美術展命の男のブログ

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プーシキン美術館展 横浜美術館

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開幕初日、閉館後のブロガー内覧会に参加してきました。

今回のプーシキン美術館展は、元々、2011年に開催されるはずでしたが、東日本大震災の影響で中止になってしまった展覧会です。日本に作品を送る4日前に震災が起きたとのことです。あの時はチケットも揃えて楽しみにしていたのでとてもショックでした。中止になり幻となってしまった展覧会もあるなか、全く同じ構成で復活です。

2012年にプーシキン美術館は創立100周年を迎えました。2011年に拡張計画に着手したので本来ならその工事中に貸出を予定していたということなのですかね。

初日の開館前には200人以上が並んだとのことです。期待度が高いのが窺われます。

前回、プーシキン美術館展が日本で開催されたのは2005年。セルゲイ・シチューキンとイワン・モロゾフの集めた印象派からピカソ、マティスまでの絵画50点と版画25点で構成されていました。

今回は、17世紀のプッサンから20世紀初頭のピカソ、マティスまでフランス絵画300年を66点の絵画で辿ります。日本初公開作品が47点!

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フランスに憧れ、傑作を蒐集したロマノフ王朝の歴代皇帝や貴族、大富豪などのコレクターたちもロビーに紹介されていてどのコレクターがどの作品を集めたかという点にも触れています。コレクターも紹介することでどうやってこれらの名画がロシアに集まったのかを垣間見ることができます。ただ美術史を辿るだけでなくコレクターの紹介もすることで本展の意義を見ることができます。

第1章 17-18世紀 古典主義、ロココ 22点
第2章 19世紀前半 新古典主義、ロマン主義、自然主義 14点
第3章 19世紀後半 印象主義、ポスト印象主義 19点
第4章 20世紀   フォーヴィスム、キュビスム、エコール・ド・パリ 11点

で構成されています。

第1章 17-18世紀 古典主義、ロココ

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※会場風景は主催者の許可を得て撮影したものです。

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ニコラ・プッサン 《アモリびとを打ち破るヨシュア》 1624-25年頃 油彩、カンヴァス 96×134cm
エカテリーナ2世収集品

まず最初はプッサンが迎えてくれます。プッサンがローマに留学していた初期の作品です。ほどほどに大きな作品ですが、もっと大きな作品かと思っていました。そう思わされるくらい大迫力の画面です。プッサンは何となくのどかな画面のイメージがあったのでダイナミックに描かれているこの作品をプッサンと言われなければわからなかったかもしれません。

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セバスティアン・ブールドン 《犠牲をささげるノア》 1650年代半ば 油彩、カンヴァス

セバスティアン・ブールドン《犠牲をささげるノア》はプッサンのイメージに重なる作品でした。

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冒頭、バロックの暗い画面が続きます。

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シャルル・ド・ラ・フォッス 《キリストと聖女たち》 1680-85年頃 油彩、カンヴァス

全体的な暗さ、キリストの肉体と白い布の明るさのコントラストがレンブラントっぽいです。影響を受けたのでしょうか。

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フランソワ・ブーシェ 《ユピテルとカリスト》 1744年 油彩、カンヴァス 98×72cm
ニコライ・ユスーポフ公爵収集品

ロココの目玉はブーシェ!女神ディアナの従者カリストを落とすためにディアナに変身して誘惑するユピテル(右)。何も知らず美しい絵と思っていたのですが、だいぶ妖しい絵だったのですね。カリストのうっとりフェイスがもう落ちる瞬間を捉えようとしています。ユピテルの象徴である鷲が右端にいるのでこれに気づけばセーフ?志村うしろーみたいな。濃い森の緑、ブーシェ特有の緑と青の混じる空気感、柔らかい肌の色など非常によく描かれた傑作の1点だと思います。

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ジャン・バティスト・クルーズ、ユベール・ロベール、ジャック・ルイ・ダヴィッドなど比較的なじみのある作家を発見できました。

第2章 19世紀前半 新古典主義、ロマン主義、自然主義

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新古典主義のアングル、ロマン主義のドラクロワの二大巨頭の作品を見ることができます。理想化する新古典主義の《静》と現実を見せつけられるかのような激しい《動》のロマン主義の対照的な作品です。東方趣味の作品も並び当時の画壇の流行を垣間見ることができます。

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ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル 《聖杯の前の聖母》 1841年 油彩、カンヴァス 116×84cm
アレクサンドル2世収集品

アレクサンドル2世が皇太子の時の1840年、ローマにいたアングルを訪問し直接注文した作品です。作品の右下にROMAとサインがありました。マリアの右後ろにアレクサンドルの守護神アレクサンドルネフスキー、左側に父ニコライ1世の守護神ニコラウスが描かれています。描かれた翌年、パリで公開され絶賛されたといいます。結構大きな作品で迫力があります。筆致の見えない美しい肌、マリアのふっくらとした顔、この表情、ラファエロの《大公の聖母》を思い出します。聖杯の金色の描写も素晴らしく、額縁の金と見比べても遜色のない表現で驚きました。

アングルもこの作品を気に入り他に4点の作品を残しました。

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ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル 《聖杯の前の聖母》 1852年 油彩、カンヴァス
40.3x32.7cm メトロポリタン美術館蔵

2005年に寄贈された作品です。

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ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル 《聖杯の前の聖母》 1854年 油彩、カンヴァス
直径113cm オルセー美術館蔵


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ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル 《聖杯の前の聖母》 1860年 油彩、カンヴァス
60x46cm ロサンゼルス郡立美術館蔵

2004年にサザビーズオークションに登場し、予想落札価格$400.000-600.000(約4320万~6480万円)のところ$904.000(約9763万円)※108円換算 で落札されたものです。意外とお買い得?アングルの絵画はあまりオークションに出てこないのでこのような名品が登場するのは大変珍しいことです。日本のコレクターか画商さんに頑張ってもらいたかったです(笑)。印象派に何億も出して集めているコレクターはこれを買うべし!宗教画は敬遠されるとはいうもののこの作品はそういうのを通り越してアングルの美しい女性像と色彩を単純に楽しめるいい絵だと思います。国立西洋美術館に欲しかったー!


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ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル 《聖杯の前の聖母》 1866年 油彩、カンヴァス
78x67cm ボナ美術館蔵 フランス、バイヨンヌ


コローの《突風》は、天気が悪いからか色が暗く描写も荒くロマン主義のような絵でした。銀灰食の穏やかなコローとは一味違った作品でした。

第3章 19世紀後半 印象主義、ポスト印象主義

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大好きな印象主義の章です。壁紙が豪華な赤、青から自然な色に変わります。

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ピエール=オーギュスト・ルノワール 《ジャンヌ・サマリーの肖像》 1877年 油彩、カンヴァス 56×47cm
イワン・モロゾフ収集品

これほどの名画なので既に日本で公開されたことがあったのではと思っていましたが、日本初公開の作品です。ルノワールの有名な肖像画はいくつもありますけどルノワールのモナリザと言っていいような作品だと思います。思っていたより小さな作品でした。近くで見ると筆跡の跡が凄まじいです。筆跡の見えないアングルと全く違います。肌に水色?の寒色系の筆跡がさっさっと沢山置かれていて顔のアップは髭があるかのようです(笑)。後ろに下がって離れて行くと顔に置かれたこの寒色系の筆致が影に見えて顔が立体的に浮き上がるように見えました。額の中に人が入っているような不思議な感覚になりました。ピンクの背景に溶け込むように描かれた人物像なんて当時はさぞ斬新な表現だったと思います。見つめられたら動きたくなくなる作品でした。

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ピエール=オーギュスト・ルノワール 《セーヌの水浴(ラ・グルヌイエール)》 1869年 油彩、カンヴァス 59×80cm

ルノワール好きとしてこの作品も来日しているとはとても嬉しかったです。パリ郊外のセーヌ川沿いにあった行楽地を描いた作品です。《ラ・グルヌイエール》といえば水辺に円形の人口島がある構図をモネとルノワールが同じ位置から描いた作品が有名ですけどプーシキンの作品の右下の橋を渡っていくと人工島が現れると言うことでしょうか。

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左:クロード・モネ 《ラ・グルヌイエール》 1869年 油彩、カンヴァス 75x100cm メトロポリタン美術館蔵
右:ピエール=オーギュスト・ルノワール 《ラ・グルヌイエール》 1869年 油彩、カンヴァス 81×66cm スウェーデン国立美術館蔵

プーシキンの作品は人物が近景にいるので様々なファッションの違いも分かります。葉の間や木、地面などに降り注ぐ強い光が上手く表現されていると思います。これらの作品はスケッチでこれを元にサロンに出品する大作を描く計画でしたが、ルノワールは結局描かず、モネは完成させて1870年のサロンに出品したものの落選しました。その作品は所在不明とのこと。見てみたい!

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エドガー・ドガ 《バレエの稽古》 1875-77年頃 パステル、厚紙 50×63cm

油彩が多い中、唯一のパステル作品です。窓から差し込む明るい光が床に反射していますが、ピンクのパステルで表現しているところが印象派的です。変わった構図が面白いです。左上の物体は???と思ったら螺旋階段とのこと。右側から足だけで飛び出てるのも面白いです。写真や浮世絵からの影響を窺わせます。

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歌川広重 四ッ谷 内藤 新宿 『名所江戸百景』 安政三年(1856)

螺旋階段を見た時、ふと歌川広重の馬を後ろから見たこのアングルを思い出してしまいました(笑)

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素晴らしいセザンヌの人物像や水浴図、ゴッホの肖像、ゴーギャンも人物。人物像が凄く多いんです。というか肖像はもちろん何かしら人物が描かれていて人物が全く登場しないのはほんの数点といたところ。人物表現の300年という副題がつけられてもおかしくないくらいです。アングルやルノワールのように人物の描き方の違いも見てほしいと学芸員の方が言っていました。

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ゴーギャン2点も凄い名品。奥の《エイアハ・オヒバ(働くなかれ》 1896年がメインの1点として広報に使われていますが、2005年のプーシキン美術館展の白眉の1点だった右側の《彼女の名はヴァイルマティといった(ヴァイルマティ・テイ・オア)》 1892年 も来日。こちらの方がゴーギャンの素晴らしい色彩感覚を堪能できます。どちらか1点借りられたら万々歳ですが、プーシキン美術館のゴーギャンコレクションは質も量も揃っているので2点の来日が叶ったのでしょうね。

第4章 20世紀 フォーヴィスム、キュビスム、エコール・ド・パリ

そして最後の章。こちらは撮影禁止。最も大きな進歩を遂げた20世紀美術の最初の流れをわずか8作家の11作品で紹介。

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アンリ・ルソー 《詩人に霊感を与えるミューズ》 1909年 油彩、カンヴァス 131×97cm
セルゲイ・シチューキン収集品

この作品は美術の教科書だったか何かで子どもの頃に見たようで記憶のどこかにあった絵です。遂に出会えた。ルソーな植物たちの中に立つルソーな人物たち。マリー・ローランサンとアポリネールを描いたものだったというのを本展で初めて知りました。似てないし驚いた(笑)。ルソーは、アポリネールの顔や手を採寸しながら描いたといいますが、身体と手の大きさのバランスがおかしいしローランサンの方が顔が大きい(笑)。ローランサンの《女の顔》が出品されていたり、ルソーを称賛し彼の作品を所有していたピカソも隣りにあったりと画家の繋がりを垣間見ることができました。ピカソは1900年頃の《逢引き(抱擁)》、青の時代からバラ色の時代の移行期に描かれた《マジョルカ島の女》 1905年頃、キュビスムの《扇子を持つ女》 1909年と初期の中でも目まぐるしく変わる画風を堪能することができます。

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アンリ・マティスの《カラー、アイリス、ミモザ》 1913年 油彩、カンヴァス

マティスの作品は、1901-04年に描いた暗く抑えられた画面の中の青い水差しと筆致にフォーヴィスムの予告を感じる《青い水差し》と色彩の魔術師としての名品《カラー、アイリス、ミモザ》 1913年の2点が出品されています。この作品は前回2005年のプーシキン美術館展の白眉だった《金魚》と似たようなサイズで現地では対作品のように壁に掛けられているとのことでした。

フランス絵画の300年を66点というのは超凝縮しすぎでしが、魅力的な作品で辿ることができとても面白かったです。ただの〇〇美術館展ではなくてコレクターと絡ませることでフランスへの強い憧れ、自国の文化を豊かにしようという情熱が伝わってきました。ピカソやルソーなどは当時は現代美術で評価も定まっていないのに今日、傑作とされているものを蒐集しているのは先見の明があり、真の眼があったというのを証明しています。

音声ガイドのナレーションは俳優の水谷豊さんが担当しています。相棒の右京さんが最後に登場します。ちょっと嬉しい演出です。本当に最後の最後に登場するので聞かずに返却してしまうともったいないのでご注意。


内覧会の時間は、横浜美術館コレクション展は閉鎖されていて見られなかったのですが、通常の開館時間中に見ました。

プーシキン美術館展でもコレクターが鍵になっていましたが、面白いことに横浜美術館コレクション展でも7つの個人コレクションに焦点を当てて紹介しています。まとめて寄贈されたものはもちろん、購入前に、あるコレクションの一部を形成していたものなどが公開されています。いつものコレクション展とは違ったとても興味深いテーマです。その中でも横浜に本社を置く株式会社サカタのタネの創業者、坂田武雄氏の西洋近代美術コレクションは特筆すべきものではないでしょうか。横浜美術館の開館前の1983年に52点が寄贈されたものです。ギュスターヴ・モローの宝石のような水彩《岩の上の女神》、ギュスターヴ・クールベ《海岸の竜巻(エトルタ)》、シャルル=エミール・ジャック、 オディロン・ルドン、ウジェーヌ・カリエールなどが一堂に展示されていました。プーシキン美術館展になかったクールベや扱われなかった象徴主義の作品も見られてお得な感じ。

ジョン・コンスタブル《水門》は所蔵しているのは知っていたものの中々お目にかかれないでいたものでしたが、今回やっと見られました。小品でしたが、構図や描かれた対象がいかにもコンスタブルらしい作品でよかったです。横浜美術館にあるのを知らない人も多いのでは?他にもジョン・シンガー・サージェント、イリヤ・レーピンなど日本でほとんど見られない作家まであります。横浜美術館は西洋美術ではセザンヌ以降のピカソ、マグリット、ダリなど主に20世紀美術、特にシュルレアリスムコレクションで知られているので坂田武雄コレクションは範囲がかなりずれています。普段の展示に苦慮しているのではと思いました。展示される機会が少ないのでちょっともったいないですね。他にも日本画や陶磁器など様々なコレクターの作品たちを見ることができます。特別展とコレクション展が呼応しているようで面白かったです。

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