美術展命の男のブログ

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国立西洋美術館 セザンヌ《ポントワーズの橋と堰》を新収蔵!

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ポール・セザンヌ《ポントワーズの橋と堰》1881年 油彩、カンヴァス 59.1x72.1cm
国立西洋美術館蔵

国立西洋美術館のホームページを見に行ってびっくり。いやー本当に驚いた。昨年、ポール・セザンヌの名品《ポントワーズの橋と堰》を購入したと紹介されていました。

左斜め下に向かう規則正しい筆跡のリズムが心地よい絵です。塗り残し部分もセザンヌの絵って感じでいいです。
厚塗りのセザンヌも晩年のステンドグラスのようなジェマイユのようなセザンヌも好きですが、このセザンヌの毛並がとても好きなので取得してくれて凄く嬉しいです。

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ポール・セザンヌ《エクスの北、ヴェルドン運河の水道橋》1882-83年 油彩、カンヴァス 57×72cm 個人蔵、スイス

こちらも一定方向の規則正しい筆致を持つ名品。この作品も今回取得した作品と同じくらい好きです。

名品ということだけがびっくりの理由ではなく好きなこの絵を新収蔵を知る前日、ネットで画像を見ていたのです。まさか日本の美術館に収蔵されるなんて夢にも思っていなかったので本当に驚いた。

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1998年サザビーズオークションのカタログの表紙に使われています。このトリミングがGOOD。次に発行する国立西洋美術館名作選の表紙はこれでお願い(笑)

カミーユ・ピサロがほぼ同じ景色を先に描いています。セザンヌとピサロはオワーズ川に沿って上流を見て、町の南のスポットからポントワーズの橋を描いています。

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カミーユ・ピサロ《ポントワーズの鉄橋》1873年 油彩、カンヴァス 50x65cm 個人蔵

ポントワーズへの道がそれぞれの画面の左側に見えます。セザンヌの作品では同化しているように見えますが、画面の中心手前には、サン=トゥアン=ロモヌとポントワーズを接続するために1862-1863年に建設された鉄道橋、奥には歩行者や馬車が通る古い道路橋が架けられています。第二次世界大戦中に破壊されてしまったそうです。

ピサロは1866年にパリの北西20kmほどに位置するポントワーズに移住し1884年までこの地に住み続けました。セザンヌはオワーズの谷に1872年から1874年まで住んでいます。 ピサロとセザンヌは1872年にはポントワーズで、1873年にはオーヴェル=シュル=オワーズでカンヴァスを並べて共に制作しています。セザンヌの暗かった画面はピサロの影響で明るくなります。1881年にセザンヌはピサロの近所に引っ越してきます。セザンヌはピサロの作品とほぼ同じ位置から描いてるわけですからピサロの作品を実見したか、見ていないとしてもこの場所で描くことに関して何らかの会話はしているはずですよね。セザンヌが「この構図いいね。同じところで描いてみよう」とかピサロが「ここの眺めはいいぞ」と教えたりみたいな。

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カミーユ・ピサロ《ポントワーズの川岸》1872年 油彩、カンヴァス 46×77cm 個人蔵

《ポントワーズの鉄橋》の位置より下流で描いた絵です。セザンヌの絵にある堰も確認できます。左岸に人々が歩いていますが、このもう少し奥へ行った辺りからの眺めをセザンヌは描いたようですね。

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カミーユ・ピサロ《ポントワーズの橋》1878年 油彩、カンヴァス 60.5x73.0cm 吉野石膏コレクション(山形美術館寄託)

《ポントワーズの鉄橋》の奥にアーチ型を描く橋が少し見えますが、こちらはその橋を描いた作品です。橋に人や荷馬車らしきものが行き来しているのが見えます。ピサロはオワーズ川沿いで何点も描いており、この橋や鉄道橋が他作品にも登場します。この画面の右側手前に鉄道橋があることになります。

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GOOGLE MAPより

現在の鉄道橋です。

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GOOGLE MAPより

下流の方に行くとセザンヌが描いたと思われる眺めがあります。(GOOGLE MAPは橋の上からの眺め)下部の地図で赤い矢印の方向を見た物が上部の画像です。川の水面に白いラインが見えると思います。上の鉄骨は堰の構造物かと。絵のタイトルにもある「堰」から水が落ちている様子です。セザンヌの絵にも鉄道橋と並行して手前に川の落差の表現がされているのがわかります。

セザンヌの絵は左岸から見た角度なので鉄道橋はここからは見えませんね。水色のラインが堰、青い丸が鉄道橋で緑の丸がオワーズ橋です。人間マークがいる所から右斜め下に20kmほど行くとパリです。

2005年から2006年にかけてニューヨーク近代美術館、ロサンゼルス・カウンティ美術館、オルセー美術館を巡回した「近代絵画の開拓 セザンヌとピサロ 1865-1885」展にセザンヌ《ポントワーズの橋と堰》とピサロ《ポントワーズの鉄橋》は一緒に出品されました。

2人が同時に制作した作品ではありませんが、同じ眺めということで興味深く貴重な作品だということは確かです。

このセザンヌ作品は何人かの個人蔵を経て、2008年にクリスティーズのオークションに登場します。予想落札価格$7,000,000 - $10,000,000のところ$7,922,500(約7億6500万円)で落札されました。(2008年11月平均レート96.67円)

この時は、ロンドンの個人蔵に入ったようでその後、国立西洋美術館が購入したようです。$10,290,000(約8億円)で購入とのこと。円高万歳!国立西洋美術館の購入額としては過去最高額とのことです。とてもいい買い物しましたね。偉い!

1998年のサザビーズのオークションには予想落札価格は$8,000,000 - $10,000,000で出品されていましたが、現在、来歴に記載がされていないのでこの時は不落札に終わったようですね。このオークションがあった11月は1$=122円前後だったり、6月頃は146円だったりしたようで差が凄いですね。もしこの時落札されていたら国立西洋美術館には来なかったことでしょう。美術品の流転は面白い!

ちなみにピサロ《ポントワーズの鉄橋》は、1997年にクリスティーズオークションに出品され、予想落札価格$1,500,000 - $2,000,000のところ$2,587,500(約3億800万円)で落札されています。(1997年5月平均レート119.24円)

2009年にもクリスティーズオークションに登場し、予想落札価格$3,500,000 - 4,500,000(2009年11月レート90.98円)、約3億1000万円から4億900万円)ほどで設定されていましたが、不落札に終わっています。

この作品はまだ個人蔵にあるようですね。ピサロの初期の傑作の1点だと思います。この作品も入手できたらいいなあ。

1959年に開館した国立西洋美術館にはセザンヌの油彩画は無く松方コレクションの水彩画4点だけでした。

元々、松方コレクションには『松方コレクション西洋美術総目録』によると油彩画は《ひび割れた家(別称:廃屋)》メトロポリタン美術館蔵、《風景 オベール、アルメの谷側より》、《リンネルの上の果物》、《レスタックの岩》サンパウロ美術館蔵、《読書する青年》の5点あり、水彩画は《水差しとスープ容れ》、《船にて》、《横たわる裸婦(風景のなかの裸婦)》、《永遠の女性》、《ジョルジョーネの『田園の奏楽』より》、《サント・ヴィクトワール山》、《調理台の上の壜とポット》、《モンテニ・シュル・ロワンの教会》の8点(前半4点は国立西洋美術館蔵)、さらにカラーリトグラフ《水浴の男たち(小)》横浜美術館蔵、《水浴の男たち(大)》横浜美術館蔵の2点と総点数は15点にのぼりました。*1999年 セザンヌ展 横浜美術館 カタログより

油彩画だけでも風景画、静物画、人物画とバランスよく揃って水彩画も豊富。散逸が惜しまれます。

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ポール・セザンヌ《レスタックの岩》1882-85年 油彩、カンヴァス 73×91cm サンパウロ美術館蔵

松方幸次郎は《レスタックの岩》を1923-27年に入手しますが、その後大阪の岸本兼太郎の手に渡り、最終的に国外に流出してしまいます。現在は日本の裏側ブラジルにおります。

国立西洋美術館が、セザンヌの油彩を取得するには1978年度収蔵の《葉を落としたジャ・ド・ブッファンの木々》まで待たなければなりません。今回はそれから34年ぶりの取得です。

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ポール・セザンヌ《葉を落としたジャ・ド・ブッファンの木々》1885-86年 油彩、カンヴァス 60.3×73cm 国立西洋美術館蔵

国立西洋美術館が、印象派の巨匠の油彩を最後に購入したのは1986年度のクロード・モネ《黄色いアイリス》、新印象派では1987年度のポール・シニャック《サン=トロぺの港》くらいです。西洋美術史の巨匠たちの作品を地道に収蔵していて、近年だけでもラトゥール、ブリューゲル、ティツィアーノなどのオールドマスターからドーミエ、ドレ、ハンマースホイ、ブラックなど驚かせてくれる名品の収蔵がいくつもありました。ただ失礼ながら印象派、ポスト印象派の購入は絶望視していて考えてもいませんでした。(笑)だから今回の購入は事件です!

いやー感無量。油彩2点、水彩画4点全点一挙に並べてみてほしい物です。(風景画1点が寄託されていましたが、久しく見ないので所有者に返却されたのでしょうか?)

《ポントワーズの橋と堰》は、常設展で近々お披露目されるとのことです。早く見たい!
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