美術展命の男のブログ

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生誕200年 ミレー展 愛しきものたちへのまなざし 後編

第4章:大地・自然

ミレーの代名詞である農民画の数々と風景画が並ぶ章です。

油彩全400点中純粋な農作業を描いた物は100点にも満たないとのことです。意外と少なく感じます。

millet sower

左:特別出品 《種をまく人》 1846年頃 油彩・カンヴァス 27.3×22.0cm 個人蔵、府中市美術館寄託

中央:《種をまく人》 1847-48年 油彩・カンヴァス 93.5×61.3cm ウェールズ国立美術館蔵、カーディフ

右:参考画像
《種をまく人》 1850年 油彩・カンヴァス 99.7×80.0cm 山梨県立美術館蔵
注:本展には含まれず、山梨県立美術館 ミレー館での展示

本展の一番のサプライズは、《種をまく人》の第1作が特別出品されたことでしょうか。この作品の存在自体を本展で初めて知りましたし、府中市美術館に寄託されているというのも初めて知りました。第1作目の府中市美術館寄託作品は急な斜面に強風が吹く故郷ノルマンディー地方特有の景色から生み出されました。強風に服が翻り、急な斜面で足を踏ん張っているのがわかります。

油彩の《種をまく人》は5点が存在します。2作目はウェールズ国立美術館、3作目はボストン美術館、4作目は山梨県立美術館、5作目はカーネギー美術館に所蔵されています。徐々に構図が練られていきモニュメンタルな山梨、ボストン作品が生まれる過程がよくわかります。

山梨県立美術館でのミレー展では、この3点が同じ空間にあるのかと思ったのですが、山梨県立美術館蔵の《種をまく人》は本展には含まれていないので特別展示室ではなくミレー館に展示されていました。山梨県立美術館は所蔵するミレーの油彩画11点中の6点とパステル1点の計7点を本展に出品していて府中と宮城に貸し出すと油彩は残り5点になってしまい、この秋から冬にかけて山梨に《種をまく人》を見に来る人が困らないようにとミレー館に掛けているとのことでした。が、自館でミレー6点を特別展示室へ移してミレー展を開催している時にミレー目的の人がミレー館だけ見て帰るというケースは少ないと思うのですが...。所蔵館であるならばミレー館でなく特別展示室へ移してもよかったと思います。せっかくの機会なのに凄くもったいないなと思いました。

ボストン美術館蔵の《種をまく人》が30年ぶりに東京で展示されるので、山梨の《種をまく人》も東京に来てくれたらなと思いましたが、叶わず。

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《落穂拾い、夏》 1853年 油彩・カンヴァス 38.3×29.3cm 山梨県立美術館蔵

ミレーが生涯に3度手がけた四季シリーズ、現存する11点中の1点です。最初の四季連作と考えられている物です。1991年のミレー展では11点中8点を揃えるという今ではとても信じられない功績を残していますが、この作品は1991年当時はニューヨーク、ロックフェラー、コレクションにあり、ミレー展には出品されませんでした。山梨県立美術館が取得するのは1996年のこと。もう5年早ければ4点が揃って展示されたかもしれません。

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本展出品作品ではありません
左:参考画像
《葡萄畑にて、春》 1852-53年 油彩・カンヴァス 37.6×29.6cm ボストン美術館蔵

中央:参考画像
《りんごの収穫、秋》 1851-53年 油彩・カンヴァス 39.3×30.5cm アーノット美術館蔵、ニューヨーク

右:参考画像
《薪集めの女たち、冬》 1852-53年 油彩・カンヴァス 37.5×29.5cm エルミタージュ美術館蔵

1991年のミレー展では最初の四季連作とされる4点中、《落穂拾い、夏》を除くこの3点が展示されました。いつか4点が揃って展示される日は来るのでしょうか。来てほしい!《葡萄畑にて、春》は「ボストン美術館 ミレー展」で見られます。

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《鵞鳥番の少女》 1854-56年 油彩・カンヴァス 33.0×24.8cm ウェールズ国立美術館蔵、カーディフ

この作品は1986年3月から1987年2月にかけてそごう美術館、大丸ミュージアム(大丸梅田店)、 姫路市立美術館、ひろしま美術館、岐阜県美術館、福島県立美術館、小田急グランドギャラリー、宮崎県総合博物館、福岡県立美術館を巡回した(巡回しすぎ(笑))「英国・国立ウェールズ美術館展:イギリス風景画から印象派へ」に出品された物でこの展覧会のカタログを見て美しい絵だなと思いずっと見たかった作品です。本展に含まれていてとても驚きました。実物を見ることができ本当に嬉しかった。陽光のポカポカした感じが伝わって来るような画面です。少女と鵞鳥に焦点が当たり背景は霞んでいます。背景の草のモスグリーンと少女の服の濃厚な青と赤がとても美しい。小さな作品ですが、他の作品にはない強いインパクトがある名品です。本展のカタログの表紙も飾っています。

woman grazing her cow, 1858
《牛に草を食ませる女》 1857-58年 油彩・カンヴァス 73.0×93.0cm ブル王立修道院付属美術館蔵、ブール・ガン・ブレス

日本初公開作品。1858年のサロン出品作です。1852年、ミレーは友人で伝記作家のアルフレッド・サンスィエの取り計らいにより国家から注文を受けます。この年に素描作品を残していますが、油彩画に至るまで6年を要しています。画面の3分の1ほどの高さに地平線を取り、どこまでも続く広い大地で逞しく生きる農民の姿をモニュメンタルに描く画面は《落穂拾い》や《晩鐘》と共通します。農婦の服装から寒い季節なのでしょうか。時が止まったかのように静寂に包まれ夕方より少し前のような明るさの画面は、ひんやりとした肌寒い空気が伝わって来るようです。地平線近くには米粒くらいの羊たちとその後を追う羊飼いや牛と農具を運ぶような人物も霞むように描かれています。

renoir shepherdess
《牛と羊をつれた羊飼いの少女》 1886~1887年 油彩・カンヴァス 個人蔵、日本

ルノワールの作品がふと頭に浮びました。サロン出品後すぐ公のコレクションになっているのでもしかしたらルノワールは後年ミレーのこの作品を見ているかもしれません。

millet galerie
《羊の毛を刈る女》 1860年 油彩、カンヴァス 163.8 x 113.0cm 美術館ギャルリ・ミレー蔵

この作品は90年代から国内のバルビゾン派関連の展覧会に何度か貸し出されていたようですが、カタログで確認していただけで実物を目にする機会に恵まれませんでした。今回ようやく対面できました。でかい!こんな大きな作品だったとは。

この作品は1861年のサロンにマルセイユ美術館蔵の《ミルク粥》と第3章に展示されていた《待つ人》と共に出品されました。《待つ人》は批評家などから最も酷評されましたが、この《羊の毛を刈る女》はラファエロの作品と比較する批評家もいたほど賞賛されました。よく描きこまれた農婦や羊に比べて男性の顔だけが未完成のように見えます。本来はもっと描きこまれていたようですが、ボストンの個人蔵にあった頃に洗浄し過ぎて現状のようになってしまったそうです。(汗)

日本の個人蔵にあるとは知っていましたが2012年、富山県に開館したギャルリ・ミレーの14点ものミレーコレクションの一部と知った時は驚きました。今回、ギャルリ・ミレーは4点の作品を貸し出してくれています。

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左:《春(ダフニスとクロエ)》 1865年 油彩・カンヴァス 235.5 x 134.5cm
国立西洋美術館蔵

右:《冬(凍えたキューピッド)》1864-65年 油彩・カンヴァス 205.0×112.0cm
山梨県立美術館蔵

「ミレーコレクションのすべて」 山梨県立美術館

「ミレーコレクションのすべて」の記事の中ほどに書いた銀行家トマからの注文、食堂装飾「四季」を主題とする3点の絵画(春、夏、冬)と1点の天井画(秋、焼失)のうちの2点で、《落穂拾い、夏》の四季連作に続く2度目の連作です。今年の夏前には国立西洋美術館の常設展から《春(ダフニスとクロエ)》が外されていたので山梨県立美術館で見られるんだなと楽しみに行ったのですが、山梨会場では《冬(凍えたキューピッド)》のみしか展示されておらず結構ショックでした。ところが、府中会場ではこの2点がついに再会。おそらく1991年のミレー展以来の並べての展示だと思われます。1991年はここにボルドー美術館蔵の《夏(ケレス)》も揃ったのですが...。

画像はサイズを揃えていますが、実物を並べてみるとかなりの大作だと思っていた《冬(凍えたキューピッド)》が《春(ダフニスとクロエ)》に比べだいぶ小ぶりに見えました。同じようなサイズだと思い込んでいたので並べてみて気づきました。《冬(凍えたキューピッド)》がこのサイズなのは暖炉の上を飾っていたからとのことです。

《春(ダフニスとクロエ)》は、国立西洋美術館ではかなり高い位置に掛けられており、見上げるような印象があったのですが、府中ではだいぶ降ろされちょうどいい視線の高さで見ることができました。控えめな色数の冬と並べると春の鮮やかさがこれでもかと強調されているようでいつもと違う絵を見ているかのようでした。春のダフニスとクロエの肌は細かいタッチが多用されいて美しい絵肌と耀きを放っていました。全体的にも明るい色彩とタッチは印象派の予告をしているかのようでした。相乗効果でどちらもとてもよかった。1865年にはパリにあった天井画《秋》が、1898年以前にはベルギーのラーケン宮で焼失したことが本当に悔やまれます。パリに残っていたら今日も見られたのでしょうか。現在はモノクロ写真や下絵でしか見ることができません。この天井画の下で春、夏、冬が展示されていた食堂とはどのような空間だったのかとても気になります。再現が可能ならその空間で是非見てみたいものです。

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左:《クーザン村》 1854-73年頃 油彩・カンヴァス 74.1 x 93.0cm ランス美術館蔵

右:《グレヴィルの断崖》 1870年 油彩・カンヴァス 24.0 × 33.0cm 山梨県立美術館蔵

展覧会の最後は故郷を描いた風景画で終わります。クーザン村はミレーの故郷グリュシー村から500mほど離れた所にあります。もともと起伏のある土地をさらに強調して描いているとのこと。長い年月をかけて完成されていることもあり何度も加筆されていてよく描きこまれ厚塗りで濃厚な画面になっています。砂を混ぜた絵の具も使われています。深い緑がとても美しいです。石垣は山梨県立美術館蔵の《古い塀》を思い起させます。屋根の上に人がいたり森の中にも農婦らしき人物が見えます。牛や鵞鳥など本展の様々な作品に出てきた作品の総集編のようです。

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参考画像
《クーザン村の習作》 1854年 ペン、水彩・紙 22.5 × 28.2 cm ブダペスト美術館蔵


パステル画はカタログには4点掲載されていて山梨では2点、府中では3点の展示。素描は山梨、府中ともに7点とかなり少なかったのが残念でした。1991年のミレー展ではカタログにパステル15点、素描29点(いずれも名品ばかり)だったのでかなりの差です。当時はバブル崩壊直後だったので国内に豊富なコレクションが溢れていました。特別だったのですね。ちなみに2001年、メルシャン軽井沢美術館のミレー展では素描が40点も出品されています。

1991年のミレー展は農民画家としてのミレーのイメージそのままのミレー展、2001年のミレー展はトマ=アンリ美術館所蔵の修業時代と初期の肖像画、ミレーが影響を受けた画家の作品も多く並んだことでミレーの農民画家としての姿より画家の原点に焦点を当てた展覧会であったとすると2014年のミレー展はどちらもミックスした展覧会であったと思います。しかし油彩画の半分以上が画業の前半の物になり、バランスが少し偏っている印象がありました。

初期作品を多く所有するトマ=アンリ美術館の改装を期にまとめて作品を借りることができたそうで農民画家としてのミレーだけでなく家族、家庭の生活を描いたというテーマを設けることができ、ここに焦点を当てたわけですが、画業後半の油彩画がもう少し多かったら素晴らしいバランスになったと思います。難しい問題ですよね。幸いなことにもう1つ「ボストン美術館 ミレー展」が国内巡回しているのでお互いに補完し合う展覧会になると思います。

やはり「偉大なる農民画家」のイメージのミレーですが、初期作品を多く見られたことやバルビゾンに住みつつ作品には故郷の実家の堅固な石造りの家を登場させたり、実家に対する苦悩などそれらが反映された具体的な作品が出品されていたことで画家の真実に迫れるような展覧会だったと思います。

ミレー生誕200年の2014年は、「ボストン美術館 ミレー展」、「生誕200年 ミレー展 愛しきものたちへのまなざし」、「オルセー美術館展」の《晩鐘》と《横たわる裸婦》の来日とミレーを最高に楽しめる素晴らしい年です。10月17日(金)に「ボストン美術館 ミレー展」が三菱一号館美術館で開幕すると20日(月)に閉幕する「オルセー美術館展」までのたった4日間ですが、ミレーの傑作を東京で拝める3展が重なります。はしごしたい。

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今年の3月に休館?閉館?したニューオータニ美術館がミレーを手放すことになったようです。10月のクリスティーオークションに競売にかけられます。

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ジャン=フランソワ・ミレー 《田園に沈む夕陽》 1868年頃 パステル・紙 50.1 x 62.2cm

2014年10月27日 クリスティーズオークション、ニューヨーク
予想落札価格 $400,000 - $600,000 (1$=106円換算 4240万~6360万円)

もう1度見たかった...。鎌倉大谷記念美術館も長~いこと休館していますが、今年のデュフィ展でコレクションは健在ということがわかりほっとしました。また美術館で常設される日が来ることを祈っています。

今夏、ミレーに関する嬉しいニュースがありました。オフィス用品製造のコクヨ(大阪市東成区)が所蔵するミレーとセザンヌの油彩画がひろしま美術館に寄託されました。大阪の会社がなぜに広島の美術館に?と思ったのですが、ひろしま美術館はミレーの作品を所蔵している事とミレーを尊敬したゴッホの傑作があるので理由づけにはぴったり。

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《毛を刈られた羊》 1862年 油彩・カンヴァス 59.7 x 70.0cm
コクヨ株式会社蔵、ひろしま美術館寄託

《毛を刈られた羊》は、1991年のミレー展に出品されておりカタログに個人蔵、日本と表記があります。コクヨが購入した時期は約30年前とのことなのでミレー展に出品した時にはコクヨ所蔵だったということになります。この作品は1991年のミレー展のあとバルビゾン関連の展覧会のカタログで見たことがあったと思うのですが、ここ20年ほどは関東での展覧会で一切見ていません。とっくに日本にはないのだろうと思っていたのでひろしま美術館への寄託のニュースで日本にあったんかい!ととても嬉しいニュースでした。ひろしま美術館はミレーのパステル画を2点所蔵していますが、油彩画を所蔵していなかったので展示に幅ができ素晴らしいと思います。

cezanne kokuyo
ポール・セザンヌ《ジャ・ド・ブファンの木立》 1871年頃 油彩・カンヴァス 35.5 x 54.5cm
コクヨ株式会社蔵、ひろしま美術館寄託

ひろしま美術館にはセザンヌの後期の人物画と風景画がありますが、寄託された作品は初期の物になります。こちらもコレクションに幅が出てよろしいですね。

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国内の美術館への寄託作品繋がりで胸躍ることがありました。東京国立近代美術館のチラシコーナーで京都国立近代美術館のコレクション展のチラシを手にしてびっくり!モネの積み藁の絵が載っているじゃないですか。特別展のチラシ!?と思ってよく見るとやはりコレクション展のチラシで作品の横に京都国立近代美術館寄託と記載があります。

京都国立近代美術館は、9月3日(水)~ 11月30日(日)まで[特集展示] 「絵画」の発見-フランス近代絵画の展開をコレクション展で開催しています。

Les Meules, Giverny, effet du matin
クロード・モネ《積み藁、ジヴェルニー、朝の印象》 1889年 油彩・カンヴァス 65.0 x 92.7cm 京都国立近代美術館寄託

こんな名品が日本にあったとは!!この作品は1994年にブリヂストン美術館、名古屋市美術館、ひろしま美術館を巡回した「モネ展」に埼玉県立近代美術館蔵の名品とともにアメリカの個人蔵から出品されていました。それからずっとアメリカにあると思っていたのにいつの間に日本へ!?

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左:クロード・モネ《ジヴェルニーの積み藁、夕日》 1888-89年 油彩・カンヴァス 65.0 x 92.0cm 埼玉県立近代美術館蔵

右:クロード・モネ《積み藁、白い霜の効果》 1889年 油彩・カンヴァス 65.0 x 92.0cm ヒルステッド美術館蔵、コネチカット

積み藁の連作は30点が知られていますが、 左側に大きな積み藁、右側に小さな積み藁を配したこの構図の作品は3点しか存在しません。1888年晩夏から89年初頭にかけて描かれた物はこの3点を含む5点で、1890年晩夏から91年初頭にかけて少なくとも25点が制作されています。つまり京都国立近代美術館寄託作品と埼玉県立近代美術館蔵の作品は連作に先立って描かれた最重要な作品の1点ということになります。奇しくも1994年のモネ展からちょうど20年の年に日本に2点が存在すると知ったわけですが、埼玉県立近代美術館は9月1日から2015年4月10日まで改修工事のため休館中です。2015年1月24日から3月15日まで川越市立美術館で埼玉県立近代美術館の出張展があり、そこでモネの積み藁が公開されます。恐らく年内中は収蔵庫?だと思うので京都国立近代美術館が貸出依頼していたら借りられた?かな?。一緒に見られる機会を是非作っていただきたいです。

京都市美術館で開催中の「ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展」には《積みわら(日没)》が出品されていますので京都の人はラッキーですね。

ホームページの出品リストを見るとコロー、ブーダン、ラトゥール、ルドン、モネ、ルノワール、シスレー、ピサロ、シニャック、ヴュイヤール、ボナール、マティス、ヴラマンク、マイヨール、デュフィ、ユトリロ、モディリアーニ、キスリング、ルオー、シャガール、さらに京都国立近代美術館蔵の名品ピカソ、マティス、ルドンらも加えた30点が記載されています。ちょっとした特別展といっていいかもしれません。京都に行きたい。

natinal museum kyoto

左:ピエール=オーギュスト・ルノワール 《若い女性(長い髪の少女)のプロフィール》
1890年 油彩・カンヴァス 36×27cm  京都国立近代美術館寄託

右:アメディオ・モディリアーニ 《ベアトリス・ヘイスティング》 1915年 油彩・カンヴァス
京都国立近代美術館寄託

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左:アルフレッド・シスレー 《村への道》 1880年 油彩・カンヴァス
京都国立近代美術館寄託

右:エドゥアール・ヴュイヤール 《テーブルの女性》 1898年頃 京都国立近代美術館寄託


ミレー展 参考文献 カタログ
1991年 ミレー展 「四季」アース色のやさしさ
2001年 ミレー 心の旅
2014年 生誕200年 ミレー展 愛しきものたちへのまなざし

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生誕200年 ミレー展 愛しきものたちへのまなざし 前編

millet exposion

府中市美術館で開催中の「生誕200年 ミレー展 愛しきものたちへのまなざし」を見てきました。

本展は山梨県立美術館、府中市美術館、宮城県美術館へ巡回する展覧会で、府中展を見に行く予定だったので山梨展はいいかなと思ったのですが、山梨県立美術館蔵の《種をまく人》は本展に含まれず、ミレー館でしか見られないとのことだったのでミレー展と合わせて是非鑑賞したいと思い山梨展にも行きました。それも織り交ぜて書きたいと思います。

ミレー関連の展覧会は今までに何度も開催されています。

日本での「ミレー展」といえる物は、1970年に西武百貨店〈渋谷〉、京都市美術館、福岡文化会館で開催された物が最初だそうです。後に山梨県立美術館に収蔵されることになる《ポーリーヌ・V・オノの肖像》、《ダフニスとクロエ》、《鶏に餌をやる女》やボストン美術館所蔵の《種をまく人》やルソーやコロー、クールベなども展示された展覧会だったとのことです。

1996~97年に平塚市美術館、福岡市美術館、京都市美術館、茨城県近代美術館で開催された「ミレーとバルビゾン派の画家たち」(前半2会場ではオルセー美術館蔵《羊飼いの少女》、後半2会場ではオルセー美術館蔵《落穂拾い》が公開)、超名画が東京外しで来日ということに当時驚いたのを覚えています。平塚会場へ見に行きました。茨城も行きたかったけど断念。

1998年に山梨県立美術館で開催された「自然に帰れ ミレーと農民画の伝統」、(落穂拾いに関連する素描が多数出品されました)。1999年に姫路市立美術館で初公開されその後日本各地で展示されたバルビゾン派の個人コレクションでは国内一の中村コレクション「ミレー,コロー バルビゾンの巨星たち展」 この2つは見られなくてとても悔しかった。中村コレクションは2002年に損保ジャパン東郷青児美術館で公開された際に鑑賞しました。

2003年にBunkamuraザ・ミュージアムと福岡市美術館で開催された「ミレー3大名画展 ~ヨーロッパ自然主義の画家たち~」では73点中、ミレーの油彩11点を含む計21点(パステルは会場により変更)が出品されました。《晩鐘》、《落穂拾い》、《羊飼いの少女》の3点が日本で初めて一堂に会した話題の展覧会でした。

2004年、名古屋市美術館、岩手県立美術館で「ゴッホ、ミレーとバルビゾンの画家たち」が開催されています。カタログを見るとミレーの作品も結構出品されていました。

他にもいくつもありますが、このように幾度となく開催されてきた展覧会の多くは、ミレーとバルビゾン派の画家たちといった括りの物が多く、ミレーに大きく比重が置かれた物に絞り、ここ30年の開催を見ると

1984~85年 「ミレー展  ボストン美術館蔵」
日本橋・高島屋/北海道立近代美術館/山口県立美術館/松坂屋本店/京都市美術館/山梨県立美術館

1991年 「ミレー展 「四季」 アース色のやさしさ」
Bunkamuraザ・ミュージアム/京都市美術館/山梨県立美術館

2001年 「ミレー 心の旅 ノルマンディからバルビゾンまで  シェルブール、トマ・アンリ美術館コレクションを中心に」
メルシャン軽井沢美術館(ミレー油彩33点を含む88点、その他画家約20点) 

2002年 「人と自然へのあたたかなまなざし ミレー展」
名古屋ボストン美術館

2002年 「ボストンと山梨のミレー」
山梨県立美術館 (ボストン美術館所蔵ミレー油彩27点、山梨県立美術館所蔵ミレー油彩9点、パステル、素描、版画など)

2013年 「ミレーコレクションのすべて」(初のミレーコレクション一挙公開)
山梨県立美術館

2013-14年 「ボストン美術館 ミレー展 傑作の数々と画家の真実」
高知県立美術館/名古屋ボストン美術館/三菱一号館美術館
(ミレー25点、その他画家39点)

最後の2013-14年版は純粋なミレー展と言っていいのかわかりませんが...。『ミレー展』は、上記くらいで、一カ所のコレクションからまとめて展示するタイプを除くと1991年のミレー展だけが各所から借りてくるタイプの展覧会となっています。1991年の展覧会は実見していませんが、カタログの内容から国内におけるミレー展の金字塔といっていい展覧会だったと思います。

そして今回の展覧会は1991年以来の各所から借用してくる展覧会でした。トマ=アンリ美術館から多くを借用していますが、その他にもフランス、イギリス、アメリカ、国内から集められていました。

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山梨会場での紹介文より

2014年は、ジャン=フランソワ・ミレー(1814-1875)の生誕200年にあたる年です。
本展はこれを記念し、国内外のミレー作品約80点によりミレーの画業を回顧します。

ミレーは、それまで絵画の主題とはなりえなかった農民の労働の様子を見つめ、宗教性をもたたえた荘厳な農民画の世界を生み出しました。その背景には、フランス初の風景画派の誕生の地となったバルビゾン村の自然豊かな制作環境がありました。また、幼い頃から育まれた自然に対する畏敬、身近なものへの慈愛がミレー作品の根幹を成しています。ノルマンディーの寒村で過ごした子供時代のまなざし、妻と9人の子どもに対する父親としてのまなざしを感じ取ることができます。

本展では、初期から晩年までの作品をご紹介するとともに、家族の肖像や生活の情景を描いた作品に焦点をあてることで、ミレーの作品世界の新たな広がりをお楽しみいただきます。

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ミレーといったらやっぱり農民画のイメージがあり、そこをメインにする展覧会が多かったわけですが、今回は家族の肖像や生活の情景を描いた作品に焦点を当てるということで、トマ=アンリ美術館の協力なくしては成り立たない展覧会です。

第1章:プロローグ 形成期
初期の作品や肖像画の多くは、トマ=アンリ美術館に所蔵されています。理由はミレーの最初の奥さんであるポーリーヌ=ヴィルジニー・オノの遺族が寄贈したからです。

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《アルカディアの羊飼い》 1836-38年頃 油彩、カンヴァス 92.0×110.0cm トマ=アンリ美術館蔵、シェルブール=オクトヴィル

ミレーの現存する作品中、最も古い1点とのこと。ニコラ=アントワーヌ・トネイの作品を参考に描いたようです。なんだかプッサンみたいな感じがすると思ったら同じ生まれ故郷ノルマンディー出身のプッサンにも影響を受けていたようです。とてもミレーの作品に見えません。

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《アラブの語り部》 1840年 油彩・カンヴァス 46.0×38.0cm トマ=アンリ美術館蔵、シェルブール=オクトヴィル

画像はくすんでいますが、実物は男たちの着る衣装が鮮やかに美しく描かれています。後の1844-45年作の山梨県立美術館蔵《眠れるお針子》の画面の色彩に通ずる物がありました。

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《庭園の風景》 1842年頃 油彩・カンヴァス 24.7×32.7cm トマ=アンリ美術館蔵、シェルブール=オクトヴィル

当時流行っていたというロココ趣味のヴァトーのような雅宴画も描いており、画家の試行錯誤がわかります。

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《絵画の妖精》 1842年頃 油彩・カンヴァス 21.2×16.0cm トマ=アンリ美術館蔵、シェルブール=オクトヴィル

《絵画の妖精》のタッチは後に「華やかな様式」といわれるパステル調の柔らかな筆触で描かれる1844-45年作の村内美術館旧蔵《鏡の前のアントワネット・エベール》のタッチを既に先取りしているような画面です。《糸を紡ぐ羊飼いの少女》もロココ風な雰囲気を漂わせつつ後に描かれる題材となる羊飼いが既に登場しています。

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《糸を紡ぐ羊飼いの少女》 1842-43年頃 油彩・カンヴァスで裏打ちした紙 26.3×32.0cm トマ=アンリ美術館蔵、シェルブール=オクトヴィル

第2章:自画像・肖像画

本展の特色ある目玉の章と言っていいと思います。ミレーが描いた家族、知人、注文による肖像画がずらりと並びます。1991年のミレー展では取り上げられなかったので特筆に値します。2001年のメルシャン軽井沢美術館のミレー展では、本展に並ぶ21点が出品されていたので大きくかぶります。肖像が一堂に会しており、親戚集まったーという感じの興味深い章です。

ミレーは、肖像画を120数点描いており、自画像は5点描いています。そのうち3点も(油彩2、素描1)見ることができます。

ミレーの最初の奥さん、ポーリーヌ・ヴィルジニ・オノの肖像も3点出品されています。

portrait of pauline-virginie ono

左:《ポーリーヌ・V・オノの肖像》 1841-42年頃 油彩・カンヴァス 73.0×63.0cm
山梨県立美術館蔵

中央:《青い服を着たポーリーヌ・オノ》 1841-42年 油彩・カンヴァス 73.3×60.0cm
トマ=アンリ美術館蔵、シェルブール=オクトヴィル

右:《部屋着姿のポーリーヌ・オノ》 1843-44年 油彩・カンヴァス 100.2×81.2cm
トマ=アンリ美術館蔵、シェルブール=オクトヴィル

山梨県立美術館では3点がこの並びで展示してありましたが、府中展では中央の《青い服を着たポーリーヌ・オノ》が展覧会の導入部にポーリーヌの祖母と弟と共に展示されており、3点を一緒に見ることができませんでした。う~んもったいない。3点並びの方が素晴らしく美しい光景でした。《青い服を着たポーリーヌ・オノ》は実物では一見黒い服を着ているように見えましたが、よ~く見ると暗い青で描かれています。山梨の作品も黒い服かと思っていましたが、同じ衣装を着ていて青い衣装だったと判明。《部屋着姿のポーリーヌ・オノ》は彼女が亡くなった年に完成した物です。結核を患い青白い顔は他の作品の顔色と全く違います。顔もむくんでいるように見えます。衣装の布の表現も大変美しい傑作です。

この3点が揃うのは本当に貴重な機会です。ポーリーヌの肖像は4点描かれていてもう1点はボストン美術館に所蔵されています。高知県立美術館、名古屋ボストン美術館、三菱一号館美術館を巡回中の「ボストン美術館 ミレー展」にミレーの自画像とポーリーヌの肖像が来ており、最終会場の三菱一号館美術館での展示が開幕したら東京に4点のポーリーヌが全て揃うということになります。ミレー生誕200年の年に2つのミレー展が日本で同時に開催され、ポーリーヌ4点が同時に日本に滞在するのは間違いなく今回が初めてのことでしょう。凄いことです。

Catherine Lemaire
《カトリーヌ・ルメール》 1845年頃 油彩・カンヴァス 81.0×63.0cm
トマ=アンリ美術館蔵、シェルブール=オクトヴィル

ポーリーヌの死後、出会った2番目の妻となるカトリーヌ・ルメールの油彩による肖像画は1点のみ残されており、村内美術館に以前所蔵されていました。今回は肖像画ではなくモデルとして描いた乱れた長い髪と肩を大きく露わにしたエロティックな《カトリーヌ・ルメール》が出品されていました。なぜポーリーヌに比べ彼女の肖像が少ないかというとその頃は肖像画以外の制作に傾倒していたからだそうです。ちょっとかわいそう...。

Portrait de Amand Ono

左:《アマン・オノの肖像(パイプを持つ男)》 1844年 油彩・カンヴァス 100.5×80.5cm
トマ=アンリ美術館蔵、シェルブール=オクトヴィル

右:《アマン・オノ(画家の義兄弟)》 1841年 油彩・カンヴァス 73.5×60.5cm
トマ=アンリ美術館蔵、シェルブール=オクトヴィル

ポーリーヌの弟を描いた肖像です。制作期間は3年しか変わりませんが、風貌がかなり変わっています。また描き方も大きく変わっています。初期のより写実的な肖像から伸びやかで大胆な筆さばきと美しい色彩の華やかな様式への変化がよくわかる画面でした。

山梨ではこの2作品は隣り合わせで見ることができましたが、府中では右の作品は展覧会の導入部に掛けられていたので一緒に見られませんでした。山梨ではポーリーヌの親族を描いた作品を一度に眺めることができたのですが、府中展では展示室の広さの都合でパーテーションで仕切られていたので細切れに見ることになっていたのがとても残念でした。山梨展を見なければ気にならなかったのかもしれませんが、う~んやっぱり残念。

120数点あると言われるミレーの肖像画のうち注文で描かれた物は半数にも満たないそうです。ほとんどが親族や友人などの知り合いを描いた物とのこと。

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上段左
《犬を抱いた少女》 1844-45年 油彩、カンヴァス 65.0×54.5cm ユニマットグループ蔵

本展出品作品ではありません
上段右:参考画像
《鏡の前のアントワネット・エベール》 1844-45年 油彩・カンヴァス 98.0×78.0cm 旧村内美術館蔵
下段左:参考画像
《フェリックス・フーアルダン》 1841年 油彩・カンヴァス 旧青山ユニマット美術館蔵
下段右:参考画像
《ルイーズ・アントワネット・エベール》 1841年 油彩・カンヴァス ポールゲッティ美術館

本展に旧青山ユニマット美術館所蔵の《犬を抱いた少女》が出品されていたことに大変驚きました。2009年3月31日に突如閉館して所蔵品のミレー《1日の終わり》(後にゴッホが模写する作品)、モネやルノワール、ゴッホ、セザンヌなどが次々と海外オークションに掛けられ散逸していきましたが、まだユニマットグループが所蔵していたとは。《洗濯物を干す女》もユニマットグループから出品されていました。

《犬を抱いた少女》は、こどもの肖像は10点ほどしかないと言われる中の貴重な1点です。フェリックス・フーアルダンは、ミレーの生涯の親友でその妻と連れ子のアントワネット・エベールの肖像画も描いています。《犬を抱いた少女》のモデルははっきりしていないものの、アントワネット・エベールに輪郭が似ていることなどから姉と妹の肖像とも言われています。《鏡の前のアントワネット・エベール》と同じく華やかな様式で描かれた可愛らしい肖像です。

Portrait of Madame Martin
本展出品作品ではありません
《マーティン夫人の肖像》 1840年 油彩・カンヴァス 46.4cm×38.1cm 日本、個人蔵

この作品は夫婦で対作品で描かれた物です。夫で獣医のマーティン氏の肖像はクリーブランド美術館に収蔵されています。

本展に関係ないのですが、近年ミレーの肖像画でとっても驚くことがありました。2011年のクリスティーズオークションにこの肖像画が出品されました。その画像を見た瞬間に長年もやもやしていた物が一気に晴れました。

美白の女王こと、故鈴木その子さんがミレーの作品を所蔵しているという情報が昔ありました。が、どういった絵かは全くわからずにいました。テレビ番組で彼女の自宅か職場の一室が映し出された時に背景の壁にある肖像らしき絵が映りました。それがミレーを彷彿とさせる物だったのですが、小さく数秒しか映らなかったので長いこと謎でした。2011年のオークションのこの図版を見た瞬間に十数年経っていたもののこの絵だー!!と脳に電気が走りました(笑)。後にこの絵は鈴木その子さんが所蔵していたこともわかり、あの時テレビに映ったのはこの作品だったのだとすっきりしました。日本のある美術商に落札され現在日本にあります。

第3章:家庭・生活

8人兄弟の長男として生まれたミレー。自身も6男3女の父となりました。家事だったり生活の一場面などを描いた親密な作品が並びます。この章は胸を打つものがありました。

feeding her birds millet
《子どもたちに食事を与える女(ついばみ)》 1860年頃 油彩・カンヴァス 74.0cm×60.0cm リール美術館蔵 

「母鳥のくちばしからえさを与えられる巣の中のひな鳥たちの姿を連想させるように描きたかった。後ろの男は家族を養うために働いているといるということを」とミレーの伝記作家、アルフレッド・サンスィエに宛てた手紙に書いています。

子どもたちの表情や母親の座る椅子の足が浮き上がっているところや鶏が自由に闊歩している所など思わずにっこりしてしまう絵です。ミレーは6男3女の父親になりますが、この時、既に7人の子の父親で子を見つめる温かなまなざしが痛いほど伝わってきます。可愛い絵ですが、見れば見るほど胸が熱くなり思わずほろっと来るような絵でもありました。衣装の青や赤がとても綺麗でした。

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《待つ人》 1860年 油彩・カンヴァス 84.5cm×121.3cm ネルソン=アトキンズ美術館蔵、カンザスシティ

タイトル通り待つ人の絵ですが、この絵の真意を知り胸が詰まる思いでした。フランス北部ノルマンディー地方の農村グリュシーの農家の8人兄弟の長男として生まれながら家業を継がずに家を離れ画家となったミレーは、グリュシーより17kmほど離れたシェルブールで修業していた21歳の時、父が亡くなった際に家業を継ぐために実家に帰りましたが、祖母の後押しでシェルブールに戻り、画家の道を進むことになります。この時、祖母が送り出してくれなかったら『画家ミレー』は誕生していなかったかもしれません。

祖母が亡くなった時は旅費が無く葬儀に行けませんでした。故郷からの母の手紙で孤独に残されている苦悩や息子に対する愛情を知ります。家族が離散していくのをどうすることもできないことにさいなまされていたそうです。

その不安を聖書外伝『トビト書』からトビアの帰りを待つ老夫婦として描きました。老母アンナは通りで物音がすると息子が帰ってきたと外に出るものの、誰もいなく盲目の夫トビトは息子はきっと帰ってくると妻を慰めるという絵です。とうとう母の葬儀にも出られませんでした。皮肉な事にこの頃からアメリカ人などの顧客に作品が高額で売れるようになります。

この絵にそんな悲しい思いが込められていたとは。夕暮れの美しいオレンジ色が憂愁を誘います。慌てて出てきたアンナに起こされたのか猫はそんなことおかまいなしで呑気に伸びをしているのが悲しい中にもユーモアが感じられます。

Jean-François_Millet_-_The_Knitting_Lesson
《編み物のてほどき》 1869年 油彩・カンヴァス 101.3cm×83.2cm セントルイス美術館蔵
山梨会場のみの展示

こちらは山梨会場のみの展示でした。山梨県立美術館蔵の《種をまく人》とこの作品が山梨のみというのが決め手で甲府へ向かったのでした。

Jean Siméon Chardin The Good Education
参考画像
ジャン・シメオン・シャルダン 《良き教育》 1753年頃 油彩・カンヴァス 41.5×47.3cm ヒューストン美術館蔵

2012年に三菱一号館美術館で開催されたシャルダン展に出品された《よき教育》を思い起こさせました。母親が娘に聖書の暗唱をさせている場面で傍らの裁縫箱は伝統的に娘に授けられるもう一つの教育を示しています。

1820年初めにロココリバイバルが起き、ミレーも初期に流行のロココ趣味の絵画を描いています。(1章の《庭園の風景》など)

《編み物のてほどき》では、母も子供の頃に同じように教わったことを娘に受け継ぐ場面が描かれていて共通するところがあります。この作品は結構大きな作品で迫力がありました。1869年のサロン出品作です。

millet Knitting Lesson

本展出品作品ではありません
左:参考画像
《編み物の稽古》 1854年頃 油彩・カンヴァス 47.0×38.1cm ボストン美術館蔵

中央:参考画像
《編み物の稽古》 1860年頃 油彩・パネル 41.5×31.9cm クラーク美術館

右:参考画像
《編み物の稽古》 1860年頃 油彩・パネル 40.4×31.5cm ボストン美術館蔵

中央の作品は昨年、三菱一号館美術館と兵庫県立美術館で開催されたクラークコレクション展に出品された作品です。左右の2作品は国内を巡回中の「ボストン美術館 ミレー展」で見られます。

yoshino millet
宮城会場のみの展示
《バターをかき回す女》 1868-70年 油彩・カンヴァス 97.5×60.0cm 吉野石膏株式会社蔵、山形美術館寄託

この作品を見たかったのですが、 宮城展のみの展示です。版画は展示されていました。今年、損保ジャパン東郷青児美術館で開催された「ゴッホの原点 オランダ・ハーグ派展 近代自然主義絵画の成立」に出品されていたのですが、大好きな作品なのでミレー展でも是非見たかったです。 

1991年のミレー展に出品された時はアメリカのマサチューセッツ州、モルデン・パブリック・ライブラリー蔵でした。1996年に池袋にあった東武美術館で開催された「印象派はこうしてうまれた」に出品された時は吉野石膏株式会社蔵になっていて日本に入ってきて嬉しかったのを覚えています。

右奥から外光が入ってきていますが、本来室内はもっと暗いはずです。農婦の左前方から光が当たっています。左側に窓があるという設定でしょうか。すり寄る猫がかわいすぎ。

この作品の関連作は油彩3点、パステル2点、素描10点、エッチング1点と複数制作しています。

millet Woman Churning Butter

左:参考画像
《バターをかき回す女》 1848-51年頃 油彩・パネル 56.8×35.8cm ボストン美術館蔵

中央:参考画像
《バターをかき回す女の習作》 1855-56年 鉛筆・コンテ・トレーシングペーパー 20.2×14.6cm ボストン美術館蔵

右:《バターをかき回す女》 1855年 エッチング・紙 17.9×11.9cm 個人蔵

ボストン美術館蔵の油彩画は「ボストン美術館 ミレー展」に出品されます。ボストンの作品は吉野石膏株式会社蔵の作品より20年近くも早く描かれています。暗い室内でいかにも重労働という感じで顔にも影ができ陰鬱な雰囲気さえ漂っています。1855年のエッチングで猫が登場し孤独感が薄まります。

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参考画像
《バターをかき回す女》 1866年 パステル、黒鉛・紙 122.0×85.5cm ルーヴル美術館蔵(1986年 オルセー美術館へ移管)

ルーヴル美術館蔵の1866年のパステルで右奥に外が見えるようになりました。吉野石膏株式会社蔵の作品は少しずつ変わっていき追究された《バターをかき回す女》の最後の作品で1870年、生涯最後のサロン出品作です。そんな作品が日本にあるのって凄いことです。

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