飾という観点からは繋がりがあります。新潟県立近代美術館へは一度も行ったことがないのですが、この美術館で一番見てみたいと思っている作品です。ミケランジェロのような肉体の彫刻ですね。


第五章 魂の画家たち

最後の章は、姫路市立美術館所蔵のベルギー美術コレクションをメインに展示されています。

一つの国家内で、北部ヴラーンデレン(フランドル)ではオランダ語を、南部ワロニーではフランス語を使用するベルギーは1830年にオランダから独立した国家です。建国から50年を経た1880年代に入ると、出身がオランダ語圏のヴラーンデレンであっても、家庭内ではフランス語を使用する、つまりフランスの象徴主義文学に精通したブルジョワ階級の子息たちが、大学でのサークルを中心に文芸雑誌を次々と刊行し、「ベルギー文芸ルネサンス」と称されムーヴメントとなります。美術においては薔薇十字美術展のグループにおいて、多くの象徴主義の画家たち活躍しました。ベルギーの象徴主義というのはフランス語圏じゃなかったら生まれなかった、または大きく変わっていたとも考えられますね。

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クノップフやジャン・デルヴィルの美しい紙作品、奇妙なエミール・ファブリの《夜》など独特な空気を持った作品たちが並びます。


本当にいい展覧会でした。岐阜県美術館、新潟県立近代美術館・万代島美術館、姫路市立美術館の所蔵品を中心に構成された展覧会でしたが、一館だけでは所蔵していない作家や範囲があり成り立たない展覧会をほとんど3館の作品で構成できるのは驚異であり素晴らしいことだと思いました。またゴーギャンやアンソール、ボナールなどその他の美術館などからも要所要所に名品が展示されていて日本の美術館のコレクションの豊富さを改めて実感できました。

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展覧会の素晴らしさもさる事ながら、カタログがまた素晴らしいのです。表紙はクノップフの《ブリュージュにて 聖ヨハネ施療所》です。この時点で欲しくなります。とても綺麗に印刷された図版にまず感激です。学芸員の方が書き足りないくらい書かれたという解説が全作品に添えられています。これも本当嬉しいです。そして英題、サイズ、技法、所蔵館もきちんと図版のページに載っています。図版のページにタイトルだけ載せてあとは巻末に全て載せるカタログがあるのですが、あれ許せないんです。読む人の事考えてるんですかね。カタログは2500円です。日本にある象徴派コレクションの貴重な資料でもあります。展覧会を見られなくてもカタログを入手して読む価値大ありです。この記事を書くのに大いに使わせていただきました。

新潟県立近代美術館で9月8日(土)~10月21日(日)、姫路市立美術館で11月3日(土・祝)~12月16日(日)と開催されます。お近くの方もそうでない方も是非見に行ってみてください。

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美術館閉館まで楽しんだ後、岐阜県美術館前にある岐阜県図書館に行ってみました。広くて大きな図書館です。ここに置いてあったアンソールの美術書で《オルガンに向かうアンソール》の写真を見つけてびっくりするのです。カタログを読む前でこの絵に関連する写真があるとは知らなかったので。

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ゆっくりしていたらすっかり暗くなってしまいました。さよなら岐阜。また来ます。名古屋へ向かう。

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名古屋に来ると天むすはよく買うのですが、名古屋の地でひつまぶしを食べたことが一度もなくいつかいつかと思っていました。夜遅くまでやっている名鉄百貨店9階「まるや本店 名駅店」へ。並ぶ時間もあるお店とのことでしたが、21時をとっくに回っていたのですぐ入れました。写真美味しそうでしょ。こんなにウナギが乗ってて脂で気持ち悪くならないかななんて思ったのですが、一口食べてふっとびました。カリッフワ。こんな鰻食べたことない。フワはありますけどカリが初めてだったのでとても驚きました。香ばしく焼かれていてタレも絶品。テーブルにタレの容器があったので追加でかけてしまいました。全く油っぽくなくていくらでも食べられるみたいな鰻でした。これは女性でもぺろりといけますね。食べ方はそのまま、薬味、ダシと三通りありますけどわさびを付けて食べるのがとても美味しかったです。

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名古屋駅すぐ近くの炭の湯ホテルの銭湯で一風呂浴びて、高速バスで帰りましたとさ。あ~楽しかった!!

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