美術展命の男のブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2014年 美術館の放出 & 東京国立近代美術館 セザンヌ 新収蔵

2014年に国内の美術館から放出された作品、昨年から今年にかけて収蔵された西洋絵画を中心に書きたいと思います。

まずは放出された作品から。2014年3月23日をもって休館したニューオータニ美術館のミレーのパステルがオークションに出るとミレー展の記事に書きましたが、予想を遙かに上回る結果となりました。

クリスティーズオークション、ニューヨーク  2014年10月27日 19世紀ヨーロッパ美術

newotani millet
ジャン=フランソワ・ミレー 《田園に沈む夕陽》 1868年頃 パステル・紙 50.1 x 62.2cm

1981年、ギャルリーためながより購入

予想落札価格 $400,000 - $600,000 ($1=112円換算 4480万~6720万円)
落札価格 $1,985,000 (2億2223万円) 

予想落札価格の下限から5倍近い金額で落札。パステル画にこのような金額がつくのは凄いことです。高度経済成長を経て豊かになっていった日本で、懐かしさを感じる田園風景や農民の姿を描いたミレーを愛し収集した方が沢山いたことでしょう。近年では発展著しい中国でもミレーが人気だとか。日本のミレーコレクションが市場に出てくるのをいくつか見てきましたが、それらの一部は中国に渡ったのでしょうか?フランスよりアメリカや日本の方が圧倒的に評価が高いミレーですが、最近はフランスでもミレーの評価が以前より高くなっているといいます。益々高騰してしまうかも。

ミレーだけかと思ったらニューオータニ美術館のエコール・ド・パリ コレクションも放出されていました。地味にショック。

クリスティーズオークション、ニューヨーク 2014年11月6日 印象派&近代美術 デイセール

Maurice de Vlaminck Bouquet de fleurs
モーリス・ド・ヴラマンク 《花束》 1905-06年頃 油彩、厚紙 54.2 x 44.4 cm

1991年、ギャルリーためながより購入

予想落札価格 $700,000 - $1,000,000 ($1=114円 7980万~1億1400万円)
落札価格 $725,000 (8265万円)

1905年にフォーヴィスムが誕生しているのでまさしくその時代の貴重なヴラマンク作品です。ニューオータニ美術館の所蔵品の中で一番好きな作品でした。吉野石膏コレクションにも似た時期の花の名品があります。国内にあるヴラマンクの作品の多くはこのあとの曇天のような激しく大胆なタッチの物が多いのでとても貴重な作品でした。

Kees van Dongen Femme à la blouse blanche
キース・ヴァン・ドンゲン 《白い服の婦人》 1930年 油彩、カンヴァス 65.8 x 50.3 cm

1982年、ギャルリーためながより購入

予想落札価格 $350,000 - $450,000 ($1=114円 3990万~5130万円)
落札価格 $605,000 (6897万円)

newotani laurencin
マリー・ローランサン 《遊ぶ子供たち》 1939年 油彩、カンヴァス 80.2 x 125.4cm

1982年、ギャルリーためながより購入

予想落札価格 $180,000 - $250,000 ($1=114円 1345万~2850万円)
落札価格 $197,000 (2245万円)

Kees van Dongen Portrait de Mademoiselle Erna Carise
キース・ヴァン・ドンゲン 《腰かける婦人》 1925-30年 油彩、カンヴァス 146.2 x 97.4cm

1984年、ギャルリーためながより購入

《腰かける婦人》として長らく親しまれてきましたが、《エルナ・カリーズ嬢の肖像》が正式なタイトルのようです。

予想落札価格 $600,000 - $800,000 ($1=114円 6840万~9120万円)
落札価格 $749,000 (8538万円) 

foujita Nu allongé au bras levé
藤田嗣治 《仰臥裸婦》 1924年 油彩、カンヴァス 89.2 x 146.7cm

1979年、日動画廊より購入

予想落札価格 $200,000 - $300,000 ($1=114円 2280万~3420万円)
落札価格 $245,000 (2793万円) 

suzanne valadon
シュザンヌ・ヴァラドン 《座る裸婦》 1921年 油彩・カンヴァス 92.0 × 73.0cm 

1990年、ギャルリーためながより購入

予想落札価格 $50,000 - $70,000 ($1=114円 570万~798万円)
不落札

モーリス・ユトリロの母、シュザンヌ・ヴァラドンの力強い大作の名品です。国内でヴァラドンの作品はほとんどお目にかかれません。大阪新美術館建設準備室がヴァラトンの《自画像》を所蔵しているので是非そちらに行ってほしい...。

Andre derain La Jeune Anglaise
アンドレ・ドラン 《座る少女》 1937-38年 油彩・カンヴァス 84.4 × 73.3cm 

1984年、ギャルリーためながより購入

予想落札価格 $40,000 - $60,000 ($1=114円 456万~684万円)
不落札

newotani kees van dongen
キース・ヴァン・ドンゲン 《花》 1940年頃 油彩、カンヴァス 115.0 × 146.5cm

1981年、ギャルリーためながより購入

予想落札価格 $300,000 - 400,000 ($1=114円 3420万~4560万円)
不落札 

こちらは《花》として親しまれてきましたが、《あじさいの花束》が正式なタイトルのようです。

kisling Jeune Femme Au Hamac
モイーズ・キスリング 《ハンモックの婦人》 1918年頃 油彩、カンヴァス 73.5 × 92.1cm

1983年、ギャルリーためながより購入

予想落札価格 $60,000 - $80,000 ($1=114円 684万~912万円)
不落札

多くの作品がギャルリーためながより購入されたことが分かります。1991年の開館以来、20数年国内で親しまれていた作品たちが散逸ということで寂しいですね。

Impressionist & Modern Works on Paper Sale

同じ日に行われた 印象派&近代美術 紙作品をメインにしたセールに見覚えのある作品が登場していました。

renoir Vénus Victrix
ピエール=オーギュスト・ルノワール 《勝利のヴィーナス》 1913-15年
サンギーヌ・白チョーク、パネルに貼った紙 162.5 X 104.5cm

予想落札価格 $400,000 - 600,000 ($1=114円 4560万~6840万円)
落札価格 $533,000 (6076万円) 

「ルノワール展」(1993年 東武美術館)、「印象派からエコール・ド・パリ」(2001年、静岡アートギャラリー)、「ルノワール 伝統と革新」(2010年 国立新美術館)などに出品された作品で笠間日動美術館に常設されていた作品です。笠間日動美術館はこの作品から抜けて出てきたかのような彫刻作品も所蔵しているので合わせて見ることはもうできないのですね...。

この彫刻作品に関して調べてみると面白い記事を見つけました。JR静岡駅南口駅前広場にルノワール《勝利のヴィーナス》、《洗濯する女》の彫刻が置かれているそうで認知不足が指摘されている像のPRも兼ねて、今年6月のサッカーのワールドカップに合わせて必勝祈願の看板を台座部分に設置というニュースでした。

1994円に2体は整備された同広場のシンボルとして1億2900万円で購入されたといいます。記事にはそれぞれ世界に14体しかないと書かれています。

190cm近い大きな《勝利のヴィーナス》は私が知っているだけでも国内に6体あります。

北海道立函館美術館、笠間日動美術館、そごう美術館、JR静岡駅南口駅前広場、岐阜県美術館、BBプラザ美術館

そごう美術館は以前エントランスに飾ってあったと思いますが、今はもうないかな?半数近くが日本にあるということなのでしょうか(笑)

ちなみに国立西洋美術館には梅原龍三郎が寄贈した高さ84cmの《勝利のヴィーナス》があります。

nagashima La Coiffure
ピエール=オーギュスト・ルノワール 《白いブラウスの少女》 1896年 油彩、カンヴァス 27.6 X 21.9cm
予想落札価格 $500,000 - 700,000 ($1=114円 5700万~7980万円)
不落札

こちらは鹿児島県の長島美術館にあったと思われる作品です。長島美術館には、黒田清輝、藤島武二、和田英作、東郷青児など鹿児島にゆかりのある日本人作家、新大陸先史美術品、薩摩焼など、そして印象派からエコール・ド・パリ周辺の西洋絵画など約1000点を収蔵しています。

西洋絵画はミレー、ドガ、ルノワール、セザンヌ、マルケ、ヴラマンク、クレー、ピカソ、ブラック、ユトリロ、ローランサン、モディリアーニ、藤田嗣治、シャガール、キスリング、ミロ、ジャコメッティなどと錚々たる顔ぶれです。

nagashima picasso Tête de femme2
パブロ・ピカソ 《女の顔》 1900-1901年 油彩・カンヴァス 35.5×35.0cm 長島美術館蔵

山梨県立美術館蔵のミレーの油彩 《冬(凍えたキューピット》をパステル、黒チョークで描いた習作や、ドガのパステルによる《水浴》、クリーブランド美術館やバーンズ財団蔵のルノワール 《林檎売り》のヴァリアント作品、パブロ・ピカソ 《アンジェル・フェルナンデス・デ・ソートの肖像》 1899-1900年、《女の顔》 1900-1901年と初期の名品から晩年までの画風の変遷を辿ることができる6点、マルク・シャガールの《緑のバイオリン弾き》などととても興味深いコレクションを有しています。いつか訪ねてみたい美術館です。

~~~~~~

続いて国内の美術館に新たに加わったコレクションです。

国立の美術館に加わった作品たち。平成25年度の物ですが、今年に入ってから公開の物も多かったと思うので書きます。

平成25年度の購入より

国立国際美術館にアルベルト・ジャコメッティの彫刻作品、ではなく絵画作品 《男》 1956年が特別予算で10億5619万5000円で購入されたのが衝撃でした。2012年に約8億円で購入され国立西洋美術館に収蔵されたセザンヌの《ポントワーズの橋と堰》を上回る金額です。10億を超える物も買うようになったのですね。かなり衝撃でした。
国立国際美術館の新収蔵作品数は69点、購入総額は12億1797万49円。

京都国立近代美術館は、竹内栖鳳 《おぼろ月》を4000万円、浅井忠、吉川麗華などの日本画、加守田章二の陶芸などを購入しています。特別予算では3点、マックス・エルンスト 《人間の形をしたフィギュア(像)》 1931年 油彩・カンヴァス 65.0×53.0cm 2億6565万円/フランシス・ピカビア 《アストロラーブ》 1922年頃 水彩・インク・厚紙 73.0 × 55.0 cm 《アストロラーブ》 1億8018万円/フランシス・ピカビア 《機械的構図》 6点組 1919年 インク、鉛筆、紙にマウントされたトレーシングペーパー 各26.6 × 21.0 cm を2億2680万円で購入しています。 ピカビアのダダ時代のドローイングは現存数が少なく、《機械的構図》は貴重な作例とのこと。素描でも凄い金額。
京都国立近代美術館の新収蔵作品数は23点、購入総額は8億161万4000円。

国立西洋美術館がウジェーヌ・ドラクロワの青年期の作品、《馬を連れたシリアのアラブ人》 1829年頃 油彩・カンヴァス 31.5 × 40cm を9099万3000円で購入したのも喜ばしいことです。今夏、常設展の壁に掛けてあるのを見てこんな作品所蔵してあったかな、寄託?と思ったら購入でした。新収蔵のパネルが横に付いていなかったのですがなぜ?

この作品は1922年に松方コレクションに入ったようですが1927年、川崎造船所のメインバンクだった十五銀行が金融恐慌により破産、川崎造船所の資金繰りが行き詰まり、松方は約1000点の作品を融資の担保として提供し、翌年から7回余りにわたってこれらの作品の売りたての展覧会が行われました。この作品は1930年に売却され、大阪屈指の資産家、和田久左衛門コレクションに入っています。現在、国立西洋美術館に収蔵されているジョン・エヴァレット・ミレイ 《あひるの子》、ダンテ・ガブリエル・ロセッティ 《愛の杯》も松方コレクションの売り立てから和田久左衛門コレクションなどを経て国立西洋美術館に収蔵されています。

松方コレクションのルノワールの初期の代表作 《アルジェリア風のパリの女たち(ハーレム)》は、ルーヴル美術館所蔵のドラクロワ 《アルジェの女たち》 1834年 に影響を受けて描いているのは有名です。国立西洋美術館の常設展によく出ている《聖母の教育》、《墓に運ばれるキリスト》 はオリエンタリズム(東方趣味)の作品ではありませんが、《馬を連れたシリアのアラブ人》はまさに東方趣味の作品であり、常設展でドラクロワとルノワールがより強く繋がったなと思いました。しかしもっとオリエンタリズムでドラクロワとルノワールを繋ぐ作品が既に収蔵されています。

nmwa Study for “The Death on Sardanapalus”
ウジェーヌ・ドラクロワ 《「サルダナパールの死」のための習作》  油彩、カンヴァス
81.2 x 65.2cm 国立西洋美術館蔵、松方コレクション

国立西洋美術館に通って20年経ちますが、常設展で一度も見たことがない作品です(笑)。状態が悪いのでしょうか。

国立西洋美術館は平成25年度、その他にレンブラントやピサロ、ロートレックなどの版画を購入しています。新収蔵作品数は8点、購入総額は1億1482万5276円。

最後に東京国立近代美術館は、特別予算で4点、速水御舟 《京の家・奈良の家》 3億1500万円/山下菊二 《あけぼの村物語》 1953年 1億円/アレクサンダー・カルダー 《モンスター》 1948年頃 3億1000万円/岡部嶺男の陶磁 《青織部縄文鼎》 1955年 2625万円で購入。他に奈良美智、吉川麗華など新収蔵作品数は107点、購入総額は9億581万8625円。

yamashita kikuji
山下菊二 《あけぼの村物語》 1953年 油彩・ドンゴロス 137.0×214.0cm
東京国立近代美術館蔵

アレクサンダー・カルダーのスタンディング・タイプの彫刻は、近年収蔵したジョルジュ・ブラック、ジョアン・ミロ、パウル・クレー、ニコラ・ド・スタール、ジャン・デュビュッフェなどを所蔵していた盛田良子コレクションから。

平成25年度、国立美術館4館の新収蔵作品数は207点、購入総額は30億4022万7950円!!!(笑)

平成26年度の現在も様々な作品がコレクションに加わっていると思うのですが、そんな中で鼻血が出る勢いの作品が!!

momat A Large Bouquet of Flowers
ポール・セザンヌ 《大きな花束》 1892-95年頃 油彩・カンヴァス 81 × 100cm
東京国立近代美術館蔵

うわー素敵。ニューヨーク近代美術館に収蔵されていそうな感じの名品です。今年度購入し、11月11日よりMOMATコレクションで披露されています。かなり大きないい作品です。このような作品が日本の美術館に所蔵されて驚きますが、最も驚く点は購入額ではないでしょうか。その額$17,800,000。8月に購入されたようで、($1=103円)で計算すると18億3340万円。国立西洋美術館のセザンヌ8億、国立国際美術館のジャコメッティ10億を軽く超えています!

この作品は10年前の2004年のクリスティーズオークションに日本の個人蔵から出品されました。あ~こんないい作品が日本にあったのか。残念だなとしみじみ思っていたので東京国立近代美術館に収蔵されたと知った時はひっくり返る勢いでした。

クリスティーズオークション、ロンドン 2004年2月2日のオークションでは、予想落札価格は問い合わせで公表されず落札額は、£4,485,250 (£1=191円)/$8,172,126 ($1=105円) 約8億6000万円ほど。作家の評価が急激に上がったわけではありませんから不自然な値上がりです。2004年の時点で購入できていたら...なんて思います。しかし18億って凄い額ですね(笑)。ミュージアムピースと呼べる物、印象派でも20世紀美術でも結構何でも買えますよ。

ちょっと高いかなという印象もあったので近年オークションに出た他の静物画と比べて見ました。

cezanne Pommes et gateaux
ポール・セザンヌ 《リンゴとガトー》 1873年 油彩・カンヴァス 45.7 × 55.8 cm 個人蔵

クリスティーズオークション、ニューヨーク 2005年11月1日
予想落札価格 $3,500,000 - 4,500,000 ($1=116円 4億600万~5億2200万円)
落札価格 $9,200,000 (10億6720万円) 

この作品は1873年と早い時期の作品で後の静物画と異なる印象を受けますが、堅固な構図やりんごなどの力強い描写は既に完成しているようでとっても素晴らしい作品です。予想落札価格がかなり低く設定されていましたが、予想の倍を超える金額で落札されました。初見は後の静物画と異なった印象を受けたものの見れば見るほどいい作品だなと思うようになりました。しっかり描かれた作品でこれで10億なら買いだと思います。

cezanne PICHET ET FRUITS SUR UNE TABLE
ポール・セザンヌ 《テーブルの水差しと果物》 1893-1894年 油彩・板に貼った紙
41.5 × 72.3 cm 個人蔵

サザビーズオークション、ロンドン 2010年2月3日
予想落札価格 £10,000,000 — 15,000,000 (£1=145円 14億5000万~21億7500万円)
落札価格 £11,801,250 (17億1118万1250円) 

こちらの作品の方が東京国立近代美術館の作品より安いとは...。値段の理由はこの作品が紙に描かれているということで間違いないと思います。カンヴァスに描かれていたら2倍どころかもっとするはずです。《大きな花束》も魅力的ですが、そちらより安かったらこの作品も十分に購入に値しますよね。

この作品はバブル期、サザビーズオークション、ニューヨーク 1989年5月9日のセールに出品されました。その時の予想落札価格は$8,000,000 - 10,000,000 ($1=135円 10億8000万~13億5000万円)/落札価格 $11,550,000 (15億5925円)で落札されました。バブル期なのに今とあまり価格が変わらないのが興味深いですね。紙に描かれたというのがネックになっているのでしょうか。バブル期は大阪の高橋ビルディング株式会社が所有していました。バブル崩壊後も日本にあったようですが、2010年遂に世界のどこかへ...。ちなみにこの時のオークションに同じコレクターからルノワール《読書するふたり》も出品されていました。この小さな名品は幸運なことに後に群馬県立近代美術館に収蔵されます。

renoir couple lisant
ピエール=オーギュスト・ルノワール 《読書するふたり》 1877年 油彩・カンヴァス
32.4 × 24.8 cm 群馬県立近代美術館蔵 

クリスティーズオークション、ニューヨーク 1989年5月9日
予想落札価格 $2,000,000 - 3,000,000 ($1=135円 2億7000万~4億500万円)
落札価格 $3,080,000 (4億1580万円) 

バブル期はなんでもかんでも異常な金額がついたと思っていたのですが、この辺りは正常なお買物ですね。セザンヌは紙、ルノワールは小品だから投資家から敬遠されたのでしょうか。今考えるととてもよい買い物に見えます。このルノワールは現在ならもっと高額に取引されるのではないでしょうか。

cezannne Rideau, Cruchon et Compotier
ポール・セザンヌ 《カーテン、水差し、果物鉢》 1893-1894年 油彩・カンヴァス
60 × 73.0 cm  個人蔵

この作品はサザビーズオークション、ニューヨーク 1999年5月10日のセールにホイットニー夫妻コレクションより出品されました。$60,502,500 ($1=121円) 73億2080万円!!で落札されました。その当時からオークションレコードのトップ10に入っていてこの静物画の価格を超えるセザンヌの静物画はいまだに出てきていません。最近はオークションレコードが更新されてトップ20に入るかどうかあたりにいます。今この作品がオークションに出てきたら軽く100億円を超えてしまうのではないでしょうか。

cezanne Nature morte aux fruits et pot de gingembre
ポール・セザンヌ 《果物と生姜壷のある》 1895年頃 油彩・カンヴァス
46.4 × 61.4 cm 個人蔵

上記の1999年の静物画のオークションレコードが記憶に新しかった頃の2000年、また静物画の名品が市場に出てきました。

クリスティーズオークション、ロンドン 2000年6月28日
予想落札価格 £9,000,000 - £12,000,000 ($13,527,000 - $18,036,000) (£1=159円 14億3100万~19億800万円)
落札価格 £12,103,750 ($18,191,936) (19億2449万円) 

サザビーズオークション、ニューヨーク 2006年11月7日
予想落札価格 $28,000,000 — 35,000,000 ($1=118円 33億400万~41億3000万円)
落札価格 $36,976,000 (43億6316万円) 

2000年と2006年にオークションに登場しましたが、東京国立近代美術館が収蔵した作品の価格のようなケースになっています(汗)。6年で2倍になってしまうなんて!!この作品も素晴らしいですね。2000年の時がお得すぎたのでしょうか。

cezanne PICHET ET ASSIETTE DE POIRES
ポール・セザンヌ 《水差しと洋梨のある静物》 1885-1890年 油彩・カンヴァス
38.5 × 46 cm 個人蔵

サザビーズオークション、ニューヨーク 2002年5月8日
予想落札価格 $14,000,000 — 18,000,000 ($1=128円 17億9200万~23億400万円)
落札価格 $16,784,500 (21億4841万6000円) 

こちらは1995-96年にセゾン美術館で開催された「印象派・後期印象派展」に出品された物でそれ以来私を魅了し続けている作品です。セザンヌは背景やテーブルも含め全体を描くイメージがありますが、こちらの作品は対象にぐっと迫って比較的小品ながらも迫力のあるセザンヌの魅力がこれでもかと詰まった名品になっています。73億円の作品と比較しても何の遜色もありません。今回の新収蔵品より高いですが、できることならこれも欲しい。

cezanne Compotier and Plate of Biscuits
ポール・セザンヌ 《果物入れとビスケットの皿》 1877年頃 油彩・カンヴァス 54.3 × 64 cm 個人蔵

クリスティーズオークション、ニューヨーク 2007年11月6日
予想落札価格 $10,000,000 — 15,000,000 ($1=114円 11億4000万~17億1000万円)
落札価格 $12,641,000 (14億4107万4000円)

18億円の《大きな花束》ももちろん素敵なのですが、 こ、これは。こっちの方が安いし..やらかした?
この作品は2007年のオークションまで日本の個人蔵にあった物です。この作品もいいなぁ。よく描きこまれた作品なのにもっと高額な作品との違いは何なのでしょうか。早い時期の静物画はまだ正面性が保たれています。後に描かれるいろいろな角度からの視点で見たかのような静物画はキュビスムなど20世紀美術に道を広げる点からより評価が高いのでしょうか。今回、東京国立近代美術館に収蔵された作品は花瓶と花は正面から、テーブルは斜め上から見たかのような視点です。絵の具の置き方、塗り残しの絶妙な加減が具象でもあり抽象でもあるようで様々な点でこの作品が必要に値すると判断して購入したのでしょう。高めの買い物でしたが、セザンヌの影響を受ける西洋画家、日本画家のコレクションを有している東京国立近代美術館に相応しい新コレクションなのではないでしょうか。

cezanne LES POMMES
ポール・セザンヌ 《りんご》 1889-90年 油彩・カンヴァス 38.5 × 46 cm 個人蔵

サザビーズオークション、ニューヨーク 2013年5月7日
予想落札価格 $25,000,000 — 35,000,000 ($1=99円 24億7500万~34億6500万円)
落札価格 $41,605,000 (41億1889万円) 

下の 《静物、りんごと洋梨》と一見似たような絵なのに価格が4倍も違うなんて!《りんご》の方が厚塗りで構図の面白さもありますがこうも価格が変わるのですね。

cezanne NATURE MORTE POMMES ET POIRES
ポール・セザンヌ 《静物、りんごと洋梨》 1888-90年 油彩・カンヴァス 38.2 × 46.4 cm
個人蔵

サザビーズオークション、ニューヨーク 2003年11月5日
予想落札価格 $8,000,000 — 12,000,000 ($1=109円 8億7200万~13億800万円)
落札価格 $8,744,000 (9億5309万円) 

こちらも十分素敵ですよ。

cezanne VERRE ET POIRES
ポール・セザンヌ 《グラスと洋梨》 1879-80年 油彩・カンヴァス 19 × 38.7 cm 個人蔵

サザビーズオークション、ロンドン 2008年6月25日
予想落札価格 £2,500,000 — 3,500,000 (£1=212円 5億3000万~7億4200万円)
落札価格 £4,073,250 (8億6352万円) 

画面中央、りんごのヘタかおしりが真正面を向いているのにグラスは上から覗き込むようなアングルでセザンヌらしいです。こちらは国立美術館が買うにはちょっとパンチが足りないかな。

cezanne FLEURS DANS UN VASE ROUGE
ポール・セザンヌ 《赤い花瓶の花》 1888-90年 油彩・カンヴァス 38.2 × 46.4 cm 個人蔵

サザビーズオークション、ニューヨーク 2012年11月8日
予想落札価格 $3,500,000 — 5,500,000 ($1=79円 2億7650万~4億3450万円)
落札価格 $3,218,500 (2億5426万円) 

最後に今回の新収蔵作品と同じ題材である花を描いた静物画2点。花を単体で描いたものはあまりオークションで見かけません。それだけ珍しい部類に入るのではないでしょうか。

cezanne Les deux vases de fleurs
ポール・セザンヌ 《2つの花瓶の花》 1877年頃 油彩・カンヴァス 56 x 46.3 cm 個人蔵

クリスティーズオークション、ニューヨーク 2000年11月8日
予想落札価格 $2,500,000 - $3,500,000  ($1=107円 2億6750万~3億7450万円)
落札価格 $3,086,000 (3億3020万円)

こちらの花2点はセザンヌの絵とすぐわかりますが、正面性を保っており、《大きな花束》のような革新性はないのでセザンヌにしてはお手頃な価格帯なのでしょうか。

あなたはどのセザンヌが欲しかったですか?

《大きな花束》の実物を見ての感想。画像もいいですが、実物もとても素晴らしかったです。花瓶から四方に茎を伸ばす花が九頭竜のようにグオ~とうごめいているようで画面の中心から渦を巻いているかのような迫力のある画面でした。81 × 100cmというサイズは、Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の「夢見るフランス絵画」に出品されている白眉、セザンヌ《大きな松と赤い大地(ベルビュ)》 80 × 100cmとほぼ同じです。この作品を見たことがある方なら大画面であることがわかると思います。

画面の隅が塗り残されていることから実物を見る前は全体的に薄塗りなのかと思っていました。確かにテーブルクロスや画面の外に行くほど薄塗りではありますが、画面中心部、花の描写は何度も筆を置き、細かく丁寧に描かれていてささっと描いた物ではないことが分かりました。執念すら感じる描写でした。

確かに高いが、とてもよいコレクションを迎えることができたと思います。最近まではとても手が出せなかった範囲の作品の取得は今後もあるのでしょうか。特別予算に期待です。2020年の東京オリンピックに世界中の人が日本に来るので美術館にも足を運ぶのではないでしょうか。こんな名品が日本にあるのかと驚かせてみたいものです。どんどん買って(笑)
関連記事
スポンサーサイト

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

 

トラックバック

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。