美術展命の男のブログ

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さらば! AIGコレクション

AIGコレクションをご存知でしょうか。AIGスター生命保険株式会社が所蔵していた西洋絵画コレクションのことです。

2006年に長崎県美術館で開催された「フランス印象派からエコール・ド・パリへ」で50点、2008年に富山県立近代美術館で開催された「AIGコレクション―印象派の光、エコール・ド・パリの夢」で56点が公開されました。長崎県と富山県の美術ファンの方には馴染みのあるコレクションなのではないでしょうか。

私は2006年に初めてAIGコレクションの存在を知りました。

クロワゾニスムの手法で描かれたゴーギャン《ブルターニュの少年と鵞鳥》が、2009年夏に東京国立近代美術館「ゴーギャン展」、秋にはBunkamuraザ・ミュージアム「ロートレック・コネクション」、2010年には国立新美術館「没後120年 ゴッホ展 こうして私はゴッホになった」に出品されていたのでご覧になられた方も多いと思います。

そんな名品が2013年11月6日 サザビーズオークション、ニューヨークの印象派&近代美術 イブニングセールに登場しました。

印象派&近代美術 イブニングセール 2013年11月6日 サザビーズ、ニューヨーク

gauguin PETIT BRETON À LOIE
1.ポール・ゴーギャン 《ブルターニュの少年と鵞鳥》 1889年 油彩、カンヴァス 92×73cm
予想落札価格 $6,000,000 — 8,000,000(5億9400万~7億9200万円)
落札価格 $9,685,000(9億5881万円) ※1$=99円換算

monet CHEVAUX À LA POINTE DE LA HÈVE
2.クロード・モネ 《ラ・エーヴ岬の馬》 1864年 油彩、カンヴァス 54×73.5cm
予想落札価格 $1,500,000 — 2,000,000 (1億4850万~1億9800万円)
落札価格 $2,741,000(2億7135万円) ※1$=99円換算

印象派以前に描いた写実的で固有色に忠実な初期作品です。師ブーダンを思わせる海景画です。しっかり描かれた名品だと思うのですが、初期の暗めの画面の為か控えめの価格。国立西洋美術館に欲しい。

monet COUCHER DE SOLEIL À POURVILLE, PLEINE MER
3.クロード・モネ 《満潮のプルヴィルの日没》 1882年 油彩、カンヴァス 54×73.5cm
予想落札価格 $1,500,000 — 2,500,000(1億4850万~2億4750万円)
落札価格 $4,645,000(4億5985万円) ※1$=99円換算

renoi LE REPOS
4.ピエール=オーギュスト・ルノワール 《帽子の傍らで横たわる裸婦、休息》 1895年頃 パステル、アーティストボードに貼った紙 44×55.8cm 
予想落札価格 $800,000 — 1,200,000(7920万~1億1880万円)
落札価格 $1,565,000(1億5493万円) ※1$=99円換算

pissarro CRUE DE LA SEINE, PONT BOIELDIEU, ROUEN
5.カミーユ・ピサロ 《ルーアンの増水したセーヌ川》 1896年 油彩、カンヴァス 54.5×66cm
予想落札価格 $1,500,000 — 2,000,000(1億4850万~1億9800万円)
落札価格 $2,405,000(2億3800万円) ※1$=99円換算

delaunay NATURE MORTE AUX GANTS
6.ロベール・ドローネー 《手袋のある静物》 1906-07年 油彩、カンヴァス 100×81.5cm
予想落札価格 $1,200,000 — 1,800,000(1億1188万~1億7820万円)
不落札

chagall LARBRE ROUGE
7.マルク・シャガール 《赤い樹》 1966年 油彩、カンヴァス 130.2×95.8cm
予想落札価格 $2,500,000 — 3,500,000(1億1188万~1億7820万円)
落札価格 $3,525,000(3億4897万円) ※1$=99円換算

chagall LE VIOLONISTE SOUS LA LUNE
8.マルク・シャガール 《月下のヴァイオリニスト》 1975年 油彩、カンヴァス 135×114cm
予想落札価格 $2,000,000 — 3,000,000(1億9800万~2億9700万円)
落札価格 $2,225,000(2億2027万円) ※1$=99円換算

picasso FEMME ATTABLÉE
9.パブロ・ピカソ 《食卓につく女》 1959年4月10日 油彩、カンヴァス 81×100cm
予想落札価格 $1,500,000 — 2,000,000(1億4850万~1億9800万円)
不落札

ゴーギャンはかなりの高額で落札されました。このイブニングセールではAIGコレクションからモネ、ピサロ、ルノワール、ピカソ、ロベール・ドローネー、シャガールなど9点が登場しAIGコレクションだけで計26億5000万円を超えました。

このイブニングセールの翌日7日には、より安価な作品が揃う印象派&近代美術 デイセールが開催されそちらにもAIGコレクションより出品されました。↓

印象派&近代美術 デイセール 2013年11月7日 サザビーズ、ニューヨーク

renoir JEUNE FEMME TENANT UNE FLEUR (PORTRAIT DE JEANNE SAMARY)
10.ピエール=オーギュスト・ルノワール  《ジャンヌ・サマリーの肖像》 1879-80年頃 パステル、紙 61.6×46.3cm
予想落札価格 $250,000 — 350,000(2475万~3465万円)
落札価格 $425,000(4207万円) ※1$=99円換算

renoir DEUX FILLES DANS UN PRÉ (DEUX FEMMES DANS LHERBE)
11.ピエール=オーギュスト・ルノワール  《草上の二人の女性》 1910年頃 油彩、カンヴァス 47.3×56.8cm
予想落札価格 $700,000 — 1,000,000(6930万~9900万円)
落札価格 $917,000(9078万円) ※1$=99円換算

loiseau LE PONT SUSPENDU À TRIEL
12.ギュスターヴ・ロワゾー 《トリエルのつり橋》 1917年 油彩、カンヴァス 59.3×86 cm
予想落札価格 $100,000 — 150,000(990万~1485万円)
落札価格 $87,500(866万円) ※1$=99円換算

pascin LA PETITE ACTRICE
13.ジュール・パスキン 《小さな女優》 1927年 油彩・木炭、カンヴァス 73×91.7cm
予想落札価格 $60,000 — 80,000(594万~792万円)
不落札

foujita FLEURS
14.藤田嗣治 《トリエルのつり橋》 1940年 油彩、カンヴァス 左右各55.7×38.4cm
予想落札価格 $60,000 — 80,000(594万~792万円)
落札価格 $118,750(1175万円) ※1$=99円換算

デイセールにはさらにルノワール、シャガール、アンリ・アイデン、アルベール・マルケ、アンリ・モレ、アンリ・ルバスク(不落札)、荻須高徳など合わせて15点ほどが出品され3億6000万円超えになりました。この2日間でコレクションのほぼ半分が放出されました。この時、ゴーギャンとモネの作品に目を奪われこんなに沢山の作品が放出されていることに気がつきませんでした。


そして2014年。2月5日のサザビーズ・ロンドンの印象派、近代&シュルレアリスムのイブニングセールにAIGコレクション9点を含む89ロットが競売にかけられました。

翌日のデイセールも合せた2日間のオークションの結果は£215.800.000(360億円!!)※1£=167円換算

印象派、近代&シュルレアリスム イブニングセール 2014年2月5日 サザビーズ、ロンドン

イブニングセールの最大のニュースは、ピサロがとんでもない価格で落札されたことです。

pissarro LE BOULEVARD MONTMARTRE, MATINÉE DE PRINTEMPS
カミーユ・ピサロ 《モンマルトル大通り、春》 1897年 油彩、カンヴァス 65×81cm
予想落札価格 £7,000,000 — 10,000,000(11億6900万~16億7000万円)
落札価格 £19,682,500(32億8697万円!!) ※1£=167円換算

こちらのピサロはAIGコレクションではありません。長らくイスラエル美術館に展示されていた作品です。ピサロの名品がなんと33億円近くで落札されました。恐らく今までのピサロの最高額は春夏秋冬を4枚の横長のカンヴァスに描いた物で2007年のクリスティーズオークションで$14,601,000(16億円)※1$=111円換算 で落札された物だったと思います。30億円を超えるピサロなんて史上初!!今までは16億円の作品は例外中の例外で、名品でも3~5億円のイメージがあったのでびっくりです。この記録を破るピサロ作品は今後出るのでしょうか。

caillebotte LE PETIT BRAS DE LA SEINE, ARGENTEUIL
15.ギュスターヴ・カイユボット 《セーヌ河》 1897年 油彩、カンヴァス 65×81cm
予想落札価格 £400,000 — 600,000(6680万~1億200万円)
落札価格 £1,082,500 (1億8077万円) ※1£=167円換算

gogh LHOMME EST EN MER
16.フィンセント・ファン・ゴッホ 《夫は漁に出ている》 1889年 油彩、カンヴァス 66×51cm
予想落札価格 £6,000,000 — 8,000,000(10億~13億3600万円)
落札価格 £16,882,500(28億1937万円!!) ※1£=167円換算

※参考画像 右:ヴィルジニ・ドゥモン=ブルトン 《夫は漁に出ている》 1889年 油彩、カンヴァス 161×135cm 個人蔵

この25年にオークションに出たゴッホ作品中、第6位の記録だそうです。
ゴッホは、1889年の後半にかけてミレーやドラクロワ作品の模写を積極的に描いていますが、こちらは同年のサロンに出品されたヴィルジニ・ドゥモン=ブルトンの作品を模写した作品。ヴィルジニ・ドゥモン=ブルトン(1859~1935)は女性画家で、父親は農民画の傑作を残したジュール・ブルトンです。

monet AU BORD DU FJORD, PRÈS CHRISTIANIA
17.クロード・モネ 《クリスティアニア近くのフィヨルドの岸辺》 1895年 油彩、カンヴァス 65×100.5cm
予想落札価格 £1,200,000 — 1,800,000(2億400万~3億600万円)
落札価格 £2,154,500(3億5980万円) ※1£=167円換算

monet PAVOTS ROUGE ET ROSE
18.クロード・モネ 《赤とピンクの芥子》 1883年 油彩、カンヴァス 119.5×37cm
予想落札価格 £900,000 — 1,200,000(1億5000万~2億400万円)
落札価格 £986,500(1億6474万円) ※1£=167円換算

※参考画像 右:クロード・モネ 《白い芥子》 1883年 油彩、カンヴァス 128x37cm 日本、個人蔵

モネは1882年から85年に画商ポール・デュラン=リュエル邸のサロンの扉装飾36枚を描きました。1つの扉に大中小の6つが配置され6枚のドアを飾りました。白黒写真を見るとAIGコレクションの《赤とピンクの芥子》は、《白い芥子》と対になっていたのがわかります。他の作品の多くは沢山の花が生けられた花瓶が画面からはみ出し切り落とされた構図となっており単体で見ると不自然な絵に写るのですが、こちらは対象が画面に収まっており、単体で見た時にも非常に美しい効果を生んでいます。扉の写真をよく見ると作品のサイン部分より上が切り取られているのがわかります。実際はもっと長かったのですね。ジャポニスムを感じずにはいられない作品です。共に日本にありましたが、並べて見ることは叶いませんでした。

monet LE FORT DANTIBES
19.クロード・モネ 《アンティーブの城砦》 1888年 油彩、カンヴァス 59.5×80cm
予想落札価格 £450,000 — 650,000(7515万~1億855万円)
落札価格 £1,118,500(1億8678万円) ※1£=167円換算

degas DEUX DANSEUSES AU FOYER
20.エドガー・ドガ 《楽屋の二人の踊り子》 1895年 パステル、板に貼った賽の目紙 52×44.5cm
予想落札価格 £500,000 — 700,000(8350万~1億1690万円)
落札価格 £506,500(8458万円) ※1£=167円換算

renoir JEUNE FEMME AU CHAPEAU DE PAILLE
21.ピエール=オーギュスト・ルノワール 《麦藁帽子の娘》 1890年頃 油彩、カンヴァス 56×46cm
予想落札価格 £1,200,000 — 1,800,000(2億400万~3億600万円)
落札価格 £1,706,500(2億8498万円) ※1£=167円換算

この作品は1990年5月のサザビーズ、ニューヨークでは$5,550,000(8億5470万円!!) ※1$=154円換算
で落札されています。これがバブル価格という物ですね。今回の落札額は3分の1になっています。ルノワールの名前だけで高値になってしまった例です。

cross MÉDITERRANÉE PAR VENT DEST
22.アンリ・エドモン・クロス 《東風の拭く地中海》 1902年 油彩、カンヴァス 60×81.5cm
予想落札価格 £450,000 — 650,000(7515万~1億855万円)
落札価格 £434,500(7256万円) ※1£=167円換算

chagall LE MYTHE DORPHÉE
23.マルク・シャガール 《オルフェウスの神話》 1977年 油彩、テンペラ・カンヴァス 97×145cm
予想落札価格 £1,200,000 — 1,800,000(2億400万~3億600万円)
落札価格 £998,500(1億6674万円) ※1£=167円換算

AIGコレクション9点の結果は43億2000万円超え!

続いて翌2月6日の印象派&近代美術 デイセール

印象派&近代美術 デイセール 2014年2月6日 サザビーズ、ロンドン

monet HIVER À GIVERNY
24.クロード・モネ 《ジヴェルニーの冬》 1886年 油彩、カンヴァス 60×81.5cm
予想落札価格 £350,000 — 500,000(5845万~8350万円)
落札価格 £386,500(6504万円) ※1£=167円換算

monet COUR DE FERME
25.クロード・モネ 《農家の中庭》 1878年 油彩、カンヴァス 61.2×50cm
予想落札価格 £300,000 — 400,000(5010万~6680万円)
落札価格 £866,500(1億4470万円) ※1£=167円換算

renoir LENFANT À LA POMME (MELLE DE LA POMMERAY)
26.ピエール=オーギュスト・ルノワール 《子どもとりんご》 1876年頃 油彩、カンヴァス 32.8×41.3cm
予想落札価格 £250,000 — 350,000(4175万~5845万円)
落札価格 £410,500(6855万円) ※1£=167円換算

renoir GEORGETTE CHARPENTIER DEBOUT
27.ピエール=オーギュスト・ルノワール 《立ち姿のジョルジェット・シャルパンティエ》 1880年 油彩、カンヴァス 35.5×27.1cm
予想落札価格 £120,000 — 180,000(2004万~3006万円)
落札価格 £104,500(1745万円) ※1£=167円換算

ブリヂストン美術館所蔵の《すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢》は、1876年当時4歳の時の肖像画で、こちらは1880年当時7歳に成長したジョルジェットの姿です。メトロポリタン美術館所蔵の《シャルパンティエ夫人と子どもたち》1878年には女の子の恰好をした弟ポールも一緒に描かれていますが、サントリーコレクションにポールの胸像をパステルで描いた愛らしい《ポール・シャルパンティエの像》1878年が所蔵されています。関連作品を並べた展示が見てみたい!

renoir PAYSAGE À CAGNES
28.ピエール=オーギュスト・ルノワール 《カーニュの風景》 油彩、カンヴァス 32.8×41.3cm
予想落札価格 £180,000 — 250,000(3006万~4175万円)
落札価格 £410,500(6855万円) ※1£=167円換算

pissarro COIN DU JARDIN À ERAGNY
29.カミーユ・ピサロ 《果樹園の収穫、エラニー》 1899年頃 油彩、カンヴァス 38.5×46.5cm
予想落札価格 £120,000 — 180,000(2004万~3006万円)
落札価格 £182,500(3047万円) ※1£=167円換算

redon PENSÉES DANS UN VASE
30.オディロン・ルドン 《花瓶のパンジー》 パステル、紙 62×48.2cm
予想落札価格 £90,000 — 120,000(1503万~2004万円)
不落札

mondrian FARM BUILDING AND WELL
31.ピエト・モンドリアン 《農家と井戸》 1906-07年頃 油彩、厚紙 77.9×65.3cm
予想落札価格 £60,000 — 80,000(1002万~1336万円)
不落札

laurencin LA LOGE
32.マリー・ローランサン 《桟敷席》 油彩、カンヴァス 33×41cm
予想落札価格 £12,000 — 18,000(200万~300万円)
落札価格 £16,250(271万円) ※1£=167円換算

bonnard CUEILLETTE DES CERISES
33.ピエール・ボナール 《果実摘み》 1899年頃 油彩、カンヴァス 128×152.3cm
予想落札価格 £250,000 — 350,000(4175万~5845万円)
不落札

6枚組の室内装飾画の1点

lebasque LESCARPOLETTE
34.アンリ・ルバスク 《ブランコ》 1906年 油彩、カンヴァス 90×117cm
予想落札価格 £120,000 — 180,000(2004万~3006万円)
落札価格 £290,500(4851万円) ※1£=167円換算

kisling PAVOTS
35.モイズ・キスリング 《芥子》 1931年 油彩、カンヴァス 92×65cm
予想落札価格 £50,000 — 70,000(835万~1169万円)
落札価格 £116,500(1945万円) ※1£=167円換算

foujita LES DAHLIAS
36.藤田嗣治 《ダリア》 1921年 油彩、カンヴァス 46×38cm
予想落札価格 £40,000 — 60,000(668万~1002万円)
落札価格 £158,500(2646万円) ※1£=167円換算

foujita JEUNE FEMME JAPONAISE EN KIMONO
37.藤田嗣治 《着物姿の日本娘》 1934年 ペン、墨、水彩・和紙 92.4×64.6cm
予想落札価格 £18,000 — 25,000(300万~417万円)
落札価格 £37,500(626万円) ※1£=167円換算

このセールには他にもマクシミアン・リュース、ギュスターヴ・ロワゾー、藤田嗣治、荻須高徳などが出品され計20点ほどが5億円超えで落札されました。

4回のセールで50数点のコレクションは不落札もありましたが、約78億円!!で売却されました。

2008年に富山県立近代美術館で展示された際、見に行こうと思ったのですが、国内コレクションだからいずれ東京でも見られるだろうと行かなかったのは間違いでした...。

画像で紹介した全てのAIGコレクションは、1993年に取得されたというのを今回知りました。1993年以外に取得しているのは画像では紹介していないギュスターヴ・ロワゾー、ラウル・デュフィ、荻須高徳などほんの数点だけのようです。てっきり長い年月をかけて蒐集したのかと思っていたのですがそうではないよう。これほどのコレクションをなぜ同じ年に取得しているのだろうと思ったのですがどうやらバブルのニオイが。

16.フィンセント・ファン・ゴッホ 《夫は漁に出ている》とヴィルジニ・ドゥモン=ブルトン 《夫は漁に出ている》の2点の作品は、株式会社日本オートポリス蔵でした。1989年、パリのオークション・ハウスと衛星中継で結ばれた東京会場でピカソの青の時代の名品《ピエレットの婚礼》を約73億円で落札したことで有名な不動産開発業者の鶴巻智徳氏のコレクションです。モネ、ルノワール、ドガらの印象派からエコール・ド・パリ、マグリット、デルヴォーなどシュルレアリスムのコレクションがありました。1991年大分県にサーキット場をはじめとする複合レジャー施設「オートポリス」をオープンさせ、オートポリスミュージアムも開館しますが、バブル崩壊で事業資金の借り入れ先へ返済不能となり、《ピエレットの婚礼》は、消費者金融レイクに絵画担保融資の担保として差し押さえられてしまいました。オートポリスは複数の機関から借り入れしておりフィンセント・ファン・ゴッホ 《夫は漁に出ている》は、千代田生命保険に担保として取られています。それが1993年です。

picasso pierrette
※参考画像 パブロ・ピカソ 《ピエレットの婚礼》 1905年 油彩、カンヴァス 114×194.6cm 個人蔵

鶴巻智徳氏は《ピエレットの婚礼》の入手時、支払いの金策に苦労し、大手ノンバンクのアイチの社長、森下安道氏に融通してもらいオークション会社に支払いを終えています。

森下安道氏はアスカ・インターナショナルという美術事業も展開しており、青山画廊を東京の南青山に構えていました。アスカ・インターナショナルが発行した取扱い作品のカタログに以下の6点が収録されていました。
3.クロード・モネ 《満潮のプルヴィルの日没》、4.ピエール=オーギュスト・ルノワール 《帽子の傍らで横たわる裸婦、休息》 、7.マルク・シャガール 《赤い樹》、26.ピエール=オーギュスト・ルノワール 《子どもとりんご》、34.アンリ・ルバスク 《ブランコ》、35.モイズ・キスリング 《芥子》

この6点はオートポリスコレクションに入ったかはわかりません。鶴巻智徳氏が森下安道氏から購入したかもしれませんし、アスカ・インターナショナルも同じ運命を辿り、千代田生命保険が取得したとも考えられます。

AIGスター生命保険の前身は千代田生命保険です。現在、愛媛県美術館に収蔵されているピエール・ボナール《アンドレ・ボナール嬢の肖像》もかつてオートポリスコレクションにあり、千代田生命保険が担保に取り、後に愛媛県に売却されています。

2000年に千代田生命は破綻し、その後2001年にAIGスター生命保険株式会社へ包括移転となったわけですが、多くの高額作品は2000年以前に売却されたようです。1993年に取得したこれらの作品が持ち続けられ2006年の長崎県美術館の公開まで秘蔵され続けてきたのは謎です。そして冒頭のゴーギャン《ブルターニュの少年と鵞鳥》が頻繁に人目に出るようになったのも謎です。今まで売却しなかったのは21.ピエール=オーギュスト・ルノワール 《麦藁帽子の娘》の作品のように当時の評価額が高すぎて今手放せば大損になるので手放すに手放せなかったということだったのでしょうか。

今回の思い切った売却はプルデンシャル・ファイナンシャルが買収し、2012年1月にジブラルタ生命保険へ吸収合併されたことが大きく関わっていると思います。いつまで持ってるんだ早く売りなさいってことだったのでしょうか。

2006年、突如出現したと思っていたAIGコレクションは、実は不良債権だったことを知り大変驚いた一件でした。バブルが崩壊して20年以上経つのにこのような形でバブルの遺産を目にするとは。日本にはまだまだ知られざる西洋名画が隠れているのでしょうか。

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2013年 よかった展覧会ベスト10 

久しぶりの更新です。今さらですが(笑)、2013年よかった展覧会です。皆さんはどんな展覧会がよかったでしょうか。

第1位 カイユボット展 ブリヂストン美術館
第2位 貴婦人と一角獣展 国立新美術館
第3位 奇跡のクラーク・コレクション展 三菱一号館美術館
第4位 ラファエロ展 国立西洋美術館
第5位 印象派を超えて 国立新美術館
第6位 ターナー展 東京都美術館
第7位 光の賛歌 印象派展 東京富士美術館
第8位 モネ、風景をみる眼―19世紀フランス風景画の革新 国立西洋美術館
第9位 モローとルオー 汐留ミュージアム
第10位 ミケランジェロ展 天才の軌跡 国立西洋美術館


caillbottea.jpg

第1位 カイユボット展 ブリヂストン美術館 
日本には2点しか作品がない中、油彩50点、パステル1点、素描7点、版画4点、写真100点もの作品が世界中から集められ、日本初であるこの個展の為に並々ならぬ努力が注がれたであろうことは容易に想像が付きました。35点(油彩28点、パステル1点、素描6点)と写真は個人蔵という所も凄いです。美術館同士では今後の貸し借りのメリットを考え駆け引きが付きものだと思いますが、個人所蔵者にはそういうのがないわけで所蔵者の好意がなければ何も始まりません。そちらの方も大変だったではないかと思います。

《ピアノを弾く若い男》を収蔵したから本展を企画したのか、企画中に収蔵したのかはっきりわかりませんが、新たな収蔵品に関連する展覧会を開いた点でも特筆されると思います。
人物、室内、都市、自然、静物画とカイユボットの画業をくまなく網羅し、数多くの写真も単なる資料ではなく非常に有効に働いていたと思います。印象派の支援者ではなく画家としてのカイユボットを十二分に伝えてくれる展覧会だったと思います。

lady.jpg

第2位 貴婦人と一角獣展 国立新美術館
《貴婦人と一角獣》については、フランス国立クリュニー中世美術館にある中世のタペストリーというくらいの知識しかなかったのですが、国宝のような物という認識はあり、来日を知った時は、モナリザが来るのと同じような勢いなのでは!?と非常に驚きました。今までにフランス国外に貸し出されたのは1度きりの1974年にメトロポリタン美術館にだけということで、この来日は2013年の展覧会の中でも事件に値するものだと思いました。6面のうちの一部が来るのだろうと思っていたらまとめてやってきたのでびっくり。よくぞ来日してくださいました!

会場へ入り通路を少し歩き、開けた展示室へ出ると非常に大きくとられた空間があり、ゆったりと扇状に左から右へ巨大なタペストリーが並んでいた光景を目の前にした時は鳥肌物でした。貴婦人はもちろん、植物や、かわいい動物など色鮮やかな画面が面白いのはもちろん、誰が何のために作ったのかという謎解きや修復した箇所の化学染料が褪色して部分的に色が変わっていたりと長い歴史の中で織りこまれた様々なエピソードもこの作品の魅力の一部であると思いました。理解を深める為に作品に登場する一角獣や貴婦人の衣装などに関連した所蔵品も合わせて展示され、日本ではほとんど見ることがない中世ヨーロッパの貴重な石像や布片、指輪、ステンドグラスなどを堪能することができました。この展覧会はタペストリーが主役の展覧会でしたが、いつかフランス国立クリュニー中世美術館所蔵の中世の彫刻や宝飾品などの工芸品に焦点を当てた展覧会も見てみたいと思いました。

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第3位 奇跡のクラーク・コレクション展 三菱一号館美術館
美術館の工事による世界巡回の一環で日本へやってきたわけですが、工事中であっても出し惜しみなくここまで貸出しちゃう?という太っ腹な点も高評価。クラーク美術館は、ニューヨークから北へ、ボストンから西へ車で3時間かかり、日本の観光客が気軽に寄れる所ではないようで所蔵する作品の知名度のわりに一般的にあまり馴染みのない美術館のようです。そんな所から画集を開けば必ず登場するようなルノワール作品22点をはじめとする印象派を中心とした珠玉のフランス近代絵画73点がやってきました。バルビゾン派とアカデミスム絵画も並び、ルノワールの裸婦とブーグローの裸婦の傑作を見比べることができたりと各画家の作品を並べるシンプルなフランス近代絵画展であってもあまりの質の高さに溜息の連続で本当に見応えのある展覧会でした。

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第4位 ラファエロ展 国立西洋美術館
ルネサンス関連の展覧会に油彩1点もしくは素描が2、3点出ていればそれだけでも目玉として凄いことでしたが、本展にはラファエロの作品が油彩18点、素描5点も展示されました。日本の美術館での展覧会でこんなに集められたとは驚くばかりです。父親であるウルビーノ公宮廷画家ジョヴァンニ・サンティの作品や師匠ペルジーノの作品もあったりとしっかり脇も固めていてよかったです。《大公の聖母》は本当に美しかった。筆跡の見えないマリアの穏やかな表情と布の色の美しさにうっとりでした。この作品の習作も並んでいたのは予想外で嬉しかったです。そちらでは片手で楽々キリストを抱えていて、円形に縁どられ背景も描きこまれており完成作との違いを見比べるのも面白かったです。後年、黒く塗りつぶされたという暗い背景から浮かび上がる神秘的な画面が魅力的ですが、もしそれを取り除ける技術ができたらどうするのでしょうか。現状の方が人気がありそうですね。展示の前半がよすぎて後半は後の芸術家というような展示だったのでちょっと残念でしたね。

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第5位 印象派を超えて 国立新美術館
最初は、クレラー=ミュラー美術館展(仮称)と発表されていました。クレラー=ミュラー美術館といえばゴッホ!そのゴッホコレクションをメインにしたゴッホ展は国内で何度も開催されてきましたが、クレラー=ミュラー美術館展というのは見たことが無かったのでとても楽しみにしていました。後にゴッホの《種をまく人》をメインビジュアルにした「印象派を超えて」というタイトルに変わり、益々興味がわきました。純粋なクレラー=ミュラー美術館展ではなく、国内所蔵の作品も加えた展覧会となっていました。

モネやシスレーのフランス印象派の筆触分割から始まり、新印象派のスーラとシニャックの色彩を純色の小さな点に分解して描く分割主義、それに続くフランスの画家たちの分割主義、ゴッホも試した点描とその後のうねる筆触のTHEゴッホの絵画、その影響を受けたブラマンクやドランのフォーヴィスムの絵画までと分割主義を通したフランス絵画の流れを見ることができ、さらにオランダ、ベルギーまで広がった分割主義の展開を辿ることができました。最後の展示室はモンドリアン一色。モンドリアンも点描を通過した画家でその点描作品がブリヂストン美術館から出ていました。この作品がないと展覧会の趣旨がわからなくなるほどの重要な作品だったので、ブリヂストン美術館は凄いもの持っているなと改めて感心しました。スーラからモンドリアンまで直接結べるわけではありませんが、分割主義というくくりで見ると見事に繋がっており、おぉっと感動してしまいました。

国内で点描の展覧会は何度か開かれていて、1985年の国立西洋美術館「点描の画家たち」、2002年の損保ジャパン東郷青児美術館「スーラと新印象派」では何よりスーラとシニャックの確保に一番労力を注いでいるのがよくわかるもので名品が来ていますが、ゴッホは点描ではない作品をようやく1点組み込ませたといったところでした。点描の影響が顕著な《レストラン内部》を含むゴッホ作品を沢山並べられたのはクレラー=ミュラー美術館だからこそでした。スーラの《シャユ踊り》の来日は叶いませんでしたが、所蔵するスーラの油彩5点、素描2点のうち油彩2点を残して皆来日しており、シニャックは油彩10点、水彩2点、素描1点の13点を所蔵作品中、油彩4点と素描1点が来日していました。油彩は良い物ばかり選択されており、貸し出す方の展覧会を最良の物にすべきという思いが伝わってきました。

スーラの《グランド・ジャット島の日曜日の午後》が出品された1886年、最後の第8回印象派展に並んだというピサロ《エラニーの牧場》1885年 上原近代美術館蔵やサントリーコレクションなどからもピサロが展示されていましたが、筆触分割の作品であり、第8回印象派展出品作の点描で描かれた《エラニーの花咲く梨の木、朝》1886年 ポーラ美術館蔵や《窓から見たエラニーの通り、ナナカマドの木》1887年 三菱一号館美術館寄託の作品がここにあったらなあと思いましたが、いずれも所蔵館での展覧会に出品されていて物理的に不可能でした。

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第6位 ターナー展 東京都美術館
1997年、横浜美術館で「テート・ギャラリー所蔵 ターナー展」が開かれましたが、見逃して以来ずーと後悔していました。16年越しに見ることができました。引っ越し展ではありますが、約300点の油彩画と、水彩画や素描など約2万点を誇る世界最大のターナーコレクションからの出品ですからもはやそんなこと問題にならない展覧会でした。知らないことだらけで少年時代から画才に秀でていたことやターナーのこんな大作見たことないという巨大な作品がいくつもあり初めてづくしでした。習作も多く展示され、作品研究も垣間見ることができました。画面の中から発光しているような太陽の光の表現が見事でした。ターナーといえば大気に霞む抽象画に迫るような画面が主な作品だと思っていたらそれらは最晩年の作品で酷評されていた物だったり、当時は未発表の作品であったと知り驚き、勉強になりました。会場の壁紙も凝っていて美しい展示でした。

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第7位 光の賛歌 印象派展 東京富士美術館
質の高い作品ばかりで特にシスレー好きの人にはたまらなかったのではないでしょうか。パリ、セーヌ、ノルマンディの水辺をたどる旅という単純明快な展覧会ですが、世界中の様々な美術館から質の高い作品を集めたことに凄いの一言。地理なんて知らなくても難しいこと考えずに誰でも楽しめる展覧会であったと思います。

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第8位 国立西洋美術館×ポーラ美術館 モネ、風景をみる眼―19世紀フランス風景画の革新 国立西洋美術館
ポーラ美術館で開催された後に国立西洋美術館に巡回した展覧会。両会場で見ましたが、印象が全く違うのがとても興味深かったです。さすが国立西洋美術館は展示が上手い!
クロード・モネ《ヴェトゥイユ》 1902年 国立西洋美術館蔵は、同じ構図の連作中でもかなりラフに描かれた物で特に気に留めて見たことのない作品だったのですが、薄い紫色の壁紙に掛けられたこの作品を見ると壁紙の色と作品の色彩が呼応して素晴らしく美しく見えて吸い寄せられるように魅入ってしまいました。この作品の左右にはポーラ所蔵の夕景の作品が並んでいるのもよかったです。2点の《睡蓮》が掛けられた壁紙の色はポーラ美術館の睡蓮に近い水色で、額縁の外まで池が繋がっているようにも見え空間の広がりさえ感じさせられる展示でした。《ウォータールー橋、ロンドン》、《チャーリング・クロス橋、ロンドン》共に国立西洋美術館蔵は、濃霧の表現である為か何が描いてあるのかわからないくらい薄くもやもやした表現で、常設展では白い壁に掛けられているので色が飛んでしまっていて残念に思っていたのですが、濃い青の壁に掛けられた作品はくっきりと色が浮かび上がっていて美しかったです。

モネ《陽を浴びるポプラ並木》 1891年、モーリス・ドニ 《踊る女たち》 1905年、エミール・ベルナール 《吟遊詩人に扮した自画像》 1892年 いずれも国立西洋美術館蔵。どれも複数の木が垂直に並ぶ似た画面で美しいハーモニーを奏でていました。今後も常設展で時々見たい並びです。構図で比較したり、マティエールでモネ、クールベ、ルノワール、ゴッホを比較できたり、見慣れた作品たちの魅力を改めて発見できた展覧会でした。松方幸次郎のモネコレクションは実は30点ほどもあったとのことですが、約半分が売却されてしまったのがとても残念です。それらを見つけ出して一堂に並べた展示をいつか見てみたいです。

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第9位 モローとルオー 汐留ミュージアム
汐留ミュージアムに行くたびに、ルオーと師匠であるモローの展覧会を開催してくださいとアンケートに書いていたのですが、まさか実現するとはびっくり。4年以上の研究の成果であるというモローとルオー展が世界初というのも以外で2015年、リニューアル後のパリのギュスターヴ・モロー美術館へと巡回するという展覧会でもあります。世界初の展覧会が日本から開催というのも驚きです。

二人の師弟関係を知らなければモローとルオーの作品は結びつきが無いように思えますが、初期作品にはモローと見間違えてしまうような作品もありました。レンブラントの再来といわれていたルオーの初期作品は後のルオーとは全く違う画風の作品で驚きです。レオナルド・ダ・ヴィンチの女性の顔を髣髴とさせる作品もあったりと後年とのギャップに戸惑うくらい。師匠が弟子の作品を模写することは極めて稀なことである中、ルオーの油彩 《石臼をまわすサムソン》 をペンで模写したモローの紙作品があったり、モローとルオーの往復書簡(複製)も紹介されておりその内容も面白かったです。師匠と弟子の域を超えお互いに画家として尊敬しあっている様子がうかがえました。モローはデッサンが何より重要であったアカデミスムの教えに対抗し、下絵なしに絵の具を直接カンヴァスに置く描き方を認め、何よりも個性を尊重したとのこと。彼がいなかったら20世紀最大の宗教画家ルオーはいなかったでしょう。マティスもモローに学んでいなかったら色彩の魔術師になっていなかったかも。国立美術学校の教えでモローが最も強調したのは「色彩の解放」と「美しい素材感」であったといいます。ルオーの完成した画風はこの教えをしっかり守っていることが作品を見れば一目瞭然です。モローは19世紀の象徴主義の画家、ルオーは20世紀のフォーヴィスムの画家と美術史では分けられていますが、ぐーとクローズアップしてみるとこのような繋がりがあることに改めて気づかされた展覧会でありました。緑、茶、青、赤、ピンクと壁紙が目まぐるしくかわる展示空間も美しかったです。ドーム状の屋根の内部をイメージしたような八角形?の部屋があったり、壁紙にも工夫があり作品保護の柵が窓についたバルコニーの柵のようにも見えて全体的にとてもお洒落でした。汐留ミュージアムは展示空間をがらりと変えてしまうのがとても上手い美術館だと思います。もっと大規模なルオーとモロー展もいつか見てみたいです。

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第10位 ミケランジェロ展 天才の軌跡 国立西洋美術館
カーサ・ブオナローティ所蔵による1996年以来のミケランジェロ展でした。前回は、三越美術館・新宿、京都文化博物館、東京富士美術館を巡回し、三越美術館で鑑賞しました。今回は、福井県立美術館と国立西洋美術館を巡回。カーサ・ブオナローティ所蔵と見に行くまで気づかず、会場で初めて知りました(笑)。前回の展覧会には、ミケランジェロの彫刻は含まれておらず、今回も来日した《クレオパトラ》などの素描が主役の展覧会でした。今回は、最初期の《階段の聖母》と、死の直前に制作されたといわれる《キリストの磔刑》の2点もの彫刻が来日しており、それだけでも開催意義があったと思います。

がっかりという声も多く聞いた展覧会だったかと思います。《ダビデ像》や《ピエタ》のような彫刻ではありませんでしたし、ミケランジェロの絵画や壁画が見られるわけでもなく素描や版画が中心になっていましたので仕方ないかなと。

でも私は2点の彫刻の来日とシスティーナ礼拝堂の素描群が見られたので感動しました。特に《最後の審判》の全体図の初期構想を示す唯一の下絵素描が見られたのが嬉しかったです。前回のミケランジェロ展には、《若い奴隷》や《ロンダニーニのピエタ》など彫刻の原寸大レプリカ10点が展示され、これが迫力のある物で結構よかったのです。今回も展示していたら華を添えていたかと思いますが、前回は彫刻の展示がなかったので成立していましたが、今回は本物があるので混乱を生じさせないようきっと展示されなかったんだと思います。あった方が見栄えはいいんですけどね。これらは東京富士美術館に所蔵されていて何度か見たことがあります。

そして、高精細4Kカメラで撮影したシスティーナ礼拝堂の映像の美しさに息を呑みました。筆跡までくっきり見える美しい映像は本物の壁画がそこにあるかのようで身を乗り出す勢いで見ました。技術が進みこれをさらに大画面に映しだせば、引き伸ばした写真パネルではなくまるで本物のような美しい色の壁画を展示室に再現することができるのではないかと思い興奮しました。カーサ・ブオナローティは、ミケランジェロの素描と書簡に関しては世界一の質と量を誇るとのことなので素描一本に絞って傑作を揃える展覧会も見てみたいです。

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ターナー展が昨年から国内を巡回しており、森アーツセンター「ラファエル前派展」、三菱一号館美術館「ザ・ビューティフル - 英国の唯美主義 1860-1900」、現代イギリス美術を紹介する、東京ステーションギャラリー「プライベート・ユートピア ここだけの場所」、秋には京都と横浜でホイッスラー展と2014年はイギリス美術黄金イヤーですね。

また2014年は、江戸東京博物館「大浮世絵展」に始まり、世田谷美術館「ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展」、上野の森美術館「ボストン美術館浮世絵名品展 北斎」、 前述の「ホイッスラー展」とジャポニスムを堪能できる年であります。浮世絵からの影響を受けているというマネ《笛を吹く少年》が出品される「オルセー美術館展 描くことの自由」も凄く楽しみです。

オルセー美術館展には、ミレー《晩鐘》が出品されますが、「ボストン美術館 ミレー展」で《種をまく人》などが高知、名古屋、東京を巡回します。山梨、府中、宮城で「生誕200年 ミレー展~愛しきものたちへのまなざし~」の開催もあり、《子供たちに食事を与える女(ついばみ)》 リール美術館蔵や《部屋着姿のポーリーヌ・オノの肖像》 トマ=アンリ美術館蔵、山梨会場限定で山梨とウェールズ国立美術館所蔵の《種をまく人》を同時に見られるとのことです。ミレー好きにも嬉しい2014年。

日本・スイス国交樹立150周年を記念してバルテュスの大回顧展、スイス・ローザンヌに生まれパリで活躍したヴァロットン展、チューリヒ美術館展、ホドラーの回顧展と日本では中々お目にかかれないスイス関連の珍しい展覧会が続きます。

そして2014年の美術展の事件になることが決定?している東京国立博物館と九州国立博物館で開催される「台北 國立故宮博物院 - 神品至宝 -」東京展での最大の目玉《翠玉白菜》は開幕から14日間だけの期間限定での展示。どれだけ並ぶのでしょう。楽しみでもあり怖いです(笑) 皆さんはどんな展覧会が楽しみでしょうか。

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