美術展命の男のブログ

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「シャルダン展-静寂の巨匠」 三菱一号館美術館 後編

第四部の途中に三菱一号館美術館のコレクションからシャルダンの影響を受けた画家たちとルドンの《グラン・ブーケ》が展示されています。

ルドンの《グラン・ブーケ》はフランス、ブルゴーニュ地方のヴェズレー近郊にあるロベール・ド・ドムシー男爵の城館の大食堂を飾っていた16点の壁画のうちの1点。16点のうち《グラン・ブーケ(大きな花束)》を除く15点は、1980年に日本で公開されました。(見たかったー!発狂)そして1988年には“相続税の美術品による物納”制度によりフランス共和国が取得、現在オルセー美術館に収蔵されています。その後も男爵家の大食堂に残されたままだった《グラン・ブーケ》もついに売りに出されてしまいます。オルセー美術館は喉から手が出るほど欲しかったのではないでしょうか。何故売りに出されたのかわかりませんが、物納では払いきれないからお金に換える必要があった??三菱一号館美術館が取得しましたが、日本公開の前に2011年3月からパリのグラン・パレで開催されたルドン展で16点が揃って一般に世界初公開されました。会場の写真を見たのですが、恐らく大食堂の間取りを再現して元々設置されていた並びの通り高い位置に掛けられていました。暗い空間に照明で浮かび上がる作品たち、それはそれは幻想的な空間だったことと思います。2012年1月ついに日本公開となりました。フランスで先に世界初公開されてしまってちょっと悔しいですが、是非ともいつかオルセー美術館から15点の壁画を招いて三菱一号館美術館でも大食堂の再現をしてほしいです。美しくも目玉がいっぱい描いてあるような奇怪な印象さえ受けるルドンの世界が凝縮された名品です。作品保護のため展示期間に制限がありますが、本展終了後、来秋の三菱一号館美術館名品選(仮)で再び展示されるので1年も空けずに見ることができます。

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オディロン・ルドン《グラン・ブーケ》1901年 パステル、画布 248.3×162.9cm
三菱一号館美術館蔵

シャルダンは没後、急速に忘れられていきましたが、19世紀になって再び注目されます。フェルメールの再評価をした批評家のトレ=ビュルガー(1807-1869)はシャルダンも再評価します。相次ぐ展覧会と競売を機に評価は徐々に高まり、ミレー、マネ、セザンヌなどに大きな影響を与えました。

シャルダンの影響を受けた画家として三菱一号館美術館に寄託されているミレー《ミルク缶に水を注ぐ農婦》、セザンヌ《静物(りんご)》、マルケ《トリエル、晴れた日》の油彩画が展示されています。ミレー、セザンヌは画業から影響が何となくわかるのですが、マルケの風景画にはシャルダンの影響??と思ってしまいます。風景画からはシャルダンの影響は見れませんが、本展に出ている《買い物帰りの女中》を模写したことがあるとのこと。同じくフォーヴィスムのマティスも最初期に《赤えい》と《食卓》の模写をしています。人物画と並んで静物画も多く描いたマティスですが、根底にシャルダンの影響があったのですね。

ここに並ぶ3点は2010年に開催された「三菱が夢見た美術館 岩崎家と三菱ゆかりのコレクション」で公開された作品です。いずれも個人蔵でしたが、三菱一号館美術館に寄託されたと本展で知り本当に嬉しかったです。

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ジャン・フランソワ・ミレー《ミルク缶に水を注ぐ農婦》1859年 油彩、画布 39.5×33.0cm
三菱一号館美術館寄託

特に、ミレー《ミルク缶に水を注ぐ農婦》は二度とお目にかかれないと思っていたので2010年の公開の際は穴が開くほど鑑賞した作品でした。また会えるとは(号泣)。この作品は1991年にBunkamuraザ・ミュージアム、京都市美術館、山梨県立美術館を巡回した、《「四季」アース色のやさしさ ミレー展》のカタログの表紙を飾った作品でした。日本では空前絶後の規模、質のミレー展でそれ以降これを超えるものは日本では開催されていません。まだ美術展へ行くという行動をしていなかった時で、母が友人と見に行きカタログを買ってきましてそれを家で見るに留まっていました。

バブルがはじけた直後のことであり他美術作品と同様にミレーも凄い数が日本にありました。95点中68点が日本からの出品(個人蔵多数)で日本のミレー・コレクションの豊富さがよくわかるものでした。各作品に解説があり、出品作以外の日本にある個人蔵のミレーまでも巻末に掲載した素晴らしいカタログなのです。2年後には美術展へ出かけるようになるのですが、いまだにこの展覧会を実際に見られなかったことを残念に思っています。日本のミレー・コレクションはバブル以前から日本に結構あり、長いこと日本に留まっていたのですが、不幸なことに最近になってこのカタログに掲載されている作品のいくつかが海外のオークションに出ているのを見かけました。バブルも乗り越えたのに...。このカタログに掲載されている個人蔵の作品がどれだけ日本に残っているのかわかりません...。逆に当時は海外に所蔵されていたものが現在日本にあるというケースもあったり出品作以外の個人蔵の項目に掲載されていた作品が海外オークションに出て山梨県立美術館が入手したというケースもあります。

《ミルク缶に水を注ぐ農婦》は、1860年パリで公開されたのみで、ロンドンからアメリカへ渡り、その存在はわかっていても、個人コレクターに秘蔵されてきた名画の一つでした。そして日本に入ってきてなんと130年ぶりに一般公開がされた作品なのです。このカタログで最もお気に入りの作品であり、実物が見たいとずーと思っていました。1993年に福島県立美術館、千葉県立美術館、山梨県立美術館で開催された「バルビゾン派と日本」に出品されたのが私が知る限り最後の公開でした。(ずっと後になって知ったことですが)この作品は、日本にまだあると信じつつも、もう海外へ売却されちゃったんだろうなとも思っていたので2010年の展覧会に登場した時は探し求めていた秘宝についに出会えたと絵の前で呆然と立ち尽くしました(笑)19年も追い求めていた名画が今、目の前にあると感動でいっぱいでした。

このミルク缶はミレーの思い出深いもので、生家からバルビゾンに持ち帰り、乳しぼりの娘が担いだ姿の作品をよく描いています。ブリヂストン美術館所蔵の《乳しぼり》にも農婦の影となりほとんど見えませんが描かれています。この水汲みのテーマは、数多くの素描があり、1862年のガラス版画、パステル画(旧FBS福岡放送蔵)とルーヴル美術館蔵のパステル画などにも及びました。黄金に輝くミルク缶。ミレー展のカタログにこうあります。-シャルダンの静物画の銅器に表された如くの、質素な日常性が高貴な座を占める、逆のヒエラルキーを主張したかったと思える。-ただの泥臭い場面で絵になるのかすら疑問に思う光景のはずですが、そのポーズさえ神聖なものに見せてしまうミレーの仕事に脱帽です。

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※参考図版 ミレー《ミルク缶に水を注ぐ農婦》の習作 1862年 
黒コンテ、鉛筆、トレーシングペーパー 30.8 x 19.7 cm  ボストン美術館蔵

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※参考図版 ミレー《ミルク缶に水を注ぐ農婦》 村内美術館蔵

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※参考図版 ミレー《桶の水をあける女》1862年 パステル、紙 28.5×22.3cm 旧FBS福岡放送蔵(現在個人蔵?)

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※参考図版 ミレー《井戸の女》1866年 パステル、鉛筆、ベージュの紙 44.0×34.5cm オルセー美術館蔵

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※参考図版 ミレー《ミルク缶に水を注ぐ農婦》 1862年 28.4 x 23.4cm クリシェ=ヴェール(ガラス版画)ボストン美術館蔵 版画は国立西洋美術館などにも収蔵されています。

ミレーは他作品でも油彩、パステル、鉛筆、版画など同主題を繰り返し作品にしています。シャルダンは言い方は悪いですが、売り絵のために同じ作品がいくつも存在しますが、ミレーはテーマの追及の為に画材が異なる作品がいくつもあります。目的は違いますが、同主題の作品を繰り返し描いた点は共通しますね。ミレーのこういった作品を是非集めて三菱一号館美術館でミレー展を開催してほしいです。

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《桃の籠》1768年 油彩、画布 32.5×39.0cm ルーヴル美術館蔵

最後に展示されていた作品です。シャルダンの桃も素晴らしいですが、19世紀のアンリ・ファンタン=ラトゥールの桃も絶品です。桃を描かせたらシャルダン以上かもしれません。シャルダンの静物画の系譜に連なる後継者とでもいうのでしょうか。

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左:参考図版 アンリ・ファンタン=ラトゥール《桃》1869年 油彩、画布 19.0×28.0cm 個人蔵
右:参考図版 アンリ・ファンタン=ラトゥール《桃》1903年 油彩、画布 個人蔵

1998年に日本初のファンタン=ラトゥール展が宇都宮美術館で開催されましたが、あれからもう14年。また見たいです。三菱一号館美術館の空間にラトゥールの絵も映えることでしょう。ラトゥール展もここで見てみたい。

シャルダンを見る機会が本当に少ない日本でこのようにまとまって見られる展覧会を開催してくれた三菱一号館美術館に大感謝です。ロココといえば華やかで煌びやかで自由奔放、官能的、軽薄とも批判される美術様式ですが(私は好きです)、ブーシェやフラゴナールなどと違って実直に対象を描き続けたシャルダン。代表作があれもこれもと揃ったわけではありませんでしたが、初期から晩年まで彼の仕事を見ることができ、何よりわかりやすい構成で素晴らしい展覧会だったと思います。本当に面白かった。既に何度か足を運びましたが何度も見に行きたいです。巡回しない単館開催なので遠くても是非足を運ばれることを強くおすすめします。2013年1月6日(日)までなのでまだまだ会期はあります。



ここからは私の勝手な妄想記事です。展示室全体で38点+三菱一号館美術館所蔵品4点の42点が展示されているのですが、壁面があちこちスカスカ空いてると話を聞きます。展示数が少ないから仕方がないことなのですが、部屋割りがうーんと思うことがありました。

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こちらは何も展示していない状態の3Fと2Fです。ピンク色の部分が展示室です。3Fでエレベーターを降り、①の展示室から見て行きます。の字の内側の白い部分が廊下です。



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こちらは作品38点+4点が展示された状態です。

第一部 多難な門出と初期静物画 5点
第二部 「台所・家事の用具」と最初の注文制作 9点
第三部 風俗画-日常生活の場面 10点
シャルダンの影響を受けた画家たちとルドンの《グラン・ブーケ》 4点
第四部 静物画への回帰 14点

3Fの最も大きな部屋は仕切り壁(黒い太線)が設けられ、透かしの布(灰色の細い線)が垂らされて空間を仕切っています。この部屋はできる限り四方の建物の壁面だけを利用した展示で広々とした空間を生かして使ってほしいと思っています。仕切るのはもったいないです。混雑回避の為にこのようなレイアウトにしたのではなく他の部屋を埋めるためにこのようなレイアウトになったのだと思います。第二部の静物画2点が大部屋に来ていて第三部の風俗画は途中で分断されています。第4部の導入部の2点だけは3Fに展示され、その真下の2Fの展示室ではコレクション作品で一旦展示が中断します。ぶつぎりが繰り返されるのがちょっと気になりました。


こんな展示空間はどうかなと妄想しました。↓

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3Fの大部屋の仕切り壁を取り除いてここにあった2点の静物画を1つ手前の部屋へ移動させます。小さな作品なのでスペースは確保できます。また大部屋の仕切り壁がなくなることで監視員が大部屋全体と1つ手前の展示室に移った作品までも視野に入れることができるようになります。

3Fの大部屋は窓やドアが沢山ありますが、15点の絵画なら余裕をもって展示ができます。今回10点出品されている風俗画を一挙に展示することができます。ヴァリアント作品や対作品にも配慮した並びで展示することができます。一旦展示室を出て中庭に面した廊下を渡り3Fの奥の展示室から第4部が始まります。この図の並びですと3Fの最後の1部屋が空いてしまいます。ここに現在大部屋で展示されている資料である本を展示したらいいのではと思いました。またシャルダンの風俗画の版画を資料として展示する方法もあると思います。国立西洋美術館にシャルダンの版画が1点のようですが所蔵されています。監修者の意向で油彩だけの展示になったのかもしれないので出品内容には言及すべきではないと思いますが...。また《木いちごの籠》は現在、右側に壁があるので混雑した時、見づらくなるような気がします。そんなに広い部屋でもないので1部屋1点の展示でもいいのではと思いました。勝手な妄想すみません。


シャルダンっていくら?

代表作と言われている物の多くは既に美術館に収蔵されていて市場に出回ることはほとんどないようですが、たま~にオークションに登場するようです。《木いちごの籠》がオークションに出たらいったい何億円になるのでしょうか。コレクター垂涎の的ですから想像ができません。近年オークションに出た物を調べてみました。レートはその月の平均で出しています。


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《鉤につるされた肉のある静物》油彩、画布 32.1×39.7cm

1997年10月 クリスティーズオークション、ニューヨーク 1ドル=121円
予想落札価格600.000-800.000ドル(7260万-9680万円)
落札価格662.500ドル(8016万円)

第二部に展示されていたピカルディー美術館所蔵の《鉤につるされた肉のある静物》と同じ構図の作品です。同じ構図の作品が他にも知られ個人が所蔵しています。この作品は、スウェーデンのグスターヴ・アドルフ・スパーレ伯爵(1746-1794)が、シャルダンから直接購入した作品とされていて来歴もこの伯爵が最初です。第三部に展示されていた対作品《デッサンの勉強》と《よき教育》も彼のコレクションでした。

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《葱と鍋、布のある静物》1734年 油彩、画布 33.0×48.0cm

2006年1月 サザビーズオークション、ニューヨーク 1ドル=116円
予想落札価格:500.000-700.000ドル(5800万-8120万円)
落札価格665.600ドル(7720万円)

この作品もグスターヴ・アドルフ・スパーレ伯爵のコレクションに入っていた作品でパリで1768-1772に入手したとされています。スパーレ伯爵のコレクションでは、この上の《鉤につるされた肉のある静物》と対作品になっていました。しかしこの2点は必ずしも対作品として構想されたわけではありません。上の《鉤につるされた肉のある静物》は、サインがC.Dとイニシャルだけなのに対してこちらの作品は'chardin/1734' と名前と年紀がサインされています。両作品は同じ年に制作されたと推定されています。1点だけ同じ構図の作品がありクリーヴランド美術館が1980年に取得しています。その作品にはchardinとフルのサインがありますが年紀は書かれていません。

この作品は2000年5月、クリスティーズオークションにも登場しています。1ドル=108円
その時の予想落札価格は300.000-500.000ドル(3240万-5400万円)
落札価格は886.000ドル(9568万円)と予想を大きく超える結果となっています。2006年に落札した人はラッキーでしたね(笑)

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《葱、魚、卵と台所用具》1734年頃 32.2×40.7cm クリーヴランド美術館蔵


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《銅の大鍋と乳鉢》 油彩、画布 37.5x47cm.

2000年7月 クリスティーズオークション、ロンドン 1ドル=107円
予想落札価格:50.000ポンド-70.000ポンド(75.200-105.280ドル)(802万円~1126万円)
落札価格80.750ポンド(121.448ドル)(1299万円) 

1730年代始めのシャルダン特有の静物画ですが、上記の作品と比べると少し魅力に欠けるからか評価額が低いのでしょうか。

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《小屋のそばに農民のいる風景》1730年 油彩、画布 37.5x 45.7cm

2004年12月 クリスティーズオークション、ロンドン 1ドル=103円
予想落札価格:40.000ポンド-60.000ポンド (77.320-115.980ドル)(796万円~1194万円)
落札価格35.850ポンド(69.298ドル)(713万円) 

シャルダンと言われてもわからないような作例です。初期静物画に奮闘している頃の作品です。オランダ絵画やフランドル絵画のような印象を受けます。対象をひたむきに捉える真面目な絵が多い中ユーモラスな作品です。シャルダンらしさがないので評価額が安いのかな?

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《猿の骨董家》 油彩、画布 82.5×65.4cm

2010年6月 クリスティーズオークション、ニューヨーク 1ドル=90円
予想落札価格200.000-300.000ドル(1800~2700万円)
落札価格266.500ドル(2398万円)

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《猿の画家》 油彩、画布 82.5×65.4cm

2010年6月 クリスティーズオークション、ニューヨーク 1ドル=90円
予想落札価格200.000-300.000ドル(1800万~2700万円)
落札価格266.500ドル(2398万円)

この猿を描いた2点と同じ作品がルーヴル美術館にあります。ルーヴル美術館の《猿の画家》の方は、この作品のように周りが縁どられてなく四角く隅まで描かれています。この周りが塗られていないのは楕円形の枠の額に入れる前提で描かれたからでしょうか?ルーヴル美術館の《猿の骨董屋》も周りがこのようになっているのですが、よく見ると下部には壁龕が確認でき穴越しに猿を見ているような画面になっています。

数億円、数十億円で当たり前に取引される印象派と比べると随分と安い印象があります。作品がほとんど流通しないのに加え傑作というのはなかなか出て来ないのでここで紹介した作品に億を超える物はありませんでした。たまに凄い作品が出てきて数十億円を記録するレンブラントやルーベンスなどと比べて価格面で見た時の評価額は例がないのでわからないですね。手を伸ばせば掴める範囲にあるようですので国立西洋美術館には頑張っていただきたいものです。いつか日本の美術館に3点目のシャルダンが将来されますように。

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「シャルダン展-静寂の巨匠」 三菱一号館美術館 前編

三菱一号館美術館で9月8日(土)~2013年1月6日(日)まで開催中の「シャルダン展-静寂の巨匠」を見てきました。

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この展覧会で美術展鑑賞2000回となりました。展覧会を初めて見たのは1993年8月、池袋にあった東武美術館で開催された「ルノワール展」で19年と1か月ほどで2000回となりました。2000回は美術館の特別展、博物館の特別展、常設展も含めたものですが、やはり特別展が多く占めていると思います。同じものを数回見ることも多いので厳密に何種類の特別展を見たかは謎です。チケットの半券も集めているので2000枚ほどあるのかと思うと驚きです。展覧会チラシもそれに近い数があるのか...。思い出の展覧会など今後紹介できる機会があったら書きたいと思っています。

さて、シャルダン展は日本では初の開催になります。愛知県美術館と東京国立近代美術館で昨年から今年にかけて開催されたジャクソン・ポロック展も日本初でしたね。長いこと切望されついに日本で開催された展覧会。この機会に巡り会うことができ、今を生きてて本当によかったと思います。

シャルダンの作品は日本では東京富士美術館とヤマザキマザック美術館にしか収蔵されていません。2010年にヤマザキマザック美術館が開館するまでは日本の美術館には長いこと1点しかなかったことになります。なので見られる機会は海外から来る特別展に1点ないし数点が含まれる程度。今までに何点見たのでしょうか。10数点だったり...。何でこんなに見る機会が少ないのかというとシャルダンの現存作品は所在が確認されているもので238点(本展監修者のピエール・ローザンベールが編纂した最新の総目録による)しかないからだったのですね。シャルダンの世界一のコレクションはルーヴル美術館(油彩35点、パステル4点)で、ストックホルム国立美術館が10点、ワシントンのナショナル・ギャラリーが8点、フィラデルフィア美術館が6点など多く持つ美術館もありますが、欧米の主要美術館でもほとんどが数点を所蔵するくらいです。メトロポリタン美術館、ボストン美術館でも2点しか所蔵していないようです。借用は困難になるのはわかりますし、〇〇美術館展でもあまり見ることがない理由がわかります。

幸い、今年は国立新美術館で開催された「大エルミタージュ美術館展 世紀の顔」で《洗濯する女》、国立西洋美術館で開催された「ベルリン国立美術館展」で《死んだ雉と獲物袋》を見ることができました。そしてまとまった展示はついに三菱一号館美術館で叶ったのです。

本展は、38点(1点帰属作品を含む)のシャルダンの油彩画で構成されています。え~すくなーい。と思う方もいらっしゃるかと思いますが、前記の通り借用が困難の中、逆によくここまで借りられたなと思うほどです。ボルドー美術館、スコットランド国立美術館、エルミタージュ美術館、フィラデルフィア美術館、ボストン美術館、フリック・コレクション、フィリップス・コレクション、個人蔵など世界中から集めているのも凄いです。ルーヴル美術館からは8点も来ています。

展覧会はシャルダン研究の世界的権威ピエール・ローザンベール氏(ルーヴル美術館名誉館長)が厳選した作品により

第一部 多難な門出と初期静物画
第二部 「台所・家事の用具」と最初の注文制作
第三部 風俗画-日常生活の場面
第四部 静物画への回帰

と四つの章に分かれています。


第一部 多難な門出と初期静物画

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《ビリヤードの勝負》1720年頃 油彩、画布 55×82.5cm パリ、カルナヴァレ美術館蔵

《ビリヤードの勝負》1720年頃から展示は始まります。ビリヤード台を作る職人であった父のことも思って描いたことでしょう。最初期はこんな絵も描いていたんだと知りました。後に風俗画を描くことになりますが、これほど大人数を描いた作品はないそうです。多くの作品に共通する背景は茶褐色ですが、まだシャルダンぽくないですね。最初は歴史画を試みますが、静物画に転向します。当時、最上位の絵画は、神話や歴史を描く歴史画。肖像画、風俗画と続き、風景画・静物画は最下位にあったなかこのような決心は凄いですが、彼自身、静物画に長けているといち早く気付いたのでしょう。1728年パリ、シテ島のドフィヌ広場で開催された野外展覧会「青年美術家展」《赤エイ》を含む数点の静物画を出品し、注目を集め29最で「動物と果実に卓越した画家」として王立絵画彫刻アカデミーに受け入れられます。

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《昼食のしたく(別名)銀のゴブレット》1728年以前 油彩、画布 81.0×64.5cm リール美術館蔵

パンに刺さったナイフの柄が手前に向けられ飛び出してくるように見えます。この効果はテーブルの端から飛び出すスプーンやナイフなどで多用されます。銀のゴブレットは繰り返し描いたモチーフで本展に出品されている晩年の作品にも登場します。

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《死んだ野兎と獲物袋》1730年以前 油彩、画布 98×76cm ルーヴル美術館蔵

フィラデルフィア美術館所蔵の横長の同タイトル作品と一緒に展示されています。描かれている対象は同じですが、本作は腹を見せ、フィラデルフィアの作品では背を見せる同ポーズのウサギが描かれています。腹側と背側の毛の違いまで表現されています。私の今までのシャルダンの静物画のイメージで見るとそのスタイルは既に完成されているように見えました。あまり数を見たことがないせいかシャルダンはこういう絵だよねと。展覧会を見る前だったら後期の作品と混ぜても年代の違いに気づかなかったかもしれません。でも展覧会を最後までしっかり見ると確かに違っていました。

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※参考図版《兎と獲物袋》1736年 ヤマザキマザック美術館蔵

ヤマザキマザック美術館に似た主題の作品が所蔵されていますが、年代が違うからか出品されていませんでした。日本に2点しかないからそりゃ出品されるだろうと勝手に思い込んでいました(笑)

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《すももの鉢と水差し》 1728-30年頃 油彩、画布 44.25×56.20cm
ワシントン、フィリップス・コレクション

すももの盛られた鉢は同時期に描かれた他の作品に登場しますが、中国の清の時代に作られたという説がある白い水差しはこの作品以外には描かれていないそうです。似た絵が存在する中、非常に貴重な作例ということですね。


第二部 「台所・家事の用具」と最初の注文制作

王立絵画彫刻アカデミーの会員となったシャルダンですが、当初から高い名誉を受けていたわけではありませんでした。やっぱり静物画だったからですかね。狩猟の獲物と果物のモチーフに台所や家事の用具を加え制作の幅を広げようと試みます。日々の道具、銅鍋や水差しなどの「用具の美」を表現できたものは彼以前にいなかったとのこと。なるほどねえ。シャルダンの静物画の魅力の一つって「用具の美」なんですね。ただの道具なのに描かれる対象を慈しんで描いてるかのようななんだか優しさが伝わってくるような気がします。この辺りから作品のサイズがぎゅっとコンパクトになります。精神を集中して描きやすかったからでしょうか。1731年には、マルグリット・サンタールとセーヌ左岸のサン=シュルピス聖堂で結婚し、同年には長男のジャン・ピエールが生まれます。女の子にも恵まれます。

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左:《肉のない料理》 1731年油彩、銅板 33×41cm パリ、ルーヴル美術館蔵
右:《肉のある料理》 1731年油彩、銅板 33×41cm パリ、ルーヴル美術館蔵

対作品です。この展覧会でとても気に入った作品の1つです。四旬節の断食の習慣をもとに描かれた作品です。
四旬節とはキリスト教において、復活祭の40日(安息日である日曜日を含むと46日)前から始まる期間を指し、肉の摂取が控えられました。

《魚》と《肉》という対称的な事物を描いた対作品なだけかと思いましたが、魚の背に使われている青とフライパンのシルバーの寒色、肉の赤と銅鍋のオレンジ色のように輝く茶の暖色と色彩面でも対称的であり、陶器の持ち手や鍋の向きがそれぞれ外側を向いていたり、台から突き出したネギが一方ではスプーンが突き出していたりと様々な点で呼応しておりとても面白い作品です。カンヴァスに描かれた作品が多い中、この作品は銅板に描かれており、板(オーク)に描かれた作品も展示されていて独特な絵肌の違いを見ることができます。

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《鉤につるされた肉のある静物》 1733年頃 油彩、画布 32.8×40.2cm
アミアン、ピカルディー美術館蔵

こちらもシンプルながらシャルダンの魅力いっぱいの作品です。肉の赤と野菜の緑が映えます。《肉のない料理》、《肉のある料理》と同様に三角形の構図で素晴らしいバランス、安定感抜群です。描かれているものは質素な物ですが、もはや神聖な物のようでもあります。

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※参考図版 ジャン=フランソワ・ミレー《葱のある静物》1860-64年 油彩、画布 75×61cm
ハーグ、メスダッハ美術館蔵

出品作品ではありませんが、シャルダンから影響を受けた画家の1人、ミレーの静物画です。この作品ずーと昔に見たことがあります。その時はシャルダンを知らなかったのですが、後々あの絵って色彩とか場面がシャルダンぽいなーと思っていたら影響を受けた画家と知りなるほどと思いました。ミレーのこの絵はどかーんと甕が中央に座り、白い器も野菜もどれも重そうで動きそうもなく力強そうでシャルダンの軽やかさとは違うのですが、対象を見つめる眼差しはとても似ています。飛び出したナイフも似てる。シャルダンとミレーは描かれた人物への優しい眼差しも共通するものがあります。


第三部 風俗画-日常生活の場面

1733年頃から風俗画を手掛けるようになります。友人の肖像画家ジョゼフ・アヴェドの助言によるこの転向はシャルダンに多大な恩恵をもたらすことになります。風俗画は静物画に比べて位階が高くシャルダンの画家としての地位を引き上げました。シャルダンの静物画は、主に批評家や画家仲間を顧客にしていたのに対し、風俗画はロシアの女帝、スウェーデン王妃、プロイセン王など王侯貴族や新興ブルジョワジーなど新たな顧客をもたらしました。風俗画は版画化もされ莫大な収入を得ることになります。人気の油彩画はレプリカやヴァリアント作品が作られ全く同じ構図の絵がいくつも描かれます。

1735~37年に妻、娘を亡くす不幸が続きます。

1740年11月17日、ヴェルサイユ宮中に参内し国王ルイ15世に謁見し、同年のサロンに出品され好評を博した《働きものの母》と《食前の祈り》(ともにルーヴル美術館)を献上します。

1749年、裕福な未亡人フランソワーズ・マルグリット・プジェと再婚します。この結婚はシャルダンをブルジョワジーの世界に招き入れます。そして庶民の中からモデルを選ぶことはなくなり彼の眼はもっぱらブルジョワ階級に向けられるようになります。こうした洗練された風俗画によりシャルダンは確固とした名声を手にいれます。

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 左:《食前の祈り》1740年頃 油彩、画布 49.5×41.0cm ルーヴル美術館蔵
 中央:《食前の祈り》1744年頃 油彩、画布 49.5×38.4cm エルミタージュ美術館蔵
 右:参考図版《食前の祈り》1740年頃 油彩、画布 49.5cm×38.5cm ルーヴル美術館蔵
※ルイ15世に献上された作品

食卓で食前に捧げる感謝の祈り(ベネディシテ)の場面を描いた作品です。この作品は4点存在するそうです。ルイ15世に献上された作品を再び描いたヴァリアント作品2点が本展に出品されています。(シャルダン自身が愛蔵した後に著名な所蔵家ルイ・ラ・カーズの手を経た作品とロシアの女帝エカチェリーナ2世が愛蔵した

一見、全く同じ絵に見えますが、間違い探しのように違う所があります。Cには床にくっきりとタイルの線が描かれていますが、Aには描かれていません。Bにはうっすらと引かれています。またBには柄の長い鍋が登場しています。ルイ15世に献上された作品の母親の顔は厳しい感じの表情に見えますが、今回来ているA作品はかなり柔和な表情に見えます。奥に座る娘の顔は献上された作品では細くとんがっていますが、A、B両作品はふっくらしてより可愛らしくなっています。Bは母親の顔とその周辺の絵の具が擦れたかのようにムラがありAと比べると少し残念な出来になっています。最初に描かれルイ15世に献上された作品よりA作品の方が親しみやすい気がしました。

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《羽根を持つ少女》1737年 油彩、画布 81.0×65.0cm パリ、個人蔵

この作品有名とのことですが、恥ずかしながら本展で初めて知りました。遊ぶ子どもの絵では《独楽を回す少年》は知っていたのですが、こんな絵もあったのですね。初見では静物画の方が勝っていると思ったのですが、見れば見るほどこの人物画も傑作ですね。シャルダンの白、シャルダンの様々な茶と誰も真似できないシャルダンの色があります。帽子の柄、頬、リボンなどブルーとピンクが呼応しています。頭、広がったドレス、ラケットの先と三角形の構図がここでも使われています。光を受けて柔らかく反射する肌の美しいこと。上手く説明できないのですが、カメラのレンズを覗きピントがほんの少しぼかされて光と空気を抱き込んだようなふんわりとした絵肌に釘付けでした。離れてみるとふんわりとした色彩からか不思議と立体感があるように感じられます。限られた色数の作品ですが、本当に美しい絵でした。

同じ空間に帰属作品の《羽根を持つ少女》制作年不詳 フィレンツェ、ウフィツィ美術館が展示されています。描かれた対象は同じですが、印象が全く異なります。こちらはふんわり感がなくて離れてみると立体感はなくのっぺり平面な感じです。真作ではなさそうと思ってしまう作品です。シャルダンの作品だとしたら描き途中なのでしょうか。模写のようにも見えるのですが、描写はしっかりとしていて判断に困る絵です。

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左:《デッサンの勉強》1748-53年 油彩、画布 41.0×47.0cm 東京富士美術館蔵
右:《良き教育》1753年頃 油彩、画布 41.5×47.3cm ヒューストン美術館蔵

対作品です。この展覧会を知った時、真っ先に思い浮かんだ2点です。八王子の東京富士美術館にシャルダンの風俗画の名品がありますからこれは出品はされるのかまた対の作品は並ぶのかとまず思いました。1999年に千葉県立美術館で開催された「ヒューストン美術館展-ルネサンスからセザンヌ・マティスまで」に《よき教育》が出品されました。《デッサンの勉強》は既に実見していて対作品があることも知っていたのでヒューストン美術館展に出品される《よき教育》を楽しみに見に行きました。鑑賞しながら今この2作品は関東にあるのに会えないなんてつらいのぉと思ったものでした。あれから13年やっと日本で一緒に展示されるのかと思うと本当に嬉しかったです。

教育を主題とした作品です。《デッサンの教育》は手本に基づく教育を描き、《よき教育》は母親が娘に聖書の暗唱をさせている場面です。傍らの裁縫箱は伝統的に娘に授けられるもう一つの教育を示しています。《よき教育》の方が強い光が差し込んでいて光量の面で対照的です。前者は生み出される芸術の「創出」、後者は受け継がれる教養の「伝統」で新しい物、古い物という意味でも対になっていますね。

3F展示室の後半の1部屋に2点が並んだ光景を見た時それだけで胸いっぱいでした。一緒に並ぶことで気づきましたが豪華な額はデザインが同じなんですね。1980年代まではスウェーデンに対作品として伝来し、その後離れ離れになり本展で約30年ぶりの再会とのことです。これを拝めるとは本当にラッキーな事です。


第四部 静物画への回帰

1748年、15年ほど描くのをやめていた静物画へと回帰します。1750年半ばには完全に風俗画を放棄し静物画に専念します。この時期の静物画が初期の静物画と異なるのは狩猟の獲物や果物の種類、用具の数々とさらに豊かさを増し2人目の妻がもたらした高価な調度品を描くなど明らかにモチーフが変化します。晩年、絵の具に使われている鉛で目を患い、パステル画を試みています。パステル画は残念ながら本展にが出品されていません。

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《カーネーションの花瓶》1755年頃 油彩、画布 エジンバラ、スコットランド国立美術館蔵

花のみを主題として描いた作品はシャルダンにはほとんどなく記録では数点が確認されていますが、現存するのはこの1点のみです。小さな画像で見ると写実的に見えますが、近くで見るとビックリです。ヴラマンクかフォーヴかってくらいに花びらの描写がささっと大胆に描かれています。しかし1mちょっとでも離れると様々な花がそこに出現します。見事です。

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左:《台所のテーブル(別名)食事の支度》 1755年 油彩、画布 39.7×47.6cm ボストン美術館蔵
右:《配膳室のテーブル》 1756年 油彩、画布 38.6×46cm カルカッソンヌ美術館蔵

サロンに同じ番号で出品されたこの2つの作品は対作品と考えられています。左の《台所のテーブル(別名)食事の支度》は初期の静物画でも描かれた身近な台所用品が描かれ、右の《配膳室のテーブル》はそれ以前にはみられない高価な品々が描かれています。この作品は準備と披露、召使の領域と主人の領域を対照的に表しています。左の絵は光が直接対象に当たっているように見え、右の作品は薄いカーテンやレース越しに光を当てたかのような白く霞んだ印象を持ちます。《配膳室のテーブル》の画面左手前に描かれた光を反射する小型コンロの描写も見事です。小型コンロが始め何かわからなくて未来から来たハイテクマシンが絵の中に現れたようでなんじゃこりゃと思ってしまいました。(笑)

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《木いちごの籠》 1760年頃 油彩、画布 38×46cm パリ、個人蔵

本展の白眉の登場です。《羽根を持つ少女》とこちらの作品、このような傑作がルーヴル美術館でもメトロポリタン美術館でもなく個人蔵となってるのが驚きです。日本初公開のこの時に巡り合えて本当に嬉しいです。木いちごの赤い塊がどーんと描かれています。三角形の構図の作品がいくつもありましたが、こちらは描かれた対象自体が三角形になっちゃっています。木いちごが沢山盛られていますが、輪郭線はなく陰影だけで一粒一粒が存在しています。白いカーネーションの花びらも一枚一枚描かれることなくごにょにょと塗られた白い絵の具のマチエールが離れてみるとカーネーション特有のギザギザした感じになっていて驚愕でした。ガラスのコップに写った木いちごの赤やテーブルの下の真っ暗な所、ムラのある右側の背景など見事な計算で奥行のある空間ごと切り取って額に入れたような傑作です。

最後の部屋に入ると画風の違う2点が目に留まりました。フィラデルフィア美術館所蔵の《水差しとフロマージュ・ブランのある静物》と《水差しときゅうりとさくらんぼ》です。暗い背景がほとんどの作品の中、全体的に白く明るくてシャルダンの作品に見えません。モランディの作品かと思ったほどです。本展の監修者ピエール・ローザンベール氏がモランディもシャルダンに魅せられた犠牲者の一人と語っておりなるほどと思いました。この作品はモランディの作品ではありませんけどね(笑)

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《銀のゴブレットとりんご》 1768年頃 油彩、画布 33×41cm パリ、ルーヴル美術館蔵

第一部に展示されていた初期作品《昼食のしたく(別名)銀のゴブレット》で描かれていたゴブレットがこちらにも登場しています。ゴブレットの表現が全く違ったものになっています。初期の作品ではゴブレットそのもの、物質を描きだすという感じでしたが、こちらの作品では物を写し込む空間をも引き込んだ反射表現に磨きがかかっています。器にもりんごの赤がうっすら映り、《木いちごの籠》のガラスのコップに映った赤と同様丁寧な反射の表現がされています。

第四部の途中に三菱一号館美術館のコレクションからシャルダンの影響を受けた画家たちとルドンの《グラン・ブーケ》が特別展示されています。

後編に続く

「ポール・デルヴォー 夢をめぐる旅」を見に行く 府中市美術館

府中市美術館で9月12日(水)~11月11日(日)まで開催中の「ポール・デルヴォー 夢をめぐる旅」を見てきました。

ポスターをどこかで見かけた時、『夢に、デルヴォー。』というキャッチフレーズがでかでかと書いてあり一瞬びっくりしたのですが、『夜明け』と呼応した青と黒を用いたすっきりとしたデザインのポスターで一目で気に入りました。デルヴォー展には違和感がないのですが、関西のルノワール展やバーン=ジョーンズ展のポスターにも駄洒落が使われていたのはちょっとやめてと思いました(笑)その画家のイメージというか世界観がありますからね。ルノワールのイレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢と駄洒落はちょっときつかったです。

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ポスターと同じデザインがチラシにも使われています。府中市美術館お得意の豪華な見開きチラシです。府中市美術館は特別展の際、全6面の図版たっぷりチラシをよく作ってくれます。美術展のチラシ大好き人間としてはお宝認定です。紙質もしっかりしたもので17点もの綺麗な図版が掲載されています。これを見てしまったら行きたくなるに決まってます。

私が、デルヴォーを初めて知ったのは1994年の1月のことです。デルヴォーはこの年の7月20日に96歳で亡くなっています。埼玉県立近代美術館に初めて行った時で、デルヴォーの『森』を常設展で見たのです。美術史上の芸術家はほぼ決まって既に世を去っているのが当たり前と思っていたのでとても不思議に思ったのを覚えています。モネやルノワールなどと一緒の部屋に展示されているこの作家はまだ生きてるんだと思うと亡霊をみるようななんとも変な感覚になりました。ピカソ(91歳没)やシャガール(97歳没)、ダリ(84歳没)が生きていた頃もこのような感覚があったのでしょう。シャガール、ダリが亡くなった時は私はとっくに生まれていましたが、美術にまだ関心がなかったのでそんなニュースを知ることもありませんでしたが。

前置きが長くなりましたが本展は、今年で開館30年になるベルギーのサンティデスバルドにあるポール・デルヴォー美術館で開催された「ポール・デルヴォー 夢をめぐる旅」を再構成して日本を巡回するものです。

私にとっては1997年に伊勢丹美術館で開催されたデルヴォー展以来15年ぶりの個展です。2004年に巡回展がありましたが、関東には来なかったので見ていません。

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《夜明け》1944年 油彩・キャンバス 個人蔵

会場に入るとまずポスター、チラシなど本展のメインビジュアルに使われている《夜明け》が迎えてくれます。デルヴォー作品に特徴的な目が大きく同じ顔をした不気味な女が多い中、この絵に描かれている女性はかなりの美人です。暗い室内に朝の強い光が差し込み始めています。特にシュールな点はなく、強いて言えば全裸に布の女性が徘徊してるくらいで(十分シュール?)とても穏やかな絵です。

第一章 写実主義と印象主義の影響
第二章 表現主義の影響
第三章 シュルレアリスムの影響
第四章 ポール・デルヴォーの世界
第五章 旅の終わり

デルヴォーらしいあの絵になる前の初期作品22点、最晩年3点を含む84点を5章に分けて構成されています。初期作品が1/4と豊富であのデルヴォーの絵が生まれる前をしっかり見ることができます。

第一章 写実主義と印象主義の影響

弁護士の父、家庭的な母(女は悪い虫。ポールに近づけさせないわ!というようなちょっと過保護な点あり)、後に弁護士になる弟がいる家庭に生まれました。高校卒業後、画家を志すも両親に反対され建築を学ぶ学科に進学、数学で落第し道を失いかけた時、家族で休暇に出掛けた海辺の町で偶然出会った王室公認の有名画家がデルヴォーの水彩画を激賞したためついに美術学校に入学することができたそうです。人生何があるかわからないですね。

印象派の影響が顕著な「グラン・マラドの水門(南側の眺望)」1921年 個人蔵が気に入りました。カミーユ・ピサロの絵を見ているような作品でした。光に溢れた作品です。《森の小径》も筆触分割で描かれた印象主義の影響がわかる作品です。木漏れ日が降り注ぎ眩しいほどに煌いた作品です。《森の小径》の鉛筆による習作はセザンヌのような印象も受けるデッサンでした。

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《森の小径》1921年 油彩・キャンバス ポール・デルヴォー財団

第二章 表現主義の影響

一章に続き、様々な表現で模索していく過程が見られます。一章も二章も同じ作家が描いたのかと思えるほど画風が作品によって大きく変わります。

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《森の中の裸体像》1927-28年 油彩・キャンバス 個人蔵

色合いが実物より濃くでてしまっていますが、ブリューゲルの時代のフランドル絵画のような色合い、雰囲気を持つ葉のない木々が寒々しく広がっています。奥に馬、手前にマネキンのような人物が沢山配された謎の絵です。既にシュールです。この画風もとても好きです。どれくらいあるのか知りませんが、この画風の作品も沢山見てみたいと思いました。

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《若い女のトルソ》1933年 油彩・キャンバス 個人蔵

髪型といい肉体の表現、輪郭線といい、ピカソの新古典主義を思わせる画風でした。これもデルヴォーと言われなければ作者がわからないですね。

第三章 シュルレアリスムの影響
第四章 ポール・デルヴォーの世界


混在して展示されています。ここからついにあのデルヴォーが誕生します。シュルレアリスム運動を知り、しかしその運動とは距離を置きつつ制作したデルヴォー。一気にデルヴォーの世界が開花します。似た顔の女たち、骸骨、汽車、ランプ、神殿などなどデルヴォーが多く描いたモティーフが沢山現れます。

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《トンネル》1978年 油彩・キャンバス ポール・デルヴォー財団

沢山の女性たちが佇んでいます。中央に大好きな汽車が描かれていますが、線路は手前まで来ず途中で終わっています。鏡の中の少女も気になります。愛読書であったジュール・ヴェルヌの著書”地球の中心への旅”の登場人物であるオットー・リーデンブロック博士は何度も絵に登場しますが、それ以外は男性はほとんど登場せず、女性ばかり描いていたデルヴォー。鏡の中の少女はデルヴォーで汽車の思い出に浸っている絵なのでしょうか。謎です。

この絵の習作2点が同じ空間に掛けられていました。

「《トンネル》1978年のための習作」 1977年 墨・紙 ポール・デルヴォー財団

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「デッキⅡ《トンネル》1978年のための習作」 1977年 墨、水彩・紙 ポール・デルヴォー財団

描法も異なるので一見全く違う絵のように見えます。油彩の《トンネル》の鏡の中の少女の顔は大人の女のような色っぽい顔をしていますが、習作の方はともにチャーミングで可愛らしく見えます。特に「デッキⅡ」の鏡の中の少女は愛らしくいかにも子どもらしい表情です。こちらの習作は中央の汽車や右手奥の駅のホーム?は同じように描かれていますが、人物の後方左手にドアがあり、足元には幅木が描かれ、手前の空間と奥の空間を分断しつつも繋がっています。さらに左手に赤いソファに寝そべる女、汽車の手前に黒い帽子、黒いスーツの後ろ姿の男が立っています。墨の幾重にも重なる細い線の独特な画面も魅力的で油彩よりこっちの方がお気に入りになってしまいました。

いくつか作品を見ていて思ったのですが、習作から油彩の完成作では場面の大きな構図は同じでも登場するモティーフががらりと変わることが多く、習作とは全く違う作品になっていることが多々あります。そしてその習作がもはや習作ではなく一つの独立した作品として見ることができるクオリティなのです。習作はあくまで完成作に付属するものと思っていましたが、習作の時点で完成作とも見られるクオリティに驚愕でした。

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《アンテイの台所》 1960年 ポール・デルヴォー財団蔵

《アンテイの台所》1960年は、家具や日用品が並ぶ生家の一室を描いた作品で、ドールハウスの中を描いたかのような面白い作品です。家の外観を描いた《私のうまれた家》1967年と共に自分が生まれた場所を慈しんで描いたのであろう雰囲気が伝わる作品です。レオナール・フジタが描いた《室内》のように愛情が感じられる絵です。

フレスコ画の仕事をしていたのを初めて知りました。リエージュ大学動物学研究所のフレスコ画で、ほぼ最終段階の下絵である油彩や全く異なるモチーフで描かれた墨、水彩・紙の習作が展示されていました。ここでも習作の出来が見事でその場面が実際にあるのではないかと思ったほどです。この壁画は1面しかないので採用しなかったのがわかりましたが、数面あったとしたらこれも採用すべき!という作品でした。

第五章 旅の終わり

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《カリュプソー》1986年 油彩・キャンバス ポール・デルヴォー財団

最晩年、目を悪くしてからの作品3点で本展は幕を閉じます。妻、タムが1989年に他界すると筆を置いたとのことです。視力のせいでしょうか、画風がまたがらりと変わります。幻想的で美しい作品です。墨、水彩・紙の他作品2点はごちゃごちゃした画面ですが、離れてみると色付きガラスの破片を重ねたジェマイユのようでもあり綺麗でした。

出口にデルヴォーが使っていたパレットや汽車の模型、さらにランプ、手鏡などデルヴォーの作品に登場する実物たちが展示されています。これは驚き&嬉しい展示です。シュルレアリスムに限らず芸術作品は現実から切り離されてどこか違う世界の物として目に映りますが、デルヴォーがこれらを愛で作品に反映させたのを知ると何となく親近感が湧きます。

今回、会場の造りも見易く壁面もとてもよかったです。照明が当たらない部分は黒にも見える濃い紺の壁がデルヴォー作品の魅力をより引き出していたと思います。美しい空間でした。

「ポール・デルヴォー 夢をめぐる旅」はこんな感じに国内を巡回します。長い旅です。 

2012年9月13日(火)~9月24日(月) 鹿児島市立美術館
2012年10月26日(金)~11月9日(日) 府中市美術館
2012年11月17日(土)~2013年1月14日(月・祝) 下関市立美術館
2013年1月22日(火)~3月24日(日) 埼玉県立近代美術館
2013年4月6日(土)~5月26日(日) 岡崎市美術博物館
2013年7月20日(土)~9月1日(日)(予定) 秋田市立千秋美術館

東北から九州まで色々巡ります。関東には2度やって来ます。新宿駅を拠点に見ると府中市美術館の「東府中駅」まで最短28分、埼玉県立近代美術館の「北浦和駅」まで最短34分。ちかーい。埼玉県立近代美術館は《森》を所蔵しているのでこの作品も併せて展示されます。こちらも行かなくては。


日本の美術館で見られるデルヴォーいろいろ

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上段左から
《森》1948年 油彩・板 埼玉県立近代美術館
《夜の汽車》1947年 油彩・板 富山県立近代美術館
《階段》1948年 油彩・カンヴァス 横浜美術館

中段左から
《水のニンフ》1937年 油彩・布 姫路市立美術館
《海は近い》1965年 油彩・カンヴァス 姫路市立美術館
《こだま》1943年 油彩・カンヴァス 愛知県美術館

下段左から
《夜の汽車(散歩する女と学者)》1947年 福岡市美術館
《立てる女》、《女神》、《乙女の行進》1954~56年 姫路市立美術館

他にもポーラ美術館《トングルの娘たち》1962年/メナード美術館《捧げもの》1963年/松岡美術館《オルフェ》1956年/ヤマザキマザック美術館《二人の女》1955年などで油彩を見ることができます。いずれも縦横どちらか一辺が1mを超えている大きな作品です。

素晴らしい作品が日本に沢山あります。どれも名品ばかり。姫路市立美術館の縦長の3作品《立てる女》、《女神》、《乙女の行進》はサベナ航空の社長、ジルベール・ペリエの邸宅を飾っていた大壁画の部分です。3点とも広間のドアに描いたものでした。2010年に開館したヤマザキマザック美術館で《二人の女》が公開されましたが、この作品もペリエ邸の二階のドアに描かれていたものです。いつか姫路の3点と久しぶりの再会をしてもらいたいものです。日本にあるデルヴォーを一堂に集めた展示も是非見てみたいです。

今日では油彩の大作は5億を超えて取引される物もあります。裸体、汽車が描かれた作品は特に人気があるのか高くなっているような気がします。日本のパブリックコレクションに入っているデルヴォー作品の多くはデルヴォーが生きている時に入手したものばかりで今に比べるとかなり入手しやすかったはずです。富山県立近代美術館の《夜の汽車》なんて裸婦&汽車の作品です。今どれくらい価値があるのかわかりません!!

会場が変わると展覧会の雰囲気も変わるので埼玉県立近代美術館バージョンが今から楽しみです。その前に府中市美術館バージョンをもう一度見に行きたいと思っています。

郡山市立美術館 初の全館コレクション展 後編

油彩が続きまして次の部屋にはイギリスの水彩画が並んでいます。英国水彩画コレクションもなかなかのコレクションではないでしょうか。大胆な物から細か~い描写のものまで様々な絵があります。現在、「マンチェスター大学ウィットワース美術館所蔵 巨匠たちの英国水彩画展」が岡崎市美術博物館、島根県立石見美術館、Bunkamuraザ・ミュージアム、新潟県立万代島美術館を巡回していますが、きっとそこにも含まれているであろう作家たちと思います。ウィリアム・ブレイクは国内では版画にしかお目にかかれないと思っていましたが、《眠るダンカン王に近づくマクベス夫人》 水彩、インク・紙といった作品があったりジョン・ラスキンも展示してありました。

遅くなりましたが、

本展は
①英国近代美術の流れ 油彩、水彩など25点(版画10点を含む)
②英国水彩画 13点
③日英美術交流のはじまり 油彩、水彩、工芸、陶芸など31点
④日本近代美術の黎明 油彩、水彩など14点
⑤日本の水彩画 44点(油彩5点含む)

の5章で構成されており127点と凄いボリュームです。じっくり見ていたらへとへとになってしまいました。

今回の展示の面白い点は、イギリス美術から日本の美術への展示の切り替わりが凄く自然なのです。まずイギリスの油彩から始まり、続いて英国水彩画、そして来日した英国人が日本の景色を水彩画で描いたものが並び、次の部屋では日本人が水彩画を物にしていく過程が見られる展示になっているのです。劇場で例えると舞台転換が見事といったところでしょうか。

三章は、「日本美術交流のはじまり」で、画家のチャールズ・ワーグマンや工業デザイナーのクリストファー・ドレッサー、陶芸家のバーナード・リーチなど日本と関わりのある作家たちの作品が並び、また来日した英国人による日本の風景を描いた油彩、水彩画が並びます。茶屋の看板の漢字も見よう見まねで書いてあり面白かったです。

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クリストファー・ドレッサー《トースト・ラック》(ポイントアーチ型) 1881年 金属、電気メッキ  15.0×12.0cm

これ何だかわかりますか?ヒントはパン。そうトースト・ラックです。数十年後に流行するアール・デコを既に先取りしているような形態に目を見張ります。

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サー・アルフレッド・イースト《雨後の傘干し》1889~90年頃 水彩・紙 25.4×36.2cm

日本の風景を描く西洋人を当時の人々はどう見ていたのでしょうか。奇妙なことをしている外国人がいると思ったことでしょう。また絵の出来を見て大変驚いたと思います。チャールズ・ワーグマン《西洋紳士スケッチの図》は浜辺で描く西洋紳士の傍らに日本人の男女が関心があるのかしゃがんで制作の進行を見守っています。こんな光景がいろんなところであったのでしょうか。

4章の「日本近代美術の黎明」では五百城文哉の寺の堂内をリアルに描いた《真如堂図》や原撫松《横山孫一郎像》、山本芳翠《菊と蕪と蝸牛》など19世紀末の日本の油絵や浅井忠や鹿子木孟郎らの水彩が並びます。日本人にとってまだまだ新しい画材に奮闘しているのが伝わってきます。見たままを忠実に描くことに重点がおかれています。

5章の日本の水彩画は実に様々な作家の作品が並んでいます。始めて知る作家も沢山いました。一番最後の部屋には近代日本美術史上燦然と輝く巨匠たちの作品が並べられています。個性が強烈に光る作品ばかりで水彩の表現も本当に自由な物になっています。岸田劉生、古賀春江、藤島武二、安井曾太郎などなど美術館を代表する油彩作品もこの部屋に展示されています。

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左:藤島武二《「耕到天」習作》1936年 油彩・キャンバス  38.0×45.7cm
中央:参考図版 藤島武二《耕到天》1938年 油彩 68.5×85.0cm メナード美術館
右:参考図版 藤島武二《耕到天》1938年 油彩・キャンバス 91.0×97.5cm 大原美術館

クリームがペタペタ塗られたようなケーキのようで美味しそうな絵です。郡山市立美術館のこの作品は、メナード美術館所蔵作品の習作かと思っていましたが、メナード美術館のも習作で大原美術館所蔵のものが完成作だと今回知りました。完成作に近づくにつれ色彩が落ち着いていってます。郡山市立美術館の作品は習作ですが、大きな大胆な筆致とカラフルさで完成作とは違う魅力のある作品だと思います。この作品はこの作品で好きです。


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安井曽太郎《初秋の北京》1944年 油彩・キャンバス  61.3×50.6cm

紫禁城といえば、梅原龍三郎が何枚も描いています。彼の作品は木々の濃い緑と建物の赤のコントラストが強烈でパワフルな絵ですが、安井曽太郎のこの絵は色彩からかとても落ち着いて見えます。この絵の前に立つと静かで平穏な気持ちにさせてくれます。色づき始めたいろんな木の不思議なフォルムも面白いです。紫禁城一つとっても梅原vs安井 甲乙つけられません!

これで1階の企画展はこれで終了です。2階の常設展へ移動

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2階へと続く階段ホールも広くて綺麗でいい感じです。

2階の常設展は4部屋あり、年4回展示替えがあります。現在は第二期 2012年7月25日~10月28日

展示室1 イギリスの版画
展示室2 明治・大正の油彩画
展示室3 郡山の美術
展示室4 版画のいろいろ 
     涼をもとめて

が開催されています。

展示室1のイギリスの版画は、1階に絵画があったウィリアム・ホガース、ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー、ジョン・コンスタブル、ジョン・マーティンからオーブリー・ビアズリーやジョン・エヴァレット・ミレイ、フランク・ブラングィン、デイヴィッド・ホックニー、ヘンリー・ムーアなど18世紀から20世紀までのイギリス版画の流れを楽しめます。

展示室2の明治・大正の油彩画は、山本芳翠、浅井忠、小出楢重、梅原龍三郎、中村彝、中川一政らの絵画

展示室1、2は企画展と関連のある内容です。

展示室3の郡山の美術は、地元の作家たちの作品が並んでいます。三木宗策《威容抱慈(坂上田村麻呂像)》の木彫の大きさ、迫力は凄かったです。

展示室4はガラスケースが壁に埋め込まれ天井が他の部屋より低く雰囲気が違った部屋になっています。
版画のいろいろは、ポスターからお札、切手まで様々な印刷物が展示され、涼をもとめては佐藤潤四郎のガラス作品がずらりと並んでいます。もう秋ですが、暑さがぶり返していて涼しげでよかったです。

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2階通路より1階を望む

1階から階段を上がるとこの光景が見えて、画面右側に常設展示室があり、通路に沿って4部屋が奥までまっすぐ続いています。常設展示室の奥の出口から出てくると、この画像の突き当りに階段があり、そこから1階へ降りることができます。階段を降りたところに彫刻が展示された空間があり1階ロビーへ続いています。自然に館内を一周する作りになっています。こういう館内をぐるりと探検できる建物凄く好きです。

企画展127点、常設展約110点とコレクションから美術館を代表する作品をとにかくあれもこれも見ることができました。

美術館敷地には4時間半滞在していましたが、鑑賞時間は約3時間半。もっと見たかったですね。閉館の時間になり後ろ髪引かれる思いで退館。本当に素晴らしい美術館でした。また来たいと強く思ったのでした。

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名残惜しく帰りにもパチリ。夕暮れ迫る美術館 雪が降ったらまた素晴らしい眺めになるのでしょう。そんな季節にも訪ねてみたいものです。

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右手に見えるのが前編冒頭で画面から切れていたカフェです。次はカフェにも寄ってみたいです。

17時閉館ですが、郡山駅までのバスは17:25で、遅れてきて29分でした(泣)冬だったら凍死。
郡山駅でお土産をちょろっと見て18:14発のJRあぶくま号で帰りました。さようなら郡山!また来ます!

全館コレクション展は10月14日(日)までの開催ですので是非お見逃しなく。

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次回企画展は「開館20周年記念 バーン=ジョーンズ展」です。三菱一号館美術館に何度も見に行きましたが、郡山会場でも激しく見たい。


今回、イギリス近代美術は18世紀、19世紀までの画家で展示されない作家、作品もあり企画展示室の半分に満たない展示でしたが、いつか全部屋使って20世紀までのイギリス美術コレクションも合わせて油彩、水彩、版画、彫刻、工芸の作品をまとめて見られる展示も是非開催していただきたいです。イギリス美術に限らず日本の美術だけ一堂に展示したりそんなコレクション展も是非見たいです。

また、国内に所蔵されるイギリス近代美術作品を招いて豪華な展覧会を開催してほしいです。フランス近代絵画に比べると少ないですが、結構あります。油彩をメインにとりあげますと

栃木県立美術館
こちらも郡山市立美術館に負けないイギリス美術のコレクションを持っています。
国内では双璧と言えるのではないでしょうか。20世紀イギリス美術コレクションも豊富です。
郡山市立美術館のライバルです。勝手に言っています。

リチャード・ウィルソン《アクア・アチェトーサ》
トマス・ゲインズバラ《牛追いのいる風景》1781年のロイヤル・アカデミーでの展覧会出品作
ジョン・コンスタブル《デダムの谷》3億6000万円で購入
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー
《風景・タンバリンをもつ女》3億5000万円で購入、《メリック修道院、スウェイル渓谷》水彩・紙
ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ《レディ・リリス》寄託作品

国立西洋美術館
リチャード・ウィルソン《ティヴォリの風景(カプリッチョ)》
ジョシュア・レイノルズ《第四代ホルダネス伯爵ロバート・ダーシーの肖像》
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《アーレ渓谷》鉛筆・紙、《塔の見える風景》鉛筆・紙
ジョン・エヴァレット・ミレイ《あひるの子》
ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ《愛の杯》
フランク・ブラングィン《しけの日》、《煙草をくわえた男》、《松方幸次郎氏の肖像》など

東京富士美術館
ジョシュア・レイノルズ《少女と犬》
トマス・ゲインズボロ《田舎家の前の人々》
トマス・ローレンス《摂政皇太子時代のジョージ4世》
ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー
《ヘレヴーツリュイスから出航するユトレヒトシティ64号》、《ユトレヒト号-海へ》
ローレンス・アルマ=タデマ《古代ローマのスタジオ》
ベンジャミン・ウィリアム・リーダー《小川の夕べ》
ジェームス・バーレル・スミス《滝》

松岡美術館 
イギリス・ヴィクトリア朝コレクションがあります。
ジョン・エヴァレット・ミレイ《聖テレジアの少女時代》
ベンジャミン・ウィリアムズ リーダー《北ウェールズの穏やかな午後》

横浜美術館 
ジョン・コンスタブル《水門》

山梨県立美術館
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《インヴェラレイ城の見えるファイン湾》水彩・紙

静岡県立美術館
リチャード・ウィルソン《リン・ナントルからスノードンを望む》
トマス・ゲインズボロ《水を飲む馬のいる森の風景》チョーク・紙
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《パッランツァ、マッジョーレ湖》水彩・紙
サミュエル・パーマー《ケント州、アンダーリヴァーのホップ畑》

資料的価値のある見方が大きいですが、宇都宮美術館はジョルジュ・ビゴー コレクションを約300点も所蔵していますし、チャールズ・ワーグマンやフランク・ブラングィンの作品も各地の美術館に所蔵されています。

20世紀イギリス美術からはヘンリー・ムーア、ベン・ニコルソン、フランシス・ベーコン、デイヴィッド・ホックニー、アントニー・ゴームリーなど有名な作家のコレクションも点在しています。

いろいろありますね。郡山市立美術館のコレクションを核にこれらの作品が集まったらさぞかし素晴らしい展覧会となるでしょう。ここまで複数館になると難しいでしょうけど栃木県立美術館とのコラボは実現しないかなとずっと密かに思ってることです。


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