美術展命の男のブログ

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フランス万華鏡 茨城県近代美術館 茨城県でフランスを巡る ②

電車は、偕楽園と千波湖を通って水戸へ到着。生まれて初めて水戸に降り立ちました。

茨城県近代美術館は、1993年か94年には美術館ガイドで認識していて是非行ってみたいとずっと思っていました。20年も行かないとは(笑)。巡回展が東京と被ることも多く、また所蔵するフランス近代絵画がまとまって展示される機会を待っていました。これまでにもそういった展示はあったようですが、今回は笠間日動美術館と会期が上手いこと重なり、これほどの機会はないと笠間&水戸へ突撃したのでありました。

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駅前からちょうどバスが出る時刻に近かったのでバスで行ってみることに。千波湖のほとりにあるのですね。立派な建物が見えてきました。

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広すぎるホールに度肝を抜かれる。外観もホールも美術館というより結婚式が開かれるようなホテルみたいに見えるのは私だけでしょうか。

美術館の敷地内の屋外に中村彝のアトリエが復元されており、到着早々見に行きました。というのも美術館は17時までですが、アトリエは15時までの公開となっています。東京都新宿区下落合に残る中村彝のアトリエが復元・整備され、新宿区立中村彝アトリエ記念館として昨年オープンしました。見に行こう見に行こうと思っていたらレプリカの方を先に見ることになるとは(笑)。大きな窓に天井の高い結構立派な建物でした。下落合の方も見に行かなくては。

茨城県近代美術館は、水戸市に生まれた中村彝のコレクションを豊富に所蔵しています。有名な《カルピスの包み紙のある静物》は今回展示されていなくてちょっと残念でした。

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美術館の建物に戻って企画展を見ます。「フランス万華鏡」が、5月11日(日)まで開催されていました。

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展覧会紹介より

当館のコレクションよりフランスの香気ただよう作品を選び、万華鏡のように紹介します。ドーミエやクールベをはじめ、モネやルノワールなど当館所蔵のフランス近代絵画を一堂に展示する他、中村彝や辻永などフランス美術に影響を受けた茨城の作家や、藤田嗣治や長谷川潔、村山密などパリで活躍した日本人画家を紹介します。

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節電とのことで各々の展示室の入口に分厚いビニールが掛けてあってそれを開いて入ります。(冷蔵庫の中の冷気を逃さないビニールみたいな)震災以降実施してるとのことです。どれくらい効果があるのでしょうか。美術館の創設時から自動ドア付けていても元が取れていたりして。

展示室に入るとクールベ、マネ、モネ、ピサロ、ルノワール、シスレー、カリエールの油彩、さらにピサロのパステルとシニャックの水彩2点が一挙に展示してあります。やっぱり一度に並べると迫力が凄い。いい!これを見に来たんだと感動。開館が1988年でその時に西洋絵画の多くを取得していて質もかなり高いです。

フランス近代絵画 ←クリックすると所蔵作品が見られます。
カリエール《アキレウス像のためのトルソー習作》を除き、これらの名品が一堂に会しました。

普段のコレクション展では西洋絵画の油彩は3点ほどずつ5、6期に分けて入れ替えの展示なのでこうして一気に見られるのはたまにしかないようなので貴重な機会です。

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ウジェーヌ・カリエール 《「習作」または「絵画」》 1899年 油彩、カンヴァス 103.5×162.1cm 志村巌氏寄贈

右側のパレットを持つ女性は、カリエールの娘のエリーズと言われています。
茨城県近代美術館のブログにこの大作に関する大変興味深いエピソードが書かれていました。(一部、学芸員に問い合わせて補足)平成4年度、22年前の1992年でしょうか、志村巌氏からカリエールの油彩3点とリトグラフ1点の一括寄贈を受けます。志村巌氏はドーミエの版画なども何度かに渡って寄贈されています。この作品は、当時《母と娘》という題名で寄贈されました。

2006年の3月から6月にかけて国立西洋美術館で「ロダンとカリエール」が開催された際、この作品の習作である《「習作」または「絵画」のための習作》が、出品されました。

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※参考画像
ウジェーヌ・カリエール 《「習作」または「絵画」のための習作》 油彩、カンヴァス 112.4x135.3cm 個人蔵 

2006年の段階でも《母と娘》というタイトルだったためか研究者に所在を気づかれずにいたようです(汗)。貸してくださいと連絡も来なかったようです。わかっていてあえて借りなかったのかもしれませんと学芸員の方がおっしゃっていたのですが、気づいていたらきっと借りに来ていたと思います。「ロダンとカリエール」は、東京で構成されオルセー美術館に巡回した名誉ある展覧会でした。フランスで茨城県近代美術館の名が知られることになったかもと思うと残念ですね。2006年の茨城県近代美術館の年報を見ると9月に常設展で《母と娘》というタイトルで展示されているので茨城県近代美術館の学芸員も気づかなかったということになりますね。作品は気づいてぇ!!て言ってたかも(笑)

ちなみに三菱一号館美術館で開催された「ザ・ビューティフル 英国の唯美主義1860-1900」で、担当学芸員の方がギャラリートークをしていたのですが、展覧会準備の段階で、郡山市立美術館にアルバート・ムーアの《黄色いマーガレット》が所蔵されていることを知り大変驚いたと語っていました。私もこのムーアの名品が日本にあることに見るたびに驚くのですが、住んでる地域から遠い美術館の情報ってあまり入ってこないので学芸員の言っていることもわかります。特に寄託作品は何年も経ってから偶然知ることがあります。美術館のホームページに載らない事の方が多く、返却された後に知るなんてことも...。

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ピエール=オーギュスト・ルノワール 《マドモワゼル・フランソワ》 1917年 油彩、カンヴァス 52×42cm

この作品も初めて見た1993年の東武美術館のルノワール展に笠間日動美術館で見た《褐色の髪の浴婦》と共に出品されていました。同窓会みたいな美術展巡りでした(笑)。初めて見たルノワールたちですから強烈に印象に残っている作品の1つです。衣装にも背景にも赤と黄を多用した情熱的な色香が漂ってきそうな作品です。溶き油でよく伸ばされた油絵の具が水彩のように伸びやかに描かれています。最晩年の美しい女性像です。

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中村彝 《裸体》 1916年 油彩、カンヴァス 99.8×80.5cm

ルノワールの影響が顕著な画面です。 並べて見ることでよくわかります。茨城県近代美術館は県民文化センター内の美術博物館を前身として1988年に開館しました。その頃は西洋絵画は所蔵していなかったようですが、中村彝をはじめとする日本の多くの画家たちに大きな影響を与えた画家たちとしてモネやルノワール、ピサロらの印象派絵画が収集されました。バブル期に何となく印象派周辺を収集という県立美術館がいくつかありますが、一応コンセプトはきちんとしていますね。ただ海外作品の収集は90年代初頭で終わっているのが悲しい。佐伯祐三、藤田嗣治の絵画も所蔵しているのでエコール・ド・パリの海外作家もあるとよりフランスへ憧れた日本の画家たちがくっきり浮かび上がると思うんですけどね。

茨城県近代美術館は、オノレ・ドーミエの作品を600点以上も所蔵されているとのことで多くの版画も展示されていました。5段掛け、9列という凄い壁もありました。今回、展示されていたドーミエ作品は全てカリエールの寄贈者、志村巌氏寄贈作品でした。

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村山密 《シャンゼリゼ》 1989年 油彩、カンヴァス 150×150cm

1993年、東武美術館で開催された「村山密展 パリに住み、フランスを描いて40年」のチラシなどメインビジュアルにこの作品が使われていて記憶によく残っていた作品でした。思わぬ再会とここに収蔵されたことを知り驚きました。フランスに住み活躍する日本人画家を最初に認識したのは村山密だったかもしれません。

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岩永てるみ 《La vue d’Orsay》 紙本・彩色 218×173cm

オルセー美術館の大時計裏のレストランの様子を描いた作品です。オルセー美術館のここをチョイスするというのは面白いです。チラシに小さな画像が載っていて写真だと思っていたのですが、いざ目にしたら絵画でしかも巨大でとても驚きました。思っていたサイズと全く違ったというのはよくありますが、技法を勘違いするのはあまりないので新鮮な経験でした(笑)。

印象派絵画から始まり、日本人のフランスへの憧れが凝縮された展覧会でした。

このままパック展として離れた地の美術館でも是非展示していただきたいです。

近県の埼玉県立近代美術館と群馬県立近代美術館と名称に近代美術館と付くだけあって所蔵範囲が似ていて合わせて展示されたら素晴らしい内容になるだろうなと思いました。フランス万華鏡というタイトルでしたが、この3館ならこの企画をそのまま拡大できそうです。

フランス近代絵画だけを見ても

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茨城県近代美術館
クールべ 《フランシュ=コンテの谷,オルナン付近》 / マネ 《白菊の図》 / モネ 《ポール=ドモワの洞窟》 / ルノワール 《マドモワゼル・フランソワ》 / ピサロ 《グラット=コックの丘からの眺め,ポントワーズ》、《農家の娘》(パステル) / シスレー 《葦の川辺・夕日》 / カリエール 《「習作」または「絵画」》、《女の頭部》、《女の頭部》 / シニャック 《パリのシテ島》、 《ロッテルダム》、《ポン・ヌフ》、《ポン・ヌフ》 4点とも水彩・紙作品 /藤田嗣治 《横たわる裸婦》

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埼玉県立近代美術館
モネ 《ジヴェルニーの積みわら、夕日》 / ルノワール 《三人の浴女》 / ピサロ 《エラニーの牛を追う娘》 / カリエール 《テーブルに向う婦人》 / ピカソ 《静物》 / シャガール 《二つの花束》 / ユトリロ 《旗で飾られた飾られたモンマルトル・サクレクール寺院》 / パスキン 《眠る裸女》 / ルオー 《横向きのピエロ》 / ドラン 《浴女》 / キスリング 《リタ・ヴァン・リアの肖像》、《赤いテーブルの上の果実》 / ドニ 《トレストリネルの岩場》、《シャグマユリの聖母》 / 藤田嗣治 《横たわる裸婦と猫》

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群馬県立近代美術館
モネ 《ジュフォス、夕方の印象》、《睡蓮》 / ルノワール 《読書するふたり》 / ピサロ 《エラニーの教会と農園》 / モロー 《救済される聖セバスティアヌス》 / ルドン 《ペガサスにのるミューズ》、《聖セバスティアヌス》(パステル) / ルオー 《秋》 / ピカソ 《魚、瓶、コンポート皿(小さなキッチン)》 / ローランサン 《ブルドッグを抱いた女》 / シャガール 《世界の外のどこへでも》 / デュフィ 《ポール・ヴィヤール博士の家族》 / 藤田嗣治 《人形を抱く少女》

茨城県近代美術館には20世紀の西洋絵画はありません(ピカソの素描類は所蔵)が、3館合わせるとクールベ、印象派からエコール・ド・パリまで所蔵していない作家を互いに補いつつ見事に繋がります。茨城県近代美術館のカリエールと群馬県立近代美術館のモローとルドンは象徴主義の傾向を示せますし、3館ともロダンの彫刻を所蔵していたり、藤田嗣治、佐伯祐三の油彩も所蔵しています。埼玉県立近代美術館はエコール・ド・パリの画家、田中保の多くの素晴らしいコレクションもあります。さらに各館は岸田劉生の風景画を所蔵しています。茨城と群馬には安井曾太郎の早い時期の作品もあったりと日本近代洋画のコレクションや日本画コレクションも各館豊富にあるでしょうから合わせたらきっと見応えがありそうです。

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左:エドゥアール・マネ 《腕白小僧・犬と少年》 茨城県近代美術館蔵
中:ポール・ゴーギャン 《かぐわしき大地》 埼玉県立近代美術館蔵
右:エドヴァルト・ムンク 《桟橋の少女たち》 群馬県立近代美術館蔵

版画で西洋美術を見ますと茨城県近代美術館は、ドーミエの膨大な版画、マネの油彩の所蔵に合わせて版画3点を収蔵。埼玉県立近代美術館にはゴーギャンの版画、群馬県立近代美術館はゴヤの版画集『妄』、ムンク、シャガールなど。

群馬県立近代美術館にはムンクの油彩、埼玉県立近代美術館にはデルヴォーもあるのでカリエールやモロー、ルドン、シャガールらと合わせて「幻想の系譜」を示すこともできそうです。

公立美術館の予算が削られ...と言われて久しいですが、美術館同士のコレクション交換展や協力展がいくつか開催されています。私が見た展覧会でよかったのは愛知県美術館・岐阜県美術館・三県立美術館が協同企画した展覧会です。

『ルドンとその時代』展(岐阜県美術館、2006年)と『魔術/美術  幻視の技術と内なる異』展(愛知県美術館、2010年)を鑑賞しました。『ルドンとその時代』展は、特に素晴らしく愛知県美術館のクリムトやボナール、三重県立美術館のモネやルノワールがルドンコレクションで有名な岐阜県美術館に集結し、それはそれは豪華な展示でした。

数館が協力し合えば、互いのコレクションにない部分を補って展示することができますし、重なる部分はより厚みが出て素晴らしい物になります。いつか協力展が開催されればいいなぁ。



ルノワール礼讃 ポーラ美術館+秘蔵ルノワール オークションへ
↑の記事の後半に書いたヒューゲット・クラークコレクションのルノワール、モネの落札結果がわかりました。

●ピエール=オーギュスト・ルノワール 《バドミントンをする若い娘たち》
予想落札価格 $10,000,000 — $15,000,000 (10億4000万~15億6000万円) ※1$=104円換算 (オークション開催前のレート)
落札価格 $11,365,000 (約11億5900万円) ※1$=102円換算

● ピエール=オーギュスト・ルノワール 《日傘をさす女》
予想落札価格 $3,000,000 — $5,000,000 (3億1200万~5億2000万円) ※1$=104円換算
落札価格 $2,517,000 (約2億5600万円) ※1$=102円換算

●ピエール=オーギュスト・ルノワール 《菊》
予想落札価格 $3,500,000 — $5,500,000 (3億6400万~5億7200万円) ※1$=104円換算
不落札

●クロード・モネ 《睡蓮》
予想落札価格 $25,5000,000 — $35,000,000 (26億~36億4000万円) ※1$=104円換算
落札価格 $27,045,000  (約27億5800万円) ※1$=102円換算

予想落札価格の上限に迫る物がなく控えめな落札結果でした。ルノワールの《日傘をさす女》は、予想落札価格よりかなり下!落札者にはラッキーなセールでしたね。

5月7日にニューヨークで開催されたサザビーズオークションに何だか見覚えのある作品がぽつぽつと。下着メーカーのワコールの創業者、塚本幸一氏がコレクションした西洋絵画の一部がオークションに掛けられました。以下4点。コレクションには女性像を描いた物が多かったようで今回の出品物も全て女性像。女性の美を追求する会社に相応しいコレクションです。

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ピエール=オーギュスト・ルノワール 《化粧する少女》 1885年 油彩、カンヴァス 51×37cm

予想落札価格 $4,000,000-$6,000,000 (約4億8000万~6億1200万円) 1$=102円換算
落札価格 $3,525,000 (約3億5955万円)

『ルノワール展』(ブリヂストン美術館 2001年)やホテルオークラで毎夏開催される『秘蔵の名品アートコレクション展』などで見たことがありますが、本当に滅多に見られない貴重な作品でした。本当ルノワールっぽくない(笑)。クリスティーズには《バドミントンをする若い娘たち》、サザビーズには《化粧する少女》と古典主義に傾倒していた時期の大変稀少な作品が同時に登場したのは不思議です。

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エドガー・ドガ 《二人の踊り子》 1896年 油彩、カンヴァス 67.5×103cm

予想落札価格 $3,000,000-$5,000,000 (約3億600万~5億1000万円) 1$=102円換算
落札価格 $5,205,000 (約5億3000万円)

こちらは油彩作品ですが、ポーラ美術館に同じような構図のパステルがあります。8点のヴァリアントがあるそうで並べて色彩の違いなど見比べてみたいもんです。

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アンリ・マティス 《黄色いドレスの女》 1923年 油彩、カンヴァス 51×37cm

予想落札価格 $9,000,000-$15,000,000 (約9億1800万~15億3000万円) 1$=102円換算
落札価格 $8,565,000 (約8億7300万円)

黄色と青と様々な模様のハーモニーが素晴らしい。ポーラ美術館所蔵の真っ赤な室内が印象的な《リュート》と並べたらお互いに引き立てあってより映えそうです。こんな名品も日本にあったんですよねえ...。予想落札価格より随分と安く落札されているのが気になります。国立西洋美術館が購入したセザンヌの《ポントワーズの橋と堰》は8億だったので近いなぁ。あなたならどちらを取りますか?どっちも欲しい!

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ピエール・ボナール 《化粧室の裸婦》 1909年 油彩、カンヴァス 110×58.5cm

予想落札価格 $3,000,000-$5,000,000 (約3億600万~5億1000万円) 1$=102円換算
不落札

『子どもと楽しむ 人物画展』(高崎市美術館、1999年)でコレクションの一部を見ることができましたが、それ以降はなかなかお目にかかれませんでした。『モディリアーニ展 あの名作から、知られざる原点まで』(国立新美術館、2008年)に出品された正面を見据える瞳のない《婦人像》は印象的でした。

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アメデオ・モディリアーニ 《婦人像》 ワコール蔵

コレクションの全体像を知りませんでしたが、女性像がずらりと並ぶワコールコレクションを一目見たかったです。

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画家と画商の物語 笠間日動美術館 茨城県でフランスを巡る ①

茨城県でフランスを巡る2つの美術展を見てきました。

まずは笠間日動美術館から。この美術館に前回来たのは、2005年の岸田劉生展以来なので9年ぶりの再訪でした。最寄の笠間駅から徒歩25分です(汗)。前回は歩きで行ってバスで駅まで戻って来たのですが、駅前にレンタサイクルがあることを知り、300円を払って普通自転車をゲット。電動自転車は500円です。平坦な道なので普通自転車で大丈夫。

開館まで少し時間があったので笠間稲荷神社に寄りお参りしてから笠間日動美術館へ。

9年ぶりに笠間へやって来たのは「日仏文化協力90周年記念 画家と画商の物語 印象派からエコール・ド・パリ」を見るためです。

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6月15日(日)まで延長

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展覧会紹介より

フランスにおける専業画商は19世紀初頭に誕生しました。画商たちは、当時、現代アートとして一般に理解されなかった印象派やポスト印象派を高く評価して、あらゆる方面から画家たちを支援していきます。
バルビゾン派のミレーやコローを扱い、モネやピサロなどの印象派を世に送り出したポール・デュラン=リュエル、セザンヌやピカソ、ゴーギャンやゴッホの個展を開いたアンブロワーズ・ヴォラール、スーチンらエコール・ド・パリの画家たちを見出したポール・ギヨームらなど、画家たちの足跡を現代に伝えた画商たちは、フランス画壇の蔭の立役者であったと言えるでしょう。
本展では、これまで紹介する機会の少なかった画家と画商の交流に焦点を当て、バルビゾン派のミレーから印象派のモネらを経て、藤田嗣治らエコール・ド・パリの画家たちの作品をご覧いただきます。フランス美術の黄金時代をともに紡いだ画家と画商の物語をお楽しみいただければ幸いです。

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笠間日動美術館は、日動画廊創業者である長谷川仁・林子夫妻により1972年に創設された美術館です。この展覧会の一番興味深い所は画商が作った美術館で開催されることです。これほど相応しい会場が他にあるでしょうか。

笠間日動美術館所蔵作品及び、国内の個人所蔵の近代西洋絵画の名品を展示する物です。

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会場入口のパネル
ジャン=フランソワ・ミレー 《農婦と子供》 1859年 パステル、紙 33.0×27.5cm

今夏、山梨県立美術館を皮切りに府中市美術館、宮城県美術館を巡回する「生誕200年 ミレー展 -愛しきものたちへのまなざし」に出品される油彩の《子どもたちに食事を与える女(ついばみ)》 1860年 リール美術館蔵と同じ構図で描かれた作品です。油彩より早い時期に描かれた物です。愛らしい子どもの表情まで細かく描かれていてパステルならではの柔らかく優しい作品でした。ミレー展で油彩と見られると嬉しいんですが、出品されないかなぁ。

印象派絵画の普及に貢献した画商、ポール・デュラン=リュエルにドガが宛てた「生活に余分な金は足りたので、次は生活費を用立ててくれませんか。」 という珍妙な金策の手紙のエピソードや印象派やポスト印象派、ピカソなどを紹介した画商アンブロワーズ・ヴォラールは、客が来ても昼寝をやめず、待たせるのが当たり前だったなどあまり聞かないおもし
ろエピソードのパネルが所々に掲示されていました。

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カミーユ・コロー 《聖なる泉 サン=ニコラ=レ=ザラスの思い出》 1872年 油彩、カンヴァス 65.5×81.0cm 個人蔵

晩年のコローの典型的な風景画です。鬱蒼と暗く茂る木々の部分と左下の遠景の夕方寸前と思われる強く明るい空の対比が美しかったです。

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クロード・モネ 《曇天のウォータールー橋》 1904年 油彩、カンヴァス 65.0×100.0cm 個人蔵 ※①公益財団法人 日動財団蔵

国立西洋美術館やサントリーコレクションに連作がありますが、紫がかった画面と構図は後者の作品に雰囲気が似ています。2010年にサントリーミュージアムで開催された「印象派とモダンアート」展でこれら3点とさらに個人蔵のウォータールー橋が合わせて展示されたようで行きたかったなぁ。

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アルフレッド・シスレー 《サン・マメス 9月の朝》 1880年 油彩、カンヴァス 50.7×73.0cm 個人蔵

今回の展覧会のポスターやチラシのメインビジュアルに使われた作品です。笠間の街中の商店などあちこちで見かけました。シスレー特有の画面で朝の強い日差しが降り注いでいるのが見事に捉えられています。明るくて瑞々しくて本当綺麗だった。

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ポール・セザンヌ 《オーヴェールのアルメ渓谷付近》 1879-82年 油彩、カンヴァス 53.0×85.5cm 個人蔵

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ピエール=オーギュスト・ルノワール 《褐色の髪の浴婦》 1909年 油彩、カンヴァス 92.0×73.0cm 個人蔵 ※②公益財団法人 日動財団蔵

この展覧会で最も会いたかった作品です。1993年の東武美術館で開催されたルノワール展に出品されていた物でチラシにも載り、額絵にもなって販売されていました。購入してとってありますが、経年劣化で黄ばんでる(笑)。展覧会では特別な作品扱いの1つであったと記憶しています。

それ以来全く見ることが無かったのですが、2008年の5月にサザビーズオークションに登場しあっ!!!と驚きました。
何の確信もなかったのですが、この作品は初めて見た時から日本にある作品だと思い込んでいました。(実際そうでしたが)

予想落札価格$5,000,000-$7,000,000 (5億2000万~7億2800万円) 1$=104円換算 

価格設定が高めだったのか不落札に終わったようでした。そんなことも忘れていた昨年、笠間日動美術館で「モネ、ルノワール、セザンヌ、ピカソ…フランス美術の巨匠たち」という展示を常設館で開催し、この作品が展示されたということを年末に知りました。展示は3月から6月でとっくに終わっていました(泣)。が、問い合わせてみるとその後も常設館で展示されているということで、何とか見に行きたいと思っていた所に、画家と画商の物語の開催を知り、はるばるやって来たのでありました。21年ぶりに会う作品ですので正面に立つまでわざと視界に入らないようにしていざご対面。真珠のように輝く肌に釘付けになりました。背景の緑も綺麗で溜息のでる美しさでした。画像では伝わらないですね。裸婦の傑作の1点と言っていいと思います。

この作品は笠間日動美術館の所蔵品ではありませんが、最近は常設館に展示されているようなので不思議に思い、寄託作品なのか聞いてみると申し訳ございませんが、お答えできませんとのことでした。個人所蔵家から預かり展示しているのでしょうか。それとも日動画廊の取り扱い作品なのでしょうか。いい条件があれば売りに出る日が来るかもしれません。画廊が創った美術館らしくて興味深いです。どういった形であろうとも秘蔵せずに公開してくれているのは本当に有難いことです。

追記 ※①、② こちらの2点は公益財団法人 日動財団蔵だということがわかりました。

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※参考画像
左:《体を乾かす浴婦》 1908年頃 油彩、カンヴァス 92.5x74cm バーンズ財団蔵
右:《体を乾かす浴婦》 1901-02年頃 油彩、カンヴァス 93x73.3cm バーンズ財団蔵

アメリカ、フィラデルフィアにあるバーンズ・コレクションによく似た構図の作品があります。間違い探しみたいですが、左側の作品はほっとんど同じです。ルノワールの裸婦に焦点を当てた展覧会も見てみたいなあ。

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ポール・ゴーギャン 《小川》 1883年 油彩、カンヴァス 54.0×65.5cm 個人蔵

ゴーギャンの印象派の技法で描かれた作品です。ゴーギャンのタヒチ以前の作品もとても好きなので見られて嬉しかったです。ピサロ風なタッチでしょうか。この頃の作品はタヒチの作品に比べると不当?に評価が低いです。印象派の技法でも結構ゴーギャン特有の画面になっていると思うんですけどね。印象派のオリジナルメンバーが始めた印象派の技法を使った模倣と捉えられてしまっているからでしょうか。後にポスト印象派の巨匠になるわけですが、印象派立ち上げから居たとしたらこの作品も「印象派」として評価されるのでしょうか。

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ポール・ゴーギャン 《夢 モエ・モエア》 1892年 油彩、カンヴァス 36.0×65.0cm 個人蔵

ゴーギャンのタヒチ時代の作品が日本にまだあったー!日本にはほんの数点しかないので大変貴重です。
この作品だけ見ると何か変な絵だなって感じですが、《聖歌の家》という作品の中に同じポーズで布に包まれて眠る人を見つけることができます。

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※参考画像
ポール・ゴーギャン 《聖歌の家》 1892年 油彩、カンヴァス 51x 90.4cm 個人蔵

画面右側、白と赤の服装で右腕を後方に出して座る女性とその右側に座る女性、2人のポーズや衣装、髪飾りの位置まで《タヒチの女(浜辺にて)》 オルセー美術館蔵と同じです。 また画面中央の白い布に包まれて眠る人物の上にいる女性は、服の色は違うものの柄とポーズは《ナフェア・ファア・イポイポ(あなたはいつ結婚するの?)》 バーゼル美術館蔵と酷似しています。どちらが先に描かれたのでしょうか。興味深い作品です。

偶然にもこの2作品は2008年5月のクリスティーズオークションに一緒に出品されています。

《夢 モエ・モエア》は、予想落札価格$4,000,000-$6,000,000 (4億1200万~6億1800万円)
1$=103円換算

でしたが、$3,600,000(3億7080万円)までしか競り上がらず不落札に終わりました。

《聖歌の家》は、予想落札価格$10,000,000-$15,000,000 (10億3000万~15億4500万円)
1$=103円換算 のところ、$8,441,000 (8億6942万円)で落札されました。

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アンリ・ルソー 《ダム》 1904年 油彩、カンヴァス 37.5×46cm 個人蔵

ルソーのほのぼの風景画。空の半分以上が雲でびっしりなのが面白いです。川幅の不思議な遠近感と人物のサイズ..。
ルソーでございます。

kasama exb rousseau
アンリ・ルソー 《ポワン=デ=ジュールの眺め 夕暮れ》 1886年 油彩、カンヴァス 85.0×115.0cm 個人蔵

日本の個人蔵にこんな大きなルソーがあるんですよねえ。驚きです。この作品は、近年では2006年に世田谷美術館で開催された「ルソーの見た夢、ルソーに見る夢 アンリ・ルソーと素朴派、ルソーに魅せられた日本人美術家たち」や2010‐2011年にポーラ美術館で開催された「アンリ・ルソー パリの空の下で」にも出品されました。

夕暮れに染まる雲が山のようであり何とも不思議な光景です。後年の作品と比べると非常に細かく丁寧に描かれています。

Picasso-1901-Portrait de Lola Ruiz Picasso
パブロ・ピカソ 《画家の妹 ローラの肖像》 1901年 油彩、板 35.3×22.2cm 個人蔵

ピカソが描いた妹ローラの肖像は19世紀末から20世紀初頭にかけて描いた物が何点かあり、今年の1月から2月にかけて東京国立博物館で開催され、7月からは九州国立博物館に巡回する「クリーブランド美術館展名画でたどる日本の美」に《画家の妹 ローラ》1899-1900年が特別展示されていました。

この展覧会で最も興奮した出来事はこの作品が展示されていたことです。昨年の3月から6月にかけての常設館での「モネ、ルノワール、セザンヌ、ピカソ…フランス美術の巨匠たち」にこの作品も展示されたのを年末に知るのですが、作品名と制作年しかわからず一体どんな絵なのだろうとネットで検索するといくつか出てきてこの絵を見つけました。一目で素晴らしい作品だと思いこの絵だったらいいなと、美術館に問い合わせてサイズと画面の雰囲気を聞いてカタログレゾネでも調べたのですがサイズが異なっており、この作品じゃないんだとがっかりしたものです。が、美術館でこの絵が展示されてるのを見て目が飛び出るくらい嬉しかったです。日本にあったのかー!!ほとんど黒ですが、少し青みがかって見えるのは青の時代が始まる直前に描かれたためでしょうか。人物の内面をも描いたかのような素晴らしい作品です。是非、美術館に恒久的に展示されるようになってほしいです。ルノワールとこの作品は何度も見に戻ってしまいました。笠間日動美術館にはもう一点、紙作品のローラの肖像があるそうです。そちらも見たい。

この作品は、ゴーギャン 《夢 モエ・モエア》が出品された2008年のクリスティーズオークションに登場しています。

予想落札価格 $3,000,000-$4,000,000  (3億900万~4億1200万円) 1$=103円換算
のところ、 $2,700,000 (2億7810万円)までしか競り上がらず不落札に終わっています。

落札されていたら今回、こうして出合うこともなかったかもしれません。所有者に申し訳ないですが、幸運なことでした。

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左:パブロ・ピカソ 《頭部》 1909年 油彩、カンヴァス 笠間日動美術館蔵
中:パブロ・ピカソ 《女の顔》 1901年 油彩、厚紙 46.7×31.5cm 笠間日動美術館蔵
右:パブロ・ピカソ 《画家とパレット》 1963年 油彩、カンヴァス 61.0×50.0cm 笠間日動美術館蔵

《画家の妹 ローラの肖像》の隣りには、フェルナンド・オリビエをモデルに描いたキュビスムの作品が。実物はオレンジがかった茶でした。企画展示棟でのこの展覧会には展示されていませんでしたが、常設館であるフランス館には《女の顔》と《画家のパレット》が展示してあり、ピカソの目まぐるしい作風の変遷を辿ることができます。《女の顔》と《画家の妹 ローラの肖像》が同じ年に描かれたなんて信じられません。

他にもドガ、ゴッホ、ルドン、シニャック、ボナール、デュフィ、ドラン、ヴラマンク、ルオー、マティス、マルケ、ザッキン、レジェ、スーティン、キスリング、シャガール、ユトリロ、パスキンらの名品を1階で堪能できます。

展示室に隣接した休憩スペースに入ると全面ガラス張りで竹林をバックにしたジャコメッティのブロンズの胸像が飾られておりこれまた見事な空間でした。

2階へ上がるとレオナール・フジタ特集になっています。笠間日動美術館と日動画廊所蔵のレオナール・フジタの晩年作が並びます。レオナール・フジタが描いた日動画廊の創業者、長谷川仁の肖像があったり、彼らが一緒に撮影された写真のパネル、日動画廊でのレオナール・フジタ展のポスターも展示され、画家と画商の直接の繋がりを2階では見ることができました。

3階まで上がって橋を渡り常設館へ移動します。

笠間日動美術館は南北に250mほど、幅40~50mとかなりの縦長の広大な敷地にある美術館です。敷地内に高低差があり、北側の企画展示棟の3階から橋を渡り、竹林を抜けて野外彫刻庭園があり、南側に常設館が2棟建っています。

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野外には彫刻が点在しています。画面中央の建物はパレット館、右側に少し見えるのはフランス館。

常設館の1つはフランス館です。敷地内は高低差があるので企画展示棟の方から向かうと2階から入る感じになります。2階の展示室前の空間にはデュビュッフェやアレクサンダー・カルダーなどの様々な彫刻が並び、奥に進むと絵画作品が並ぶ部屋があります。

モネ 《ヴェトゥイユ、水びたしの草原》 1881年/ルノワール 《泉のそばの少女》 1887年、《西洋花梨の木》 1908年、《横たわる裸婦》1917年頃、《静物、ブルーのカップと果物》/セザンヌ 《三つの梨》 1883‐87年頃/ロートレック《橇を引く馬》など印象派からローランサンやユトリロなどのエコール・ド・パリ作品が20点ほどずらりと飾ってあります。

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ピエール=オーギュスト・ルノワール 《泉のそばの少女》 1887年 油彩、カンヴァス 41×32.5cm 笠間日動美術館蔵

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ピエール=オーギュスト・ルノワール 《西洋かりんの木》 1908年 油彩、カンヴァス 25×43.5cm 笠間日動美術館蔵

ルノワールを企画展示棟の1点とフランス館の4点と合わせて5点も見られて幸せでした。

フランス館は、監視員のいない展示室です。ガラスのケース越しで少し離れているのが残念ですが、貸切な環境で見られます。

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藤田嗣治 《室内、妻と私》 1923年 145.8×114cm 笠間日動美術館蔵

企画展示棟の方に展示されていた藤田作品は晩年の作品でしたが、こちらはTHEエコール・ド・パリの藤田。立派な大作です。犬がかわいい。

さらに奥の部屋へ入るとクレーやカンディンスキー、ミロ、エルンスト、マッソンなど20世紀美術の名品が並び、ウォーホル、ジム・ダイン、リキテンスタイン、サム・フランシスなど美術の中心がフランスからアメリカへ移ったあとの作品たちもあります。

企画展と合わせてヨーロッパの近現代美術をたっぷりと楽しめました。

1階は紙作品を展示する小部屋のデッサン室とミュージアムショップと創設者の長谷川仁・林子記念室になっています。

一旦外に出て向かい側には2つ目の常設館である5階建てのパレット館があります。以前来た時は、上階でパレットを展示していたと思うのですが、現在は1階の壁面にずらりと画家が使っていたパレットが並んでいました。日本の様々な洋画家たちのパレットを見ることができます。創設者が付きあいのあった画家から譲り受けた物だそうです。様々な絵の具が置かれたパレットの余白にそれぞれの画家が得意とした主題が描きこまれていてパレットを見ただけで誰のか当てるなんてこともできそうで面白かったです。ピカソ、ダリ、ユトリロのパレットもありました。2階には休憩スペースと彫刻が少し展示されており、それより上は閉鎖中でした。私立美術館でこの敷地に3棟も稼働させて凄いの一言です。

画廊が創った美術館ということであまりお目にかかれない作品にも出会える稀有な存在かと思います。今回は企画展も常設館も西洋美術メインでしたが、高橋由一、青木繁、岸田劉生、佐伯祐三など日本近代洋画から現代までのコレクションがあったり、アンティーク人形のコレクションまでもある美術館です。次来るのはいつになるのだろう。3時間ちょっと滞在していましたが、広いのでむしろもっと欲しかったかも。笠間から出る電車が昼は1時間に1本なので後ろ髪を引かれる思いで笠間日動美術館を後にしました。笠間稲荷や笠間日動美術館などは駅から少し距離があるので自転車がいいですね。自由に行動できるのでバスやタクシーより便利かも。

当初、会期は5月25日(日)まででしたが、6月15日(日)まで延長になりました。知られざる個人蔵の西洋絵画と笠間日動美術館の豊富なコレクションを是非ご覧ください。

茨城県近代美術館のある水戸へ移動。つづく。

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