美術展命の男のブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ワシントン・ナショナル・ギャラリー展 三菱一号館美術館

intimate impressionism

三菱一号館美術館で開催中のワシントン・ナショナル・ギャラリー展を見てきました。
2月7日(土)~5月24日(日)と3か月を軽く超える会期の長い展覧会でしたが、間もなく閉幕を迎えます。

日本でのワシントン・ナショナル・ギャラリー展はこれで3度目となります。

1度目は1999年、東京都美術館、京都市美術館で開催。日本初のワシントン・ナショナル・ギャラリー展で、印象派・ポスト印象派を中心にルドン、ボナール、ヴュイヤール、ピカソ、ドランまでと19世紀後半から20世紀の初頭までに焦点を当てた展覧会でした。さらにフェルメール《手紙を書く女》、ティツィアーノ、エル・グレコなどのオールド・マスターズ8点が特別展示されました。油彩全85点。この時はまだフェルメールブームの前で《手紙を書く女》は、特別なコーナーを設けることなく他の作品たちと普通に並んでいました。チラシにはモネの絵が大きく使われ、フェルメールは小さくおまけみたく掲載されていました。現在ではまずありえない構成かと思います。フェルメールを借りられるならきっとそちらを主役にして他の展覧会を企画するでしょう。

2度目は2011年、国立新美術館、京都市美術館で開催。記憶にまだ新しい展覧会です。2度目の展覧会は、印象派・ポスト印象派に焦点を当てた物でした。ワシントン・ナショナル・ギャラリー本館である西館を改修中により実現したものです。東京での展示の前にヒューストン美術館で公開された物に日本では素描、水彩、版画を27点をプラスした全83点が展示されました。ワシントン・ナショナル・ギャラリーは、最重要作品を「常設コレクション作品」に指定しており、12点以上館を離れてはならない不文律があります。この時は9点もが貸出されたことは驚きでした。エドゥアール・マネ 《鉄道》、ピエール=オーギュスト・ルノワール《踊り子》、ポール・セザンヌ 《赤いチョッキの少年》、フィンセント・ファン・ゴッホ《自画像》など傑作中の傑作がいくつも並び、1度目をはるかに超える質といっていいもので今回を含む3度中、最も質が高い物でした。

そして今回は、印象派・ポスト印象派をメインにしている点は過去の2度の展覧会と同じですが、趣が異なったものとなっています。ワシントン・ナショナル・ギャラリーの創設者アンドリュー・W・メロンの娘、エイルサ・メロンのコレクションを中心に構成されたもので、本展の特徴は、身近に置くために集められ、画家にとって身近なモチーフが描かれ、家族、友人、モデルなど近い関係性から、「親密さ(intimate)」を感じられる展覧会です。

この展覧会は、2013年から世界巡回をしており、カピトリーニ美術館(ローマ)、リージョン・オブ・オナー美術館(サンフランシスコ)、マックネイ美術館(サンアントニオ)、そして三菱一号館美術館、その後、シアトル美術館で開催されます。ローマと東京以外はアメリカ国内の巡回です。よくぞ日本に来てくれました!

日本初公開38点を含む68点。コンパクトで日本初公開作品の方が多い展示です。

1 戸外での制作
2 友人とモデル
3 芸術家の肖像
4 静物画
5 ボナールとヴュイヤール

の5章で構成。5章を除き、風景、人物、静物といった具合に分かりやすい展示です。

1. 戸外での制作

本展は、エイルサ・メロンのコレクションを中心にしていますが、弟のポール・メロンとその妻のコレクションや他コレクターの作品も並びます。姉弟が収集したウジェーヌ・ブーダンが8点も展示されています。ワシントン・ナショナル・ギャラリーは油彩だけでも24点を収蔵しており、アメリカ1のブーダン・コレクションを誇ります。

boudin Washerwoman near Trouville
ウジェーヌ・ブーダン 《トゥルーヴィル近郊の洗濯女》 1872年頃/1876年
油彩・板 27.6 x 41.3cm ポール・メロン夫妻コレクション

モネに屋外で絵を描くことを教えたことで有名なウジェーヌ・ブーダン。コローから「空の王者」と賞賛されたことに納得の空の描写です。マグリットの雲も好きですが、ブーダンのこの雲の描写、お見事としか言えません。

manet at thhe races
エドゥアール・マネ 《競馬のレース》 1875年頃 油彩・板 12.6 x 21.9cm
ワイドナー・コレクション

初めて知る作品がいくつもあり、この作品もそうでした。1905年にロンドンで展示されたのを最後に、1942年にナショナル・ギャラリーに寄贈されてから初めて館外へ出るということで納得です。馬や騎手たちの躍動感ある様々な動きが本当に手前に向かって疾走して来ているようでとても小さな作品なのに迫力のある絵でした。鮮やかな素早い筆致に群衆も点で表現され、印象派ではないマネですが、立派な印象派のマネ作品だと思いました。

2. 友人とモデル

renoir Woman with a Cat
ピエール=オーギュスト・ルノワール 《猫を抱く女性》 1875年頃
油彩・カンヴァス 56 x 46.4cm ベンジャミン・E・レヴィ夫妻寄贈

1999年のワシントン・ナショナル・ギャラリー展の際に、展示を強く希望していた作品でした。遂に初来日。3度目の正直で16年目でようやく出合うことができました。モデルはルノワールのお気に入りで10点以上の作品に登場するニニ・ロペス。1874年の第1回印象派展に出品した《桟敷席》 コートールド・ギャラリー蔵のモデルも務めています。

間近で見ると絵の具のかすれ具合が結構凄くて女性の顔がごつごつしています。猫の顔にも沢山のタッチで色んな色の絵の具が置かれています。作品から2mほど離れて見ると女性の顔のごつごつしていた絵の具やかすれ具合が溶け込み美しい透明感のある肌となり、猫に置かれた沢山のタッチがもふもふした感じになって生き生きとした画面になっていました。猫の表情がいいですね。この展覧会には人物が描かれた作品がいくつも登場しますが、人へのまなざしがとても現代的で昔の人を見るといった感覚がなく、まるで現代の人々を見ているかのような錯覚を覚えました。

ukiyoe cat
参考画像
左:歌川国芳 《山海愛度図会 七 ヲゝいたい 越中滑川大蛸》 嘉永5年(1852) 
右:月岡芳年 《風俗三十二相 うるさそう》 明治21年(1888)

ルノワールは浮世絵の猫を目にしたのでしょうか。浮世絵はとてつもなく過去のものに感じる...。

renoir madame henriot
ピエール=オーギュスト・ルノワール 《アンリオ夫人》 1876年頃
油彩・カンヴァス 65.8 x 49.5cm
アデル・R.・レヴィ基金

ルノワールが描いたアンリオ夫人は11点あり、唯一本人が所蔵していた作品です。しっかりと描かれた顔に対してドレスは空気に溶け込むかのような描写です。何て美しいのでしょうかこの作品は。いつまでも見ていられます。《アンリオ夫人》は5度目の来日となります。幸運なことに全て見ることができています。傑作は何度見てもいい。

1994年 『1874年 パリ「第1回印象派展とその時代」』
国立西洋美術館

1999年 『ルノワール-近代の眼』
川村記念美術館、宮城県美術館、北海道立近代美術館

2010年 『ルノワール-伝統と革新』
国立新美術館、国立国際美術館

2011年 『ワシントン・ナショナル・ギャラリー展  印象派・ポスト印象派 奇跡のコレクション』
国立新美術館、京都市美術館

2015年 『ワシントン・ナショナル・ギャラリー展 アメリカ合衆国が誇る印象派コレクションから』
三菱一号館美術館

1994年の『1874年 パリ「第1回印象派展」とその時代』は、クロード・モネ《印象・日の出》やエドゥアール・マネ 《鉄道》など素晴らしい作品を迎え、当時正しい絵画であったアカデミスム作品などと印象派誕生の時代を考察する非常に内容の濃い展覧会でした。昨年、国立新美術館で開催されたオルセー美術館展は傑作ばかりで本当によい展覧会だったのですが、「名品展」といった感じだったので、1994年のような構成だったらなぁと思ったものでした。《アンリオ夫人》は、1999年から2010年まで11年も来日することはありませんでしたが、2010年から2015年までの5年間で3度も来日!こんなスパンで合えるなんて嬉しすぎます。次の来日はいつになるのでしょうか。

corot the artists studio
左:ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 《芸術家のアトリエ》 1868年頃
油彩・板 61.8 x 40cm ワイドナー・コレクション
参考画像
右:ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 《画家のアトリエ》 1873年頃
油彩・カンヴァス 63 x 42cm ルーヴル美術館蔵

ワシントン・ナショナル・ギャラリー展を見てから国立新美術館で開催中の「ルーヴル美術館展」へ行ったらそっくりな作品があってテンションが上がりました。何点かヴァリアントがある作品です。同時に来日しているというのはとても面白いですね。ワシントンの作品の方が丁寧に仕上げられているように感じました。

またルーヴル美術館展にマリヌス・ファン・レイメルスウァーレに基づく 《徴税吏たち》 16世紀 が出品されていましたが、全く同構図の作品がBunkamuraザ・ミュージアムで開催中の「ボッティチェリとルネサンス フィレンツェの富と美」にマリヌス・ファン・レイメルスウァーレに基づく模写 《高利貸し》 1540年頃 が出品されているのも興味深かったです。質はルーヴルの方が格段に上でしたが。関連のある作品が同時期に開かれる関係のない展覧会で披露されるととても得した気分になれます。

3. 芸術家の肖像

アンリ・ファンタン=ラトゥール、エドガー・ドガ、エドゥアール・ヴュイヤールのとても小さなサイズの自画像とゴーギャンの自画像、マネによる肖像作品、ルノワールによるモネの肖像の6点による章です。

gauguin Self Portrait Dedicated to Carrière
ポール・ゴーギャン 《カリエールに捧げる自画像》 1888年頃又は1889年 油彩・カンヴァス 46.5 x 38.6cm
ポール・メロン夫妻コレクション

左上に「友人カリエールへ」と書かれた、画家・ウジェーヌ・カリエールに贈った作品です。ただ自身を描いただけではなく人へ贈る為に描いた自画像というのは本展のテーマ、親密さ(intimate)に相応しい作品です。ブルターニュの民族衣装を着て描いています。

1888年は、ゴーギャンとゴッホが短い共同生活を送った年です。東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館に所蔵される《アリスカンの並木路、アルル》は、アルルでの共同生活の初めに描かれた作品です。この自画像とは色彩表現が少し違う印象を受けるので共同生活はとっくに破綻したあとにこの作品は描かれた作品でしょうか。

この秋、汐留ミュージアムに巡回してくる「ゴーギャンとポン=タヴァンの画家たち」にぴったりな作品なので会期が重なっていたらよかったなぁなんて。

4. 静物画

マネの素晴らしい筆さばきの《牡蠣》、マネと言われたら信じてしまいそうな大胆な描写のアントワーヌ・ヴォロン《バターの塊》、セザンヌ、ラトゥール、ルノワールらの全く違った静物画の表現を見ることができます。

cezanne Still Life with Milk Jug and Fruit
ポール・セザンヌ 《牛乳入れと果物のある静物》 1900年頃 油彩・カンヴァス 45.8 x 54.9cm
マリー・N・ハリマン記念 W.エーヴレルハリマン財団

ちゃぶ台返しの瞬間のようにテーブルが傾き、皿と果物が手前にずり落ちてくるような視点でありながらグラスは正面から見ているよう。1907年にはピカソが《アヴィニョンの娘たち》を描き、ブラックもそれに続きキュビスムを探求し始めます。様々な視点が組み込まれたセザンヌの作品は、20世紀美術最大の革新と言われているキュビスム誕生を導いたのです。それをやったピカソもとても凄いのですが、そのヒントを出したセザンヌは偉大だなぁと思いました。

5. ボナールとヴュイヤール

ボナールとヴュイヤールコレクションは、エイルサ・コレクションの真骨頂といってもいいのではないでしょうか。展覧会の「親密さ」というテーマも恐らくアンティミストである彼らの作品から取り、構成されていったのでしょう。

vuillard Woman in Black
エドゥアール・ヴュイヤール 《黒い服の女》 1891年頃 油彩・厚紙 26.8 x 21.9cm
エイルサ・メロン・コレクション

奥行とか立体感は皆無で色の面だけで構成されています。具象のぎりぎりまできています。テーブルに乗っているのは犬?猫? かわいいです。

bonnard the cab horse
ピエール・ボナール 《辻馬車》 1895年頃 油彩・板 29.7 x 40.0cm
エイルサ・メロン・コレクション

女性と馬の色彩は固有色を表現しているようにもただのシルエットを描いているようにも見えます。日本かぶれのボナールですからきっと浮世絵に出てくるシルエットを頭に浮かべながら描いたことと思います。

ボナールとヴュイヤールのアンティミスムの作品は、非常に似通ったものがあり、冷静に見ればわかるのですが、どちらの作品であるのか迷うことがあります。印象派の黎明期のモネ、ルノワールまたはモネ、シスレーの作風が非常に近かったり、ピカソとブラックのキュビスム作品が見分けがつかないといった具合に新たな表現を模索している仲間は一時的にぎりぎりまで接近するのですね。そんなことに改めて気づかされました。

vuillard Landscape of the Ile-de-France
エドゥアール・ヴュイヤール 《イル=ド=フランスの風景》 1894年頃 油彩・厚紙
19.7 x 25.3cm
ポール・メロン夫妻コレクション

会場で一目惚れした作品。小さくてとてもかわいい風景画です。建物と塀、柵越しに丘の畑と空が広がります。異なった色の面で作られる畑が心地よいリズムを作っています。ふと家に飾りたいと思った絵です。

pissarro Paysage, la moisson, Pontoise
参考画像
カミーユ・ピサロ 《ポントワーズの収穫風景》 1873年 油彩・カンヴァス 65 x 81cm 個人蔵

 《イル=ド=フランスの風景》を見た時、ピサロの早い時期の作品を思い浮かべました。《ポントワーズの収穫風景》は、緑1つとっても様々な緑で描かれていて凄いなと思います。日差しで照らされた緑や土のこの明るさがいいのです。セザンヌが憧れたピサロがここにあります。国立西洋美術館に入ってほしいと願うくらい好きな作品です。

このピサロ作品は10年前にオークションに登場しましたが、現在どこにあるのでしょうか。

クリスティーズオークション、ニューヨーク  2005年11月1日 印象派&モダンアート イブニングセール

予想落札価格 $4,000,000 - $6,000,000 (4億7200万~7億800万円)
落札価格 $5,168,000 (6億980万円) $1=118円換算

た、高い。この時期のピサロの作品は後の筆触分割の作品より少ないわけで独特な味のある画面も人気で高騰するのでしょうね。

3度開かれたワシントン・ナショナルギャラリー展ですが、なんと皆勤賞の作品が4点あります。

monet Argenteuil
クロード・モネ 《アルジャントゥイユ》 1872年 油彩・カンヴァス 50.4 x 65.2cm
エイルサ・メロン・コレクション

sisley Boulevard Héloïse, Argenteuil
アルフレッド・シスレー 《アルジャントゥイユのエロイーズ大通り》 1872年 油彩・カンヴァス 39.5 x 59.6 cm
エイルサ・メロン・コレクション

manet A King Charles Spaniel
エドゥアール・マネ 《キング・チャールズ・スパニエル犬》 1866年 油彩・リネン 46 x 38cm
エイルサ・メロン・コレクション

manet oysters
エドゥアール・マネ 《牡蠣》 1862年 油彩・カンヴァス 39.2 x 46.8cm
アデル・R.・レヴィ基金

モネ、シスレー、マネ2点の計4点が毎回来日しています。〇〇美術館展で毎度出席する作品があるのはとても珍しいことだと思います。4度目の機会があったらまた来日する作品はこの4作の中にあるのでしょうか。モネの《アルジャントゥイユ》がまた来そうな予感。ワシントン・ナショナル・ギャラリーは貸出不可の作品が結構あり、不幸なことに画家の代表作、館を代表する作品がそれだったりします。

2011年のワシントン・ナショナル・ギャラリー展に並んだモネの 《日傘の女性》、《ヴェトゥイユの画家の庭》、《太鼓橋》や他のモネ作品の多くも1999年に来日した物と同じでした。これは所蔵品が少ないのではなく、チェスター・デールコレクションという印象派の傑作を多く含むコレクションを館外に出せないからでした。チェスター・デールコレクションには《ルーアン大聖堂》、《国会議事堂》、《ウォータールー・ブリッジ》などいくつも名品がありますが門外不出です。他のコレクションにも名品はもちろんありますが、その中からチョイスしようとすると似たようなものになってしまうのでしょうか。

3度のワシントン・ナショナル・ギャラリー展や他の展覧会で今までに18点のルノワールが来日したようで館外へ貸し出すことができるルノワールの名品はほぼ来日を果たしたようです。今回のルノワールの日本初公開作品は、《猫を抱く女性》、《クロード・モネ》、《花摘み》と3点もありました。あと日本に来ることができて見るべきものは、縦長の対作品《魚籠を持つ少女》と《オレンジの籠を持つ少女》だけです。他は習作作品になります。下の傑作たちは決して日本へ来ることはないチェスター・デール・コレクションです。ルネサンスから印象派、20世紀まで傑作がこれでもかと含まれたコレクションです。ルノワールの作品だけ見てもその質がわかると思います。これがモネ、ドガ、セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャン、ピカソ、マティス、モディリアー二など同じように傑作だらけなのです。

washington renoir Chester Dale Collection

上段
《じょうろを持つ少女》 1876年/《輪を持つ少女》 1885年/《ダイアナ》 1867年
中段
《オダリスク》 1870年/《マリー・ミューレ》 1877年
下段
《シコット嬢》 1865年/《シュザンヌ・ヴァラドン》 1885年頃/《髪を整える裸婦》 1893年

《じょうろを持つ少女》、《ダイアナ》、《オダリスク》はいつか是非見たい作品です。

傑作、代表作を中心に展開する名品展ではありませんでしたが、コレクターが身近に置いた小さな作品たちは親しみを覚えるものが多く、小さな部屋が続く三菱一号館美術館の展示室にもぴったりでした。ワシントン・ナショナル・ギャラリーのコレクションの新たな一面を知ることができた展覧会であったと思います。

―――――

東京駅の反対側にあるブリヂストン美術館がビルの建て替えの為、5月17日(日)をもって長期休館に入ります。しばしの別れを惜しんで駆け付けた人たちの列が外にまで伸びるようになっています。休館前の最後の展示として「ベスト・オブ・ザ・ベスト」と称して名品が一堂に並んでいます。両展をはしごをしてみるとブリヂストン美術館の印象派、ポスト印象派の名品たちがワシントン・ナショナル・ギャラリー展の各章に見事に綺麗にハマるので展示中のブリヂストン美術館の所蔵品をワシントン・ナショナル・ギャラリー展の各章に当ててみました。

1. 戸外での制作

bridgestone boudin pissarro monet
ウジェーヌ・ブーダン 《トルーヴィル近郊の浜》 1865年頃 油彩・板 35.7×57.7cm
カミーユ・ピサロ 《菜園》 1878年 油彩・カンヴァス 55.2×45.9cm
クロード・モネ 《アルジャントゥイユの洪水》 1872-73年 油彩・カンヴァス 54.4×73.3cm

《アルジャントゥイユの洪水》は、ワシントン・ナショナル・ギャラリー展に出品されている《アルジャントゥイユ》と似た位置から描いた作品です。遊歩道は水没し、一見同じ景色に見えませんが、遠くに同じ建物や煙突が見えています。他にも季節や時間を変えて描いた作品を残しています。

2. 友人とモデル

bridgestone renoir caillebotte manet
ルノワール 《すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢》 1876年 油彩・カンヴァス 97.8×70.8cm
ギュスターヴ・カイユボット 《ピアノを弾く若い男》 1876年 油彩・カンヴァス 81.0×116.0cm
エドゥアール・マネ 《メリー・ローラン》 1882年 パステル・カンヴァス 41.6×37.1cm

《ピアノを弾く若い男》は、カイユボットの弟マルシャルをモデルに描いたものだったり、マネ晩年の愛人を描いたメリー・ローランの肖像に親密さを見ることができます。

3. 芸術家の肖像

bridgestone degas manet cezanne
エドガー・ドガ 《レオポール・ルヴェールの肖像》 1874年頃 油彩・カンヴァス 65.0×54.0cm
エドゥアール・マネ 《自画像》 1878-79年 油彩・カンヴァス 95.4×63.4cm
ポール・セザンヌ 《帽子をかぶった自画像》 1890-94年頃 油彩・カンヴァス 61.2×50.1cm

レオポール・ルヴェールはドガの画家仲間で印象派展に参加した画家ですが、1点も作品が残っていないとのことです。どんな作品を描いていた画家なのでしょうか。

マネの《自画像》は2点しか存在が確認されていません。こちらは全身像、もう1点はパレットを持った半身像になります。

出光興産創業者である出光佐三のコレクションにセザンヌの自画像がありましたが、2003年に売却されたのでブリヂストン美術館のセザンヌの《自画像》は国内では唯一の所蔵といっていいでしょう。

4. 静物画

bridgestone gauguin bonnard cezanne
ポール・ゴーギャン 《馬の頭部のある静物》 1886年 油彩・カンヴァス 49.0×38.5cm
ピエール・ボナール 《桃》 1920年 油彩・カンヴァス 36.0×38.1cm
ポール・セザンヌ 《鉢と牛乳入れ》 1873-77年頃 油彩・カンヴァス 20.0×18.1cm

ゴーギャンの《馬の頭部のある静物》は、当時最新の技法であった点描で描かれています。ブリヂストン美術館は、新印象派の画家シニャック、点描を通過した画家であるマティスとモンドリアンのその作例も所蔵していて点描の系譜の一面を見ることができます。

5. ボナールとヴュイヤール

bridgestone vuillard bonnard
エドゥアール・ヴュイヤール 《鏡の前》 パステル・紙 1924年頃
ピエール・ボナール 《灯下》 1899年 油彩・紙 42.5×50.4cm
ピエール・ボナール 《ヴェルノン付近の風景》 油彩・カンヴァス 1929年 63.4×62.4cm

ボナール《灯下》は、身近のありふれた生活や家庭内の情景を描くアンティミスムそのものの作品で、親密さという言葉がぴったりです。その後の色彩が開花したボナールも所蔵していて好対照なコレクションです。

ブリヂストン美術館はどんな美術館に生まれ変わるのでしょうか。2020年のオリンピック前には再開される予定のようですが、世界中から日本に来る人たちに是非このコレクションを見て行ってもらいたいですね。
関連記事
スポンサーサイト

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

 

トラックバック

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。