美術展命の男のブログ

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ピカソと20世紀美術 東京ステーションギャラリー

picasso and the 20th century art

東京ステーションギャラリーで開催中の「ピカソと20世紀美術 |北陸新幹線開業記念|富山県立近代美術館コレクションから」を見てきました。

富山県立近代美術館には、2004年に1度だけ行ったことがあります。素晴らしい20世紀美術コレクションを再び見たいと長いこと思っていましたので東京へやってきてくれると知った時はとても嬉しかったです。

9点のピカソが公開されるという情報を耳にしたとき、そんなにピカソを所蔵していたっけ?と不思議に思いました。ピカソの絵画はパステル1点、油彩3点だったはずだからあとは版画かなと思ったら東京ステーションギャラリー所蔵のピカソ4点も加えての展示とのこと。え~!東京ステーションギャラリーには1994年から通っていますが、ピカソを所蔵しているなんて初耳でした。いったいどんな作品をお持ちで!?とそちらを見るのも楽しみな展覧会でした。

展覧会の構成は以下のようになっていました。

1 ピカソが開いた20世紀の扉
2 ダダとシュルレアリスム
3 戦後の展開:ヨーロッパとアメリカ
4 拡張する表現と多様化の波

エレベーターで3階へ上がると展示の始まりです。

1 ピカソが開いた20世紀の扉

ピカソの最初の展示作品は、ピカソがパリへ来る前のバルセロナ時代に描いた《座る若い男》 1899年 木炭、水彩・紙 49.0 × 26.0cm 東京ステーションギャラリー蔵 です。バルセロナの居酒屋「エルス・クアトレ・ガッツ(四匹の猫)」に通い、ここに集まるカタルーニャの前衛的な芸術家や知識人を数多くスケッチしたうちの1点。いきなりこんな作品が展示されていてオーと驚きました。

tokyo station gallery picasso guitare
パブロ・ピカソ 《ギターのある静物》 1912年 油彩・カンヴァス 64.5 × 50.0cm
東京ステーションギャラリー蔵

キュビスムにはいくつかの段階があり、初期の段階では、立体を個々の面に解体していく作業が中心になります。1909-11年頃までの作品は分析的キュビスム作品と呼ばれます。国内にはピカソのこの時期の作品は、《裸婦》 1909年 ポーラ美術館蔵、《女の半身像(フェルナンド)》  1909年 ひろしま美術館蔵などがありますが、色彩をあまり使わず、モノトーンで対象の形の分析に集中した時期の作品を表すものとしては、共にキュビスムを推し進めたジョルジュ・ブラックの作品 《静物》 1910-11年 国立西洋美術館や《女のトルソ》 1910-11年 東京国立近代美術館蔵 の方が好例かもしれません。

nmwa georges braque
参考画像
ジョルジュ・ブラック 《静物》 1910-11年 油彩・カンヴァス 33.3 × 24.1cm
国立西洋美術館蔵

分析的キュビスムは、つきつめていくと完全な抽象絵画へとなってしまい、現実の事物との関わりが失われかねないということで画面に文字を書いたり、新聞や壁紙を張り付けたりするパピエ・コレという技法で補おうとしました。色彩も豊かになり、はっきりと描く対象を明示するようになります。また四角形のカンヴァスだけでなく変形型のシェイプト・キャンヴァス、楕円の物も描かれます。

東京ステーションギャラリー蔵の《ギターのある静物》は、分析的キュビスムのあとの総合的キュビスム作品です。楕円形になっています。実際の作品はピンクや緑の色がもっと鮮やかに明るいです。タイトルを見ないと一瞬、何が描いてあるのかちょっとわからないですね。

picasso homme au chapeau 1915
パブロ・ピカソ 《帽子の男》 1915年 油彩・カンヴァス 63.0 × 51.0cm
東京ステーションギャラリー蔵

こんな作品も所蔵していたのですね。こちらも総合的キュビスム作品です。何だか可愛らしいです。富山県立近代美術館の版画《帽子を被った男》 1914年と見比べるのも面白いです。

toyama picasso femme dans un fauteuil
パブロ・ピカソ 《肘かけ椅子の女》 1923年 油彩・カンヴァス 81.5 × 65.0cm

新古典主義の時代の傑作《腕を組んですわるサルタンバンク》が近くのブリヂストン美術館にありますが、こちらも負けず劣らず素晴らしい作品です。ほぼ灰色に光が当たる部分に白、そして黒の線描とシンプルすぎる絵ですが、とても魅力的で天才の力量を見せつけられる作品です。新古典主義のスタイルは、第一次大戦後の荒廃した世相の中で秩序への回帰を求める社会、文化の傾向と合致したものだったと解説にあり、アンドレ・ドランの古典的な《褐色の座裸婦》が隣りに掛けられており興味深い競演でした。

georges roulault passion
ジョルジュ・ルオー 《パシオン》 1943年 油彩・カンヴァス 104.0 × 73.5cm

八角形の形をした小部屋の展示室には、ルオーの《パシオン》を中心に、その左右に版画《ミセレーレ》が4点ずつ掛けられています。 《パシオン》は、キリストが法廷に引き立てられた情景を描いた物です。縦長の大きな画面がステンドグラスの窓のように思わせるもので非常に美しい作品でした。キリストの水色の服から光が透過しているように見え、ルオーがステンドグラス職人であったことを強く思い起こされ、この部屋がまるでルオーの小さな礼拝堂のようでとても素敵な空間でした。

george roulault portrait

ルオーの肖像写真の背後に写っているのは《パシオン》でしょうか。

tokyo station gallery picasso femme assis sur fond janne
パブロ・ピカソ 《黄色い背景の女》 1937年 油彩・カンヴァス 130.0 × 97.0cm
東京ステーションギャラリー蔵

この作品をチラシで見た時、東京ステーションギャラリーはこんな作品を所蔵しているの!?と目を丸くしました。昔、モネやルノワール、ピカソなど企業の所蔵するフランス近代絵画の名品を展示する展覧会のチラシにピカソの素晴らしい人物画がデカデカと掲載されていたのですが、モネやルノワールの油彩に混じってそのピカソだけがリトグラフ作品で非常にがっかりしたのを思い出してこんな凄い油彩持ってるわけないし、きっとリトグラフだと思って会場で作品を見てびっくり!!しかもサイズがでかい!

この作品の魅力は何と言っても目の覚めるような背景の黄色です。衣装の青や赤もお互いに引き立てています。ピカソらしいというとキュビスムだったり、ゲルニカっぽい絵、最晩年の物だったりといくつもイメージがありますが、顔が2つに割れた丸みのある不思議なフォルムのこの人物も誰が見てもピカソと答えられるようなピカソらしい名品だと思います。じーと見てると二人羽織をしているようにも見えてくる(笑)。作品の質、そしてサイズ、国内にあるピカソ作品で5本の指に入る名品ではないでしょうか。

この作品は、1983年に東京国立近代美術館、京都国立近代美術館で開催された「ピカソ展」にピカソの孫娘マリーナ・ピカソコレクションから出品されています。

東京ステーションギャラリー所蔵の4点のピカソは、1988年に東京ステーションギャラリーで開催された「キュビズムのピカソ展」に出品された物です。《ギターのある静物》、《帽子の男》などもマリーナ・ピカソコレクションでした。《ギターのある静物》をどこかで見たことがあるなと思ったら展覧会のカタログの表紙を飾っていたり、ポスターにも採用されており、美術館のホームページのアーカイブで目にしていた物だったのでそれらを収蔵していたとは驚きの連続でした。

toyama picasso femme assise
パブロ・ピカソ 《座る女》 1960年 油彩・カンヴァス 100.0 × 80.5cm

戦争の時代の荒廃した心を表したかのようなほぼ灰色一色で描かれた1941年の《静物》 、そして展示されているピカソとしては最も晩年に近い1960年の《座る女》と、パリへ立つ前の作品からキュビスム、新古典主義、それ以降も作風を変えていくピカソの変遷を辿ることができます。ピカソ作品9点の内訳は富山県立近代美術館の油彩3点、版画2点、東京ステーションギャラリーの油彩3点、木炭1点の計9点です。

ちょっとショックだったのが、当然来ていると思っていたピカソの《闘牛場の入口》が来ていなかったこと。こちらは富山県立近代美術館で開催中の「世界・日本の20世紀美術」-旅する100年- 3月14日(土)~5月10日(日)の方で展示されているとのこと。実は富山県立近代美術館でも全館コレクション展が開催中で是非とも東京ステーションギャラリーの展示と併せて見てくださいという趣旨のようです。名品が沢山東京へやってきていますが、実はまだまだ富山から来ていない名品があるのです。富山へ来なさいということですね。

picasso 1900
参考画像
左:パブロ・ピカソ 《闘牛場の入口》 1900年 パステル・厚紙 51.0 × 69.0cm
富山県立近代美術館蔵

中央:パブロ・ピカソ 《酒場の前の男女》 1900年 パステル・紙 40.0 × 50.0cm
川村記念美術館蔵

右: パブロ・ピカソ 《ロマの女》 1900年 パステル、水彩・紙 44.5 × 59.0cm
三重県立美術館蔵

《闘牛場の入口》が描かれた年のパステルによる作品が国内にいくつかあります。1900年に初めてパリへ行くピカソですが、これらはバルセロナ時代に描かれた物でしょうか。発色のよいパステルのどぎついほどのカラフルな画面に目を奪われます。

この章には他に、マルク・シャガール、ジャック・ヴィヨンの油彩画、ワシリー・カンディンスキー、エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー、ジョルジュ・ブラック、アンリ・マティス、フェルナン・レジェの版画、パウル・クレーの鉛筆画、レイモン・デュシャン=ヴィヨン、ケーテ・コルヴィッツ、フェルナン・レジェの彫刻などが展示されていました。

2 ダダとシュルレアリスム

2-1 ダダ

この章は、マン・レイのメトロノームに目の写真が付けられた《不滅のオブジェ》や写真作品、メレット・オッペンハイムのグラスや毛皮を使った作品《りす》、マルセル・デュシャンの《トランクの箱》、ジョセフ・コーネルなどが展示されていました。1章に展示されていたジャック・ヴィヨン(1875-1963)、レイモン・デュシャン=ヴィヨン(1876-1918)と、この章のマルセル・デュシャン(1887-1968)の3兄弟をコレクションしている美術館他にありますでしょうか。感心です。

2階へ降ります。

2-2 シュルレアリスム

delvaux night train
ポール・デルヴォー 《夜の汽車》 1947年 油彩・木版 153.0 × 210.0cm

出たー。この作品も東京へ来てくれたのですね。 国内に素晴らしいデルヴォーはいくつもありますが、こちらの作品は世界的名品なのではないでしょうか。過去に発行されたデルヴォーの画集の表紙に画面右側がトリミングされ採用されています。

デルヴォー作品は、屋外の情景が多いイメージがありますが、豪華に設えた室内の情景も素晴らしいですね。右側に立つ裸婦の奥にストーブ、植物を飾る台座と並んでいますが、鏡の中には裸婦、植物の台座、ストーブという順番に映りこんでいることに今回初めて気がつきました。また鏡の右側の空間あたりに、立つ裸婦を右向きにし、2倍くらいのサイズにした女性の上半身が塗りつぶされた形跡があり興味深い発見ができました。

EDITIONS CERCLE DART delvaux
EDITIONS CERCLE D'ART 1991年刊行 デルヴォー画集

toyama miro
ジョアン・ミロ 《パイプを吸う男》 1925年 油彩・カンヴァス 64.0 × 50.0cm

この作品は、カタログの解説によると富山県立近代美術館の「20世紀美術の流れ」というコンセプトの第1号というべき購入作品です。 1981年7月に置県100年記念事業として開館する富山県立近代美術館ですが、1976年の時点では美術館のコンセプトが決まっていませんでした。富山県出身の美術評論家の瀧口修造(1903-1979)を県関係者が訪ね、相談したことが後の美術館のコンセプトへ向かわせるきっかけになったようです。その端的な表れが、1978年にミロの《パイプを吸う男》を2億円で購入したことです。

1940年、ミロに注目し世界の誰よりも先に1冊の本にまとめたのが、瀧口修造でありました。ミロはこのことに大変驚いたといいます。そして交流が始まり、瀧口修造・詩、ミロ・画の合作《手づくり諺》、《ミロの星とともに》が生まれます。瀧口修造に意見を求める機会がなかったら富山県立近代美術館は当時、公立美術館の多くが目指した印象派周辺以降のフランス近代絵画を目玉にする美術館として開館していたかもしれませんね。

この章には他に、マックス・エルンスト、イヴ・タンギーの油彩、ジャン・アルプの彫刻が展示されていました。ルネ・マグリット《真実の井戸》、サルバドール・ダリ《アメリカのクリスマスのアレゴリー》は富山で展示中で東京へは来ませんでした。残念。

3 戦後の展開:ヨーロッパとアメリカ

3-1 戦後の展開:ヨーロッパ

toyama Jean Dubuffet
ジャン・デュビュッフェ 《よく眠る女》 1950年 油彩・カンヴァス 92.0 × 130.0cm

先史時代の洞窟の壁画のようにも見える画面で、展示室の剥き出しの赤レンガの壁によく合います。他の作品たちもそうですが、所蔵先での展示と全く違った印象を受ける物も少なくないのではないでしょうか。赤レンガの壁に並ぶ20世紀美術の巨匠たちの作品の眺めはとても素晴らしいものでした。

こちらの《よく眠る女》は、1950年4月から51年の2月にかけての連作〈ご婦人のからだ〉シリーズの1点で、36点の油彩画、14点のグアッシュや水彩、56点の黒のデッサン、リトグラフ6点が確認されています。

nmwa Jean Dubuffet
参考画像
ジャン・デュビュッフェ 《ご婦人のからだ(「ぼさぼさ髪」)》 1950年 油彩・カンヴァス
116.0 × 90.0cm 国立西洋美術館蔵  山村家より寄贈

一堂に並べたら壮観でしょうね。

toyama bacon
フランシス・ベーコン 《横たわる人物》 1977年 油彩・カンヴァス 198.0 × 147.5cm

男性モデルは批評家、ミシェル・レリスであるとされる。半人半獣で表現されたモデルの身体から、文学は闘牛である、と記したテキストを残した批評家レリスの精神を読み取るこができよう。解説より

解説を読んでもこの世界感を理解するのは難しいのですが、ビビッドな色使い、不可思議な人体表現と大きな画面が作品の前から動けなくさせてくれます。人体と牛の左側にある白いもやもやしたところにバラバラになった文字が沢山書かれているのですが、これはやはり批評家ということを示すものなのでしょうか。

ベーコンは、ピカソの新古典主義的な素描作品に感銘を受け、素描や水彩を描き始めました。ピカソの新古典主義時代の《肘かけ椅子の女》を所蔵している富山県立近代美術館、凄すぎる。富山県立近代美術館は1981年に開館しますが、ベーコンの作品は1977年に制作されてから2年後の1979年12月に取得しています。ピカソの《肘かけ椅子の女》は1981年1月取得なのでベーコンの方が先なのですね。

国内には富山県立近代美術館、東京国立近代美術館、横浜美術館、豊田市美術館、池田20世紀美術館と5点のベーコンの油彩があるようです。

東京国立近代美術館は、昭和59年度(1984年)の取得。横浜美術館の開館年は1989年、豊田市美術館の開館年は1995年。これより数年前に取得しているかもしれませんが、富山に比べるとずっと後です。それから唯一、私立美術館である池田20世紀美術館は、いつベーコンを取得したのか分かりませんが開館は1975年です。富山県立近代美術館は日本の公立美術館として初めてベーコンを収蔵した美術館であるのは間違いないようですね。凄い決断だったと思います。

ちなみにこのベーコンは4950万円で購入しましたが、現在の価値は30億円はするとのことです。あくまで推定評価額であってオークションに出たらもっと高騰するかもしれませんね。

この章には他に、ピエール・スーラージュ、ベン・ニコルソン、ルーチョ・フォンタナ、ハンス・ハルトゥング、アントニ・タピエスの油彩、ナウム・ガボ、アルベルト・ジャコメッティ、バーバラ・ヘップワースの彫刻などが展示されています。

3-2 戦後の展開:アメリカ

toyama jasper johns
ジャスパー・ジョーンズ 《消失Ⅱ》 1961年 油彩、エンコースティック、コラージュ・カンヴァス 101.6 × 101.6cm

ジャスパー・ジョーンズも国内で見られる機会が少ない作家です。星条旗やターゲット(的)とは全く印象が異なる作品です。

この作品は、カンヴァス2枚を重ね、一方を折り紙のように折り、さらに上から絵具を重ねることによって、本来そこにあったものが埋もれ、あるいは隠され、視界から「消失」している。こうしたジョーンズの試みは、やがてコンセプチュアル・アートやミニマル・アートの発生を促していった。解説より

この章には他に、サム・フランシス、ルイーズ・ネヴェルソン、ロバート・ラウシェンバーグ、アンディ・ウォーホル、ジム・ダインなどが展示されています。

戦後のアメリカ美術のコレクションも豊富で、今回東京に来ていない作品にも名品がいくつもあります。アレクサンダー・カルダーの動く彫刻 《小さな銀河》 1973年、ジャクソン・ポロックのドリッピング絵画 《無題》 1946年、石膏の人物像とセットによる作品 ジョージ・シーガル 《戸口によりかかる娘》 1971年、モーリス・ルイス 《DALET SHIN》 1958年 218.0 × 368.0cm、もう1点あるサム・フランシス 《無題》 1983-86 243.8 × 852.2cm、トム・ウェッセルマン 《スモーカー♯26》 1978年 234.8 × 406.4cm、フランク・ステラなどは富山でお留守番。

4 拡張する表現と多様化の波

20世紀に興った主義や美術運動などは50を超えるといい、1960年半ば以降に増えました。この章も前章のように怒涛のごとく様々な表現が展示されています。

toyama gerhard richter orangerie
ゲルハルト・リヒター 《オランジュリー》 1982年 油彩・カンヴァス 260.0 × 400.0cm

巨大な作品の多くは富山に残っていますが、こちらはやってまいりました。ゲルハルト・リヒターというと、1960年代前半からの、ぶれた写真のような絵をまず思い浮かべますが、こちらは抽象絵画です。様々な展開を経て1976年に鮮やかで動きに満ちた抽象絵画を発表します。1982年の国際美術展ドクメンタ7で展示された「抽象絵画」シリーズの大作5点のうちの1点で、タイトルはメイン会場の1つであるオランジュリー宮殿から取られました。

この章には他に、アルマン、チャック・クロース、クリスト&ジャンヌ=クロード、マックス・ノイマン、マリソール、アンソニー・カロ、ミニマル・アートのドナルド・ジャッド、コンセプチュアル・アートのジョセフ・コスースが並びます。

20世紀美術は、1世紀でいったい何世紀分進化したのだろうかと驚かされる素晴らしいコレクションでした。これらがコレクションのごく一部ということにも驚きです。日本の現代美術も岡本太郎、吉原直良、山口長男、荒川修作、高松次郎、船越桂、日本画は、杉山寧、高山辰雄など幅広くあり、ポスターと椅子のコレクションも豊富なコレクションを持ちます。是非、現地にまた行ってみたいと思いました。

富山県立近代美術館はいろいろと凄いのですが、ピカソの絵画を複数持っていることが、とにかく凄いのです。私立美術館を除き、ピカソの絵画を4点(油彩3点、パステル1点)も所蔵している公立美術館は他にありません。

国立西洋美術館 油彩3点
国立国際美術館 油彩2点とパステル1点
京都国立近代美術館 油彩1点

群馬県立近代美術館 油彩1点
埼玉県立近代美術館 油彩1点
愛知県美術館 油彩1点
三重県立美術館 パステル1点
徳島県立近代美術館 油彩2点
長崎県美術館 油彩1点
新潟市美術館 油彩1点
横浜美術館 油彩1点
鹿児島市立美術館 油彩1点

(水彩、版画は除く)

公立美術館の多くは日本の近現代美術は幅広く揃えられているのは当然ですが、世界の近現代美術を揃えるのは至難の業で作品が極端に少なかったり、特定の分野に偏らざるを得なく、20世紀美術の大きな流れを辿るのには無理があります。税金で運営されているわけですからそれが当然です。近現代を収集対象とする公立美術館は20世紀美術の象徴であるピカソの絵画をできることなら揃えたい所でしょうけど、寄贈でもなければもはや不可という状態になっています。

20世紀作品の取得価格の総額は約58億7000万円だそうで、現在の時価評価では約270億円を超えるようです。あくまで評価額であってピカソやデルヴォー、ベーコンが実際にオークションに出たら凄いことになりそうです。収集時でも公立美術館の買い物としては高かったかと思いますが、よくこれだけ集められたなとただただ驚くばかりです。フランス近代絵画に収集対象が向かいがちだった公立美術館が多かったから、ライバルが少なかったという幸運もあったかもしれません。今後、他の公立美術館が富山県立近代美術館の20世紀美術コレクションに追いつくことは絶対に無理なことで、益々重要なコレクションになってくるのではないでしょうか。

主な作品の購入年

1978年    ジョアン・ミロ 《パイプを吸う男》 1925年
1978年12月 パブロ・ピカソ 《闘牛場の入口》 1900年
1979年12月 フランシス・ベーコン 《横たわる人物》 1977年
1980年1月 ジャスパー・ジョーンズ 《消失Ⅱ》 1961年
1980年3月 マルク・シャガール 《山羊を抱く男》 1924-25年頃
1980年10月 アンディ・ウォーホル 《マリリン》 1967年
1980年11月 ジョルジュ・ルオー 《パシオン》 1943年
1981年1月 ジャクソン・ポロック 《無題》 1946年
1981年3月 ジャン・デュビュッフェ 《よく眠る女》 1950年
1981年3月 ポール・デルヴォー 《夜の汽車》 1947年

富山県立近代美術館は富山駅に近い場所への移転計画が進んでいます。どんな美術館に生まれ変わるのでしょうか。とても楽しみです。

――――

富山県立近代美術館では、「北陸新幹線開業記念 時代の共鳴者 辻井喬・瀧口修造と20世紀美術 ーセゾン現代美術館コレクションからー」 12月1日(火)~2016年1月17日(日) を開催します。

sezon kandinsky
ワシリ―・カンディンスキー 《柔らかな中に動く》 1927年 油彩・カンヴァス 100.0 × 50.0cm
セゾン現代美術館蔵 (この作品が展示されるかはわかりません)

紹介文より

軽井沢にあるセゾン現代美術館は、現代美術の傑出したコレクションで知られています。その成り立ちには、詩人である辻井喬(堤清二のペンネーム)の存在を欠かすことができません。当館は富山県出身の詩人・批評家である瀧口修造の美術への眼差しを受け継いで、作品の収集を行い、それはセゾン現代美術館のコレクションと重なり合っています。辻井と瀧口、二人はともに同時代美術の擁護者として作家たちを支援し、その紹介に努めました。本展では、同時代の表現に共鳴した二人の詩人が、いかに20世紀美術を捉えたのかを、セゾン現代美術館のコレクションを中心に紹介します。

2000年にも「セゾン現代美術館コレクション展 20世紀-時代の証言」を開催したので、富山で2度目のセゾン現代美術館のコレクションを見られる機会となります。両館ともジャスパー・ジョーンズ、ジャクソン・ポロックの絵画を所有していたり、ジョージ・シーガルの石膏の人物像があったりと共通する面を持つコレクションですが、富山県立近代美術館にはピカソ、ベーコンはあるけどセゾン現代美術館にはなかったり、その逆にセゾン現代美術館にはマーク・ロスコ、 アンゼルム・キーファーはあるけど富山にはないといった具合に合わせて見たら凄く面白そうなコレクションです。どんな作品が軽井沢から富山へ行くのでしょうか。私も行きたい!

―――

2011年の7月から10月にかけて富山県立近代美術館と新潟市美術館の所蔵品を核にした「20世紀美術 冒険と創造の時代 -ピカソ ミロ そしてウォーホルが駆け抜けた時代を見る-」という展覧会があり、富山、新潟と各館を巡回しました。新潟展の会期終了1週間後に新潟に行く用があり、見られなかったのが悔しくて悔しくていましたが、なんと今、目黒区美術館に新潟市美術館のコレクションが来ているではありませんか!

niigata picasso klee 2015

「新潟市美術館の名品たち -ピカソとクレーもやってきた」 4月11日(土)~6月7日(日)

新潟市美術館が誇るボナールやルドン、ピカソ、クレー、エルンストなどの西洋絵画、山口長男、草間彌生、それから新潟の画家たちの作品を目黒区美術館のコレクションと合わせて紹介する面白そうな展覧会です。富山、新潟と北陸の誇るコレクションを同時期に東京で見られる貴重な機会です。

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